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「亜人」から広がるポリゴン・ピクチュアズの今後 ― 瀬下寛之総監督、守屋秀樹Pに訊く(後編)

その他 アニメ

 
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  • 右)瀬下寛之総監督、左)守屋秀樹プロデューサー
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11月27日(金)より、「亜人 -衝動-」が2週間限定公開をスタートした。桜井画門の大ヒット人気マンガを原作にする劇場3部作の第1部にあたる。2016年1月よりテレビシリーズも放送開始、さらにNETFLIXの配信もスタートする。
本インタビューでは、総監督を務めた瀬下寛之氏とエグゼクティブプロデューサーの守屋秀樹氏の話を通じて、アニメーション制作を務めたポリゴン・ピクチュアズと作品の魅力を解き明かす。
インタビュー後編では、『亜人』ならではの制作フロー、さらにそれを作りだすポリゴン・ピクチュアズの強さの秘密に迫る。

『亜人』 公式サイト http://www.ajin.net/

■ 新たな挑戦、モーションキャプチャーの活用

―『シドニア』を見たときに多くの人が相当驚きました。テレビで見るのを劇場に引き伸ばしても全然遜色がない。そこからさらに2年。『亜人』になって、より進化した部分はありますか。

守屋
スタジオでいろいろな技術を取り入れようとしてくれました。舞台となる場所の写真を撮って、それを自動で立体化するソフトを試したり、演技の際の声優さんの表情を動画にとって、キャラクターモデルの動きに自動で取りこもうとしたり・・・。結局、スムーズな制作工程に入れるには問題があって、今回は両方とも見送りました(笑)。今回、大きいのはモーションキャプチャーを本格的に制作フローに取り入れたことですね。『シドニア』と一番違うのは、そこです。

―IBMの動きがモーションキャプチャーなんですね。

瀬下
一部モーションキャプチャーです。IBMだけでなく、様々な場面でモーションキャプチャーを使っています。ただ、手付けのアニメーションの調整が入っていないショットは基本的にはありません。モーションキャプチャーのままだとノイズ的な情報量が過多で生々しくなり過ぎます。セルルックという様式に合わないんです。ですから、アニメーターの手付けの感覚を入れて、そこを調和させています。

瀬下
あとプリプロ手法も少しずつ進化しています。本作の音声収録はプレスコ方式ですが、今回は参考用の映像も流さず、とにかく台本だけでやらせてもらいました。
『シドニア』の2期から本格的にプレスコ収録を行っているのですが、すごく手応えがあったので『亜人』もプレスコにしました。声優さんが絵のタイミングを意識せずに、自然な演技でしゃべる、振る舞う…ことができ、説得力に溢れる音声にななりました。その声と演技をベースにモーションキャプチャーやアニメーションが作りますが、アーティストが演技に刺激を受け、相乗効果によってすばらしい結果が得られました。

守屋
プレスコによって最終的な映像クオリティーは上がると考えています。声優さんの迫真の演技に合わせてアニメーターが映像を作るので、より表現が自然で豊かになると思っています。

瀬下
重要なのは、ストーリーリールです。我々は、まず場面設計を綿密に行い、それから画面を作っていきます。場面設計に基づいたセットデザインとプレスコによる音声を基に、コンテを作成せずに、モーションキャプチャーを進めるシーンもあります。
プレスコ音声、場面設計、モーションキャプチャーの成果に加えて、手描きのスケッチやアニマティックス(*)などの素材を編集し、ストーリーリールを作っています。これがプリプロ以降の作業の設計図であり模型の役割を果たします。
*3DCGによる動きの検証

―そこからどんどんディテールをアップしていくということですか。

瀬下
そうです。いわゆるプレビジュアライゼーションといわれる手法です。

守屋
それがリアリティーとかドキュメンタリータッチに相当大きく貢献しています。

瀬下
そうですね。この作品には合うやり方なんですよね。



■ ポリゴン・ピクチュアズ強さの秘密

―ポリゴン・ピクチュアズが他のCGスタジオよりここは優位だと思われたりはするんですか。日本の中ではトップクラスのスタジオですけれども、逆に言うと何がトップなんだろう、どこが強さの秘密なのだろうと。

瀬下
個人的感想は、このスタジオの持っている、ファクトリーとしての優秀さ。分業体制とか生産工程が管理されているので、一定の品質のものを大量に継続的に作っていけます。
融通が利かない面もあるのですが、品質安定性と生産性の両立を可能としていることでメリットが上回っています。

守屋
14年の春に『シドニア』1期を放送して、10月から『山賊の娘 ローニャ』を26話放送、そして『トランスフォーマーアドベンチャー』と『シドニア』2期と続きました。これに『亜人』を加えて100話以上を制作しています。セルルックCGをこの期間、これだけこだわって作ったスタジオは、世界にないと思います。

瀬下
もちろん生産性だけでなくクリエイティビティーは大事です。設計部門があって、そこで作品の企画からの設計をゼロから手がけています。
ストーリー開発と並行に試作を進め、初期段階から設計と生産の部門が常に協議と検討をして、魅力を維持しながら現実的に生産可能かを分析していきます。そういった作法が確立していることも含めて、スタジオの強みではないかと。

―逆に企画や脚本、ストーリーの開発に違いはありますか。

瀬下
そこはどのアニメ会社さんでも同じような大変さだと思います。効率を上げたら必ず良いアイデアが生まれるという保証は無いですから(笑)。ただ、クリエイターの感覚や経験に依存しないストーリー開発を行う仕組みは整備しているところです。

守屋
瀬下さんが持ち込んだプリプロの手法が、会社のスタンダードになっています。脚本にすぐに入らずに、作品全体の構成を、綿密につめていきます。そこでどういうキャラクターが、いつ、どのタイミングで、どのぐらいの頻度で出てくるかが分かります。「3Dモデルを作るか作画にしようか」など、制作予算やスケジュールを細かく計画できます。脚本作業と同時進行でデザイン設定やモデル制作も進められるので効率がいいんですね。

瀬下
ストーリー開発は、作品全体の骨組み、構造から作り、全体像を把握しながら細部を構築していきます。基本的には、作品全体の基本構造が明確でないなら、脚本作成の段階には進みません。

―逆に言うと、プリプロを綿密にやっておけば制作段階もスムーズになるわけですね。

守屋
そうです。僕らが一緒に仕事をしていた海外の会社は、きっちり設計し、それを我々が作るということに慣れていたので、この手法はうちのスタジオにはすごく合っていますね。

瀬下
うちのプリプロの手法は、おそらく相当欧米の手法に似たものです。



■ 世界に受け入れられる作品を目指すスタジオ

―そうした中で世界を目指すというのはあるのでしょうか。

守屋
当然ながらあります。というのも、海外市場はあまり考えずに日本国内の市場だけで勝負する企画は、日本の市場では新参者である我々に、すごくリスクが高いと思っています。日本でも海外でもある程度受け入れられるような作品がうちのスタジオの目指すところなんじゃないかと。
当面は世界の視聴者が受け入れやすい作品を企画していくことになると思います。『亜人』のサスペンスアクションというジャンルは世界的に受け入れてもらいやすいですし、アニメならではのIBMの戦闘が表現できれば、我々の独自性を出せると思います。

―『山賊の娘 ローニャ』はやや別の路線と考えると『シドニアの騎士』『亜人』と2作品続きましたが、第3弾、第4弾も考えているのですか。

守屋
2018年ぐらいまではコンスタントに作品をリリースする予定になっていますね。

瀬下
続々ですね。本当に期待していただいていいんじゃないかと思います。

―そうすると、ポリゴンのブランドそしてデジタルアニメーションの在り方はどんどん打ち出していくことになりますね。そのなかで最新作の『亜人』の映像的な見どころがありましたらお願いします。

瀬下
独特の没入感を持った個性的な映像に仕上がっていると思います。IBMは見どころです。あとは声優さんの演技。今回は本当にプレスコをやってよかったなと思っています。
主演の宮野(真守)さんの鬼気迫る演技は、永井圭のキャラクターアニメーションに大きな影響を及ぼしています。見応えがあると思います。


―最後にお二方に。これからのポリゴン・ピクチュアズの目指している方向を、お答えいただければ。

瀬下
このスタイルやスタジオブランドが、もっとより多く、幅広い層に受け入れられたら、何より嬉しいです。僕自身も観て育ってきた日本アニメの世界で、我々のスタジオが作る個性的な作品が、選択肢の一つとなり、日本のマンガやアニメ文化の未来への発展につなげられたらと願っています。

守屋
「次はどんな作品を作るんだろう」「どんな映像が出てくるんだろう」というワクワク感を大事にしたいですね。ジブリさんもそうだし、作品でいえば『AKIRA』『スチームボーイ』や『イノセンス』もそうだったと思うんです。特に我々はCGスタジオですから、「技術の進化にあわせて映像表現の進化にチャレンジし続けたい」という思いはありますね。
あまり過去のパターンにとらわれずにチャレンジングなことがわれわれのスタジオのブランドにもなっていくんじゃないかなと思っています。

―本日はありがとうございました。

劇場アニメ3部作 第1部『亜人 -衝動-』
11月27日(金)より TOHOシネマズ新宿ほかにて2週間限定公開
配給:東宝映像事業部  PG-12指定
TVシリーズ:2016年1月15日(金)より
MBS・TBS・CBC・BS-TBS“アニメイズム枠”にて順次放送開始

「亜人」から広がるポリゴン・ピクチュアズの今後 瀬下寛之総監督、守屋秀樹プロデューサーに訊く:後編

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