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【CEDEC 2012】「アニメーションTA」とは!? AIとアニメの融合が生み出すキャラクターの次なるリアリティ

高度化するAIとアニメーションは相互作用を強めています。次世代に向けて、より賢いAI、よりリアリティのあるアニメーションには、思考と身体がゲームの中でも関わり合う事が必須と考えられます。

ゲームビジネス その他
AI×アニメーション
  • AI×アニメーション
  • 登壇者 左から白子氏、上野氏、金久保氏、三宅氏
  • 司会の南野氏(右)
  • 白子氏はセガの龍が如くスタジオ所属
  • 白子氏
  • 金久保氏はバンダイナムコスタジオ所属
  • 金久保氏
  • 上野氏はユークス所属。GDCでの講演経験も
高度化するAIとアニメーションは相互作用を強めています。次世代に向けて、より賢いAI、よりリアリティのあるアニメーションには、思考と身体がゲームの中でも関わり合う事が必須と考えられます。CEDEC3日目の「クロスボーダー『AI×アニメーション』パネルディスカッション」ではジープラの南野真太郎氏をモデレーターとして、セガの白子路央氏、ユークスの上野浩樹氏、バンダイナムコスタジオの金久保哲也氏、スクウェア・エニックスの三宅陽一郎氏の4名によるパネルディスカッションが行われました。

■プロシージャルアニメーションでロボットを動かした『バイナリードメイン』

まず議論の叩き台としてセガ・龍が如くスタジオに所属する白子氏から『バイナリードメイン』におけるプロシージャルアニメーションについて紹介されました。『バイナリードメイン』は"日本発のSF超大作"をテーマにして、ゲーム史上最高のAI構築が命題として課せられました。

白子氏が指摘したのはAIがユーザーに伝わるのはアニメーションとしてであるということです。どれだけAIが賢くても、動きがおかしければ賢くは見えません。高いクオリティのモーションを数多く用意する必要があります。しかし開発の規模が大きくなればモーションデザイナーによる手付けには限界があります。メモリの問題もありますし、表現として真新しさがありません。そこで本作ではプロシージャルアニメーションとAIによる表現が導入されました。

具体的にプロシージャルアニメーションが導入されたのは敵ロボットです。ゲームでは様々な形状のロボットが登場しますが、自ら思考し、足でバランスを取ろうとしながら動いていきます。足が破壊されていくクモ型のロボットも登場しますが、失われた足も考慮してアニメーションが決定されています。

プログラムで制御する理論的に正しい動きを生成するためには「歩き」とは何ぞや? という議論が必要だったと白子氏は言います。「歩くとはどういうことなのか、一部が失われるとどうなるか。アニメーションを数学的、物理的に分解するということをプログラマと一緒に突き詰めていきました」

■予定調和からリアリティへ

プロレスなど人体の動きが非常に重要視されるゲームを得意とするユークスの上野氏からも今後のAIとアニメーションの関わり合いについての考え方が述べられました。

上野氏は今後のアニメーションの進化について、現状のアニメーションを再生するだけで予定調和的になる「キーフレームアニメーション」ではなく、自律的に身体制御を行う「プロシージャルアニメーション」へと変わっていくことになるだろうと述べました。そして期待したい事について以下の6点を挙げました。

・動的な加工
・環境とのインタラクション
・外力へのリアクション
・複数の動作の組み合わせ
・動作と動作の間をシームレスにつなぐ
・思考を伴わない身体制御

上野氏は表現力が上がっている中でアニメーションにリアリティを持たせるためには、具体的な行動をアニメーションとして表現するだけでなく、感情(=AI)などのファジーな情報から自然と発生するような体の動きを生成していく必要があるのではないかと述べました。また、これは一方通行ではなく、アニメーションからAI(=感情)に影響を与えるというような相互作用になるとしました。

■リアリティとは何か

続いての議論ではリアリティとは何かという話題からスタートしました。

三宅氏は「リアルなアニメーションと言っても単純ではありません。ユーザーにとって、アニメーターにとって、キャラクター自身にとって、それぞれリアルは異なってきます」と問題提起。手付けアニメーションのデフォルメされた表現がリアルな場合もあります。「物理的な動きとユーザーが期待する動きは必ずしも一致しない場合があります。普通スライムのような物体を壁に投げつけても、そのまま壁にくっついたりはしないわけです(笑)」(金久保氏)。上野氏も「物理的な原理に基いていても、アニメーターが関与できる余地もあると面白くなると思う」とコメント。

人間のアニメーションにおいても、物理的な正しさだけではロボットではない人間の動きを作り出す事はできません。白子氏は「個性や感情が必要です。動きなら運動神経や過去はラグビー部の経験があるとか、信じる宗教や生まれた国、男女の違いなど人間には様々なアイデンティティーがあり、そのバックグラウンドが動きにも反映されているはずです」とコメント。そのためにはAIとアニメーションの融合が必要だと指摘します。

AIの専門家の立場から三宅氏は「感情はAIにとっても鬼門。アニメーションで誤魔化しているが、行き詰まり感はある」と認めます。しかし挑戦する価値はあると言います「いまのゲームは例えば『ラブプラス』のように、プレイするユーザーがリアリティを作り出しています。AIは逆にゲームの側からリアリティを与えようとするものです。それが更にユーザーにリアリティを生ませます。この長い旅にチャレンジしていかなければなりません」。

金久保氏はアニメーションの立場からAIに期待する考えを「グラフィックの圧倒的な進化に対してアニメーションは頭打ちになっています。手付けで頑張るというのは限界に来ていて、AIとの融合でもう一段上を進みたいと思っています」と説明。

白子氏は「重力、物の重さ、腕の重さなど人体のあらゆる情報をパラメーター化する作業が必要だった」と『バイナリードメイン』を振り返ります。三宅氏は「AIとアニメーションは本当にローレベルではパラメーターで繋ぐ必要がありますが、もっと上位の概念で接続されるかもしれない」と指摘していました。

■キャラクターTA・・・プログラマとアーティストの間に

AIとアニメーションという関係はプログラマとアニメーターという関係でも置き換えることができます。アニメーションはアーティストが作るものでした。しかしプロシージャルアニメーションではアーティストとプログラマの感性的なものと数学的なものの融合が不可欠です。

三宅氏は「キャラクターのためのテクニカルアーティスト(TA)が必要でしょう。AIとアニメーション、プログラマとアニメーター、その全体を見てパイプラインを構築する存在が必要です」と指摘。グラフィックとプログラマの中間に立つテクニカルアーティストのように、AIとアニメーターを繋ぐ"キャラクターテクニカルアーティスト"というような立場が必要との意見で、これには参加者全員が賛成していました。『バイナリードメイン』における白子氏はその第一人者だったのかもしれません。

最後に4人から一言ずつコメントがありました。

「AIとアニメーションの連携は次世代に向けて必須なものになるでしょう。」(上野氏)

「プロシージャルアニメーションは海の底で見つかったレアメタルみたいなもので、利益を上げるまでは大変かもしれませんが、それが結実した時の利益は計り知れないものになるでしょう」(白子氏)

「過去の開発現場ではスキルのクロスオーバーがあり、"何でもやる"が成功の要因になっていたような気がします。AIとアニメーション、それぞれの領域を超えて協力し合う事は大きな意味を持つと思います」(金久保氏)

「今の世代は様々な要素技術の進化がありました。次世代では、それぞれの育った専門家が集まり融合し大きな成果を上げるような気がします。AIとアニメーションは余り考慮されてきませんでしたが、これを解き放つことで大きな可能性が広がります。世界中が考え始めたところで、僕らも負けないように努力していきたいと思います」(三宅氏)

1時間のセッションは多岐に渡る内容で、時間が足りない感もありましたが、AIとアニメーションの融合が進んでいく、その第一歩としては多くの聴衆に印象を与えたものになったように感じました。三宅氏や南野氏らは「ゲームAIラウンドテーブル・オン・ツイッター」を月1回のペースで実施中。興味のある方はぜひ参加してみてください。開催案内は@miyayou(三宅氏)、@hudepen(南野氏)をフォローして欲しいとのこと。
《土本学》

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