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バーチャルリアリティで世界一を目指す―IVRC岐阜大会レポート

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バーチャルリアリティで世界一を目指す―IVRC岐阜大会レポート
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手作りのバーチャルリアリティ(VR)作品で日本一を競うという、ユニークなコンテスト「IVRC」(国際学生対抗バーチャルリアリティコンテスト)の本大会が11月7・8日、岐阜県各務原市で開催されました。VRやロボット関連の最新技術を体験できるイベント「テクノメッセ」の一環として開催され、会場となったテクノプラザでは、多くの来場者で賑わいました。

IVRC岐阜本戦の会場となったテクノプラザIVRCは学生が中心となって企画・運営されている点が特徴だ


IVRCは学生が自分たちの技術とアイディアでさまざまなスタイルのVR作品を制作し、世界にチャレンジできる、国際的にも珍しいコンテストです。優勝作品はアメリカで開催される、世界最大級のCG国際会議・展覧会「シーグラフ」への投稿サポートなどが受けられます。2004年度からはフランス・ラバル市で開催される欧州最大級のVR関連イベント「ラバル・バーチャル」とも協力関係を結び、互いに招待作品を展示するなど、さらなる国際化を果たしました。

ゲーム業界でVR技術といえば、セガ・ジョイポリスなどの大型アトラクション類が連想されますが、最近ではWii・DSのヒットで、家庭でもお馴染みの存在です。また今年の東京ゲームショウでは、拡張現実(AR)技術を用いた、PC向け電脳フィギュア「ARis」が展示され、静かな注目を集めました。このように一口にVRといっても応用範囲は幅広く、学生ならではの視点で世界に切り込める分野です。IVRC卒業生がゲーム業界に進む例もあり、ゲーム業界でもフロム・ソフトウェアが協賛しています。

IVRCでは今年からレギュレーションが変わり、団体部門と個人部門が、大型のインスタレーション部門と、小型のハンズオン部門に変更となりました。ハンズオン部門の審査は9月に開催された東京予選大会で終了しており、傘を用いた「アソブレラ」が通過しています。一方インスタレーション部門は4作品で、高専チームの作品で、臭いをテーマにした「La flèche de l'odeur」がトップ通過。これにラバル・バーチャルからの招待作品を加えた、全6作品で総合優勝が競われます。東京予選と岐阜本戦では約2ヶ月しか猶予がありませんが、毎年ここで大きく作品が進化し、思わぬ番狂わせがあるのが、IVRCのおもしろいところです。なお東京予選大会についてはINSIDEでもレポートしていますので、併せてご覧ください。

http://www.inside-games.jp/news/312/31212.html

今年で16回目を迎えたIVRCですが、中でもここ数年間のレベル向上にはめざましいモノがあります。中でも2006年度の岐阜VR大賞に輝いた「ビュー・ビュー・VIEW」(電気通信大学/blue elephant)は、ラバル・バーチャルでベスト・インターフェース賞に輝いただけでなく、07年度の文化庁メディア芸術祭アート部門で優秀賞も獲得しました。これ以外にも、毎年シーグラフのエマージングテクノロジー部門に採択される作品が続出しています。

http://plaza.bunka.go.jp/festival/2007/art/000817/

一方でフランスからの招待作品もレベルが急上昇しており、昨年度の「タイムマシーン:ヴェルダン1916」は、わずか1票差で総合優勝を逃したほど。今年もIVRC史上最強の"刺客"が来日しました。それが枕をスクリーンに見立てて、夢の世界が体験できる「the Dreaming Pillow」です。実はこの作品、すでに今年のシーグラフで採択されており、実力は折り紙つき。迎え撃つ日本勢の作品の仕上がり具合に期待が高まるところです。審査結果によっては、優勝旗がフランスに渡る事態も十分に考えられます。



枕をスクリーンに見立てて夢の世界が展開する「the Dreaming Pillow」

「テクノメッセ」についても、簡単にご紹介しましょう。岐阜県では県南部の濃尾平野を流れる木曽三川流域を中心に、情報産業を中心とした産業育成「スイートバレー」構想を推進しています。会場となったテクノプラザは、大垣市のソフトピアジャパンと並んで、その中核拠点という位置づけで、VRやロボット技術などの研究開発・製品化を行う研究所や企業群が多数入居しています。テクノメッセは、これらの技術を一般に公開するイベントで、IVRCのほかに、バーチャルロボットを作る体験教室や、テクノプラザ内の機関・企業が開発したロボットの展示会、バーチャル飛行体験や災害避難体験など、さまざまな企画が行われました。

さて、前置きが長くなりましたが、いよいよ本戦の作品群を紹介しましょう。まずインスタレーション部門の4作品を、予選の通過順に紹介します。どれが総合優勝に輝くか、想像しながら読み進めてください。(カッコ内は学校名とチーム名)。

■インスタレーション部門

No.1 La flèche de l'odeur(金沢工業高等専門学校/TOM-KIT’s)

ニオイのきつい食べ物で口臭力をアップし、吹き矢の要領で息を吹きかけて、スクリーン上の悪霊を撃退するというゲーム的な作品です。予選大会では口臭の強さしか計測できませんでしたが、本戦では「豆」「トマトジュース」と2つの食品識別が可能になりました。ゲームを始めると、まず鬼とドラキュラが登場するので、それぞれ豆とトマトジュースで撃退します。中ボスの「はなマン」は、キムチなどで口臭を高めて撃退し、ラスボスのケルベロスは一転、水を飲むなどして口臭を下げなければ撃退できないなど、ストーリー性を盛り込みました。このほか予選では安全性の点から見送られた左右8カ所のファンも、ガードをつけて回転するようになり、ゲーム中で風が吹いてニオイが左右にそれる仕様も実現。観客向けにニオイの動きを映像で表示する機能も盛り込まれました。

筒の先端にはWiiリモコンが設置されており、振動もする。アプリケーションはWindowsベースで、使用言語はC#だ。
食品群には各務原市名産のキムチも用意された。台の裏側には手作りの基盤やPC、センサー類などがずらり。
学校のマスコットキャラ「ドリバ」も応援に駆けつけた。


No.2 かおさがし(北陸先端科学技術大学院大学/くろびかり)

カメラで撮影した「顔」の画像とコミュニケーションが取れる作品です。人形型デバイスにカメラとタッチパネルが内蔵されており、撮影した人の顔などが画像処理され、キャラクターとなります。顔を撫でると音声メッセージが流れるなどの対話が楽しめ、撮影後はPCに転送すると、モニターに40体まで表示される仕組みです。予選では目が2つ、口が1つあるものを「顔」として認識していましたが、本戦では新たに「鼻」も認識可能になり、顔のタッチ制御点も4点から8点に増え、アニメーションがなめらかになりました。このほか▽デバイスに内蔵された加速度センサーで、人形を振って対話する▽音声メッセージの抑揚やピッチ、間などを自動生成するエンジン▽感情モデルの実装など、大きく7点の改良が行われ、より感情移入できる作品に進化しました。

スタッフが全員かぶり物をして説明にあたるなど、遊び心も満載。ブロックや紙のパーツを並べるなど、いろいろな顔作りもできる。撮影した顔のキャラクターは、有線で転送され、スクリーンに表示される。


No.3 YOTARO(筑波大学/おたまじゃくし)

赤ちゃんのキャラクター「与太郎」を撫でたり、顔を突っついたりして、コミュニケーションがとれる作品です。予選では顔のみの展示でしたが、本戦では体が作られ、ベビーベッドに寝かせた展示スタイルに進化しました。顔のシリコン膜の厚さは3mmから2mmになり、よりプニプニ感が増加。新たに「寝ぼけ→ごきげん→うとうと→ねむり」という4ステップの循環型感情モデルを導入し、四肢も1/fゆらぎアクチュエーターで動かすなど、より現実の赤ちゃんに近づいています。顔を撫でるだけでなく、ガラガラで与太郎をあやすこともできるようになりました。また審査員や詳しい説明を希望する人向けに、作品の裏側を見せて仕組みを解説する「バックヤードツアー」も実施。子供部屋風の展示や、スタッフがエプロンを着て対応するなど、細部まで力が入れられていました。

顔だけだった与太郎に体がつき、赤ちゃんらしくなった。おでこから出ていた「汗」は、「鼻水」に変更された。
子供部屋風の展示など、世界観の作り込みはピカイチ。バックヤードツアーではスペアの顔も用いて解説がなされた。


No.4 人間椅子(東京大学/変態)

江戸川乱歩の小説「人間椅子」をモチーフにした作品です。右側は椅子の上(安座椅子)、左側は椅子の中(潜伏椅子)という設定で、潜伏椅子の体験者は両腿に長方形の板を紐で装着して座ります。安座椅子の下側には「バランスWiiボード」が横に2台並べられており、右側の体験者の体重移動による動きが、左側に伝わる仕組みです。予選では安座椅子から潜伏椅子への一方向のみの伝達でしたが、本戦では逆の情報伝達も可能になり、双方向で楽しめるようになりました。潜伏椅子から安座椅子では、両太股の下を押し上げるギミックが組み込まれており、両方で違った感触が体験できます。また板の装着がワンタッチで可能になり、スカートを履いた女性でも簡単に体験できるようになりました。提灯を置いたり、椅子のデザインを向上するなど、大正ロマン風の展示も行われました。

2人1組で体験する。カップルや夫婦向けの作品だ。「安座椅子」では椅子の座り心地も向上した。
こちらは「潜伏椅子」で、椅子の内部という設定。板の取り付けがより手軽にできるように改良された。


続いてラバル・バーチャルの学生コンテスト部門「Le Village de la Création」でIVRC賞を受賞し、今年のシーグラフ・エマージングテクノロジー部門の「Slow Art::Rhythms」で採択。満を持して来日した「the Dreaming Pillow」を、改めて紹介しましょう。作者のArmella LeungさんとOlivier Oswaldさんは、パリ第8大ATIの学生カップルで、夫婦による参加です。IVRCフランス代表作品がシーグラフで発表し、IVRCの前にシーグラフで採択、夫婦で参加と初めてづくしとなった作品で、付け加えるならArmellaさんは中国系マダガスカル出身のフランス人という、さまざまな意味でユニークな作品です。

http://www.siggraph.org/s2008/attendees/slow/rhythms.php

No.5 the Dreaming Pillow(パリ第8大ATI/Armella Leung & Olivier Oswald)

枕をスクリーンに見立てて、夢の世界が映像で展開されるという作品です。枕にはOlivierさんがパリ国立高等鉱業学校と共同で開発した、静電方式のマルチタッチセンサーが内蔵されており、表面を撫でることで、さまざまなインタラクションが展開されます。作品には6つのコンテンツが含まれており、Armellaさんが一晩の間に見た夢という設定です。枕を押し込むと次のコンテンツに移りますが、コンテンツの中にはタッチして操作できるものと、そうでないものがあり、それぞれの内容も抽象的なものです。それだけに夢ならではの思うに任せない、漠然とした世界が体験できます。なお、コンテンツの途中で枕を放置しておくと、映像が消えて最初に戻ります。コンセプト・グラフィック・プログラムがArmellaさん。サウンドとセンサー製作をOlivierさんが担当しました。

靴をぬぎ、枕の周りに座って体験するスタイルも新鮮だ。作者のArmellaさん(左)とOlivierさん(右)は大学院生の夫婦。


the Dreaming Pillowの夢の世界

0:枕を撫でると、指の動きに沿って波紋などが広がる。次第に夢の世界に入っていくイメージ1:おとぎ話の影絵のような、黒い森が広がる。タッチすると森が拡大縮小したり、動いたりする
2:緑の木々の奥に、フランス語で物語の一文が表示される。タッチすると文章がランダムに変化し、すべてを把握できない。3:映像が消え、手や顔型が浮かび上がる。途中で目が覚めてしまい、うとうととしているイメージ
4:雨が降ってきたイメージ。黒い部分を手で下になぞると、黒い水滴がつーっと流れ落ちる5:ルナシア(monnaie du pape)の種が風に吹かれて飛んでいく。枕をタッチして風を起こし、種を転がすことができる
6:猫と金魚。猫は金魚を捕まえようとするが、どうしても捕まえられない。ムービーのみで操作はできない


最後にハンズオン部門の作品です。インスタレーション部門が2m四方以内の展示スペースなのに対して、こちらは2平米以下の小規模作品が対象です。東京予選大会では7作が集まり、例年にない活況ぶりとなりました。ちなみに作品の大小と評価は関係なく、ハンズオン部門が総合優勝を飾る可能性も、おおいにあります。

■ハンズオン部門

No.6 アソブレラ(大阪大学大学院/アトム)

雨天時に傘にあたる雨粒の刺激を再現する作品です。ビニール傘を利用したデバイスで、骨組みにスピーカーの構造を模したセンサーが組み込まれています。本戦では新たにバケツの水や、納豆、スパゲッティ、さらには蛇や猫など(サンプリングに用いられたのは縫いぐるみでしたが)の衝撃が体験できる、新型アソブレラが登場しました。iPod touchをリモコンに使用しており、自作アプリを用いて、ワンタッチでさまざまな振動が楽しめます。低音域と高音域の2種類のモーターも設置されましたが、音の出力が低下する問題があり、低音域のみの再生となりました。このほか縫いぐるみなどのセンサーを手でタッチすると、振動がアンプで増幅されて傘に伝わるデモなどが披露されました。初日の来場者人気が、最も高かった作品でもあります。

写岐阜本戦向けに改良された新型アソブレラ。モーターが左右に2基加えられたが、残念ながら動作はせず。
iPod touchでアプリケーションを自作し、リモコンに応用した。従来のアソブレラでは、縫いぐるみのスイッチも用意した。


■招待作品

予選で惜しくも敗退した「うそ科学シリーズ レンズのふしぎ」と、プレゼンテーション審査で敗退した「縁環」も、招待作品として展示されました。

No.7 うそ科学シリーズ レンズのふしぎ(岐阜大学/おかか)

凸レンズの特性をうまく活用した作品2点です。作品1は目の前で虫眼鏡を動かして物体の見かけの大きさを拡大させると、それに応じて質量も増加するというもの。作品2はターレットを回すと、筒の先端に虫眼鏡がある時とないときで、リンゴの木の見かけの向きは一定のまま、実に見立てたボールがケース内で上下移動する様子が観察できるというもの。距離によって凸レンズの像が拡大・反転する性質と、モーター制御で変わる鏡の傾きが連動する仕組みです。本戦ではどちらも機構が小型化・シンプル化され、前者は天秤の原理を利用することで、電気機構を排除することに成功しました。子供の体に合わせたサイズになっている点も特徴です。後者ではターレット形状の採用で、現象をよりわかりやすく観察できます。機械トラブルで後者がうまく作動しなかった点が残念でした。

虫眼鏡を前後に動かすと、像の大きさでシーソーの重みが変わる。虫眼鏡には滑車を通して重りがぶら下がっている。
ターレットを回してのぞき込み、箱の中を観察する。木はレゴブロックで作られ、機構も小型化された。


No.8 緑環 Ver2.0(IAMAS/坂口倫崇)

バーチャル鐘突き的な作品です。紐を持って鐘突き棒を前後に振ると、鐘楼を突いた時と同じ「ゴ〜ン」という音が鳴ります。これによって普段の静寂をより深く感じてもらおうという趣向です。鐘突き棒の上部に目立たないように加速度センサーが設置されており、これで棒の前後の動きを計測する仕組みですが、音ではなく静寂を楽しんで欲しいというコンセプトから、あえて棒の速度で音量が変化するなどの仕組みは入っていません。鐘突き棒には杉の生木を用いて自作しています。プレゼンテーション審査の落選後、メディアアート展の大垣ビエンナーレ向けの作品として、会場の雰囲気にあわせて制作されました。そのため本戦では黒幕などの覆いもなく、むきだしの展示になったのが残念でしたが、ときおり会場全体に響く鐘の音が印象的でした。

余計な装飾をすべて取り払ったシンプルさが際だっている。


岐阜本戦で驚かされたのは「YOTARO」の進化ぶりでした。顔の造形や質感が優れていたのはもちろんですが、個人的にツボにはまったのは、体のむにむにした動きぐあいです。実際には木製の手足がむき出しで収まっているわけですが、毛布一枚隔てたことで、大きな効果が感じられました。動きづけには知人や先輩のパパさん、ママさんにヒアリングしたり、メンバーの一人が赤ちゃんだった時に両親が撮影してくれたビデオを見たりして研究したとのこと。幾重にもAI、もとい愛にくるまれた作品となりました。また「緑環」のシンプルさや作家性も興味深いものでした。今までのIVRC作品とはベクトルの違う内容で、こうした作品が登場してきたことに、IVRCの広がりや成熟さが感じられました。


競技形式の「ロボコン」などとは異なり、IVRCでは審査員による投票で審査が行われます。審査のポイントは「新規性」「技術性」「作品性」などで、審査員の主観が入るのは避けられず、審査員室では毎回白熱した議論が展開されます。特に今年は高レベルの戦いで、最終的に「YOTARO」が総合優勝を獲得。ラバル・バーチャル賞とのダブル受賞にも輝き、チームリーダーの國村大喜さんが号泣しながら表彰を受ける一幕も見られました。

一方でフランスチームの「the Dreaming Pillow」は、実質的な2位ともいえる岐阜VR大賞を受賞し、昨年同様に日・仏の順で決着となりました。このほか一般御来場による投票で選出される各務原市民賞には「アソブレラ」が輝き、人気ぶりをアピールしました。

実行委員会・委員長の舘?教授に作品を説明する「アソブレラ」のメンバー。総合優勝に感極まって号泣する「YOTARO」の國村さん。


審査委員長をつとめる筑波大学の岩田洋夫教授は「IVRCが始まった当初は、まともに動いたら勝ちという側面もあった。これが次第にレベルが向上していき、ここ数年は技術が重要だった。今年はさらにワンランクアップして、技術や世界観の『見せ方』が勝負の分かれ目となった」と講評を述べました。また國村さんは「さらに超絶進化を遂げて、世界でもがんばります」と抱負を述べました。

講評を述べる審査委員長の岩田洋夫教授。



IVRC2007 岐阜本大会

総合優勝「YOTARO」(筑波大学/おたまじゃくし)

岐阜VR大賞「the Dreaming Pillow」(パリ第8大ATI/Armella Leung & Olivier Oswaldt)

各務原市長賞「La flèche de l'odeur」(金沢工業高等専門学校/TOM-KIT’s)

審査員特別賞
アソブレラ(大阪大学大学院 情報科学研究科/アトム)
かおさがし(北陸先端科学技術大学院大学/くろびかり)
人間椅子 (東京大学/変隊)

ラバルバーチャル賞「YOTARO」(筑波大学/おたまじゃくし)

各務原市民賞 アソブレラ(大阪大学大学院 情報科学研究科/アトム)

約半年間にわたるIVRCのコンテストでも、制作に当てられる期間は限られています。特に予選から本戦までは2ヶ月弱しかありません。これまでも東京予選大会で土台となる技術をしっかり固めて、岐阜本戦で世界観などを広げるといった例が見られましたが、「YOTARO」もこのパターンでした。ゲームデザインを固めて、必要な技術要素を抽出し、できるだけ早く仕様を実装して、調整に時間をかけるというのは、おもしろいゲームを作るためのセオリーでもあります。IVRCにおいても、この「2段ロケット」の力の配分をどのようにするかが、上位入賞の鍵といえそうです。

ちなみに、日本のVR作品が一同に集結する場として、2005年よりインタラクティブ東京(itokyo)というイベントが始まり、東京予選大会と併催されるようになりました。IVRCの入賞作品も、翌年のitokyoでさらに進化して展示される例が増えています。「YOTARO」についても、これから来年のラバルバーチャルへの招待展示、シーグラフへの投稿などを経て、itokyoで凱旋展示が行われるかもしれません。今回展示された作品群が、今後どのような進化を遂げていくか、これからも楽しみです。

YOTARO/チームリーダー 國村大喜さん(筑波大学大学院・人間総合科学研究科)コメント

(受賞を聞いたとき)夢のようでした。(予選から本戦に向けて)死にものぐるいでやったという感じです。バックヤードツアーについては、いちおう僕のアイディアです。予選では審査員の方々に、うまく技術を伝えきれなかった反省点がありました。中でもシリコンの成型法などにすごく力を入れたので、そこも含めて伝えたかったんです。世界観の作り込みについても、みんな責任感があって、こだわりぬく性格だったので、メンバーの勝利ですね。自分たちの作品を、どこまで深く愛せるかという。この5人でやってこれてよかったです。一生自慢できます。実は東京予選の時は、尖ったものを作ることが目的でした。ところが蓋を開けてみると、親しみやすい作品の方が好まれるのかなと感じまして、本戦では誰が見ても可愛らしい作品にしようと方向転換したんです。赤ちゃんには言葉がないので、海外でも魅力が理解してもらえると思います。シーグラフやラバルでもがんばります。

総合優勝を飾ったチーム「おたまじゃくし」(優勝旗を持つのが國村さん)


審査委員長 岩田洋夫氏(筑波大学教授)インタビュー

―――作品のレベルの向上がめざましいですね。

岩田:これまでは、基本的なアイディアやシステム、それらを実現するための技術などに、何か光るモノや、おもしろいものがあれば、作品が上位にきたり、優勝したりといった傾向がありました。それが今年は「おもしろい」というのは当たり前で、それを使ってどのような世界を作るかであったり、技術の「おもしろさ」をどう見せるかが勝負の分かれ目になりましたね。一段階レベルが上がりました。

―――どちらも、専門家にしか理解できないのでは意味がありません。

岩田:そうそう。だから「YOTARO」の場合は、表から見ると「赤ちゃん」という一つの閉じた世界観が作られていて、完成度も高い。その上で技術的に何が面白いかを見せるために、バックヤードツアーも用意した。表と裏がセットになった作品、裏まで含めた一つの世界なんですね。その総合的なまとめ方、見せ方が秀でていたんです。

―――確かに、それは今までになかったですね。

岩田:逆にフランスチームの作品は、表から見た世界観は非常に秀逸だったんだけど、せっかく面白いセンサーを開発したのに、そこの部分は完全に黒子になっていた。技術の見せ方は単調だった、ということです。

―――過去のIVRC作品で、フランスと日本では、どのような傾向の違いがありましたか?

岩田:フランスは映像の国なんですね。中でも芸術性の高い映像が得意です。だから伝統的に、映像で優れた世界観を提示しているのが特徴です。ただし、インタラクションそのもののおもしろさは、今までは乏しかった。それが今回の作品では、微妙な手触り感まで取り入れられるように、既存のセンサーを利用するのではなく、高度なものを自作していた点が秀逸で、新しい展開を築いたと思います。

―――逆に日本勢はインタラクションや、デバイスのおもしろさが強いですね。

岩田:これまで映像を作り込む人は、IVRCにはあまりいませんでした。そういう人たちは、日本では学生CGコンテストなどに多いですね。実際に動画部門などの完成度はすごくて、ものすごくアーティスティックで、高度な作品が多いです。ただ、あまりインタラクティブじゃないんですよ。逆にフランスチームでは、日本だとそうしたコンテストで入賞するようなクリエイターたちが、インタラクティブしている、という特徴があります。そういった作り手の層の違いはありますね。

―――これからも、お互いの作品が刺激を受け合って、作品を高めていければいいですね。ありがとうございました。
《小野憲史》

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