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【ゲームニュース一週間】「ライトに遊ぶ人たち」と「ヘビーに遊ぶ人たち」

2月第3週はWiiの今後の方向性に関するニュースが揃いました。

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2月第3週はWiiの今後の方向性に関するニュースが揃いました。

任天堂と有限会社ソラは、「プロジェクトソラ」を発足。『大乱闘スマッシュブラザーズX』の桜井政博氏の新タイトルを開発していくとしてます。現時点では新タイトルの情報は未公開ですが、公式サイトの対談には岩田聡社長による「スマブラではない特命案件をお願いした」という発言もあり、今後の情報公開が期待されます。

Slate紙は「何がゲームビジネスを殺すのか?」と題する記事を発表。ゲームの売上は伸びているがリストラが続く状況を開発費の高騰と大作主義にあるとしています。多額の資金と多数のスタッフでヒットを狙う「ハリウッドスタイル」には多くの人件費が必要だが、ゲーム業界も不況にあわせた物作りが必要である。グラフィックの下方修正やゲームスケールの適正化、既存の技術のリサイクルが必要としています。

『The Conduit』を開発したHigh VoltageのEric Nofsinger氏は「多くのパブリッシャーはWiiが儲かりそうだというので慌ててそちらへ向かっている」とサードパーティによる安易なWii用ゲームの開発に警鐘を鳴らしています。

2008年のホリデーシーズンの話題を総なめにしたWiiですが、その原動力は『Wii Fit』や『Wii Sports』といった革新的なソフトであり、普段ゲームを遊ばない人がこれに惹きつけられたことにあります。ヒット作で遊んだ人が次のソフトを探すのに答えられるかどうか、これはどのハードにおいても大きなテーマです。

桜井政博氏は「プロジェクトソラ」公式サイトにおいて「お客さんが多様化することで、見るべきお客さん像がすごく変わってきたような気がするんです。例えばライトに遊ぶ人たちと、ヘビーに遊ぶ人たちで、どっちが一番だとかどっちが真っ当だとかいう正解がないので……。」と、Wiiにおけるユーザー層の多様化を感じている発言をしています。

「ライトに遊ぶ人たち」「ヘビーに遊ぶ人たち」の両方を満足させる、これが2009年のWiiの課題でしょう。取り組みは既にスタートしており、セガは『The Conduit』『MADWORLD』『House of the Dead: Overkill』など「ヘビーに遊ぶ人たち」向けのタイトルに加え、『マリオ&ソニック AT バンクーバーオリンピック』のような「ライトに遊ぶ人たち」に向けたタイトルも用意しており、一歩先んじている印象を受けます。

一方、「ライトに遊ぶ人たち」へ向けた取り組みはどうでしょう。Eric Nofsinger氏の「多くのパブリッシャーはWiiが儲かりそうだというので慌ててそちらへ向かっている」という発言には多くのものが含まれているのではないでしょうか。

Wiiの「ライトに遊ぶ人たち」というのは、今のゲーム界で最も捉えるのが難しい人々でしょう。年齢、性別、ゲームを遊ぶ動機まで様々で、一括りにできません。捉えるのが難しい層を捉えたからこそWiiやDSは売れたし話題にもなりました。「ライトに遊ぶ人たち」向けのタイトルを開発するのは「ヘビーに遊ぶ人たち」に向けるのと同じくらい難しいのです。その両方を満足させるのはゲームに対する発想そのものを変えなければならないでしょう。そう、正に『Wii Fit』や『Wii Sports』のように。しかし、このクラスのものがどんどん出てくるのであれば苦労はありません。この難しさを「儲かりそうだというので慌てて」Wiiに参入したサードパーティが理解しているかどうかを危惧しているのがNofsinger氏の発言ではないでしょうか。開発費とマンパワーで解決する「ハリウッドスタイル」が破綻しつつあるからこそ、今後のWii用サードパーティ製ソフトの開発は難しいものとなるでしょう。

セガの取った両面作戦は実に堅実な回答です。元から「ヘビーに遊ぶ人たち」向けのソフトを作っていた嗅覚があるからこその注目作獲得ですし、同時に「ライトに遊ぶ人たち」に向けたタイトルを模索する発想力も体力もあります。

では、両面作戦を取れないところはどうするのか。

Wiiで遊ぶ人々という、最も混沌とした層を理解できるのか。2009年はWiiユーザーにとっては注目の年であり、サードパーティにとっては金銭面とは別の意味でも試練の年となるのではないでしょうか。
《水口真》
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