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【特集】宮崎社長と現場の距離感は?―フロム・ソフトウェア開発者座談会

フロム・ソフトウェアの現役開発者5名を招いた特別座談会連載第2回では、『DARK SOULS III』をはじめとするタイトルの詳しい開発スタイル、そして現場から見た「社長像」について語り合ってもらいました。

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2016年4月に欧米でも発売を迎えたフロム・ソフトウェアの『DARK SOULS III』は、ハイエンドなゲーム体験を求めるユーザーや、世界中のシリーズファンから歓迎され、日本国内に留まらない人気ぶりと開発力の高さを証明したと言えます。本作のディレクターを務めたのが、2014年5月からフロム・ソフトウェアの取締役社長に就任した宮崎英高氏。フロム・ソフトウェアの現役開発者5名を招いた特別座談会連載第2回では、『DARK SOULS III』をはじめとするタイトルの詳しい開発スタイル、そして現場から見た「社長像」について語り合ってもらいました。

前回に引き続き、座談会に参加したのは以下の職種のフロム・ソフトウェア開発者たち。


グラフィックデザイナー
デザイナー
システム設計
プログラマ
企画職


■世界観や雰囲気も大切にしたゲーム作り

――それでは、最新作『DARK SOULS III』の開発に話題を移したいと思います。皆さんそれぞれ、どのように制作にかかわられたのでしょうか?

グラフィックデザイナー: 私は、プロジェクトの終盤で1年間くらい、主にキャラクターと背景のチームのサポートを行いました。またレベルデザインについて、社内スタッフとしてレビューする機会を多く与えられて、「ここがおもしろい」「ここがつまらない」「こんなふうに改善した方が良い」といった提案を行いました。皆で提案しあい、チームで一丸となってより良い体験を生み出していく過程というのは、ゲーム開発における醍醐味のひとつだと思います。

企画職: そうした意見はありがたい反面、ぐさぐさ来ることもありますけどね。

グラフィックデザイナー: もちろん、皆、ポジティブな提案として行うようにしています。手間暇かけて作り上げられたものに対して意見をするわけですから、提案する側も真剣ですね。

システム設計: 私も同様に終盤にレベルデザインのレビューに参加しました。これはシステム設計の仕事というよりは、視野を広げるための経験…でしょうか。通常の企画とは違った目線からレビューができたと思います。また各種イベント、マルチプレイ関係の仕様調整のサポートを行いました。

デザイナー: 僕は『Bloodborne』の完成後にチームに合流しましたが、それでも『DARK SOULS III』の開発には1年以上参加したのかな。最初はこれまでのようにマップデザイン制作を中心に動き、途中からは複数のプロジェクトに関わり出したのもあって、マップのデザイン監修のような一歩引いて全体を見る役割もできるように試行錯誤していました。


企画職: 『DARK SOULS』シリーズは世界観や雰囲気をとても大切にしています。その中でどのようなマップを作って、どんな風に遊びとして落とし込んでいくかを考えて、素材制作などの発注をかけ、最終的に仕上げていくのが自分たちの仕事です。私個人は、敵キャラクターの制作に関わりました。どんな演出やモーションで襲い掛かってきたら恐ろしく、立ち向かいたくなるキャラクターにできるだろうか?といった部分です。振り返って感じるのは『DARK SOULS』と比べると、マントがひらひらと舞うなど、ずいぶんグラフィックが向上しましたね。ゲームの本質的な部分は同じでも、より印象的に表現できるようになりました。

――現世代機のマシンパワーがゲーム体験に大きく貢献したのですね。

企画職: そう感じます。もっとも、まだ敵キャラクターを100体くらい出せるとか、エフェクトがバリバリとド派手に出せるというわけではありません。スペックについては、まだまだ進化して欲しいですね。

――ゲームの進化という点で、少し話はずれますが、皆さんは、「VR」や「e-Sports」のような最近業界で話題のトピックについては、どのように感じられますか?

デザイナー: 新しいハードウェアや取り組みは、大人になった今も、子どものころに感じたのと同じようにワクワクしますね。特に「VR」は夢が広がりますね! ゲーム制作者としては、燃えやロマンを体験できるようなものを作ってみたいな。

システム設計: 「e-Sports」のように競技性の高いゲームという意味では、以前は『アーマード・コア』シリーズでゲーム大会も主催していました。クリアすべき課題はあるにせよ、「e-Sports」ともある程度親和性はあるのではないでしょうか。

企画職: 最近は『DARK SOULS』シリーズに代表される、「ハイエンドなダークファンタジーのRPGを作る会社」みたいなイメージになっていますが、会社として、そこだけに留まるつもりはまったくないと思います。


■社長とディレクターを兼任する宮崎氏のゲーム作り

――会社の方針について話が出たところで、現場からみた宮崎社長の人となりについて、話を移していきましょう。

デザイナー: 宮崎はほとんど現場に張り付きでディレクションしているので、社長業をホントにしているのか時々不安になるくらいです。

システム設計: 社長業とディレクター業が交じり合っているな、とたまに思ったりしますね。

デザイナー: ずっと彼のディレクションするラインにいたので接する機会も多かったのですが、僕の持っているあの人の印象は、知識が豊富で判断力があるインテリオタクのオジサン、という感じですかね。いやー、あの知的な雰囲気が羨ましい。

システム設計: 社長が判断しているのでトップダウンではあるのですが、話も聞いてくれますし、グラフィックにもストーリーにもゲームシステムにも目端が利くので、大体外れた判断は下しません。外では開発のことを何も知らない人が意見を言って、現場を混乱させるみたいな話をたまに聞きますが、そうした状況とはまったく違いますよね。

デザイナー: デザインの造指も深く、ディレクターとしてクレジットされたゲームでは、実質彼がアートディレクションの立場です。確固たる美意識があるんですよ。ゲームをプレイしたら伝わると思いますが。

――グラフィッカー(3Dモデラー)から見て、宮崎社長はどのような存在ですか。

グラフィックデザイナー: 頭の中にすごいイメージがあって、こだわりもある人ですから、そのイメージをいかに見える形にするかが常々求められています。敵キャラクターにしても、外見だけではなくて、ストーリーや背景があって、プレイヤーにどのような印象を与えるかという話まで含めてイメージしているので、そこをいかに解きほぐして、ビジュアルとして表現するかが私たちの重要な役目です。独特な世界観をいかに具体的な形に表現するかが求められていて、そこにやりがいがありますし、使命感も感じていますね。


――そうしたイメージは具体的に提示されるのですか?

グラフィックデザイナー: いや、そうとも限らないんですよね(笑)。明確に提示がある場合もありますが、逆に現場に委ねられるような場合もありますね。

デザイナー: 情報を意図的に絞るというか、全部喋らないことがあるよね。前に一回聞いたことがあるんだけど、「最初からある程度、頭の中にイメージがあるんだけど、それを全部言ってしまうとデザインする上で先入観を与えてしまう。そうじゃなくて、できれば予想を超えるものを提案して欲しい」と言ってました。

グラフィックデザイナー: たしかに、あえて曖昧な単語でイメージを提示されることがありますね。「闇感」といったような。具体的ではまったくないんだけど、なんとなく言わんとすることは伝わってくるという。そういったさまざまなかたちでヒントを出して、期待を上回るものが出てくるのを待っているのかもしれません。


■自分なりのアイディアを活かせる開発スタイル

――企画会議はどんな風に進んでいくのですか?

企画職: 一番最初に宮崎から何がやりたいかを示してもらって、それをつめるために一緒に考えていったり、提案していく感じかなあ。

デザイナー: たぶん具体的に、たとえばマップ設計みたいな事例を話した方がわかりやすいと思うよ。

グラフィックデザイナー: まずはマップのコンセプトを元に、企画職が簡単な3Dマップをラフモデルで実際に作ってみるところから始まります。それに、ここに敵キャラクターをおいて、トラップをおいて、ああしたい、こうしたいといったように、次々とアイディアが足されていきます。たとえば、「一本道の通路のあとで、広間みたいな空間を作る。プレイヤーとしてはそこで開放感が得られるんだけど、真ん中まで進んだら四方八方から敵キャラクターが襲ってきてビックリする。それを潜り抜けるヒントがあって、こういった攻略をすると達成感が得られる」といった演出を、延々考えていくという様子をよく目にします。皆、より良いゲームにしようと、忌憚無く意見を出し合っています。


デザイナー:そうやって企画職がたたき台を作ったところで、グラフィッカーも一緒になって入っていって、いろいろつめていくという流れです。

企画職: そういったコンセプトから具体的に落とし込んでいくときの打ち合わせは、最初に彼とマンツーマンでやることが多いです。人によってもやり方が違うと思いますが、多くは、最初に要件を掲示してもらって、それを満たしつつ自分がいいと思う発想をどんどん入れ込んでいく。それである程度できたらチェックしてもらい、フィードバックをうけながら仕上げていくという感じです。

――企画職だと、自分が自由にゲームの企画を立てて、オリジナルのゲームを作りたいという人も多いと思いますが。

企画職: たしかに、こんな風に説明すると、「上から言われたことをただ形にするだけ」と捉えられるかもしれませんね。でも実際にはそんなことはなくて、大きな方向性に対して自分の創造性を加えながら膨らませていく自由は与えられています。基本的なおもしろさがあるなかで、小さなオリジナルゲームを作っているみたいなものだと感じています。

デザイナー: あの人を納得させるような形で提案できたら、それが通ることもありますよね。一方で、一見正しいような提案でも「こういう理由でダメ」と言われることもあります。そこは一本筋が通っていますよ。

システム設計: プロジェクトを最初に立ち上げる時、「こうしたらおもしろくなる」「自分はこうしたい」といった自分なりのアイディアや提案があれば自由に言ってほしいと言われます。ただし、「建設的な提案であること」「最終的な判断は宮崎がすること」という二つの条件があります。そんな風にして、最終的なおもしろさを担保しつつ、みんなの意見をできるだけ取り入れたいという考え方です。

企画職: つまり、けっして上から言われたことだけを機械的にこなしているだけではない、ということです。やりたかったらやりたいだけ検討の余地あり、という環境です。


プログラマ: プログラマは、システム開発に寄っているので、ゲームの内容作りに直接絡むことはあまりないんです。プログラマにとって重要なのは、バグが出ないこととか、安定して遊べるようにすることだと思うんですが、マスターアップが近くなっても新しい仕様提案が来るときがあって、そのときは辛いですね(笑)。「その仕様を実装したらおもしろいのはわかります。でもフレームレートが出ないんです!」みたいなやりとりがあったりして。

デザイナー: 最後に意外とぶち込んでくるからね(笑)。マップを増やしたいとか、ボスがバトルの前半と後半で形が変わるとか。

プログラマ: いやいや、メモリに乗らないでしょ、ゲームがハングアップしちゃうでしょ、という。

グラフィックデザイナー: 企画はぎりぎりまで追加や修正をやりたがるから、後からプログラマとグラフィッカーが大激怒したり(笑)。

プログラマ: せっかくメモリを最適に調整しておいたのに!みたいな話がたまにあるよね(笑)。

グラフィックデザイナー: でも、そうした無理難題にきこえることも、周りの人が何とかして実現しようと努力したりするんですよ。全ての変更は、ゲームをより面白くするための変更のはずですから、それに対しての協力は惜しみません。そういったゲーム作りに対する前向きな姿勢は強く根付いていると感じます。

■トップと現場で求められる関係性とは

システム設計: ただ、全部が全部できるわけではありません。そのように仕様がどんどん膨らんでいくと、どこかで破綻しちゃうじゃないですか。開発の序盤・中盤・終盤で、宮崎の話も少しずつ内容が変わってくることもあるんです。その意図に気づかずに、言われたことだけをやっていると、逆に危なかったり。

――そうなんですか?

システム設計: 序盤で夢を語るフェーズ、中盤で具体的な仕様に詰めるフェーズ、終盤でスケジュールを気にするフェーズと、外的要因が変わってきますからね。ちゃんと指示の意味を理解して、現場の方でも動くようにしています。トップが凄くてもそれだけでゲームは作れない、というか。


デザイナー: ゲーム作りは誰もが試行錯誤の連続だと思うので、僕らも単純な受け仕事にはならないようにしています。

システム設計: 「絶対にこれが必要なんです」といわれても、時間が経ったりなど外的要因が変わったりすると必要なくなったりすることも経験しているので、要件は変わるものだと思うようにしています。トップや現場が何をイメージしているのかを常に意識しながら作業を進めるようになりました。

――皆さんは入社8年目ということですが、新人社員が宮崎社長と直接かかわる機会はありますか?

システム設計: ふつうにありますよ。特に彼が関わるプロジェクトではマンツーマンでやり取りすることも多いです。

デザイナー: 前回の記事にもあったように、デザイン部でも新人でやる気と能力があればどんどん仕事を任せるので、やりとりすることもありますよ。彼がディレクションするプロジェクトでは、デザインは基本的に全部チェックしていますからね。


――シリーズものの場合は、前作によってある程度のおもしろさが担保されていますよね。でもオリジナルの場合は、途中で開発チームが「これって、本当におもしろいの?」と、迷うことが出てくると思うんです。そんな時に宮崎社長はどのように助言されるのでしょうか?

デザイナー: 『Bloodborne』の時がそうでしたが、最初にコンセプトを明確にします。いったんこのコンセプトでやってみたい、やってみようというのがあって。プレイアブルなものを作って、テストプレイをして、それぞれで感想を出し合って。その上で「俺はこういうことをやりたくて、ここは上手くいったけど、ここはダメだったから、課題として考えよう」という感じで。

企画職: そこは両方ありますね。はっきり最初に「俺がおもしろさを保証するからやろう」という時と、「自信はないけど、とりあえずやってみたい」という時があります。そこも変な話ですが、言動が素直なので現場としてはありがたいんですよね。

デザイナー: けっこう考えることを素直に言ってくれる人ではあるよね。

企画職: 煙に巻かない人だと思います。「あえて、今は結論を出さない!」みたいに先送りすることもあるけど、それだってハッキリしているじゃないですか。なんとなく良い感じのことを言って「じゃあ、あとはよろしく!」みたいに現場に丸投げするようなことはまずしない人なので。それはやりやすいですね。

――よくイメージだけ、擬音だけで語るディレクターっているじゃないですか。そういうタイプではない?

デザイナー: うーん、どうだろう。基本的には実装を踏まえた提案をしてくれる人だと思います。ただ初期段階ではビジョンを先に掲げて、それに対してみんなで考えていくこともあるし。基本的にはハッキリしていると思います。

企画職: ぼんやりとしたイメージの話をすることもありますが、一方で自分が言ったことには責任を持つタイプですよね。「前に言ったけど、ここではその話は置いておいて」とか言われたりして、そんな昔のことまでちゃんと覚えてるの? と驚かされることもあります。


――そうなんですね。それでは今回の取材はここまでです。皆さん、ありがとうございました。

===== ===== =====


ニ回目となる本取材では、『DARK SOULS III』や『Bloodborne』といったフロム・ソフトウェアのタイトルの具体的な事例をあげながら、彼らの開発スタイルや、現場でディレクションを行う社長との関係性を訊くことができました。最終回となる次回の取材では、座談会に宮崎英高社長をむかえて、トップの求める人材像や考え方を語ってもらいます。

【関連ページ】
フロム・ソフトウェア採用サイト

《小野憲史》

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