全体的にあまりいい評判を聞かなった07年度のE3。サンタモニカ市内の右往左往を強いられた会場の分散状況も去ることながら、記事として掲載できるスクープの少なさというのがネックになっていたのは事実だろう。ただ、筆者にとってこの小ささというのはむしろ好都合に働いた。これまで長蛇の列に並ぶ時間がもったいないからと避けていた注目作をプレイすることもできたし、ビジネスセッションやミーティングもこれまで以上に積極的な質疑応答が可能となり、密度の濃い取材ができた(誰が取材中にピーター・モリニュー氏本人からデモプレイの誘いを受けると想像できただろうか?)。
更に興味深かったのが、展示会場でのブースの配置状況。今回は任天堂、マイクロソフトゲームスタジオ、ソニー・コンピューターエンタテインメント、エレクトロニックアートなど大御所のブースが立ち並んでいるフロアに1Cや、GSCゲームワールドといったロシア東欧系ブースや、インディーズ系ブースなどが、従来と比較するとあたかも同程度のスペースで(さすがにこれらのブースは、後方に配置されていたが)立ち並んでいるという印象すら受けたのだ。
以前であれば、Kentia Hallを占拠してコアゲーマーを沸かせていたような掘り出しモノ系コンテンツが、超メジャー系コンテンツと肩を並べてお目にかかることができたのは、一人のKentia Hallファンとしてある意味非常に感慨深い。ここでは、このような中で筆者が巡り合った注目のタイトルを紹介したい。
■D3パブリッシャーUSの必殺技:『Dark Sector』
今回最も筆者を驚かしたのが『Dark Sector』。パブリッシャーは『シンプル』シリーズでおなじみのD3パブリッシャーの米国法人だ。今回、会場で展示されたデモを見る限り、『Dark Sector』は『バイオハザード4』や『Gears of War』の流れを汲む、シューティングとサバイバルホラー的要素を組み込んだ、ストーリ性を重視した作品という印象を受けた。開発元は、『Epic Pinball』を皮切りにEpicとの共同開発を続け、『Unreal』シリーズにおいても立ち上げ当初から同シリーズの開発に欠かせない存在だったDigital Extremes。05年にはオリジナルブランドによるFPS『Pariah』を開発したが、今回もその流れの中でのオリジナルタイトルというわけだ。本作品は、東欧圏の一地域、Lasriaを舞台に、謎の感染症を巡って潜入した工作員Hayden Tennoと、バイオミュータント、さらにはバイオミュータントの殲滅を狙う軍事組織との三つ巴の戦いを描いたサード・パーソン・シューティング(以下、TPS)だ。
Hayden Tennoの片腕は奇妙に変形しているが、これは、謎の病原菌に感染しているためだ。このため、軍事組織からはHaydenは既にミュータントとして扱われている。また完全に変形しているミュータントからは人間の形態をしているHayden Tennoは人間として認識されているため、両者からの執拗な攻撃を受けることになる。ただしこの変形した片腕からブーメランのような武器を放つことができる。これが『Dark Sector』のゲーム性を独特なものにしている。今回はこの特色のある攻撃方法について、担当者がデモで示してくれた。
■超常能力でガン・シューティングでは味わえない爽快感を
「HaydenはLasriaで起こった謎の伝染病の大規模感染を調査するために潜入するんだけど、その作戦の最中に自らもその伝染病にかかってしまうんだ。だからHaydenは序々に自我を失いながらも、超常力を得る事ができた。最初にHaydenが手にした能力は、Glaiveという能力なんだ。特殊なフリズビーのような武器さ。Glaiveは様々なエネルギーを帯びることもできる。また、エネルギーを敵などに対して使うこともできるんだ。」説明を終えた担当者は、戦闘の中でGlaiveの能力を実際に使って見せた。古ぼけた薄暗い建築物の奥にいる何人かの兵士がHaydenを敵として攻撃してくる。そこで、Glaiveを放つ担当者。Glaiveが敵に向かっていき、足を切断する。片足でよろけ、倒れる兵士。後方で映像撮影をしていたメディア関係者が驚きの声をあげた。筆者も思わず息を飲む。「Glaiveは、狙いをしっかりと定めることで、例えば、脚部なんかを切除できるんだ。このように特定の部分を切除できるのは複数個所あるよ」と説明を加える。
続けて担当者はGlaiveを活用した電気ならびに炎のコントロールについて言及していく。「ここにある変圧器にGlaiveをぶつけてみよう」。変圧器に放たれたGlaiveがその機能を復帰させる。次に電気を帯びたGlaiveを上階にいる兵士に投げ、感電させた。また、ロケットランチャーを放った際の爆発から生まれた火に対してGlaiveを放つデモ担当者。「実はこの炎はプレイヤーにとって絶好の攻撃チャンスなんだ。そこに、Glaiveを放つことで、近くにいる敵に対して、炎とGlaiveで攻撃するとことできる。」と、Glaiveを炎に向けて放つ。炎を帯びて戻ってくるGlaive。続けざまにGlaiveを敵に対して放つ。引火し炎に包まれる兵士。銃で敵を倒すときのセンセーションとは明らかに違う感覚だ。
『Dark Sector』では、デモプレイを見る限り、これまでのサバイバルホラー的要素に、超常能力で環境をコントロールする能力を加えることで、戦闘体験において、これまでにないテンポとオリジナリティが加わっているようだ。敵の部位切断については、日本で発売する際にはなんらかのアレンジがありそうだが、TPSに新しい方向性を加えているだけに期待が高まる一作だ。
■常に斬新さを忘れない
E3に来て改めて思い知らされるが、たとえ成熟化が進んでいるシューティングゲームのようなジャンルにしても、時折、今回紹介した『Dark Sector』のようなイノベーションスピリット溢れるコンテンツが飛び出してくるアメリカの奥深さだ(一方で、このような場で派手に紹介されたものの、その後一向に商品化されないといった側面を持つのもアメリカであるが……)。この『Dark Sector』がどのような形で世に出るかはまだ未知数であり、日本での発売も現在のところまだ未定だが、いつかは手にしたい一作として今回筆者の心に焼きついたのは確かだ。そのような意味でも本作品の動向を今後も是非、見守っていきたい。
ゲームタイトル Dark Sector
パブリッシャー D3 Publisher Of America Inc
発売予定(北米)2008年第一四半期
日本での発売 未定
プラットフォーム PS3、Xbox360
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