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【RETRO51】PCエンジン『定吉七番 秀吉の黄金』をプレイ―異色大阪アドベンチャー

SUDA51とレトロゲームを探訪する連載企画「RETRO51」。前回の『凄ノ王伝説』に引き続き、今回も初期PCエンジンのタイトルです。

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SUDA51とレトロゲームを探訪する連載企画「RETRO51」。前回の『凄ノ王伝説』に引き続き、今回も初期PCエンジンのタイトルです。

定吉七番 秀吉の黄金』は、1988年にリリースされた謎解きアドベンチャーゲーム。PCエンジンとして初のアドベンチャーゲームです。原作は東郷隆のコメディタッチのスパイアクション小説『定吉七番』シリーズ。しかしながら、須田氏が振り返っているように、当時は特に原作の存在を知らずに遊んだ子どもが多かったようです。

本作はコマンド選択式のオーソドックスなアドベンチャーゲームですが、ゲームの細部に散りばめられた数々の大阪ネタやギャグが特徴。原作にあったコミカルな雰囲気を活かしながら、スタンダードな推理系アドベンチャーゲームとして完成されています。須田氏には当時のアドベンチャーゲーム懐かしさとともに、大阪という土地の魅力を語ってもらいました。

◆随所に散りばめられネタの数々―テキストベースの大阪人シミュレーター!?


――今回は『定吉七番 秀吉の黄金』です。前回の永井豪作品に引き続き原作ものですよね?

須田:
そうなんですか?

――小説があります。東郷隆のシリーズ小説。自分も今回初めて知ったのですが、小説の方はご存知なかったですか?

須田:
いや、まったく知りませんでした。

――1985年に最初の作品が出ています。2013年に久しぶりの続編が出て、ちょっと話題になったそうです。ゲームと同じでコメディタッチの推理活劇で、根強いファンもいるようです。

須田:
ゲームはこれ1本しか出てないですよね。原作があるとは知りませんでした。

――では、はじめますか。



ゲームをスタートするとまず目に飛び込むのは「おはつ」と「おなじみ」の2つの選択肢。それぞれ、ニューゲームとコンティニューを意味しますが、こんなところにも大阪ネタが散りばめられています。またPCエンジンのスペックを活かし、ダイアローグの文字が大きく、漢字も表示。過去の連載でプレイしたアドベンチャーゲーム『ミシシッピー殺人事件』などと比べると、格段に読みやすいです。

さて、ゲームの目的は悪の結社NATTOから「秀吉の黄金の地図」を奪うこと。プレイヤーは大阪商工会議所(笑)の工作員の定吉七番となって、捜査を行います。定吉は丁稚ながらも殺人許可証を持つという特別な存在。もちろん、元ネタは007シリーズのジェームス・ボンドです。

最初の場面は商工会議所です。秘書に話を通してボスのご隠居に面会します。操作は12個のコマンドを選択して行う形式。コマンドが12個もあるため、ハズレは多いです。しかしながら、ほぼすべてのコマンドにネタやギャグを仕込んであるため、飽きさせません。そもそもコマンドの中には「どつく」、「わらかす」といった大阪独得なものも含まれています。会話もすべて大阪弁。秘書の万田金子のノリも極めて良好です。



ボスのご隠居の元にたどり着くと、詳しい話は小番頭の雁之助から聞けとのこと。ちなみにボスに変なことをしようとすると容赦なくどつかれます。逆に褒めたら「わしは偉いんや」と自信満々。さすが大阪商工会議所のドンです。

雁之助の部屋には肝心の本人がいません。ラジコンの戦車とセトモノのたぬきがあるシュールな空間です。とりあえずはたぬきをどついてみましたが、特に変化はありません。一度、受付にもどり万田嬢に話を聞きます。「またどこぞでさぼってんのちがいますか?」と素っ気ない返事。とりあえず行ける所はどこでも探索しましょう。



トイレの個室を総当りで探すと、雁之助を発見。なぜかこっそりタコヤキを食べています。「エライとこ見つかってもうた」と雁之助。人探しで様々な場所を行ったり来たりするのは、昔のアドベンチャーゲームでは定番の筋書きです。気を取り直して雁之助の部屋で詳しい話を聞きましょう。

雁之助からはまずは味方の工作員と接触してくれと頼まれます。どうやら定吉だけが工作員ではなく、大阪商工会議所には多数の工作員がいるようです。工作員たちは皆、一芸に秀でた個性的な大阪人。穴掘りのプロや暗号解読のプロといったスパイらしい工作員から応援のプロや漫才のプロまで何の役に立つかわからない工作員が登場します。



外に出るといきなり御堂筋のビル街が広がります。確かに大阪っぽい風景ですが、昨今のゲームには見られないシュールな光景。まずはくいだおれ横丁に向かいました。くいだおれ横丁では通行人に話しかけたり、看板をどつきまわしたり、かなりの自由度があります。話しかけられた通行人も「なんや、おごってもらえますか?」と大阪人らしい反応。本筋とかかわりなく、大阪旅行の気分が味わえます。

食堂や将棋クラブを行ったり来たりしながら、ようやく工作員のマスヤンに接触できました。登場人物のリストを手に入れ、それぞれの工作員の名前や特技を閲覧できます。次の目的地は通天閣ですが、一度、本部に戻って報告する必要があります。この辺りから移動できる場所の選択肢がかなり多くなり、しっかりと話を追わないと正しいルートを見失ってしまいます。

◆アドベンチャーゲームにおける推理小説原作の系譜


――では、お話を聞きたいと思います。須田さんは発売当時に『定吉七番 秀吉の黄金』をプレイしたそうですが、クリアには至らなかったのですか?

須田:
クリアは出来てないんです。未だに心残り。通天閣で謎解きが何回かあるんですが、それを解けないまま、行き詰まってしまいました。当時はネットもなかったので。

――プレイしたきっかけは何ですか?原作はご存知なかったそうですが。

須田:
PCエンジンを持っていて、アドベンチャーゲームだったからです。当時、アドベンチャーゲームは全部プレイしたいくらい好きでした。

――本作はPCエンジンで初のアドベンチャーゲームのようですね。CD-ROM2が発売されてからは、グラフィックスが豪華なアドベンチャーゲームがたくさんリリースされました。ここにPCエンジンのタイトルリストがあります。

須田:
CD-ROM2は当時、高かったのでプレイしていないです。今になってタイトルリストを見るといろいろありますね。『鏡の国のレジェンド』ってのりピーのゲームですね。

――酒井法子ですか?『中山美穂のトキメキハイスクール』みたいな感じですかね。

須田:
あとは西村京太郎ミステリーのアドベンチャーゲームがありますね。山村美紗ミステリーもあります。

――当時、推理小説の原作ものは多かったようですね。アドベンチャーゲーム自体にも当然、推理小説の影響はあります。須田さんは『探偵 神宮寺三郎』シリーズ好きでしたよね?

須田:
大好きです。全部やってます。PCエンジンにはシャーロック・ホームズのアドベンチャーゲームもあったんですね。ビクターが出してます。BBCで放送していたTVシリーズの実写映像が入っているやつですね。

――ビクターは当時、洋ゲーのローカライズもやっていますね。推理小説といえば、赤川次郎原作の『夜想曲』シリーズもビクターから出ています。当時は推理小説の人気はとても高かったので、ゲーム化しやすかったのでしょう。『定吉七番』もそういった推理小説系のアドベンチャーゲームの系譜にあたると思います。

須田:
なるほど。

――ただ本作は物語や世界観がよりアニメ的というかゲーム的というか。萌え要素はないですが、今でいうライトノベルみたいな雰囲気です。



須田:
キャラもとても立っていますよね。

――だから多くの人は最初からゲームだと思っていたのかもしれません。

須田:
このキャラクターのイラストにしても、当時のアニメのテイストを感じます。当時も原作を知らずに普通に楽しみましたよ。ただ選択肢がとても多いので、途中で詰まってしましました。後半は移動できる場所もかなり増えますから。

――しかしながら、選択肢が多い分、会話が楽しいですよね。

須田:
それは本当にそう。ノリが大阪弁だから楽しめました。あと当時、アドベンチャーのゲームはコマンドの多さと情報量の多さを競っていましたね。

――基本的にはPCゲーム中心のジャンルなので、コマンドは打ち込んで入力していました。それをコマンド形式にすると、結構、選択肢は多くなります。ただ本作は以前扱った『ミシシッピー殺人事件』などと違い、ハズレの選択肢でも死んだりしないですよね。その分、気楽。

須田:
そうそう(笑)。死の概念がない。

――大阪人の優しさか、誰をどついても殺されない。

須田:
その辺はやさしいですよね(笑)。アドベンチャーゲームにも死にフラグはありますから。

◆大阪弁から生まれる世界観




――須田さんにとって大阪のイメージは何ですか?

須田:
大阪のイメージというか、僕にとっては「大阪=カプコン」ですよ。もう異世界というか、電車の中でみんな大阪弁ですからね。

――当たり前ですよ(笑)。

須田:
でも初めて全員が大阪弁で話しているのを聞くと、なかなかびっくりしましたよカルチャーショックです。もう異世界に来た感じです。僕の生まれは長野で、東京には近いのですが、大阪はまったく接点がありません。関わるのは社会人になった後。カプコンの三上真司さんとお会いしたときに初めて行きましたね。カプコンの皆さんは、会う人みんな押しが強い(笑)。

――三上さんとは最初いつお会いしたんですか?

須田:
killer7』を作り始めた頃なので、2002年ですね。最初は稲葉敦志さんに東京でお会いしました。稲葉さんは大阪弁を話さないから違和感なかったのですが、大阪でお会いしたらグイグイ押してきますよ(笑)。

――今日、『定吉七番』をプレイして面白かったのは、そういった地方性がテキストからガツンと現れてくることですね。

須田:
かなり来ますね。本当に大阪弁がフィーチャーされている。

――アドベンチャーゲームは今はボイスが当たり前かもしれませんが、ほとんどテキストがベース。最初始めるときも......

須田:
「おはつ」と「おなじみ」ですから(笑)。徹底していますよ。大阪色が。

――今でも低コストでリッチな世界観を作るのに有効なテクニックですね。

須田:
「笑わせる」ではなく「わらかす」ですからね。ちょっとした違いなんですが、ものすごく世界観が出ます。

――「どつく」というのも「なぐる」とは違いますからね。「なぐる」だと暴力的ですが、「どつく」だと冗談な感じがします。



須田:
そうそう。

――もっと日本のいろんな地域にフォーカスを当てたゲームがあっても良いかもしれません。方言を取り入れて。

須田:
大阪のあったかさを感じました。

――須田さんの故郷の方言はありますか?

須田:
ありますが、そこまでの特徴はないです。

――大阪弁ほどアクが強いのは、日本では東北と九州くらいですかね。

須田:
まあ大阪弁は市民権もありますね。お笑いの影響もある。

――逆に大阪人からみると『定吉七番』はどういう印象でしょうか。「こんな大阪弁はない」と思ったりするのでしょうか?

須田:
どうなんでしょうか。でも我々よりも厳しいでしょうね。後はネタとして場所がわかりやすいのが良かったです。道頓堀とか通天閣とかシンボリックな場所があります。そういった場所はアドベンチャー向きで何か仕掛けがありそうですよね。

――そうですね。アニメでは現実のロケ地を再現することが最近多いですが、ゲームはどうでしょうか。『龍が如く』みたいな例もありますが。須田さんはアドベンチャーでロケーションを意識しますか?

須田:
実際ある場所をベースに作ることはないですね。

――確かに須田さんのゲームは架空性が強いイメージです。

須田:
そうですね。極端な地域性はないんです。現代劇を作らないせいかもしれません。ミステリーやサスペンスだと現代劇の方が良いと思いますね。

――ただ本作のように純粋なミステリーだと結末のインパクトを強めるのが難しいですね。

須田:
アドベンチャーゲームでは堀井雄二さんが『ポートピア連続殺人事件』で大ネタをかましました。あれを超える大ネタって難しいですよね。プレイヤーはそういうのを求めていると思います。だが、なかなか出てこない。

◆当時のアドベンチャーゲームにSUDA51が夢見たもの




――アドベンチャーゲームは他にはどういったものが好きでした?

須田:
やはり『神宮寺』シリーズが好きでした。

――推理小説も好きでしたか?

須田:
推理小説ではないのですが赤川次郎は小学生の頃から読んでました。当時は新刊が出るとすぐに読む。グラスホッパーでも最初はアドベンチャーゲームの『シルバー事件』でした。

――やはり推理小説からの影響があったのですか?

須田:
それもありますが、角川映画の影響もありますね。僕らの世代は角川映画全盛期なんです。薬師丸ひろ子さんに原田知世さん。僕は原田知世さんのファンでした。角川映画の赤川次郎原作も多かった。

――確かにアドベンチャーゲームは映画に近いジャンルです。

須田:
物語もそうですが、グラフィックスもそうですね。リッチなグラフィックスが見られるゲームは当時、あまりありませんでした。そこでアドベンチャーゲームはグラフィックスも魅力だったんです。映画というと『AKIRA』のファミコン版もありましたね。

――ファミコン版のアドベンチャーゲームですか。

須田:
当時にしてはグラフィックスはかなり頑張っていました。内容は映画版を完璧になぞっています。むしろ映画見ないとクリアできない。映画見てると100%クリアできる(笑)。

――メディアミックスみたいな感じですね(笑)。

須田:
ビデオゲームはもともとストーリーはありませんでした。遊びの仕組みだけだったんです。そこに大胆にストーリーが導入されたのが当時のアドベンチャーゲームだったと思います。物語や世界観というものがビデオゲームに必要となった時代です。でも映画とはやはり違ったものなんですよ。小説とも違う。まったく新しいエンターテイメントで世界観や物語を伝えることができる。やはりアドベンチャーゲームのその部分に惹かれたのだと思います。

――新しい物語を感じさせる魅力が当時のアドベンチャーゲームにはあった?

須田:
一番直接的なのがアドベンチャーというジャンルだったと思うんです。他のメディアとは違って自分がそのままアクセスできるわけです。没入感は桁違い、世界に直接入り込める。

――当時はまだオープンワールドゲームなどはなかったですからね。物語を描くとなるとテキストと画像のアドベンチャーゲーム。



須田:
そうなります。今はあらゆるものが表現手段になっていますが、当時はそれが最先端。

――須田さんがアドベンチャーゲームを作るとき、ゲームプレイの部分で一番拘るところはありますか?

須田:
既存の仕組みやフォーマットを壊したいと思っています。例えば、コマンド選択といったものではなく、ゲーム世界に介入する方法を生み出したい。そうすればアドベンチャーゲームはもっと進化すると考えていました。本作の仕組みも今では古典的です。当時は便利でしたが、それはあくまでもレトロなものとしての評価です。現代の新しい入力方法では別のものができると思います。

――今だとキネクトを使ったアドベンチャーゲームとして『D4』 があります。

須田:
なるほど。あとは以前、RETRO51で取り上げた音声認識の『N.U.D.E.』。

――確かにあれも音声が物語への介入方法です。

須田:
あの技術も当時最先端だったんですよ。

――『N.U.D.E.』もプロデューサーはハドソン出身の広井王子さんですね。以前は『天外魔境』や『サクラ大戦』シリーズなども手がけています。広井王子さんもどちらかと言えば、ゲームというよりもメディアミックスの人。物語や世界観をかなり重視しているように思えます。

須田:
僕は『定吉七番』もなぜか広井王子さんの作品だと思っていたんですよ。雰囲気がやや『天外魔境』に似ているじゃないですか。

――確かにそうですね。『天外魔境』もPCエンジンの名作RPGですね。当時のRPGとしてはかなりの異色作です。

須田:
音楽も坂本龍一さんですからね。

――当時のPCエンジンは変わったRPGが多いです。『桃太郎伝説』、『ネクロマンサー』、『凄ノ王』に『天外魔境』。

須田:
PCエンジンは本当に異色の名作が多いですね。あのラインナップはとても惹かれます。今度はCD-ROM2のタイトルもやってみたいです!

記事提供元: Game*Spark
《Game*Spark》

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