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【CEDEC 2010】老舗ゲームメーカーの人材育成とは、セガの場合

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【CEDEC 2010】老舗ゲームメーカーの人材育成とは、セガの場合
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さまざまな課題に直面するゲーム業界。その中でも、おそらく最大級の課題の一つが人材教育でしょう。

CEDEC2日目、コーエーテクモゲームスの人材教育事例に続いて行われたのは、セガの事例でした。登壇者は康日準氏・高橋敦俊氏・馬場保仁氏の3名。「セガ社内の研修/勉強会プログラム」と題した講演の内容は、社歴の長い大手ならではの、腰の据わった姿勢を感じさせるものでした。

一般研修について解説した康日準氏プログラム研修について語った高橋敦俊氏企画向け定例勉強会を紹介する馬場保仁氏


内容は「新人研修」「新人研修(プログラム面)」「企画(プランナ)向け勉強会」という構成。なお本講演は昨年12月のシーグラフアジアで行われた「ゲーム業界で生き抜くための陰の立役者─セガの社内トレーニング─」と対をなす内容となっています。シーグラフアジア版は「新人研修」「シェーダー研修」「温故知新のアーティスト研修」となっていますので、参照されると良いでしょう。
>http://www.gamebusiness.jp/article.php?id=831

なお同社はこれまで家庭用と業務用で部署が分かれており、それぞれ異なる新人研修が行われていました。しかし本年7月の組織改編で両者が融合し、垣根がなくなりました。そのため来年度からは新人研修の内容などが、一部変更になる可能性もあります。ちなみに今回の講演内容は家庭用の事例となっています。

初めに登壇した康氏は、セガの新人研修について紹介しました。研修内容は座学による集合研修と、実習形式の職種別研修。そして仕上げとなるミニゲーム制作実習から構成されています。

集合研修ではビジネス講座やゲーム制作の基礎知識などが、職種に関係なく一通り教えられます。中でも「商業ベースでゲームを作ること」の意識を植え付けることに重点をおいているとのこと。「こだわりを捨てろ、という意味ではありませんが」と前置きしつつも、最適化の意識やデータ削減の工夫などを通して、品質と利益の正しいバランスについて、自然に考えさせる内容になっているのです。

新卒向け集合研修の内容高速化に関するテクニックを重視品質と利益のバランスが重要


▽何を描画するか決めることも仕事の一つ。そのために各ゲーム機の性能を知る(企画)▽見た目だけでなく、データの品質にも責任を負う。見た目が同じなら軽い方が良いデータ(デザイナ)▽単に描画するだけでなく、描画速度の向上やデータサイズの削減を常に意識する(プログラマ)など、職種別研修に移行しても、ゲームメーカーならではの「ねらい」を重視する姿勢は変わりません。また特に昨今では著作権や肖像権といったライセンス関連についても、基礎的な知識を新人研修で教えていると説明されました。

続いて登壇した高橋氏は、セガ家庭用部門での新人研修の歴史を紹介。そこで培われたエルダー制度について紹介しました。その後、新人研修の後半で行われる職種別研修のうち、プログラム研修の内容について、さらに詳しく紹介しました。

エルダー制度。それは新入社員に一人ずつ、先輩社員をつけて面倒を見させる制度のことです。10数年前に導入され、現在は新入社員研修で、担当する新入社員の面倒を専属で見る社員のことを指しています。エルダーになるのは入社2~3年目の若手社員で、これには新入社員の基礎知識習得もさることながら、先輩社員の総合的な仕事力のアップという狙いもあります。さらにエルダーのバックには指示を出すリーダーを立てて、組織的な新人研修を運営しているのです。

プログラム研修では開発環境の基礎から3Dプログラミングまで、一通りの内容が教えられますが、シェーダーに関してはあえて省略しているとのこと。これはゲーム制作の流れについて、限られた時間で一通り習得してもらうという狙いからです。

中でもポイントとなるのが、C++の基礎講座とデバッグ講座。C++については構造化プログラミングやメモリの取り扱いなどは、特に重視するといいます。またデバッグ講座については、やり方次第で効率化が大きく異なるものの、大学などではあまり教わらない技術であるため、力を入れて教えるとのことでした。なお、この際ポイントとなるのが、前出のエルダー制度です。新人に日報を提出させ、エルダーが毎日コメントを返すことが続けられます。これには新人ごとに個別のメンタルケアを行う意味もあります。

新人とエルダーのセットで仕事力向上プログラム研修のカリキュラムミニゲーム制作実習の開発環境


新人研修のトリを飾るのがミニゲーム制作実習。これは小さくても1本ゲームを制作する経験をさせることが目的です。それもやみくもに作るのではなく、原案作成→作業タスクの洗い出し→プロトタイプ作成→中間発表会→修正作業→発表会→ドキュメント作成と研修報告書作成、といった実際の開発工程に近いスタイルで作られます。研修後もプログラムセクション内を数グループに分け、毎週1回、勉強会を実施してフォローアップ。ちなみにこの勉強会は業務時間内に、チームの進捗報告を兼ねて行われているそうです。

このように高橋氏は、新入社員研修を継続して行うことで、ノウハウが蓄積され、運用が効率化されていくこと。そして新入社員・エルダー社員が一体となって、仕事力を底上げしていくことが重要だとまとめました。一方で年次ごとに異なる新入社員の数と、手間のかけ方のバランスや、新人ごとにスキルレベルが異なる中で、研修内容の基準をどこにおくか、といった点が課題だと補足しました。

最後に馬場氏は、第1CS研究開発部で企画(プランナ)向けに行われている、定期勉強会について紹介しました。これは他社のゲームを営業マンになったつもりで部内の人間に売り込み、その優劣を競うという非常にユニークなものでした。

馬場氏は最初に企画職に求められる能力として「発想力」「分析力」「表現力(プレゼン力)」「コミュニケーション力」を提示。このうち「企画・原案作成→プレゼンテーション」といった研修を行いがちだが、実際はアイディアに正解はなく、先輩社員から容赦ないツッコミを浴びやすいという課題点を指摘しました。

発想力の育成にはコストと時間がかかる表現力はプレゼン能力に関係する
分析力はタイトルの差別化などに必須コミュニケーション力とは「聞く」力


そこで考えられたのが、他社タイトルのプレゼンです。まず企画定例運営係に、レビューする候補のソフトを複数申請します。これを元に企画リーダーの間で、レビューするソフトが確定されます。その後、営業担当者になったつもりでロールプレイを行い、このゲームの「良さ」をプッシュして、購入意欲を持たせるプレゼンを行うのです。なお、欠点を隠すのは良いけど、嘘をつくのはダメだと釘が刺されました。

プレゼンに対して評価側は10点満点で点数とコメントを出します。点数の基準は8割が購入ライン。ただし評価時には「プレゼン前は●点、プレゼン後は◇点」といった具体に、前後の点数を明記するのがミソ。これによって同じ点数でも、プレゼン前後の変化が明確になり、発表者のプレゼン能力が、より明確になるというわけです。勉強会は毎週1回1時間、1人に要する時間は約30分で、毎回2人のプレゼンが行われます。これを続けることで、1人1年で3~4回のプレゼンを行うことになります。

営業マンとして他社タイトルを推薦一定の成果が見られたレビュープレゼン今後は発想力・分析力が課題


定期勉強会に加えて、不定期で実施されるグループ定例も実施。これでプレ・プレゼンや反省会なども実施してフォローアップ。もちろん、これらは業務の一環として行われています。馬場氏はこれを続けることで、「人前で何かを表現する能力」や「伝える能力」は確実に底上げできたこと。ただし発想力や分析力といった、企画の軸を鍛える研修については課題が残ると補足しました。また、その場合も「楽しくなければ続かない」ため、できるだけモチベーションを高く取り組む手法を考えることが肝心だとしました。

教育とは信念、情熱、そして我慢だと馬場氏は語ります。ゲーム開発は「楽(らく)」じゃないけど「楽しい」はず。社員にやりがいを与えるためにも、若手社員や業界志望者を「教育する」姿勢を示して、より有能な人材が業界を目指せる土壌を作ろう。そう会場に呼びかけて講演が締めくくられました。
《小野憲史》

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