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【CEDEC 2013】『ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア』とMMORPGならではサウンド効果

CEDEC2013にて、株式会社スクウェア・エニックスの祖堅正慶氏と土田善紀氏は『ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア』におけるサウンドデザインについての報告を行いました。

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CEDEC2013にて、株式会社スクウェア・エニックスの祖堅正慶氏と土田善紀氏は『ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア』におけるサウンドデザインについての報告を行いました。

今回の報告では、MMORPGならではの問題に対処するためのサウンドデザインについて祖堅氏が報告を行い、それらを実現するためのプログラミング処理についての解説を土田氏が行いました。

まずMMORPG特有の条件として、「同時接続ユーザー数が不明」、「事前にメモリ使用量が想定できない」といった点が指摘されました。これらをあらかじめ準備してサウンドを発生させるのは、当然、無理があるため、「切り捨て御免サウンドシステム」と呼ばれる方式が採用されました。

このシステムは基本的にほとんどの再生音をキャッシュでストックする方式です。もちろん、メモリに空きが無い場合は再生音が鳴らない、初回の発音はBlu-rayから読み込むため遅延が発生するといった制約があります。しかしながら、UIに関わる必須音や頻発して発生する音は常駐させ、メモリに余裕があるときはキャッシュを残して置くといった措置で、多くのユーザーが接続しても自然なサウンドを実現しました。

このシステムを採用するためのサウンドメモリの構成は、全体の17.0MBの中に9.7MBのキャッシュエリアを用意。その他、UIや常駐するエフェクトに1.8MB、楽曲などのストリーミングに2.0MBの容量を割り当てられました。

次にフィールド上の人数に応じた「ガヤ音」の効果のために採用された「アトモスギアシステム」が紹介されました。このシステムは「アトモス(大気)」と「ギア(変速)」という言葉に由来する造語であり、20人、40人、60人といった段階ごとに雑踏音を制御するのが目的です。

この点でも同時接続人数が事前に想定不可能であるため、人数の動的変化に反応できるシステムを作る必要に迫られました。基本的にはCEDEC 2011の講演で報告されたDynamixというシステム同じものであり、2chのトラックを3つ用意することで、キャラクター数に応じて動的にクロスフェードを行うというもの。さらに市街地用ガヤからフィールド用ガヤなど複数のパターンを用意することによって、状況に応じて最適な環境音を発声させます。

実際にゲームに実装された開発版の動画も紹介され、キャラクター位置から半径数メーターに存在する人数に応じて、ガヤが変化する様子がデモンストレーションされました。セーブポイントなど、比較的に人が集まりやすい場所に近づくと雑踏音が鳴り始めます。

次に新たに採用された空間音響システムについて土田氏が解説しました。まず音の遮蔽に対するシームレス対応について解説されました。「シームレス対応」とは、広大なマップを切り替えることなく、連続させる処理です。『ファイナルファンタジーXIV』のマップはシームレスではありませんが、メモリ容量に限りがあるため、同じマップ内でも音源や遮蔽のデータは逐次読み込みとメモリの解放を行います。

音源の場合のシームレス処理は、音の可聴範囲よりも大きな半径にデータの読み込みと解放のマージンを設定します。遮蔽処理も基本的には遮蔽となるオブジェクトから読み込みと解放のマージンを設定することで対応しますが、単純に設定すると極端に音が聞こえたり、消えたりする場所が生まれてしまいます。そこで遮蔽のシームレス処理には、遮蔽ポリゴンのすべての頂点の最小境界球を求め、そこからマージンの距離を設定しました。実際には、当たり判定などに用いられるAABB(軸平行境界ボックス)の中心点と半径の球で代用しています。

次に切り替えポイントでのフェード処理について説明されました。「切り替えポイント」とは、ここでは建物から屋外といった空間音響が変化する地点のことです。通常の方式では、キャラクターの位置に応じた時間や場所に合わせたフェードが行われますが、それぞれ問題点があります。時間に合わせたフェード処理では、切り替えポイントに入った後、5秒間でフェードするといった単純な処理で済ませることができますが、ダッシュや急な立ち止まりなどに対応できません。他方、場所ごとのフェード処理は地面に逐一フェード値を設定するといった手間が発生します。

より自然で簡単な切り替えポイントのフェード処理を実現するために、用いたのが線音源のフェード計算の応用です。「線音源」とは、線上に同じ音量の点が並んでいる音源のことですが、その音量の値をフェード値として利用するのが、この手法の特徴です。空間が持っている音響の効果値を屋外、部屋、洞窟といった場所ごとに設定した後、それらの境界に線音源を設置することで適度なフェード値を発生させることが可能になったそうです。

結果として、無断階の空間効果のフェードが実現しました。これらはキャラクターの立ち位置に依存するため、時間型のフェード処理のような不自然もなく、さらに空間の入り口の線に半径を設定するだけで設定できるという簡便さを兼ね備えています。

最後に扇展開角の収束について説明されました。これは停泊している船といった自由に出入りできる物体に応じた環境音を演出するシステムです。船の場合、中に入ると波の音が全方位から4chのサラウンドで、遠ざかると2chのステレオに、さらに遠ざかると指向性を持ったモノラルに変化するといった演出を実現します。

これらの演出を1つの音素材、かつ距離に応じて自動で実現するために、扇展開角の収束というシステムが応用されました。発想は比較的わかりやすく、ゲーム内に置かれた4chのサラウンドシステムが音源から離れることで、円状に収束していくもの。4chの音源がちょうど扇子が閉じるように収束していくことで、この演出が実現されます。

最後に祖堅氏からサウンドによる演出効果について紹介されました。まず、クエストの導線と曲の配置に注目して、クエストを進めていくことで1つの楽曲が完成していくようにBGMを配置したそうです。さらに過去のファイナルファンタジーの楽曲を様々な部分に散りばめました。ただ音源を変化させるだけではなく、フルレングスでのアレンジから部分的なフレーズだけを利用したものもあるそうです。

また『ファイナルファンタジーXIV』には様々な国家が登場しますが、それら各国のテーマとなるフレーズを用意しました。それらのフレーズを街、フィールド、バトルといった部分に派生させていくことで、各国の固有性を楽曲の面でも表現しています。さらに長時間プレイするMMORPGという特性から、天候や特定の条件によってもBGMを変化させる演出を行っています。昼夜とで音楽が変わるといった基本的なものから、初めてのダンジョンは戦闘が挿入されても同じ楽曲がフルレングスで流れるといった演出ですが、詳細はネタバレになるため、紹介されませんでした。

特にMMORPGのプレイスタイルにあったメリハリのあるサウンド効果を狙い、フィールド上ではループ曲をほとんど廃して、効果音や環境音を音の主役として用いる一方、ミッションなどのゲーム的なコンテンツではループ楽曲を採用したそうです。

講演の最後に『新生エオルゼア』として再ローンチされることとなった『ファイナルファンタジーXIV』の開発の苦労話が紹介されました。一度、市場に出たものを作り直すのは非常に大変であったそうですが、開発中からもユーザーから応援されるという貴重な体験をしたそうです。「AAAタイトルを半年で2つ作った気分」と、祖堅氏は述べており、多くの素材の作り直しも行ったそうです。
《今井晋》

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