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Shoot It! #059 - 闘劇の予選で新しいヒーローを探そう

2008年6月21日、川崎のワンダーパーク ヒーローズベースで闘劇の店舗予選大会が開催されました。闘劇はアーケード版格闘ゲームの全国大会です。ゲームセンターを盛り上げようとアーケードゲームの専門誌が企画し、2003年に第1回が開催されて以来、ほぼ毎年1回のペースで開催されています。その歴史では上位入賞者が海外の大会で優秀な成績を修めることも度々あり、海外のプレーヤーからも結果が注目される競技会となっています。闘劇は全国のゲームセンターで予選を開催し、種目によっては地域ブロックの決勝戦を経て、1位になった選手やチームが決勝大会に集まると言う壮大なトーナメントです。皆さんの町が予選会場となり、そこから日本王者が誕生する可能性もあるわけです。

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Shoot It! #059 - 闘劇の予選で新しいヒーローを探そう
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2008年6月21日、川崎のワンダーパーク ヒーローズベースで闘劇の店舗予選大会が開催されました。闘劇はアーケード版格闘ゲームの全国大会です。ゲームセンターを盛り上げようとアーケードゲームの専門誌が企画し、2003年に第1回が開催されて以来、ほぼ毎年1回のペースで開催されています。その歴史では上位入賞者が海外の大会で優秀な成績を修めることも度々あり、海外のプレーヤーからも結果が注目される競技会となっています。闘劇は全国のゲームセンターで予選を開催し、種目によっては地域ブロックの決勝戦を経て、1位になった選手やチームが決勝大会に集まると言う壮大なトーナメントです。皆さんの町が予選会場となり、そこから日本王者が誕生する可能性もあるわけです。


海外ではPCのネットワークを使ったEスポーツ大会が発展しましたが、日本ではゲームセンターと言う独特の文化で、Eスポーツに近い競技会が誕生し着実に成長してきました。ゲームメーカーの主催ではなく、多くの種目を用意してプレーヤーを主役に据えるところも海外のEスポーツ文化の形成に似ています。私たちにとって最も身近な競技会と言えるでしょう。

会場のワンダーパーク ヒーローズベースはJR川崎駅に隣接したショッピングモール「ラゾーナ川崎」の4階にありました。土曜日の午後であり、ボーナスシーズンのためか、ラゾーナ川崎には大勢の人々が訪れています。ワンダーパーク ヒーローズベースも賑わっていました。場所柄でしょうか、生粋のゲームプレイヤーだけではなく、カップルやグループ客、家族で訪れる人も見かけます。人気のクレーンゲーム機や大掛りなメダルゲーム機を通り抜けたところにステージがありました。これだけの規模のゲームランターだとイベントステージがあるんですね。ふだんゲームセンターに寄る事も少なく、行ったとしても街中のゲームセンターしか知らない私にとって、このステージは刺激的な舞台に見えました。

トーナメント表では6組のチームが登録されています。1チーム3人の勝ち抜き戦というルールで、私が到着したときはすでに半分ほどの試合が消化されており、準決勝が始まるところでした。ステージの左右の端にチームが陣取る筐体があり、ステージ中央の大きなスクリーンで戦いを観戦できます。司会役の女性は頑張って幕間を盛り上げていましたが、実況中継や解説がほしいと思いました。他のゲームで遊びに来た人に闘劇や格闘ゲームの世界を知ってもらう良い機会だと思うのですが、予選大会という規模では仕方ないのかもしれません。

ステージ前の座席は50ほどあり、選手用の18席を除いてほぼ満席。選手の応援をする仲間や、格闘ゲームのファン、たまたま通りがかって観戦する人などがステージを見つめています。ほとんどが若い男性ですが、女性のグループや親子連れも見かけました。ほんの暇つぶしかもしれませんが、そんなきっかけでも、ゲームを真剣に競技するという世界に触れる良い機会になります。ステージ上では熱戦が繰り広げられていますが、そのステージ前を堂々と通過するベビーカーもあります。いにもショッピングモールの中という雰囲気です。しかし、それくらいで士気を乱される選手はいませんし、観客も試合に夢中です。むしろ、人々の暮らしの中にゲーム競技会が融和しているようで微笑ましい光景でした。観客たちの反応は控えめでしたが、ステージ上で大技が決まると微かなどよめきが起こり拍手が沸く。そこに観客の一体感があります。

今回の競技種目である「鉄拳6」は、3D空間で1対1の戦いを真横からの視点で見るという典型的な格闘ゲームです。同系統のゲームとしてバーチャファイター、デッドオアアライブなどがあります。私の格闘ゲーム観戦経験は、昨年のWCG日本予選に採用されたデッドオアアライブしかありません。その乏しい知識で鉄拳6を観戦して見ると、全体的には大技よりも小さな攻撃の積み重ねで敵の体力を削っていく選手が多いようです。デッドオアアライブは敵に技を決めて、敵が空中に浮いたところで連続ワザを決めて、たたみかけるように倒すというパターンが多かったと記憶しています。しかし鉄拳6の場合は敵の"滞空時間"がさほど長くなく、すぐに地面に落ちてしまいます。地面に横たわったあとも逃げやすく、倒れた状態からの反撃もしやすいようです。もちろん投げ技など破壊力の大きなワザも用意されているようですが、大技を巧みに外す選手も多く見られました。結果、大技よりも小技で相手の体力を削るという試合展開でした。

そんな中で目立った選手はチーム「テッケン4」のカイオー選手でした。カイオー選手が操るキングというキャラクターは、かつてプロレス界を賑わせたタイガーマスクに似ています。そのキングの技のバリエーションが豊富でした。円盤投げのような大技を連発するだけではなく、絞め技、関節技を巧みに組み合わせます。他の選手とは異なり、明らかに大技狙いの戦いでした。大技を決めるためには相手の懐に飛び込まなくてはならず、それだけに小技で反撃を受けやすい。自身もどんどん体力を削られながら、それでも技をかけにいく。そして相手に大きなダメージを与えて勝つ、というパターンです。まさに、肉を切らせて骨を断つ戦いぶりでした。格闘ゲームに詳しくない私には、その戦い方が勝ち方のセオリーかどうかは判りません。しかし、カイオー選手は戦いを楽しんでいます。技をかけることに喜びを感じています。それはしっかりと伝わってきました。カイオー選手は意識していないかもしれませんが、これは見せる戦い。観客に対するアピール度はかなり高いのです。決勝戦。観客が最も集まった瞬間に、カイオー選手はやはり大技を連発します。控えめな姿勢だった観客たちも、最後の試合は声をあげ、拍手を送りました。結局、3人チームの2番目、副将格のカイオー選手が連勝してチームを優勝に導きました。表彰式で「ぼくが何にもしないのに勝っちゃった」という主将の言葉が印象的でした。

イベント終了後、思わずカイオー選手に話しかけました。「いつも、どんな技をかけようかと考えながら戦っているんですか」と聞くと、得たりとばかりに「そうなんですよ」と。「でも、相手の懐に入るまでに削られちゃうでしょう」と言うと「そうですね。だから思い切りが大切なんです」と応えてくれました。カイオー選手は闘劇の参加は今回が初めてだそうです。もしかしたら、私は川崎予選で新たなヒーローを発見したのかもしれません。彼らは今後、神奈川ブロック大会に参加し、そこで勝ち残ると8月の決勝大会に出場できるそうです。カイオー選手の実力が全国レベルでどれほどかはわかりませんが、私はカイオー選手とチーム「テッケン4」を応援しようと思います。Eスポーツも他のスポーツと同じく、贔屓の選手やチームがあったほうが楽しく観戦できますから。

闘劇の予選は全国で始まっています。8月15-17日の本戦に向けて戦いが繰り広げられています。あなたもぜひ、お近くの予選に出かけてみてはいかがでしょうか。甲子園やオリンピックと同じか、あるいはそれ以上の感動と興奮を体験できるかもしれません。
《杉山淳一》
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