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なぜ開発はプラチナゲームズになったのか?今明かされる開発秘話・・・『METAL GEAR RISING』開発陣インタビュー(1)

2月21日、『METAL GEAR』シリーズ初の外部開発タイトルとなるPS3用ソフト『METAL GEAR RISING REVENGEANCE』が発売されました。小島プロダクションの是角有二氏、玉利越氏、プラチナゲームズの稲葉敦志氏、齋藤健治氏へのインタビューをお届けします。

ソニー PS3
『METAL GEAR RISING』開発者インタビュー
  • 『METAL GEAR RISING』開発者インタビュー
  • 小島プロダクション 是角有二氏(プロデューサー)
  • 小島プロダクション 玉利越氏(シナリオライター)
  • プラチナゲームズ 稲葉敦志氏(プロデューサー)
  • プラチナゲームズ 齋藤健治氏(ディレクター)
  • 『METAL GEAR RISING REVENGEANCE』パッケージ
『METAL GEAR』シリーズ初の外部開発タイトルとなるPS3用ソフト『METAL GEAR RISING REVENGEANCE』が、本日2月21日に発売されました。完成までに紆余曲折あった本作について、コナミデジタルエンタテインメント 小島プロダクションの是角有二氏(プロデューサー)、玉利越氏(シナリオライター)、プラチナゲームズの稲葉敦志氏(プロデューサー)、齋藤健治氏(ディレクター)にインタビューを敢行しました。

先月開催された「METAL GEAR RISING REVENGEANCE BOOT CAMP」で行われたインタビューでは、ゲームの内容についてはもちろん、開発の経緯、そしてプラチナゲームズのアクションゲームへのこだわり、さらにはこれからのことまで、たっぷりと聞くことができました。

まず1本目となる本記事では、開発が小島プロダクションからプラチナゲームズに移行する課程など、紆余曲折あった開発の経緯について伺いました。

■新しいゲームを1本作る感じだった・・・プラチナゲームズ開発までの経緯

―――本日はよろしくお願いします。まず、紆余曲折あった本作の開発経緯についてうかがいます。当初は小島プロダクション内で開発していましたが、最終的にプラチナゲームズへと開発が引き継がれました。そのあたりの引き継ぎはスムーズに行えたのでしょうか

是角:スムーズにといいますか、プラチナゲームズさんにお願いするにあたりゲームデザインについては、「全てお任せします」という形で、僕たちの作ってきたものをお渡ししました。渡した材料について、どう料理するかはプラチナゲームズさんに一任しましたが、世界観やカットシーンの監修、シナリオの制作についてはこちら(=小島プロダクション)が引き続き担当しましたから、引き継ぎというところでの問題はあまり無かったですね。

―――では、その後はプラチナゲームズさんが自由に開発された?

是角:そうですね。もうホントに好き勝手上がってきて・・・(一同笑)。

稲葉:(渡された)材料を驚くほどに使っていなくてね(笑)。

齋藤:キャラクターなどに関する材料も、ほとんど使っていなくて、ほぼウチの独自でまかなっています。

―――お話を聞いていると大幅な変更があったようですが、何割程度が変更になったのでしょうか

齋藤:ほぼ1から全部ですね。

稲葉:うん。新しいゲームを一本作る感じですね。ただ、キャラクターとかを含め、全部を捨てたいとかいう気持ちではなかったんですよ。捨てるということではなく、こちらが(ゲームを)組み上げるにあたり、結果としてそうなってしまったと。

―――なるほど。では稲葉さん自身は最初に話をもらった時点で、1から作ろうと考えていたのでしょうか

稲葉:いや、「結果的に1から作ることになるかもしれないけど、できればそうならないといいな」という淡い期待を抱いていました(笑)。まぁ、でもしょうがないなと。

齋藤:やはり、ウチで開発しやすい環境といいますか、どうやれば1番パフォーマンスが出るかというのを内部でも検討して、その結論として「1から作る」ということを決めました。

稲葉:その辺の判断は現場に任せたので、「お前らが決めたんだから、そこはちゃんとやりなさいよ」と(一同笑)。

玉利:でも、メカなんかはかなりそのまま残っていますよね。

齋藤:キャラクターデザインやメカデザインが既にあったものについては、ほぼ流用させて頂いています。さすがに、1から作るのはもったいなかった部分もあるので。

―――そうしたデザインはそのままで、他のデザインを1から作っていったと

齋藤:そうですね。新たに作り直したのは「ボスキャラ」と「雷電(本作主人公)を取り囲むキャラクター」のデザインですね。後は、シナリオに関する部分を総取っ替えしています。

玉利:システム的な部分では、「自由切断」という部分と、「斬奪」というところは生かして頂いています。それは、プラチナさんの判断で、こちらからは「絶対にそれを使ってくれ」という話はしていません。

齋藤:やっぱり、最初に『METAL GEAR SOLID RISING』のPVが発表された時に、「自由切断」というところが、見ていた側としては、とても印象に残っていて、「このゲームどうなるんだろう?」という期待を抱きました。そこを残さないと話にならんかなぁという事もあったので、どう料理していくかを考えて、苦労してゲームにしていきました(笑)。

稲葉:「うわースゲェ!これ、スゲェ!」ってなりながら、「これゲームとしてまとめるの大変そう・・・」って一ユーザーとして見てたのが、急にバトンがポンって投げられてきて・・・(一同笑)。そりゃ、大変だよなぁって思いましたね。

―――見ている側からすると楽しみだというのと、実際に自分たちで作るというのは別の問題なんですね

稲葉:やるやらない以前に、そういうのってクリエイターとして分かるんですよね。でも、あそこ(自由切断と斬奪)を切っちゃうと、ユーザーのワクワク感ごと切っちゃうのと同じなので、それはできなかったですね。

―――それを分かりながらも、引き受ける決め手となったことは何だったんでしょうか

稲葉:決め手は、「小島プロダクションから真剣にお話を頂いた」ことです。それ以上でもそれ以下でもないですよ。最初にお話を頂いて・・・。あ、これ正式にですよ?冗談じゃなくて(一同笑)。

是角:案外冗談ぽく言うからね(笑)。

稲葉:こっちも気になっているんで、パーティーとかで会うと「『RISING』どうなんですか?開発順調なんですか?」って聞いてたんですよ。それに対して(小島監督は)「うん・・・。まぁね」というような、割とふわっとしたリアクションしかなかったんです。なので、正式にお話を頂いた時点で、条件とかそういったモノは全て度外視して、「作りたい」という答えは決まっていました。

―――クリエイターとして純粋に作ってみたかったんですね

稲葉:それもそうですし、こんなチャンスでもなければ『メタルギア』という名前が冠にあるゲームに、僕たちが関わるチャンスなんて無いはずですからね。逆に、この提案を断る理由が僕には思いつきません。
確かにリスクを考えれば断る理由はいっぱいありますよ。「完成するのか?」とか・・・(一同笑)。あとは「ファンからの反応が怖い」とか、そういうのを考えれば山ほど出てきます。

齋藤:最初は、かなりリスクが高いと思いましたけどね(笑)。『メタルギア』の世界観というと、価値がもの凄いじゃないですか?しかも「25年」というすごく重い歴史を背負うからには、相当な覚悟が必要なのかなと。

稲葉:むしろ、悩んでいたら断っていたんじゃないのかな。悩めば悩むほどリスクの方が大きく感じますから、やりたいと思うんだったらやった方が良いんですよ。だから、今回の判断は正しかったんだと思います。

―――今回、開発をプラチナゲームズに依頼すると決めたのは小島監督ご自身ですか

是角:はい。小島です。もともと小島は、このままだと開発は成就しないだろうと考えていました。ただ、ゲームとしては、キャラクターも魅力的だし、「自由切断」というゲーム的なところも面白いので、ポテンシャルはあると。なので、このゲームをそのまま捨ててしまうのは惜しいと思っていました。その時点では、ストーリーとか、背景とかキャラクターは出来ていて、「ゲームデザイン」がまとまっていなかったんですね。そこで、日本のデベロッパーで世界的に評価の高いアクションゲームを数多く生み出しているプラチナゲームズさんが最適なパートナーだということになりました。

―――依頼も小島監督が直々にされたのでしょうか

稲葉:そうですね。とある業界の催し事の後に、別室で僕と社長の三並(プラチナゲームズ代表取締役 三並達也氏)で小島監督と直接お話をさせて頂きました。

インタビュー記事第2弾では、本作のシナリオやシステムについて、詳しくお話を聞くことができました。プラチナゲームズのアクションゲームに対するこだわりが随所に感じられる内容となっていますので、ぜひチェックしてみてください。

(C)Konami Digital Entertainment Developed by PlatinumGames Inc.
《宮崎 紘輔》

タンクトップおじさん 宮崎 紘輔

Game*Spark、インサイドを運営するイードのゲームメディア及びアニメメディアの事業責任者でもあるただのニンゲン。 日本の新卒一括採用システムに反旗を翻すべく、一日18時間くらいゲームをしてアニメを見るというささやかな抵抗を6年続けていたが、親には勘当されそうになるし、バイト先の社長は逮捕されるしでインサイド編集部に無気力バイトとして転がり込む。 偶然も重なって2017年にゲームメディアの統括となり、ポジションが空位になっていたGame*Sparkの編集長的ポジションに就くも、ちょっとしたハプニングもあって2022年7月をもって編集長の席を譲る。 夢はイードのゲームメディア群を日本のゲーム業界で一目置かれる存在にすること、ゲームやアニメを自分達で出すこと(ウィザードリィでちょっと実現)、日本武道館でライブすること、グラストンベリーのヘッドライナーになること……など。

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