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【オールゲームニッポン】日本なりの資本主義の形はあるか?(第16回)

毎週土曜日0時からお届けしている「安田善巳と平林久和のオールゲームニッポン」。第16回目は、前回に引き続き産業振興の話題からスタート。後半は日本なりの資本主義の形があるのではないかと展開していきます。それではどうぞ!

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平林
 
前回の「産業を興す」という話からの連想ですが、この数年間、注目するようになったのがインフラ系の産業なんです。

土本
 
インフラですか?

平林
 
はい。私の世代はテレビ、AV機器、コンピュータとともに成長したようなものです。ゲーム機のハード戦争も至近距離で見てきました。そんなこんなで頭の中が家電っぽくなっているんですね。簡単に言ってしまうと、ウォークマン、ファミコン、アイフォンをすごいと思うマインドが、知らず知らずのうちに育っているんです。けれども、そういう小さなモノ……最近の言葉でいうとガジェットではなくて、もっと大きなモノ……インフラ的なものにこそ技術革新は起きそうですし、また日本の強みを感じるんですね。

安田
 
なるほど。

平林
 
大きいモノ。言いかえると汎用部品の組み合わせではない、部品点数が多いモノですね。上下水道のための設備、鉄道などの輸送とか。あと、最近話題になった宇宙発電ってすごくないですか? 人工衛星を飛ばして、宇宙で太陽光発電をして、それをマイクロ波で地球に飛ばして発電します。JAXAと三菱重工が3月に実験を成功させたそうですけれども、このニュースはじつに夢のある話だと思いました。


JAXAと三菱重工が実証実験を成功させた宇宙太陽光発電システムの無線送電技術

安田
 
そういうインフラを強いものにしていく、新興国に輸出する道は発展してほしいですよね。僕のイメージでは、インフラとは別の方向で、ゲームと関連する分野でも有望だなと思うことがあるんですよ。

平林
 
ゲームに近い? 何でしょう?

安田
 
AI(人工知能)の今後はおもしろいと思うんです。情報を処理するコンピュータから、思考するコンピュータへ。こうした流れは確実にやってくるじゃないですか。これは新しい産業になってもおかしくないですし、今まであるすべての産業にインパクトがあるんじゃないでしょうか。

平林
 
将棋電王戦をよく見てきたので実感します。AIの進歩は目覚ましいですね。最近のAIは記事も書けるそうです。たとえばスポーツ記事。点数、活躍した選手をコンピュータが自動で抽出して文章をつくるのだとか。


AIによる記事生成に取り組んでいる一社「Automated Insight

安田
 
ところで、産業を興すというのは、人が目をつけていない分野を探すという方法はもちろんありますけれども、もっとスケールを大きく考えてみませんか? 日本が新しい資本主義のモデルをつくってしまう。こんなことができたら……ワクワクしませんか?

平林
 
それは、もちろんですよ。

安田
 
環境破壊とか、貧富の差とか、ですね。今、資本主義は世界に広がっていますが、問題点があるのは明らかですよね。こうした問題をゆるやかに解決して、資本主義が次のステップに進むためには「公益資本主義が世界に広がるべきだ」という考えがあって、僕はこの考え方に注目しているんです。

平林
 
公益資本主義?

安田
 
ベンチャーキャピタリストの原丈人(はらじょうじ)さんが「増補 21世紀の国富論」という著書で提唱しました。

平林
 
それはどんな考えですか?

安田
 
儲けるだけが企業の目的ではない。企業は利益を求める欲望経済を利用しながらも、社会にとって有用な存在を目指す、という考え方です。具体的に言いますと、最近は「会社は株主のモノ」という風潮が強くなってきていますよね。これはアメリカ流の経営学の影響で弊害もあるわけです。たとえば、株主の利益を確保すれば良い会社と判断されて、経営者は数十億円の年収を得ることができる。その利益は、従業員をリストラした結果で得た利益でも認められてしまうこともあるわけです。


平林
 
いますよね、アメリカでは。巨額な報酬を得ている経営者が。

安田
 
良い会社というのは株主のためだけではなくて、公のためになること。そんなことを目指しているため、公益資本主義と呼ばれるようになりました。自分だけ儲けることを潔しとしない。公益を重んじるという考え方はとても日本的です。たとえば、近江商人の言い伝えで「三方良し」(さんぽうよし)ってありますよね。

平林
 
「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の三つを心がけるという教えですよね。

安田
 
それです。売り手の企業ばかりが儲かってはダメで、売り手と世間の「良し」をもたらすのが良い商売のあり方です。福沢諭吉の言葉ですが「社中協力」というのもあります。組織の仲間を社中といい、互いに対立しないで協力せよ、という意味ですね。株主が儲かれば従業員は貧しくてもいい。こういう歪みがあってはいけないという教えですね。「三方良し」に「社中協力」。こんなの当たり前じゃないか……と思うかもしれませんが、じつはこれはとても日本人な感覚で、欧米的な価値観ではなかなか理解できない。仮に理解されたとしても、組織全体に広がりにくいと思うんです。

平林
 
「産業を興す」がさらに大きくなって、資本主義の次のモデルを日本から広げるということですね。このテーマは確かに考えるだけワクワクします。かつて、日本型経営というと終身雇用、年功序列といった細かな制度の話が多かったように思います。そういった制度ではなくて、本来、日本人が持っている心。今日は「三方良し」と「社中協力」の話になりましたが、大きくくくってしまうと和の精神ですよね。今の資本主義の問題点を、和の精神で検証してみると浮かび上がってくるのが公益資本主義なのかな? 私なりにそんな解釈をしてみました。


(つづく)

写真提供: Getty Images

■パーソナリティの紹介


安田善巳 (やすだ よしみ)
角川ゲームス代表取締役社長、フロム・ソフトウェア代表取締役会長。日本興業銀行、テクモを経て、2009年に角川ゲームスの設立に参画。経営者でありながら、現役のゲームプロデューサーとして『ロリポップチェーンソー』『デモンゲイズ』などを手掛け、現在は『Projectcode -堕 天-』『Projectcode -月 読-』の開発に取り組む。



平林久和(ひらばやし ひさかず)
インターラクト代表取締役社長。ゲーム黎明期の頃から専門誌編集者として従事。日本で唯一のゲームアナリストとしてゲーム評論、ゲーム産業分析、商品企画などの多方面で活躍してきた。著書に『ゲームの時事問題』『ゲームの大學』(共著)など。「今のゲームを知るためには、まず日本を知ることから」が最近の持論。
《土本学》

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