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【E3 2012】熟成されたラインアップに潜む「10億」への次の一手

ゲームビジネス 開発

マイクロソフトは、Electronic Entertainment Expo (E3)開幕前日の6月4日に行われたXbox E3 2012 Media Briefingで、今後発売予定のタイトルラインアップやマルチデバイス環境など新しいリビングエンタテインメントの体験提案、ナイキと提携した個人向けフィットネスアプリケーションという3つの発表を行いました。

昨年と同じく会場となった超満員のガレンセンターインタラクティブ エンターテイメントビジネス担当プレジデントのドン・マトリック氏


昨年同様、ダウンタウンのガレンセンターで開催されたカンファレンスは、先日11月8日発売が発表されたばかりのシリーズ最新作『Halo4』の最新トレーラー上映から始まりました。参加者が腰を抜かすのに十分以上な内容で、制作費が幾らにのぼったのか、くらくらするほどです。

続いてXbox360事業の顔であるドン・マトリック氏が登場。「E3は17回目の参加で、今年も参加できて名誉に思っている」と切り出したマトリック氏は、Xbox360が「すべてのエンタテイメントを一箇所に集約する唯一のリビングルームのゲーム機」だと示し、ゲーム・映画・スポーツ・テレビ・音楽そしてソーシャルにキネクトのマジックで命を吹き込むと語りました。

その後、会場は怒濤の新作ゲームのデモプレイ&トレーラー上映ラッシュとなりました。各タイトルについては最後に整理するとして、ここでは二つのポイントを整理してみましょう。

■さらなるハードの普及のために打った戦略
第一のポイントが、ハードコアからカジュアルまで幅広く揃った円熟味のあるラインアップです。鉄板FPSの『Halo4』『Call of Duty: Black Ops II』『Tom Clancy's Splinter Cell: Blacklist』に加えて、ダンスゲームの『Dance Central 3』、2Dタッチの『South Park: The Stick of Truth』、国産タイトルで唯一気を吐いた『バイオハザード6』、キャラクタービジュアルが日本人にも親しみやすくなった『TOMB RAIDER』など。そのうち半数がマイクロソフト製という点も、自社IPの強みを見せつけました。

Xbox360が発売されてから、はや6年目。次世代機の発表についても噂されましたが、蓋を開けてみれば後継機の話は見られませんでした。そのかわりと言っても良い怒濤のラインアップ。今はハードの解析もほぼ終了し、技術的にも熟成が進んで、ソフトの収穫期にあたります。それだけに、どれを遊んでも一定以上のおもしろさが保証されたラインアップだと言えるでしょう。逆に変わり映えがしない、という見方もありますが、この点にはXbox Liveアーケードのインディーズゲームに、もっと期待したいところです。

カプコン小林プロデューサー(右)らが『バイオ6』のデモプレイを披露アニメ版制作スタッフが脚本と声を担当した「South Park」


続いてのポイントがキネクト前提のゲームデザインです。昨年のマイクロソフトのカンファレンスは『Kinect スター・ウォーズ』をはじめ、発売後1年が経過したキネクトを大々的にプッシュする内容でした。しかし今年はキネクト対応が目新しいものではなくなり、多くのタイトルで普通に使用されていました。

アメリカンフットボールの往年の名選手ジョー・モンタナ氏は、EAのシリーズ最新作『Madden NFL 2013』のデモに登場し、音声認識でフォーメーションを選択してタッチダウンを披露。ハーモニクスが開発するダンスゲーム『Dance Central 3』では、特別ムービーをバックに世界的ミュージシャンのUsher が登場し、ヒット曲 「Scream」 を披露。3D版『アングリーバード』的な内容のカジュアルゲーム『Wreckateer』では、キャラクターを打ち出してから破壊するまでをゼスチャーで操作。また後述するリビングエンタテイメントの分野では、まさにキネクトの真骨頂が感じられました。

音声認識でタッチダウンを決めるジョー・モンタナ氏(左)『ダンスセントラル3』ではUsherのミニライブで会場はコンサート気分打ち出されたキャラクターをゼスチャーで滑空制御


もっとも、本カンファレンスでの同社のメッセージは、実は会場ではなく、家庭のインターネットでライブ映像を楽しんでいる多くのユーザーや、非ゲーマーに向けられているように感じました。その理由は冒頭にも示したとおり、直接ゲームとは関係のないリビングエンタテインメントやナイキとの協業について、比較的長い時間を取って紹介したことです。

日本ではハードコア向けゲーム機という印象がぬぐえないXbox360ですが、すでに北米では家庭に幅広く浸透しています。一方でハードメーカーの使命は、一台でも多くゲーム機を普及させること。そのためには、いわゆる「非ゲーム」のさらなる充実が求められます。なにしろ、このレベルでの競争相手はゲーム機だけに留まらず、本格的な普及期に入ったスマートテレビや、今後登場が噂されるアップルTVなどです(そういえばE3のすぐ後にはアップルのカンファレンス、WWDCが控えているのでした)。PCでは圧倒的な強さを誇ったWindowsですが、タブレットやスマートフォンでは低迷が続いています。

■マルチデバイス環境をソフトウェアで実現
そこで他社との差別要因となるのがXbox360とキネクト。これを橋頭堡にリビングルームのさらなる攻略を進め、Xbox360そしてWindowsファミリーを生活の一部に溶け込ませていきたい・・・。そうした意図が感じられました。

特に興味深かったのが、携帯電話やPC、Xbox360などのデバイスをつなぐアプリケーション『Xbox SmartGlass』です。これによりユーザーはそれと意識することなく、複数のデバイスを連動させてコンテンツを楽しめます。会場ではアメフトゲームのフォーメーションをタブレットで選択してプレイ、Xbox Liveで視聴中の映画の詳細情報をタブレットで表示、今秋に登場予定の Internet Explorer for Xboxをスマートフォンで操作、などのデモが披露されました。

Xbox Liveの豊富な映像湖テンツを声で操作マルチデバイスをつなぐ『Xbox SmartGlass』
Xbox360向けにIEがリリースされるブラウザの操作は手元のスマートフォンで実行


もちろん、これらはキネクトの音声認識で操作し、検索エンジンのBingと連動させることが可能。対応言語も英語に加えて、日本語をふくむ12の地域が追加されることになりました。会場では「タブレットもPCもテレビもXbox360も携帯電話も、みなすでに持っている(後はそれをソフトウェアでつないで、統一された環境を提供するだけ)」という発言もみられましたが(=ハードウェアの壁をソフトウェアで取り払う)、これなどは実にマイクロソフト的な発想でしょう。会場では「Windows Phoneだけでなく、iPhone、iPad、Androidにも対応」とされましたが、事実なら凄いことです。もっともMacにもOfficeを提供する同社ですから、あり得ないことではないのでしょう。

余談ですがInternet Explorer8ではHTML5がサポートされており、ゲームなどのリッチインタラクティブコンテンツを再生できます。Internet Explorer for Xboxの詳細は不明ですが、HTML5がサポートされていれば、同様にゲームなどをブラウザ上でプレイきるでしょう。そうなればXbox360でウェブのソーシャルゲームやカジュアルゲームがプレイ可能になります。スマートテレビ上でブラウザゲームが楽しめるようになるのは時間の問題ですし、OnliveやGAIKAIなどのクラウドサービスもスマートテレビと急接近しています。今後テレビを巡るコンテンツ環境はますます変化していくので、さらにラジカルな発想と展開を期待したいところです。

■Xbox360はMSの数少ない個人向け商品の成功例
一方でナイキ社との提携も、この文脈で捉えられます。この世界的なスポーツ関連商品メーカーとのコラボでリリースされる『Nike+ Kinect Training』 は、個人向けに最適化されたトレーニングプログラムを、自宅のリビングで提供する予定です。肥満が深刻な社会現象になっている(そしてリビングが日本より何倍も広い)アメリカでは、非常に高いポテンシャルを占めています。ナイキはiPodとのコラボレーション「Nike+iPod」で注目を集めましたが、Xbox360とナイキという組み合わせは、さらに高い付加価値を両者に与えるのではないでしょうか。

ナイキとXbox360がコラボレーションリビングを個人用フィットネスに変える試み


Xbox360が初披露されたE3 2005のメディアブリーフィングで、当時Xbox360事業を牽引していたロビー・バック氏は、Xbox360を世界10億人に届けたいとぶち上げました。E3 2006ではビル・ゲイツ氏が登壇し、「Xbox 360をウインドウズや携帯電話と結びつけて、どのように活用していくかということも、今後は大きなポイントになってくる。世界で1億5000万人の人がWindowsに触れ、10億ものゲームが携帯電話でプレイ可能な時代だから」と述べ、「Live Anyware」構想を打ち出しました。

その後「Live Anyware」自体はWindows Vistaと共に忘却の彼方へ度だったわけですが、究極の目標は昔からまったくぶれていないところに、改めて驚かされます。近年も同社では「3スクリーン構想」を掲げ(PC、テレビ、スマートフォンをクラウドで結びシームレスな環境を提示)、粛々とサービスを展開中。「勝つまで止めないマイクロソフト」というDNAは健在で、その中でXbox360の存在感がますます上昇しているところに、改めて驚かされる次第です。

もともと同社は法人向け営業が事業の柱ですが、現在はスマートフォンやタブレットなど、PC業界のルールが、法人から個人向け市場に変わりました。マイクロソフト製品の中でも数少ない、個人向け市場の大ヒット商品であるXbox360が、今後どのように成長していくか楽しみです。

最後は『Call of Duty: Black Ops II』で締めくくり


■カンファレンスに登場したゲーム一覧
・Halo4(マイクロソフト)
・Tom Clancy's Splinter Cell: Blacklist(UBI)
・Madden NFL 2013、 FIFA 2013(EA)
・Fable: The Journey(マイクロソフト)
・Gears of War: Judgment(マイクロソフト)
・Forza Horizon(マイクロソフト)
・TOMB RAIDER(スクウェア・エニックス)
・Ascend: New Gods(マイクロソフト)
・Lococycle(マイクロソフト)
・Matter(マイクロソフト)
・バイオハザード6(カプコン)
・Wreckateer(マイクロソフト)
・South Park: The Stick of Truth(THQ)
・Dance Central 3(マイクロソフト)
・Call of Duty: Black Ops II(アクティビジョン)
《小野憲史》

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