連載第149回
■ 日本初のトライアル公演、最強の布陣でトライ
大ブレークした人気ゲーム『刀剣乱舞』、その舞台化は大きな話題を呼んだ。しかもミュージカル版とストレートプレイ版の”一粒で二度美味しい”企画、どちらも観たいと思うのは必然。
そして、ミュージカル版のトライアル公演、”本番”は2016年の5月。トライアル、英語では「trial」と書く。試み・試行、競技等の予選、競技等の試技等の意味がある。もちろん、この場合は試み・試行という意味において使用している。
トライアル公演、アメリカではブロードウェイ公演をやる前に様々なところで公演を行い、観客の反応をみて修正をする。場合によってはキャストの変更もある。日本ではトライアル公演自体が恐らく”初”ではないだろうか。制作側もそれだけ、気合いが入っている、ということに他ならない。
主要キャストはだいぶ前に発表にされているが、三日月宗近役はミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズンの菊丸英二役で注目され、ミュージカル『金色のコルダ』で新境地を開いた黒羽麻璃央、小狐丸役にミュージカル『忍たま乱太郎』第6弾で身体能力の高さをみせた北園涼、石切丸役に新星☆アイドルグループ『CHaCK-UP』のオレンジ担当で土星人☆ドット(どせいじん どっと) 崎山つばさ、岩融役にはミスター立教コンテスト準グランプリに輝いた佐伯大地、今剣役はミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズンの加藤勝郎役でデビューの大平峻也、加州清光役には學蘭歌劇『帝一の國』等の話題作に出演している佐藤流司。実はオーディションで役が決まったそう。また、アンサンブルの数も多く、メインキャストも含めて総出演者は全部で30名。
演出は茅野イサム、1986年に善人会議(現:扉座)に入団し、俳優として活躍していたが、2002年より演出家に。2003年からは『サクラ大戦』スーパー歌謡ショウを手掛け、近年ではミュージカル『AKB49~恋愛禁止条例』や『東京喰種トーキョーグール』等の話題作を手掛けている。エンターテイメント性にあふれた構成、きっちりとした演劇に仕上げる手腕で引っ張りだこのクリエイターの一人だ。
脚本は御笠ノ忠次、茅野とは何度もタッグを組んでおり、安定した”コンビ”と言えるだろう。振付はミュージカル『薄桜鬼』やミュージカル『ヴァンパイア騎士』等を手掛けた本山新之助。”最強”のスタッフ、そして気鋭のキャストで臨んでいる。
■ ゲーム感満載、使命に燃える刀剣男士達の葛藤、絆、友情が熱い!
2部構成になっており、1部はミュージカル。出だしは奥州平泉・衣川館の場面。歴史に名高い、藤原氏の館、源義経が非業の最期を遂げた場所である。ファンなら、その後の展開は予想がついてしまうが、それでもテンションは上がる。文治5年の阿津賀志山を舞台に6名の刀剣男士が変えられた歴史を戻す、というのがおおまかなストーリー。
オープニングは華やかだ。刀剣男士がナンバー『刀剣乱舞』に乗って文字通り、”刀剣乱舞”。審神者(声のみ)、刀剣男士たちを束ねる主であるが、説明は不要であろう。ここから物語が動き出すのである。阿津賀志山には弁慶、義経、頼朝、泰衝がいる。時間遡行軍も登場する。今剣は源義経の守り刀。自刃した刀と言われているが実際には不明だ。今剣は義経を見て動揺する……。岩融、今剣と共にいるが、その心中も複雑だ。
それぞれのキャラクターがゲーム同様に描かれており、ファンには納得の出来映え。三日月宗近は、品良く構えているがマイペース、小狐丸は毛並みにこだわり、石切丸は神事に余念がない様子、岩融は豪快に長刀を振り回し、今剣を肩車する。今剣は元気に飛び跳ね、加州清光は、おしゃれに気を使う。
プロジェクションマッピングをふんだんに使い、ゲームの雰囲気を舞台いっぱいに造り上げる。ラスト近くはもちろん、”バージョンアップ”、今剣と岩融、ここは必見だ。キャスト全員が大張り切りの熱演。コミカルなシーン、やり取りや”萌え台詞”も楽しく、あっと言う間の一部、ミュージカルナンバーはユークリッド・エージェンシーの協力を得たというだけあってゲームイメージを踏襲、まずまずのトライアル、といった感じではないだろうか。
ゲーム感満載、使命に燃える刀剣男士達の葛藤、絆、友情が熱く、観客は元気をもらえるはず。
2部は、”お楽しみ”ライブ。「出陣せよ、我が刀剣男士!」の声と共にそれぞれのイメージの”キラキラ”衣装に身を包んだ刀剣男士が登場、ここは観客も”自由”にサイリウムを振ってOK。”刀剣乱舞ショー”といった感じで、ノリノリの”タテノリ”ナンバーでもう、歌い踊る。また、和太鼓を使ったパートもあり、変化に富んだショータイム、客席を駆け回る刀剣男士、楽しんだ者勝ち、日替わり部分もある。
ラストは全員で『漢道』を歌い、大盛り上がりのうちに幕、となる。とにかく2部は一言で言えば「ひたすら、楽しい」。単純にあまり考えずに見られるエンターテイメント、千秋楽はライブ・ビューイングも予定されている。
演出の茅野イサムは「大変てごわい題材でした。知れば知るほどに、その世界は収集のつかないほどに広がっていくのです」とコメント。そして「何より一番考えさせられたのが、彼らは人間の格好をしていても、あくまでも『モノ』であるということです」と言う。今回は義経と弁慶の物語、歌舞伎や大河ドラマでおなじみ。「人が人に焦がれ、慕う気持ちは変わらない」とコメント。
特に義経を慕う今剣の哀しさは涙せずにはいられない。トライアルと銘打っての公演、”本番”は更なる高みを目指すのは必然。来年の公演が楽しみだ。
ミュージカル『刀剣乱舞』 トライアル公演
2015年10月30日~11月8日
AiiA 2.5 Theater Tokyo
ミュージカル『刀剣乱舞』 トライアル公演
(C)2015 ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会
ミュージカル「刀剣乱舞」 トライアル公演、元気をもらえる、ひたすら楽しい2部構成
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