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【CEDEC2013】裏側にはゴジラ音楽の理論? 緊急地震速報のアラート制作者が語る

「CEDEC2013」の2日目に行われたセッション「機能的サウンドデザイン~緊急地震速報のアラートはこうして作られた~」では、東京大学の伊福部達氏が緊急地震速報のアラートの制作過程や、動物のサウンドデザインを応用した音声機器などについて講演をしました。

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「CEDEC2013」の2日目に行われたセッション「機能的サウンドデザイン~緊急地震速報のアラートはこうして作られた~」では、東京大学の伊福部達氏が緊急地震速報のアラートの制作過程や、動物のサウンドデザインを応用した音声機器などについて講演をしました。

■緊張感を高め、不安を与えないアラートサウンドの原点はゴジラ音楽に
伊福部氏がNHKから.緊急地震速報のチャイム制作の依頼を受けた時、まず「危険を知らせる」「不安感を与えない」「難聴者にも聞こえる」などといったコンセプトをベースに音楽を提案しました。その際、有名な映画「ゴジラ」の音楽を手掛けていた伊福部昭氏の理論を適用。それによれば、映像音楽の機能には4つ原則の原則があります。

1.状況の設定(時代・場所など)
2.エンファシス(感情表現の増強)
ヒッチコック監督の映画「サイコ」の中のシャワーシーンで鳴っているトリル音が良い例で、恐怖感や不安感を増強しています。
3.シークエンスの明確化(場面の連続と予測)
例えば映画「ゴジラ(1956)」の地鳴り音や「ゴジラがやってくる」のサウンドは、街が破壊される場面を反射的に予測させています。
4.フォトジェニー(映像と音楽の融合表現)

これらの理論を踏まえ、実際のチャイム制作には、交響曲「シンフォニア・タプカーラ」の3楽章冒頭の和音とトリルが利用されています。和音がインパクトを出し、トリルで適度な緊張感を保つという構造で、伊福部氏は「和音=地震発生」「トリル的繰り返し=津波」というイメージを持っていました。はじめはこれを機械的な音に変換したり、速くしたり、電子音に変えてトリルを加えたりしていましたが、どうしても音楽的要素が残ってしまったり緊張感が出せなかったりと、迷走もしたそうです。

そこでチャイムらしい音を作り出すためになされた工夫がレのシャープとアルペジオ。レのシャープは「テンション・ノート」と呼ばれ、最も緊張感を喚起する音と言われています。それを混ぜたアルペジオを、電子音やピアノ音にし、さらにアルペジオの形・音の配置・トリルの有無・速さなどで違いをつけて7種類の試作ができました。

子どもと成人、健聴者と難聴者を含む被験者による聞き取り評価実験で、「騒音の中でも聴こえるか」、「耳の不自由な人にも聴こえるか」、「緊張感はあるか」、「不安感はあるか」といったジャッジを行った結果、トリルを重ねないタイプの上昇型アルペジオで、2回あるアルペジオの1回目と2回目の頭の音が違うパターンが、緊張感が高くかつ不安感を与えないものとして採用されました。

チャイムはNHKによる試用を経て、現在でも実用されています。



■動物の発声と腹話術からできた感覚支援型機器
動物の発声やそのメカニズムは、人間の感覚とも密接に通ずるところがあります。例えば恐怖時の「キャー」は注意を喚起する猿の呼び声と類似したものであり、興奮時の「キャー」は餌が欲しい時に猿が発するものと同一であるそうです。また、「ウオー」などの声は20mほどしか届かないのに対し、「キャー」だと50mほど聴こえるという点も、本能的な危機管理と発声機能の結びつきを示唆しています。

伊福部氏が動物から着想して開発した機器は、九官鳥を真似た「人工喉頭」と、コウモリの超音波メカニズムを応用した「超音波メガネ」。ウェアラブル人工喉頭はヘッドフォンのような形で、あご下周辺に当てることで人工喉頭から発生した音源が口腔内と鼻腔内で共鳴し、舌や口の形を変えさせて発声できるようになる装置です。「超音波メガネ」は、超音波の反響で障害物の気配を察するメカニズムを利用しており、物体の接近でメガネと一体化したイヤホンから聴こえる音が大きくなったり、物体の位置と連動して音も左右に動いたりといった仕組みです。

腹話術から発展したスマホアプリ「ゆびで話そう」は、舌の動きを指先で代替させることで言語音が出るものです。伊福部氏が腹話術の一刻堂さんから聞いたところによると、腹話術では唇を使わず、舌の動きだけですべての子音を発音しているとのこと。その動きをタッチパネル上のパターンで再現したものが「ゆびで話そう」であり、画面のローマ字をなぞると機械音声で任意の音が出、スマホ本体を前後に傾けることで声の高さを変えることもできます。元々は話すことのできない人向けの支援機器として開発された「ゆびで話そう」ですが、そういった特質から楽器としても使われることがあるそうです。

アラートの制作や支援型機器の開発は、元々福祉分野の面から行われたことですが、本来の意図プラスアルファの利用がされていることなどから、コンピューター・エンタテインメントへの応用可能性を推奨する形で講演は締めくくられました。
《井口 宏菜》
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