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【E3 2012】アドベンチャーゲームの革新、そしてNEVER STOP GAMING ― SCEカンファレンス

ゲーム機の登場が梃子になって創出され、ハードの「顔」となったジャンルがあります。Wiiの『Wiiスポーツ』(体感ゲーム)、Xboxの『Halo』(コンソールFPS)などです。

ゲームビジネス 開発
ゲーム機の登場が梃子になって創出され、ハードの「顔」となったジャンルがあります。Wiiの『Wiiスポーツ』(体感ゲーム)、Xboxの『Halo』(コンソールFPS)などです。

ではプレイステーションはどうでしょうか。コンソールゲームで初となる純粋3Dゲーム機、PS1。その登場により一般化したジャンルといえば、『バイオハザード』や『メタルギアソリッド』などの3Dアドベンチャーゲームでしょう。

その後PS2はオープンワールドを実現した『グランド・セフト・オート3』の苗床となりました。PS3では『アンチャーテッド』が登場し、映画とゲームの融合=シネマティックアドベンチャーとでも言うべきステージに突入しています。

6月4日に開催されたソニー・コンピュータエンタテインメントのプレスカンファレンスも、こうした経緯を彷彿とさせるかのように、オリジナルの大作アドベンチャーゲーム『BEYOND TOW SOULS.』で始まり、『THE LAST OF US』で締めくくられました。

カンファレンスを主導したドレットン氏ソニー社長となった平井一夫氏も姿を見せた会場は超満員の参加者で埋め尽くされた


===カンファレンスの主な構成===

1:『BEYOND TWO SOULS.』(PS3) 
新作サスペンスアドベンチャー

2:『PLAYSTATION ALL-STARS BATTLE ROYAL』(PS3+VITA)
PSファミリーによる4人対戦アクション PS3+VITAクロスプレイ

3:PLAYSTATION NETWORKの現状
インディゲームに対する取り組み、PS1クラシックのVITA対応、YoutubeのVITA対応やテレビ・映画コンテンツの拡充など

4:『コール オブ デューティ ブラックオプス:ディックラッシフィード』(VITA)
AAAのFPSが初めてVITAに対応し、携帯機でマルチプレイを実現

5:『アサシンクリード3 リベレーション』(VITA)
シリーズ初の女性アサシンでVITAバンドルパックも登場

6:『FAR CRY3』(PS3)
人気FPS最新作で4人のCO-OPプレイによるデモ   

7:『BOOK of SPELLS』(PS3 MOVE)
PS MOVE専用のARGゲームでJ・K・ローリングが監修

8:PLAYSTATION SUITE
新たにHTCの参入など

9:『ゴッドオブウォー アセンションズ』(PS3)
さらに過激になったアクション

10:『THE LAST OF US』(PS3)
新作アクションアドベンチャー

==================

このうち『BEYOND TWO SOULS.』と『THE LAST OF US』については、E3会場で得られた情報とあわせて、別項で紹介する予定です。ここでは、ともにアドベンチャーゲームの概念を、さらに大きく飛躍させる、非常に革新的なタイトルとのみ紹介しておきましょう。開発スタジオは前者が『ヘビーレイン -心の軋む時-』のQUANTIC DREAMで、後者が『アンチャーテッド』のノーティドック。どちらも技術力と完成度の高さで世界的に評価の高いスタジオです。

『ヘビーレイン』の開発陣が贈る『BEYOND』
ノーティドックは『THE LAST OF US』を発表


とまあ、今年のソニー・カンファレンスは「アドベンチャーゲームが凄かった」と前置きしたうえで、改めて全体概要について整理してみしょう。すると、もともとXbox360しかないマイクロソフト、Wii Uに全力を傾けた任天堂に対して、SCEはPS3(Move)・VITA・PS NETWORK・PS SUITEと、全方位姿勢が感じられます。

カンファレンスをリードしたSCEAプレジデント&CEOのジャック・ドレットン氏も「NEVER STOP PLAYING」と強調し、良質なゲーム体験の提供が今回のテーマであることを、改めて提示しました。「全てのゲームは、ここに集まる」・・・PS1の最初のキャッチコピーは、今もPSフォーマットのDNAとして息づいているようです。

■ゲームを巡る環境が激変する中で求められるもの
もっともE3ソニー・カンファレンスの歴史は、常にそうではありませんでした。PS3登場前夜のことです。プレゼンテーションはゲームだけではなく、技術デモにも時間が割かれました。久夛良木健社長(当時)はPS3のコンピューティング能力を強調。はたしてゲーム機なのか、コンピュータなのか・・・。内容を巡って賛否両論もみられました。

もっともPS3は初手でつまづき、平井一夫氏(現:ソニー代表執行役社長兼CEO、SCE代表取締役会長)が事業を継承。コンセプトも原点回帰しました。PS3は最高のゲーム機で、全てのゲームが集結する。E3カンファレンスは例年、ゲームソフト紹介で埋め尽くされるようになりました。全プラットフォームに最高のゲームを提供し、ユーザーに選択の機会を数多く提供する・・・。これが基本精神であるかのようです。

もちろん、これが悪いわけではありません。SCEには、さまざまなゲーム機やプラットフォームがあり、どれを選んでも間違いがない、大衆的なフォーマットというイメージが良く伝わってきます。そこには業界のガリバーで、黙っていても全てのゲームが集まってきた、PS2時代のイメージが重なります。

PSファミリーが集結する『PlayStation All-Stars Battle Royale』協力プレイのデモが行われた『FarCry3』
『アサシンクリード3 リベレーション』のVITAバンドルパックも発売されるさらに過激度を増した『ゴッドオブウォー アセンションズ』


しかし、ゲーム機がゲーム機のままでいられた時代は、急速に終わろうとしています。スマートテレビ、クラウドゲーム、スマートフォン、タブレットなど、ここ数年でゲームとテレビを巡る環境は大きく変化しました。その中で生き残るには、成功体験の見直しが求められるでしょう。今年もPLAYSTATION NETWORKやPLAYSTATION SUITEなどの施策紹介がありましたが、どこか中途半端なものに感じられました。

ハードのローンチ時期ならいざ知らず、今やPS3は世界中に普及し、ソフトの収穫期に入っています。現在の使命は一台でも多くのゲーム機を売ることで、そのためには非ゲーマー層のさらなる取り込みが必要です。そのための最良の武器はソニーブランドであり、ソニー製品との連携でしょう。

逆に赤字にあえぐ家電業界にとって、ゲームがこれまで培ってきたノウハウの移転には、大きな可能性があります。クラウドゲームのGAIKAIとサムソンがスマートテレビ事業で提携したのは、その一例。いわば家電見本市のCESとゲーム見本市のE3の境界線が、急速になくなりつつあるのです。

PS SUITEでAndroid陣営との連携を実施PS CertifiedにHTCが参加し端末を供給


PS3やVITAだけでなく、あらゆる製品がネットワーク化され、クラウドで運用される時代は目の前です。 クロスプレイ、リモートコントロール、ナスネ、etc・・・。PSフォーマットだけでも、様々な機能がありますが、どこかWindows環境に似た「とっちらかった」印象を受けます。 より統一された、シンプルな環境を望みたいところです。

そのために、どのようなビジョンを語り、メッセージや施策を打ち出していけるのか。会場にはソニーの社長としてはじめてE3を訪れた平井一夫氏も見られましたが、そこでソニーとPSフォーマットの将来像について、ひとこと説明があれば、非常にÍ大きな印象を与えたでしょう。ともあれ、こうした点も、より意識したカンファレンスになれば、さらに多くの価値を生み出していけるのではないでしょうか。
《小野憲史》
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