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Shoot It! #055 - 神よ“紙”を助け給へ……『Paperman』の存続を願う

まだまだこれからというゲームが消滅の瀬戸際に立っています。サイカンゲームズが日本で3月までβテストを実施していたオンライン対戦FPS『Paperman』です。

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Shoot It! #055 - 神よ“紙”を助け給へ……『Paperman』の存続を願う
  • Shoot It! #055 - 神よ“紙”を助け給へ……『Paperman』の存続を願う
まだまだこれからというゲームが消滅の瀬戸際に立っています。サイカンゲームズが日本で3月までβテストを実施していたオンライン対戦FPS『Paperman』です。

『Paperman』は名前通り“紙の人”つまり、紙のように平面的なキャラクターを操作して戦う射撃戦ゲームです。ゲームのルールはデスマッチやチーム全滅戦、爆弾設置ミッションなど従来のFPSと同様です。しかしなんといってもユニークなアイデアは“紙人形キャラクター”でした。平べったい紙のキャラクターは、正面から見るとコミカルに見えるだけです。ところが、このキャラクターが真横を向くと薄くなって棒かひものようになります。つまり、このキャラクターを撃つ場合、正面からは当てやすく、真横からは当てにくくなります。防御の方法として“横を向く”という手段も使えるわけです。

そして“紙”という特殊性を活かしたアイテムやルールもユニークでした。紙のキャラクターは軽いので、エアーボムを使うとクルクルと舞い上がり行動不能になります。紙だから、ファイヤーボムの炎を浴びると引火して燃えてしまいます。銃撃を受ければ身体に穴が空きます。その穴越しに弾を貫通させて、ライバルを串刺し状に倒すという荒技も使えました。対戦ルールではスチールモードの面白さが印象に残ります。敵チーム陣地の染料を奪い、自チーム陣地に持ち帰ると得点になるルールです。他のFPSではキャプチャー・ザ・フラッグと呼ばれる旗取り戦に相当します。キャプチャー・ザ・フラッグではキャラクターが背中に旗を挿して走り回りますが、スチールモードでは自分の身体に染料を染みこませて運びます。染料の色に染まったキャラクターが得点源として重要な役割を持ちます。似ているルールでも見せ方によって違った楽しさを与えてくれました。

キャラクターの個性の演出も魅力のひとつでした。紙の着せ替え人形のごとく、キャラクターの身体や服などのアイテムを入手して組み合わせ、個性を演出できました。さらにゲームのキャラクターをゲームポータルサイトのアバターと統一したり、テクスチャを自作してオリジナルキャラクタを作ったりという可能性も見いだせました。『Paperman』の素晴らしさは、既存のFPSのプレースタイルを大きく逸脱することなく、まったく新しい面白さを作り上げたことにあります。世界的にプレーされている『カウンターストライク』が韓国で流行して以来、こう言っては失礼ながら、韓国では模倣作品がいくつも誕生していきました。そんな中で、“紙人形キャラクター”は世界に類を見ない独創的なアイデアでした。そして奇をてらっただけではなく、実際にプレイしてみると面白い。コミカルなキャラクターだから初心者向けだとは限らないゲームでした。紙ならではのテクニックや戦術が求められる本格的なFPSです。これは大いに評価されるべきでしょう。

『Paperman』は日本でデビューした韓国産FPSとしては後発ですが、実は韓国では2005年のゲームショウ、Gスターでお披露目されており、翌2006年の東京ゲームショウではプレイアブル展示も行われて盛況でした。その後もリリースを待望されて約1年あまり。日本では今年に入ってからクローズドベータを開始。3月にはオープンβテストが実施され、正式なサービスインへのカウントダウンと思われました。ところが、3月31日のβテスト終了と同時に、サービス再開は未定となってしまいました。サービスインされない理由はゲームの不具合ではなく、営業上の理由です。運営会社のサイカンゲームズと韓国本社は主に中国へ向けたプロモーションを目指していましたが、サービスインの見通しが立たなかったそうです。韓国内ではFPSが過当競争状態であり苦戦が予想され、日本市場は単体で『Paperman』を支えるだけの市場力がないと判断されたことでしょう。目の前に良いゲームがあり、ベータテスターを始め目利きのFPSプレーヤーに高く評価されたにもかかわらず、『Paperman』は切り取られようとしています。悔しいことです。

私が『Paperman』に注目する理由は、現在のバージョンの面白さだけではありません。むしろ、せっかくユニークなキャラクターを作ったにもかかわらず、ゲームルールの部分では在来のFPSとあまり変わらないことにはちょっと不満でもありました。結局、デスマッチや爆弾解除ミッションで遊ぶだけなら、ブラッシュアップの済んだ既存のFPSのほうが完成度も高く、コミュニティもできあがっており安心して遊べます。しかし、それでも私が『Paperman』を推す理由は、既存のFPSには為し得ない可能性かずあるからです。

『Paperman』の可能性、それは「こどもが安心して遊べるFPS」です。紙製の可愛いキャラクターはこどもたちにとって親しみやすい表現方法です。しかし銃撃戦はこどもに相応しいとは言えません。実はこのゲームの面白さはリアルな銃ではなくても良いのです。キャラクターが紙ですから、豆鉄砲や水鉄砲でも十分に楽しく『Paperman』らしい遊びができます。豆鉄砲やゴムのパチンコ、スーパーボールを投げるだけで紙のキャラクターは倒せます。水鉄砲の場合、紙の身体に水をかけ続けると身体が重くなり身動きが取れなくなります。爆弾を投げて身体に火を付ける、という表現にしなくても、マップ状に松明やたき火などを配置して、そこに近づくと燃えてしまうというアイデアはどうでしょう。危ないところに近寄らない、これは良い教訓になることでしょう。

紙のキャラクターには素材感を与えてみてはいかがでしょうか。「トイレットペーパーマン」は水鉄砲に弱いけれど、クルクルと前回りが得意で移動が早い。「段ボールペーパーマン」は防御力は高いけれど厚みがあって横向きでも当たりやすい。「アルミペーパーマン」はレーザー光線を跳ね返すけれど、千切られると一気に裂けてしまい即死。「キッチンペーパーマン」は吸水能力が高く、スチールモードで大活躍。紙が重なると強度が増すように、仲間のキャラクターがピッタリ重なると一時的に防御力が上がり、軽い弾を跳ね返せる。そんなふうにアレンジしていくと、銃撃戦で血しぶきが上がるような従来のFPSとは違う、ほのぼのとして本格的なテクニックを要するFPSになりそうです。

私が初めて『Paperman』を見たときの第一印象が、「これならこどもに安心して薦められるFPSができる」でした。そんなジュニア版『Paperman』を実現させるためにも、あるいは、ややマンネリ化したFPSブームを新たなアイデアで活性化させるためにも、『Paperman』には成功してほしいと思いました。『Paperman』の終了を残念に感じている人は私だけではありません。『Paperman』に関わったスタッフがいちばん悔しいはず。公式サイトのお知らせには「今後とも『Paperman』をよろしくお願い申し上げます」と結ばれており、これで終わりにはしたくないという思いが伝わってきます。公式サイトの掲示板には再開を願うメッセージが今も投稿され続けています。

どこかに“紙”を助けてくれる“神”はいませんか?
《杉山淳一》
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