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【CEDEC 2008】女性ががんばる新しいゲーム開発 + α in 『99のなみだ』

今年6月に発売されたバンダイナムコゲームスのニンテンドーDS向け『99のなみだ』は、泣くことをテーマとした作品です。泣くことには癒しやストレスを軽減する効果があることが実証されていて、本作は産学連携のもと、プレイヤーのその日の心境に合ったショートストーリーを呼んで泣いてもらい「また明日も頑張ろう」と思って貰えることを目的にしたゲームです。特色あるテーマであるだけでなく、女性が中心になって制作された本作について、「女性ががんばる新しいゲーム開発 + α in 『99のなみだ』」と題したセッションがCEDEC 2日目に開催されました。

任天堂 DS
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今年6月に発売されたバンダイナムコゲームスのニンテンドーDS向け『99のなみだ』は、泣くことをテーマとした作品です。泣くことには癒しやストレスを軽減する効果があることが実証されていて、本作は産学連携のもと、プレイヤーのその日の心境に合ったショートストーリーを呼んで泣いてもらい「また明日も頑張ろう」と思って貰えることを目的にしたゲームです。特色あるテーマであるだけでなく、女性が中心になって制作された本作について、「女性ががんばる新しいゲーム開発 + α in 『99のなみだ』」と題したセッションがCEDEC 2日目に開催されました。

セッションでは、2006年1月頃の企画誕生から、2008年6月のゲーム発売まで、開発を時系列で追い、それぞれで中心的役割を果たした4名からゲームができるまでが説明されました。

時系列に沿って紹介、磯氏


まずゲームの企画の最初について話してくれたのはコンテンツ制作本部 第2制作ディビジョン 第5制作ユニット CG6課の磯 桂子氏です。インサイドのインタビューでも詳しく語られていますが、企画の誕生は「3年間作ってきたゲームの突然の開発中止」が発端になったようです。精神的に疲れ切った状態で、それを「癒すようなゲームを作れればいいね」と後に登場する青木氏と相談したのがきっかけで、具体的なアイデアはなかったものの『99のなみだ』というタイトルは当初からあったようです。これには100回目には立ち直って欲しい、という気持ちが込められているそうです。

続いて登壇したコンテンツ制作本部 第2制作ディビジョン 第5制作ユニット 企画8課の青木 奈津子氏は、具体的な企画の立案について説明しました。企画の中で、「前向きになる」ために"喜怒哀楽"というテーマは比較的容易に生まれたそうです。偶然にも社内で早稲田大学の河合教授による「ゲームの処方箋プロジェクト」の報告会があり、ゲームの生理的・心理的効果について触れる機会があり、すぐにアプローチ、産学連携プロジェクトが立ち上がったそうです。こうした中で前向きになる手段として"泣き"に焦点が当たっていきますが、産学連携でそれが本当なのか実証する徹底的な研究を行ったそうです。青木氏は「泣くとすっきりするよね、という感覚はあっても、それが科学的に証明されたものが分かるというのは、情熱的に取り組むことにも繋がるのではないでしょうか?」と振り返りました。

人はどこで泣くのか?


"泣く"という感情的なテーマを取り入れたことで次に問題となるのが、個人差という問題です。アンケートを行ったところ、泣けるポイントやその理由は男女で大きな差があることが分かったそうです。そこで『99のなみだ』では3つの必要がありました、「泣けるコンテンツ(物語)」「泣けるシステム」「泣きやすくする工夫」です。ここから、沢山のコンテンツを用意し、個人の性格を分析して、その人にとって泣けるコンテンツを提示する「涙のソムリエシステム」が浮かび上がってきます。

このシステムは「物語の感動を誘う要素」と「それに共感する個人の要素」を結びつけようというものです。まず、用意した物語から要素を抽出して、登場人物・状況・物語の展開などをクラスタリングしておきます。次に、ゲームの最初の起動時のアンケートなどでプレイヤーの特性を把握、各物語に適合度を設定し、更にこれに毎日の起動時に聞かれるその日の気分を加味して、提示する物語をチョイスします。これによって適切な物語で選択され、かつ同じような物語が毎日選ばれることを防いでいます。

青木氏は「新機軸」のことをやるのは難しいと開発を振り返った上で、
・魅力的なコンテンツがあること
・作れる見込みがあること (産学連携)
・簡単には諦めない根性があること
が重要だと振り返りました。ただ、新機軸を打ち出せた一方で、実際の売上としては厳しい数字が出ていて、「魅力なコンセプトだけど、中身が伴っていなかったのでは?」などの検証を行っているとコメントしていました。

『99のなみだ』の実制作の面で


同じくコンテンツ制作本部 第2制作ディビジョン 第5制作ユニット 企画8課の鈴木 恒氏からは「+α」の部分として、女性ならではのこだわりを現実的なアイデアに落とし込む作業について語られました。ここでは、物語の開始時にランプを点灯し、読み終わった時に吹き消す、という一見意味のない仕様が非常に好評であることや、当初は一日一話しか読めない仕様が提案されたことが紹介されました。「女性ががんばる新しいゲーム開発」ということで、こういったアイデアは非常に重要な一方で、現実的に落とし込むことも必要で、一日一話の仕様は「それを推奨する」という風に落ち着いたそうです。

さまざまなタイアップを実施、他の開発者へのエール


最後に販売面のプロデュースを務めた石田 実緒氏からタイアップ展開やパブリシティ面の取り組みについて紹介されました。タイアップは話題性の面から考案され、タレントの入山法子さんの起用、物語への著名執筆陣の起用、テーマソングのmoumoonさんの起用、書籍版の出版などが触れられました。中でも6日に第2弾が出版され、第3弾も決定しているという書籍版は累計で32万部が販売されるなど人気になっているそうです。

パブリシティ面では雑誌・フリーペーパーの約50媒体、TV・ラジオ・新聞の約15媒体に取り上げられたことが紹介されました。石田氏は、(1)新機軸の製品なら取材は向こうからやってくる(その通りでございます・・・) (2)タイアップによって媒体の幅が広がる (3)女性はまだまだ珍しい (4)新聞は起爆剤として有効 と説明しました。

最後に総括として石田氏は、"涙"を切り口に新しい市場の創造に挑戦してきましたが、会社・流通の理解や認知向上という面で女性に届ける難しさという壁があったと振り返りました。そして同じ朝鮮をする開発者に向けて、「科学的な証拠は集めるだけ集めて損はありません。でも、最も説得力があるのは体験者のレビューで、最後はその感覚に自信を持ってゲームを作って欲しい」と締めくくりました。
《土本学》
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