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【G★2007】韓国で新清士氏が「日本のPCオンラインゲーム市場の危機」をテーマに講演

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【G★2007】韓国で新清士氏が「日本のPCオンラインゲーム市場の危機」をテーマに講演
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韓国最大のテレビゲーム展示会「G★2007」が、11月8日から11日まで4日間にわたって、ソウル近郊の韓国国際展示場(KINTEX)で開催されています。最新オンラインゲームの宣伝や商談に加えて、ゲーム開発者向けの技術カンファレンス「コリア・ゲーム・カンファレンス」(KGC)も併催される、総合的なゲーム展示会です。

KGCは2日間で全74セッションが行われ、日本からも6名のスピーカーが登壇します。初日の8日は、国際ゲーム開発者協会(IGDA)日本支部の代表を務める新清士氏と、『女神幻想ダイナスティア』のテクニカルディレクターで、アメイジンググレイス・シンフォニックガーデンLLPの石山隼行氏が登壇しました。

IGDA日本代表 新清士氏


はじめに新氏は「日本ゲーム市場の概要:日本のPCオンラインゲーム市場の危機」と題して、この1年間で日本のゲーム業界に起きた変化を、PCオンラインゲームの見地から読み解きました。新氏は「任天堂の存在を抜きに日本のPCオンラインゲーム市場は語れなくなった」と前置きして、Wiiの成功が業界に大きな影響を与えたことを示しました。

日本のゲームユーザーは、世界的に見てもセキュリティや品質面への意識が高い傾向にあります。しかしPCオンラインゲームでは構造上、チートや不正行為などをゼロにすることはできません。初心者ユーザーにとってはゲームをインストールするのも障壁となり、ウイルスや犯罪に巻き込まれるのではないか、という恐れもあります。さらに昨年は不正事件が発覚するなど、オンラインゲームを巡る社会的なトラブルが多く見られました。

『ラグナロクオンライン』のサービス改善を求めるデモ


一方で今年はXbox360・PS3・Wiiといった、オンライン機能を搭載したコンソール機が出そろいました。コンソール機ではPCと異なり、高いレベルでセキュリティを維持することができます。中でも任天堂は「安心ブランド」を確立するために多大なコストをかけています。ニンテンドーWi-Fiコネクションの「安全・簡単・無料」というキーワードや、Wiiリモコンの無償回収・リモコンジャケットの無料配布などがそうです。

WiiやニンテンドーDSが一般層に広く支持されているのも、こうした広い意味での「安心感」や「信頼性」が背景にある、と新氏は語ります。一方でこの1年間で、人気オンラインゲームのニュースサイトの閉鎖が目立つと指摘。総じてPCオンラインゲームからコンソール機への回帰現象が見られるようになってきたとコメントしました。またマクロな視点として、任天堂とガンホーの株価の推移を紹介し、PCオンラインゲーム市場は横這いだが、コンソール機の市場は拡大すると、証券業界で見なされている状況を示しました。

任天堂とガンホーの株価の推移


もっともPCオンラインゲーム業界においても、横這い状況が続く中で、勝ち組と負け組が鮮明になってきました。新氏は勝ち組の例としてスクウェア・エニックスの『ファイナルファンタジーXI』と、ハンゲームを紹介しました。特に『FFXI』については、同社の不正行為対策やサーバープログラムの改善などの取り組みが、ユーザーの信頼性を向上させたと評価しました。ただし同社も「FF」以外のタイトルを他社に売却するなど、オンライン事業のリストラを行っています。

これに変わるトレンドとして、携帯電話ゲーム市場が大きく注目されるようになってきたと述べました。現在、男子高校生の携帯電話所有率は約100%となり、ほぼすべてがインターネットに接続できます。数年前はPCオンラインゲーム企業に向けられていた投資が、現在は携帯電話ゲームのベンダーに向けられており、今後はこれらの中から上場する企業も出てくるという見解も示しました。

最後に新氏はXbox360における『アイドルマスター』の成功例について触れ、アイテム課金によるビジネスモデルがコンソール機でも注目され始めた現状を指摘しました。ただし「アイドルマスター」が世界で成功するのは難しいと述べ、日本・米国・欧州・アジア圏でニーズの違いが鮮明化してきたと指摘します。アジア圏での韓国タイトルの優位性は今後もゆるがないが、日・米・欧などへの進出については、地域ごとのユーザー特性を開発段階からリサーチして、ゲームに組み込むことが不可欠だとまとめました。

鍵はオンラインサービスだが、市場ごとに内容は異なると指摘


続いて石山氏が「コミュニティとして見たMMORPGとその運営」と題した講演を行いました。石山氏は戦闘要素のない、女性専用のコミュニティ型MMORPG『女神幻想ダイナスティア』の運営を行っています。石山氏はこの経験を元に、社会学的な見地から独自のコミュニティ理論を展開しました。

シンフォニックガーデン 石山隼行氏


はじめに石山氏は、E-MAILからマルチユーザーダンジョンを経てMMORPGに続くという、一般的な「バーチャルコミュニティ」の発展史について疑問を提示しました。というのもバーチャルワールドとは、現実世界から離れた世界の総称で、ゲームやデジタル世界だけでなく、小説やアニメ・コミックなど、人間が想像する世界すべてというわけです。

その上で日本のバーチャルコミュニティ研究では、現実と仮想の境界が常に問題になると述べ、両者は通常は乖離しているが、しばしば侵犯しあい、その際に問題が発生すると指摘しました。さらに「マジックサークル」という概念を紹介し、ゲームの世界には厳密なルールが存在するが、これが破られた時にゲーム世界の魔法が消える、という考え方を紹介しました。

ただしコミュニティの要素が入るオンラインゲームでは、ユーザーは「ゲーム」の部分だけを楽しんでいるわけではありません。特に日本のコミュニティには、「まったり」と「粋」を重視した、縦ではなく横に広がる特性が見られます。石山氏はロジャ・カイヨワの「遊びの4分類」も紹介したうえで、これには協力や協調といった要素が含まれておらず、オンラインゲームでは拡張される余地があるとしました。

カイヨワの「遊びの4分類」のオンラインゲーム対応モデル


では、協力や協調をゲームに取り入れるには、どうしたらいいでしょうか。石山氏が指摘するとおり、「MMORPGはゲームの形をしたコミュニティ構築ツール」です。そのためにはルールとコミュニティの目標が乖離しないことが重要です。しかし石山氏は、既存のMMORPGは「他人から何かを、いかに効率的に奪うか」をテーマにゲームがデザインされていると指摘しました。これらは「縦型のコミュニティ」には適していますが、「まったり」や「粋」を求める横型のコミュニティとは、しばしば衝突してしまいます。

そこで「奪う」のではなく「与える」ゲームの可能性について指摘し、その一例として『女神幻想ダイナスティア』について紹介しました。本ゲームは「非戦闘」「交換ではなくプレゼント」「他人に優しくする人が優遇される」「ストーリー性の重視」といったコンセプトでデザインされた、他に類を見ないユニークなタイトルです。さらにMMORPGのユーザー属性を、ドラえもんの「ジャイアン」「スネ夫」「しずか」「出来杉」の4つになぞらえて説明し、実際にはこのどれにも属さない「のび太」が大半で、いかに「しずかちゃん」タイプに導くかがポイントだとしました。

『女神幻想ダイナスティア』の「お姉さま」と「初心者」の関係


「ドラえもん」に見るユーザー4分類と「のび太」


ただし、こうした「非戦闘」型のRPGは商売になりにくいと指摘し、自身も「ゲーム業界のガンジー」と一部で言われていると自嘲気味に語りました。ガンジーでは尊敬されても儲からないというわけです。しかし講談社から出版されたノベライズ小説が好調だとして、ユーザーコミュニティをベースとしたコンテンツビジネス展開について構想を語りました。今後は衣装アイテムをユーザーがデザインできるなどの要素や、コミックマーケットへの出展なども視野に入れるとのことです。

新氏・石山氏の両セッションは、日本のゲーム業界の生の声を知らせる内容として、出席した韓国のゲーム開発者から高い評価を得たようです。特に『女神幻想ダイナスティア』のようなゲームは韓国でも例がないようで、自分でも遊んでみたいという声が聞かれたり、女性開発者から高い注目を集めていました。言語の壁から日米以上に開発情報の交流が進まない印象もある日韓ですが、こうした機会がもっと増えることが期待されます。
《小野憲史》

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