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大きな転機を迎えているゲーム業界で、今知っておくべきポイントとは――『逆転裁判5』クリエイターが語るゲーム作りの裏側(1)

ヒューマンアカデミー、カプコン、イードは、東京・赤坂ツインタワーにてゲームクリエイターセミナー「『逆転裁判5』クリエイターが語るゲーム作りの裏側」を開催しました。

任天堂 その他
ジャーナリスト・新清士氏
  • ジャーナリスト・新清士氏
  • インサイド編集長・土本学氏
  • 「『逆転裁判5』クリエイターが語るゲーム作りの裏側」
  • 「変わるゲーム産業の現在と未来、知っておくべき大切なこと」
  • ゲームクリエイターは、ゲームユーザーの人口とハードの性能に影響を受ける
  • 日本では、10~20代の男性がゲームをよく遊んでいる
  • 今後、10~20代の人口は確実に減少
  • スマートフォンの登場により、ゲームに触れなかった世代も遊ぶように
ヒューマンアカデミー、カプコン、イードは、東京・赤坂ツインタワーにてゲームクリエイターセミナー「『逆転裁判5』クリエイターが語るゲーム作りの裏側」を開催しました。

会場にはゲーム作りに興味のある若者から社会人までおよそ300人が集合。なかには北海道や大阪から駆けつけた参加者もおり、熱心に耳を傾けている様子が伺えました。


■今後、ゲームの人口は世界規模で増加傾向に
まずはジャーナリストセッションとして、国際ゲーム開発者協会 日本 名誉理事 新清士氏による「変わるゲーム産業の現在と未来、知っておくべき大切なこと」がスタート。同氏はまず「ゲーム業界に入ったとして、10年後は何をしているか想像してみてください」と問いかけます。ゲーム業界はとても変化が早いため、どんなハードが登場しているのか、ユーザーは何を求めるのか、10年で何が起きるかはほとんど想像できません。

それでも、確実に予想できる変化もあります。1つはゲームを遊んでいる人口であり、もう1つはユーザーが所持しているハードです。ファミコンが登場してから30年、その間にハードの性能は飛躍的に向上しました。ゲームクリエイターは、これらの要因に必ず振り回されることとなります。

日本で家庭用ゲーム機をよく遊んでいるのは10代~20代、ゲームの購入者は20代~30代が最も多く、そのほとんどは男性です。しかし2010年の人口調査結果によれば、日本国内における10代以下の人口は極端に減少。このように、家庭用ゲーム機をよく遊ぶ年代は減る一方です。とはいえスマートフォンの普及により、ゲームを遊ぶ人口そのものは数十万、数百万という規模で爆発的に増加。これまで家庭用ゲーム機を触らなかった30代~40代、とくに主婦層などがゲーム人口に入ってきたため、求められるゲームも大きく変化しました。このように、ゲーム=家庭用ゲーム機という時代が終わりを向かえ、大きな転機に入ろうとしています。

世界のゲーム人口をみると、家庭用ゲーム機は数万円と高価なため、主に日米欧が1:2.5:2という割合で展開してきました。しかしスマートフォンの登場と普及により、これまで高価な家庭用ゲーム機を買えなかった地域にもゲームが広まりだしたのです。東南アジアをはじめ、世界でみるとゲームを遊ぶ若年層の割合は非常に多いため、ゲーム人口がますます増えていくのは間違いありません。


■コンピュータの性能は、今後も飛躍的に向上していく
1962年の最新型コンピュータは1台で10億ともいわれました。ビデオカードという概念が生まれた1999年の超ハイエンドPCは、2009年に登場したiPhone 3GSとほぼ同等の性能です。かつて数十億、数百万円だったものが数万円で手に入るほどのハイペースで性能は跳ね上がりました。「ムーアの法則」でいわれるように、大雑把にいえば約2年でコンピュータの性能は2倍になり、スマートフォンでは毎年のように性能がアップし続けています。例えば2011年のiPhone 4sはPlayStation Vitaと同等、iPhone 5sではついにPlayStation 3と変わらない性能になりました。もう現時点ですら、そこそこのゲームを遊ぶならiPhone 4sでも十分といえるでしょう。

スーパーコンピュータは、10年で10万円台のパソコンと同じ性能になっています。今、一般的に普及しているスマートフォンは過去に1機数億円するようなスーパーコンピュータと同程度のもので、2012年に完成したスーパーコンピュータ「京」は、2022年には10万円台で手に入るパソコンとそう変わりません。さらに5~6年もすればスマートフォンに搭載されます。このように、ユーザーのもつコンピュータ環境はどんどん性能が上がっていきます。

こうした環境がゲームに登場した例として、ソニーが来年にアメリカでサービス開始を決定しているクラウドコンピューティング「Gaikai」があります。これはコンピュータのサーバをどこかに設置し、データを転送するというデバイスです。これにより、ディスクなし、ダウンロードもせずストリーミングでコントロールできるゲームを楽しめるようになります。コンピュータの性能が上がったことで、こうした未来があと1~2年で訪れるようになりました。

もう1つ、過剰ともいえる性能を備えたスマートフォンの次として考えられているのが「Google Glass」「Oculus Rift」など、ウェアラブルコンピュータという概念です。すでに海外ではこうした機器向けのゲーム制作に動き出しており、これまで平たいモニター上でしかなかったゲームに奥行きが生まれました。新しいハードウェアデバイスが登場すると、必ずコンピュータゲームの世界は大きく変わります。最新テクノロジーが誕生すると、それを活用してゲームを遊ぶようになるからです。


■世界と渡り合える、日本としての強みとは?
新しいデバイスが生まれると、まだ見つかっていない、隠れたサービスやゲームの発想が必ず存在します。ここに新しい人たちの知識や考え方、ゲームデザインの方法が必要で、ゲーム業界ではこうした若い感性を伸ばせる可能性があります。

日本には、世界と渡り合える2つの強みがあります。1つは、オリジナルキャラクターを作れること。世界中を見てもオリジナルキャラクターを作って育てられる国はそう多くありません。もう1つは、日本人はオリジナルのアイデアを広げていくのが得意です。「アイデアベースのゲームデザイン」などと呼ばれますが、これは日本人特有の考え方です。何か1つのアイデアを考え、新しいゲームへ落とし込んでいく。もともとあるアイデアを、よりブラッシュアップさせて広げられるんです。ゲームをたくさん遊んで、突き詰めていければ「新しい何か」を生み出す力になります。


■ゲームのブームは誰にも予想できない
ゲームのブームはどんどん変化します。2007年は任天堂の「Wii」や、全世界で1億6000万台売れた「ニンテンドーDS」が圧倒的でしたが、2009年ごろにはDeNAのモバゲー、グリーが急成長を遂げます。しかし2012年には無料のメール・通話アプリ「LINE」が爆発的に普及する一方、ガンホー・オンライン・エンターテイメントの『パズル&ドラゴンズ』がブレイクしました。こんな流れは誰にも分かりません。同社の森下一喜社長は「ヒットしたのは運」といい、任天堂の前社長である山内溥氏も「運が良かった」とコメントしています。

ゲームをヒットさせるため、当然良いものを作るべく全力を尽くします。その最後の紙一重を分けるのは「その時代に合うかどうか」ということ。時代によって求められるものが変わるため、それに合わせたモノづくりが重要となるのです。

また新氏は、スマートフォンの急成長は目を見張るものがあるため、スマートフォンで成長している会社、力を入れている会社を選ぶべきだとアドバイス。例えば、PlayStation 4は新型ハードの発売としては好調ともいえる500万台の販売を予測しています。しかし開発費は20~30億ともいわれており、一方スマートフォンは開発費は5000万~1億ながら2013年だけで8億4000万台を販売。2016年までに40億台以上のスマートフォンが世界で販売されると予測されています。そのうち10%がゲームを遊んでも4億人ですから、スマートフォン向けにゲームを作れない会社は生き残れなくなるでしょう。すでに家庭用ゲームと水準が変わらないタイトルも登場しており、ユーザーに納得してもらえるようなゲーム作りが重要です。

課金体系も変化を迎えており、アイテム課金からゲームセンターと同じようなコンティニュー課金も増えてきました。壮大なストーリー展開も可能としていますし、1つのゲームをどれだけ長期間遊んでもらえるかが勝負といえそうです。


■ゲーム作りの環境が整った今、誰にでも大きな「可能性」がある
2000年代初頭では、個人がゲーム作りの環境を整えるには大きな制限と膨大な費用が必要となりました。しかし、今では米Unity Technologiesが提供しているゲームエンジン「Unity」を無料で利用できるため、自分なりにこだわった「作りたいものを作れる」環境が実現しています。大ヒットしたゲームの中には2~3人で作ったものもありますから、色々な方法や表現形態があり、自由な可能性を秘めているのがゲーム業界です。

最後に新氏は、まとめとして「ゲーム業界は今後もっと変わっていきますし、求められるスキルは変わりますから、自分が“変わっていける力”を持つことが必要です。そしてゲーム業界は、皆さんのような若い人を期待しています。なぜなら、若い時こそ新しいアイデアのつまった無茶なゲームが作れるからです。ユーザーは若い皆さんの素晴らしい発想による、新しいゲームを求めています」と締めくくりました。
《近藤智子》
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