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ゲーム広告成立にはゲーマーとひとくくりにしないことが鍵 〜電通 黒崎裕行氏インタビュー

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ゲーム広告成立にはゲーマーとひとくくりにしないことが鍵 〜電通 黒崎裕行氏インタビュー
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日本オンラインゲーム協会で活動が始まっているゲーム内広告分科会ですが、ここには日本最大の広告代理店、電通も参加しています。オンラインゲームを広告媒体としてどう売っていくのか、そしてゲームと広告の現状と将来について、電通 プロモーション営業推進局の黒崎裕行氏にお話しを聞きました。



―――電通さんは、子会社(電通コム)を通じてアドバゲーミングへの出資もしていますが、今回は電通さんとして協会・分科会に参加されるとのことですね。オンラインゲームでの広告に動きはあるのでしょうか?

国内はこれからですね。クライアント(広告主)の、ダイレクトかつピンポイントに訴求したいという要求にお応えしていく上で、ゲームは重要なコンテンツ、メディアだろうと考えています。もっと伸びて欲しい、一般化して欲しいと考えていますが、そうはならなくても、特化していくという方向もあり、両方の可能性をにらみながら、という状態ですね。

―――ゲーム広告というと訴求の幅が狭すぎるような感じがありますが?

黒崎氏:電通としてお手伝いした事例として、ファイナルファンタジーXIIの「ポーション」(スクウェア・エニックス、サントリー)があります。これは、ゲームをプレイする人だけでなく、より広い層でおもしろがっていただけた、よい事例だと思います。ゲーム広告には、あれぐらいのコア起点での盛り上がりが期待できるのです。

もちろんコンテンツの力次第のところはありますが、ファイナルファンタジーXIIポーションのケースでは、発表から発売後騒ぎが落ち着くまでの間に、ポーションについて言及したファンのブログが6万ページ超も出てきた。みなさんがメディアになって発信してくれたわけですね。

―――セカンドライフについてはどのように見ていますか?

セカンドライフなどメタバースの展開は、いわば「場の提供」です。幕張メッセのようなもので、楽しみのために行く人もいるでしょう、仕事で行く人もいるでしょう。そういう場です。一方、オンラインゲームはディズニーランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパンのようなテーマパークです。ひとつのテーマ性の中でやるからこそ、おもしろがってもらえる。告知の場というより、深くつながれる場になりえます。

―――オンラインゲームはファンタジーものが主流ですが、ゲーム内に広告を埋め込むのは難しいのではないでしょうか?

埋め込もうとするからバッティングする。来ている人に嬉しいインセンティブを提供できればOKで、これはできないことじゃない。ただまあ、ゲーム事業者の方々と話していると「世界観が……」という話がよく出てきます。広告屋としては企画のしがいがあるところですが、そうはいっても今の世界に近い方がやりやすいのは当然ですね。 (ファイナルファンタジーのポーションのほかに)もう一つやった仕事として、サントリーの炭酸飲料「ビンゴボンゴ」の大航海時代オンラインでのインゲーム・プロモーションがありました。発売前の「ビンゴボンゴ」をゲーム内に持ち込みましたが、ユーザーの方々にもスポンサーのプロモーションであることを知りつつ楽しんでもらえたようです。

―――ファイナルファンタジーや大航海時代オンラインなどの企画もののお話しがでてきましたが、利用者数や滞在時間を武器に媒体的に売る方向性よりも、ブランディングの方を重視しておられるということでしょうか?

どっちにしようというのは決めてません。メディア価値とコンテンツの両面で追っていきたいですね。

簡単なのは媒体的に売ることです。ただ、それをやろうとしたとき、既存のネットメディアとどう違うのか、という話になります。これはゲーム事業者の皆さんがメディアとしての数字をどれだけ開示してくれるかがポイントになります。

メディアのアカウンタビリティとして、アクセスする人数が少ないとしてもこういう人がいるから広告が有効なんだ、という話をしなければならないのですが、オンラインゲームはこのあたりがまだ未整備です。既存のネットメディアと肩を並べる情報レベルにいかないと純粋にメディアとして売るのは難しいでしょう。

であれば、おもしろい企画を仕掛けていくことで話題を広げていくことが、今は効果が高いということになります。ビンゴボンゴをやって思いましたが、オンラインゲーム内のプロモーションでは、ユーザーが体験できるブランド体験は深いものになります。それぐらい力があるんです。

……ほんとはメディア的価値が上がっていった方が代理店としては楽なんですけどね(笑)

―――当面は企画勝負ですか。

クライアントはインゲーム広告だけで全てのマーケティング課題を解決しようとはしていません。いったん他のメディアと同じレベルに普遍化を進めて、その上でどう差別化するか。ここはオンラインゲーム業界として考えていく必要があります。まずメディアとして他のメディアと同列のレベルまで行かないと、特殊な施策で終わってしまいます。

今、雑誌って細分化しているじゃないですか。でも広告代理店はそれぞれの雑誌の読者層や数について把握していて、クライアントに提案しているんですよ。でもこれがゲームになると、「ゲーマー」としか見えてない。だから、「ゲーマーに向けて広告を打つ」ということになるわけですが、そうなると「上に通らないからダメ」とかいう話になっちゃう。

ゲーマーというと、どうしても固有のイメージが出てしまうんですが、そういう人たちでもゲームをしていないときは違う生活をしているはず。広告の障害になっているのはゲーマーの「数」よりも、「顔の見えなさ」だと思う。ゲーマーの「顔」をどう見せるか、そこを打破したいと思って、エンターブレインさんと共同実施した調査結果を基に去年の「AOGC」で講演を引き受けたりもしました。

一方で、ダイレクトかつピンポイントに刺さる媒体は求められているので、そこさえクリアすればニーズはあるでしょう。

―――ファイナルファンタジーと大航海時代オンラインはどちらもサントリーさんの事例ですね。サントリーにはゲームに好意的な担当者がおられる?

その点は、御想像にお任せするとして、それだけでなく、会社として新しい施策に取り組む風土をお持ちです。いくつかゲーム系に積極的なクライアントさんもいて、たとえば海外ならコカコーラさんが有名ですよね。クローズにしていると広がっていかないので、研究会ではクライアントさんも巻き込んでいきたいですね。アドバタイザーズ協会(広告主協会)と連携するのもありかもしれません。

ビンゴボンゴのケースは、既存のユーザーも喜ぶし、新しいユーザが入ってくるということでコーエーさんにもメリットがおありだったと思います。両者の意志が合致した綺麗なケースですね。ただ、ビンゴボンゴと大航海時代オンラインのような事例は年に何回かしかできないでしょう。

クエスト企画型インゲーム広告モデルにマッチしたプラットフォームを用意していただけるのであれば、継続的におこなうことも可能かもしれませんが、それが難しいなら、単発の企画を、ニーズがマッチしたときにやる、というところにとどまるでしょう。

今、「続きはウェブで/詳しくはウェブで」とする広告が増えてきていますが、これを、「続きはオンラインゲームで」というふうにできれば面白いでしょうね。CMがあって、その続きがゲームの中で展開される。マスからオンラインゲームに流し込むスキームができないかと考えています。その方が企画の幅が広がると思うんですよ。インゲームというとゲーム内と考えちゃうけど、ゲームに流し込むとか、ゲームを通過してどこかに誘導するとか、手法としてはいろいろある。

―――「続きはゲームで」、はいいですね。

ゲームって「自慢」の要素だと思うんです。その「自慢」につながっていくなら喜んでもらえるんじゃないかな。「自慢」の要素ということでは、ファミコンの頃はみんなで集まってきゃーきゃーやって、上手い子が自慢できていた。これがRPGが流行ってからは「ゲームは一人でやるもの」みたいなイメージが強くなって、ゲームが上手いということが“嬉し恥ずかし”になってきた。でも、ゲームが好き、ゲームが上手い、というのがもっと素直に出せていいんじゃないかと思う。

ニンテンドーDSとかPSPでは、持ち寄って遊ぶスタイルが自然に受け入れられていますが、あれが大きく育ったとき、みんな自然にオンラインゲームに来てくれるんじゃないかと思うんですよ。モンスターハンターはゲーム機からパソコンにうまくつないだ。いろいろそういう流れが来ている気がします。人とやるのが楽しい、上手いのがうれしい、となってくると、オンラインゲームに対する障壁が低くなる。そういう世代が育てば、オンラインゲームはまだまだ伸びていきます。

私たちは、Eスポーツにも力を入れています。ゲームをEスポーツとして展開し、「見て楽しいエンターテインメント」にもしていきたい。

気楽に遊ぶ対戦型ゲームを一般化していけると嬉しいですね。

―――ケータイについてはどのように見ていますか?

ケータイゲームは「寸ゲー(すんげー)の極致」ですよね。短い時間でも気軽に遊べる。すごいブランド体験という場ではありませんが、逆に、PCなりコンシューマーより気軽なアクセスができるし、ゲームから直接クライアントのサイトに飛ぶこともできる。

電通ではIC局が取り組んでいますが、インゲーム広告、アドバゲーミングという手法が一番使いやすい。クライアントさんのブランドを告知するゲームを作って配る。ケータイの世界では一番やりやすい。今の中高生たちはあれでオンラインゲームに触れているので、デジタル化された新しいコンタクトポイントとして可能性があります。オンラインには仮想世界がいくつもあり、ユーザーとの接点も無限です。なんとかものにしたいですね。

――― ありがとうございました。

第3回は日本オンラインゲーム協会理事 長沢潔氏(ジークレスト)のインタビューを掲載予定です。
《伊藤雅俊》

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