人生にゲームをプラスするメディア

仮想コミュニケーションビジネスの勝因を探る―シンポジウム「仮想世界におけるコミュニティサービスの現在」

BBA(有限責任中間法人ブロードバンド推進協議会)は11月22日に都内にて、「仮想世界におけるコミュニティサービスの現在」と題したシンポジウムを開催しました。セカンドライフやSNSなど、オンライン上の仮想世界におけるコミュニティサービスについて現状を把握し、コミュニティサービスのあり方、進むべき進化の方向を導き出そうという趣旨です。講師はマイスペースのオジー井上氏、スプリューム代表取締役の梶塚千春氏、日本技芸のリサーチャー、濱野智史氏です。オンライン上の仮想コミュニケーションがゲームに近い文化を持つこともあり、司会進行はBBAオンラインゲーム専門部会部会長の新清士氏が担当しました。

ゲームビジネス その他


マイスペース オジー井上氏


myspace.com は2億1千万人もの会員を擁する世界最大のSNSサービスです。ユーザー増加数は1日あたり32万人。1秒ごとに3.7人が登録しています。世界的なWebページビューカウントではすべての検索ポータルサイトを抜いて1位。2007年7月の統計データで約500PVをカウントしました。これだけの成長を遂げた要因について井上氏は「自己表現」というキーワードを挙げました。ほとんどのSNSではプロフィールページが定型です。しかしmyspace.comではhtmlやスクリプトの許容範囲を広げて、プロフィールページをカスタマイズできます。自分の姿やお気に入りの風景、イラストなどを画面全体にアピールできます。また、動画や音楽の貼り付けも可能です。myspace.comの動画共有サイト「MyspaceTV」はYoutubeと並ぶ一日投稿数です。

(左)スタンダードなプロフィールページ(中)こんなにカスタマイズできる(右)人脈を辿って必要な人を


もちろんmyspace.comには他のSNSにあるようなブログや掲示板、フレンドリスト機能もあります。しかし、動画や音声をプロフィールに取り込むというアイデアや、プロフィールページをポスターのように飾る機能によって、単なるブログ+フレンドシステムではなく、自分を強く押し出せるシステムとなっています。そして、このシステムがクリエイターの参加者をたくさん引き込むことに繋がりました。

myspace.comでは多くのユーザーがいますが、とくに目立つ活動、使いこなしているユーザーははクリエイターやクリエイターのタマゴたちです。myspace.comでは、600万人以上のバンド、5万人以上の映画製作関係者、何千人ものコメディアン、無数の写真家、芸術家、政治家などが自己アピールの手段としてmyspace.comを活用しています。井上氏からはマドンナ、YOSHIKI、佐野元春、平原綾香などのアーティストの名が次々に挙がりました。日本のアーティストは海外のアーティストやプロデューサーの紹介でmyspace.comに参加しているとの事で、日本のユーザー獲得を牽引する存在になりそうです。

(左)アーティストとのつながりが魅力のmyspace.com(中)海外のアーティストがこぞって参加する(右)国内アーティストも注目


井上氏はmyspace.comが生んだアーティストの成功例を紹介しました。myspace.comで楽曲を発表していた歌手「ショーン・キングストン」は、音楽プロデューサーにSPAM並みのメールを送ってアピールしたところ、その中の一人に起用され、ビルボードで1位になりました。また、グラビアアイドル「ティラ・テキーラ」さんは、別のSNSで自分のスタイルやファッションセンスをアピールしていましたが、過激な表現のため何度も運営者から削除されてしまいました。そこで自由度の高いmyspace.comに活動の場を移したところ、タイム誌の表紙を飾るほどのスーパーモデルへと成長しました。また、往年のスター、「ボブディラン」はmyspace.comで若いファン層を獲得し、30年ぶりにアルバム売り上げが全米一位になりました。日本のインディーズバンドもライブ活動の観客動員数を増やしたり、世界中のフレンドから出演依頼を受けたり、外国アーティストからのコラボレーションを実現しています。

こうしたmyspace.comの勢いに企業が注目したきっかけは、映画「X-MEN」でした。「X-MEN」がmyspace.comでプロフィールを作ったところ、アンケートで「myspace.comで知った」という観客が25パーセントに上りました。単一メディアで25パーセントという数字はとても珍しく、myspace.comの影響力を知らしめたのです。現在はTOYOTA、P&G、NINTENDO、PEPSIなどの企業がmyspace.comのプロフィールを公開しています。その企業に好感度の高い参加者がフレンド登録することで、企業や商品ブランドの人気の指標になっています。

「myspace.comの成功は、リッチな自己表現ツール、フレンド機能で成功に結びつく人脈を探り出せる、人気企業がフレンドになる、イベントが積極的に開催されるなどの要素で最強の"個性プラットフォーム"になったことにある」と語る井上氏。今後はGoogleのOpenSosialに参加して他のSNSとの相互乗り入れを目指すほか、さらに多くのメディアと結びついてエンターテイメント性を強め、日本では携帯電話からのアクセスを強化していくそうです。

(左)企業参入も活発(中)myspace.comに移籍してチャンスを掴んだティラ・テキーラ(右)世界に羽ばたいた日本のインディーズバンド HEAD PHONES PRESIDENT


■誰もがWebサーバで発信できる「空間リンク」システム スプリューム 代表取締役 梶塚千春氏


《杉山淳一》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめの記事

ゲームビジネス アクセスランキング

  1. コンプガチャはなぜ駄目か? ソーシャルゲーム今後の争点

    コンプガチャはなぜ駄目か? ソーシャルゲーム今後の争点

  2. レア社の創業者であるスタンパー兄弟が退社

    レア社の創業者であるスタンパー兄弟が退社

  3. 令和に新作ファミコンカセットを自作!その知られざるテクニック&80年代カルチャーを「桃井はるこ」「なぞなぞ鈴木」らが語る【インタビュー】

    令和に新作ファミコンカセットを自作!その知られざるテクニック&80年代カルチャーを「桃井はるこ」「なぞなぞ鈴木」らが語る【インタビュー】

  4. 海外ゲーマーが選ぶゲームの悪役ベスト25−栄光のトップは一体だれ?

アクセスランキングをもっと見る