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【ジャパンエキスポ2013】「フランスで日本文化が人気!」は本当か?実際に街に出て調べてみた

現在、日本の様々な書籍やメディア、Webサイトが「フランスで日本文化が人気!」と伝えています。

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現在、日本の様々な書籍やメディア、Webサイトが「フランスで日本文化が人気!」と伝えています。確かに今年のJapan Expoも20万人以上の動員を記録し連日凄まじい熱気でした。しかしそれは「日本」に特化したイベントだからこそで、もともと日本が好きな人々が集まっているのだから当たり前と言えば当たり前です。それでも20万人以上が集まること自体が凄いのですが。それでは、ごく一般的なフランス人はどうなのでしょうか?もし本当にフランスで日本文化が人気なら、意識せず街角を歩いていても何らかの「日本のもの」に出会うはずです。人々の生活に溶け込んでいなければ本当に人気とは言えませんからね。そこで、Japan Expoを取材した後に投宿していたホテル周辺のナシオン地区及びバスティーユ地区を歩き回って実際に調べてみました。

■ハローキティはだいたいどこにでもいる
ちょうど宿泊していた時期にホテル周辺で朝市というか蚤の市的なマーケットが開催されていたのですが、マーケットの出展者がバルーンを売っていたり、カー用品を使っていたり、他にもスーパーやカフェのアイスの冷凍ショーケースにアイスが陳列されていたり、民家の窓にステッカーが貼られていたりと、ハローキティは普通にあちこちで見られました。既にサンリオキャラは日本云々に関係なく受け入れられているのでしょう。

ホテルの3件隣にあったスーパーに入ると、レジ横の激安DVD&Blu-rayコーナーに映画や現地のアニメに混じって「ドラゴンボール」シリーズのDVDが並んでいました。価格は1枚3.99ユーロ(約517円)で確かに激安です。廉価版DVDが一般的なスーパーで売られているところからもフランスでの「ドラゴンボール」シリーズの人気ぶりと定着ぶりが伺えます。

さらに残念ながら閉店後で実物を見ることはできませんでしたが、ホテルと同じ通りにあった書店のショウケースには明らかに日本のアニメやコミックに影響を受けたと思しき絵柄のコミック「Les Legendaires」が飾られていました。これはPatrick Sobralさんが2004年より執筆している少年マンガだそうで、アニメ化もされているほど大人気なのだとか。

…と、ちょっとホテル周辺を歩いてみただけでも様々な日本のものを見ることができました。これらに加え近所には日本人以外のアジア人が経営する寿司屋もたくさんあるので、これなら確かに「フランスで日本文化が人気!」と言われても納得かもしれません。

■バスティーユは新たな日本街と化していた
次に、ナシオン地区から徒歩で30分ほど先にあるバスティーユ地区に行ってみました。ここはかつてバスティーユ牢獄があった場所で、1789年のフランス革命の発端となるバスティーユ襲撃事件が発生した歴史的にも重要な場所なのですが、現在のバスティーユは新たな日本街になりつつありました。

これは桜井孝昌さんの著書「世界カワイイ革命」にも書かれているのですが、パリに日本のロリータファッションの風を吹き込んだのがロリータブランド「BABY,THE STARS SHINE BRIGHT」のパリ・バスティーユ支店と言われています。「BABY,THE STARS SHINE BRIGHT」は1998年に立ち上げられた日本の代表的なロリータブランドの一つで、映画「下妻物語」の衣装に起用されたことでも話題になりました。2007年2月に初の海外店舗としてパリ支店をオープンし、当時企画した40名限定のお茶会のチケットは僅か15分で完売したとのこと。それくらいオープン当初からフランスの人々に人気で、実際に訪問した時も多くの現地のロリータさん達が熱心に商品を選んでいました。また偶然店内に置いてあるフライヤーで知ったのですが、現在ではフランス人自らの手でゴシック&ロリータ(ゴスロリ)のイベントも開催されているそうです。これはゴスロリに特化した2日連続のファッションイベントだそうで、事前に知っていたらこの取材のために滞在を伸ばしたのに!と実に惜しい気持ちになりました。

■かつての家具職人通りが「オタク通り」に
この「BABY,THE STARS SHINE BRIGHT」の周辺にも日本のマンガのフランス語翻訳版を多く取り扱う書店があったり、玩具・フィギュアショップがあったりとバスティーユ地区はかなりポップカルチャー寄りの街のようでした。さらにそれらの店舗の合間を縫うようにアジア人寿司屋がひしめいており、まさに”第二の日本街”といった様相です。それも古くからあるオペラ地区の日本街とは違い、”現地の人が欲する日本のものがある”日本街です。

そんなバスティーユ地区の中でも特に”濃い”場所が、現地の人からも「オタク通り」「マンガ通り」と言われている(らしい)「ケレー通り」(rue Keller)です。ここは以前は家具職人が軒を連ねる通りだったらしいのですが、現在は家具なんて影も形もありません。その代わりあるのは、マンガ、DVD、アニメグッズ、フィギュア、コスプレグッズとオタク系アイテムがほぼ全て揃う”日本オタクショップ”達です。どのお店も「うちはマンガだけ!」「うちはグッズだけ!」という感じではなく、少しずついろいろなものを売っているようでした。しかしその内容は玉石混淆で、日本の正規品もあれば中国製の偽物もありという感じでした。これらのお店の客層ですが、もちろん「見るからにオタク」「見るからに日本好き」という人もいるにはいるのですが、オシャレな若者や中高年、親子連れなど様々な人が出入りしており、大人買いをするでもなくごく自然に買い物を楽しんでいる様子でした。

その一方、やはり正規品以上に大量の偽物が売られているのが目に付きます。中には「こんなキャラ日本で見たことねーよ!」という”日本っぽい”オリジナルキャラクターが中国の漢字と韓国のハングルがごっちゃになったロゴと共にプリントされた謎のグッズも売られていたりと、昨今の日本ブームに便乗した悪質なグッズ業者もいるようです。また「日本のアーティストコーナー」にK-POPアイドルのグッズが並んでいることも多々あり、かなりカオスなことになっています。

加えて興味深いのは、日本グッズを扱う多くの店がフィンランドのRovio Entertainmentの人気ゲームアプリ「Angry Birds」のグッズを売っていることです。しかもそれすら偽物!中国人がAngry Birdsの偽物グッズを作ってフランスの日本オタクショップに売るなんて、もうフィンランドとRovioにとって良いことは何一つありません。そろそろRovioは対策を考えた方がいいと思います。

なお、最近のケレー通り周辺には上記のようなオタクショップだけでなく、パンクやメタル、ゴシックのお店やアメコミグッズのお店なども増えており、オタクに留まらない個性的な界隈になりつつあるようです。同じくケレー通りに居を構えるロリータブランド「Angelic Pretty」のパリ支店は、先の「BABY,THE STARS SHINE BRIGHT」と同様に多くの現地のロリータさんで賑わっていました。こちらは2010年にパリに進出して以来、お茶会などのイベントも複数開催し現地のロリータコミュニティの形成にも尽力しています。

…と、このように「日本だらけ」に見えるバスティーユですが、他にも面白そうな雑貨屋さんやこじんまりとしたギャラリー、お手頃価格なカフェ、一休みに丁度良い公園などがたくさんあり、普通に観光でそぞろ歩きしても十分に楽しめる場所でした。例えるなら原宿と秋葉原と中野ブロードウェイを足して吉祥寺で踏んづけたような街です。

■ブックオフが完全に地域にとけ込んでいた件
そしてバスティーユからナシオンへ戻る途中、なんとブックオフのバスティーユ支店に遭遇!日本街のオペラ地区に進出していることは知っていましたが、まさかバスティーユにも進出していたとは驚きです。店内の様子は日本とほとんど同じで、店の手前には日本の「100円コーナー」に相当する「1ユーロコーナー」があり、店員さんの仕事ぶりも日本と一緒です。買い取りカウンターには古本を売りにきた人もいます。店自体は日本と同じなのに置いてあるものがフランスのものばかりなので妙な違和感がありますが、それはそれで面白い”味”を醸し出していました。また立ち読みしている人もかなりおり、完全に地域にとけ込んでいる様子が伺えます。レジ横の一等地にはドーンとマンガのフランス語版の専用コーナーが設置されており、こうして中古市場も形成されているところを見ると、本当にマンガがフランスに定着していることが分かります。ある程度の量の中古が出回るということは、それだけ新品で買った人がいるということですからね。ちなみにフランスのマンガ「バンド・デシネ」よりも日本のマンガの方が前方の良い場所に陳列されているというのが皮肉でした。そしてバンド・デシネよりもマンガの方が品揃えが豊富…。

こうしてほんの数日ホテルから徒歩圏内を巡っただけでこれだけの日本に関連したものやお店に出会えたということは、確かに「フランスで日本文化が人気!」は本当だったと言えるでしょう。もちろんまだメインストリームになっているとは言えず、パリ市民がみんな日本オタクというわけではありませんが、この盛り上がりはまだまだ続くのではないか?という勢いを感じました。

今後の課題としては、日本人自身が「本物の日本」を適切且つ素早くフランスの人々に届けることが必要だと思いました。寿司屋にせよアニメグッズにせよ、現状では日本人以外のアジア人が偽物の「日本のもの」をフランスで既に展開してしまっています。残念ながら、日本のものがフランスの人々に必要とされているのにそれを日本人が上手くマネタイズできているとは言い難い状況です。偽物が出回る前に正規の商品やサービスを提供する「速さ」が日本人には必要なのではないでしょうか。
《籠谷千穂》
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