これに見習って、2008年のゲーム業界に流行らせたい言葉として「リターンゲーマー」を提案します。私のように初代ファミコンや8ビットパソコン、インベーダーゲームの洗礼を受けた世代はそろそろ40代から50代です。ゲームライターを仕事にした私は幸いにもゲームから離れませんでした。しかし少年時代の私のゲーム仲間たちはゲームから遠ざかっています。そのきっかけは受験だったかもしれません。就職かもしれません。結婚、子育て、大きな仕事を任されて休日返上……ゲームどころか、遊ぶ暇もない時期が人生にはあるものです。こどもの頃の趣味をずっと続けていくことはとても難しいといえます。そんな人々にもう一度呼びかけたい。ゲームに帰ってきませんか、そして新しいゲームスタイル「Eスポーツ」にチャレンジしてみませんか、と。
中高年のEスポーツプレーヤーはすでに活躍しています。昨年11月17日に開催された韓国産オンラインゲームの世界大会『GNGWC2007』の日本予選でした。オンライン艦隊戦ゲーム『ネイビーフィールド ネオ』で日本代表となったチーム「OS2」のメンバーに30代から40代。ほぼ私と同世代のメンバーが加わってリーダーシップを発揮していました。第二次世界大戦の海軍戦をテーマとしたゲームということもあり、このゲームには中高年のプレイヤーが多いそうです。実は、30代から40代という年齢層は小中学生の頃にプラモデルに親しんだ世代でもあります。当時は田宮模型が出していた軍艦のプラモデル「ウォーターラインシリーズ」が大ヒットしていました。『ネイビーフィールド ネオ』のプレイヤーたちは、ゲームと同時に軍艦趣味の世界にも帰ってきたわけですね。
『ネイビーフィールド ネオ』は予選でもっとも参加者の多い種目だったにもかかわらず、混乱することなく粛々と対戦が進行していました。審判員の説明を聴くときは審判の回りを整然と囲みます。真剣な視線を送り、静かに聞き入っていました。OS2の作戦会議の様子も立ち聞きしましたが、リーダーを中心に統率が取れています。もちろん若い選手たちも真剣で、試合に参加する姿勢は変わりませんが、OS2の皆さんは社会経験を積み、人生の様々な場面で戦い抜いてきたという凄みがあります。作戦会議の様子は父と子、あるいは師匠と若い弟子が技術の伝承をしているようでした。
OS2のあるメンバーにお話を伺うと、いままで一度も会ったことはなく、オンライン対戦でチームワークを築いたそうです。社会に出ると仕事上の付き合いや近所づきあいは合っても、趣味や遊び仲間との付き合いは減ってしまいがちです。社会に出て、このような形で共に戦う仲間がいる。そのこと自体を楽しんでいるように見えます。OS2の皆さんは和やかな雰囲気でしたが、戦いに向けてキリッと引き締まった表情を見せました。その後、OS2のメンバーは韓国で行われた世界大会に参戦し、韓国チームと対戦しました。回戦トラブルでゲーム中断となりましたが、審査員の粋な計らいで両チームとも優勝という結果となったそうです。どうです? 勇気を与えてくれるニュースではありませんか。
私はふだん、対戦ゲームを観戦して楽しんでいます。実はゲームプレイのほうはマイペースで、オンライン対戦や試合への参加は若い人に敵わないとあきらめていました。しかしOS2の皆さんを見て、もういちどチャレンジしたくなりました。
そんな私が選んだゲームはEスポーツタイトルとして世界大会も開催されている『エイジオブエンパイア3』です。小さな兵隊たちをマウスで操って戦う、リアルタイム進行のチェスといった雰囲気です。私は現在、ユニットや建物の特徴を覚えるためにシングルプレイを楽しんでいます。お正月休み中に『エイジオブエンパイア3』のシングルプレイを終わらせて、拡張パック「ザ・ウォーチーフ」のシングルプレイを始めました。今月中に次の拡張パック「アジアの覇王」のシングルプレイを終わらせて、来月からオンライン対戦に参戦するつもりです。
リターンゲーマーにとって『エイジ・オブ・エンパイア』シリーズはオススメのソフトです。兵隊を生産するために木や食糧、金塊を収集・生産し運用するところは経営ゲームのようなセンスが要求されます。対戦で勝つためには忙しくマウスやキーボードを操作する必要がありますが、FPSのように激しい動きではないため、じっくりと戦いを楽しめます。ゲームの舞台が歴史上の世界となっていることも建物やユニットを理解する助けになるでしょう。最新版の拡張パック「アジアの覇王」には日本のユニットが登場します。侍や足軽銃兵などを操って世界の文明のユニットと戦う、という場面にもロマンを感じます。
オンライン対戦もメニュー化されており使いやすく、自分と同じレベルの相手を自動的に検索して組み合わせてくれます。いきなり強い相手に当たってゲンナリ、となりにくいシステムなのです。そしてなにより心強いことは、日本人のプレイ人口が多く、攻略サイトなどの情報が充実していること。トッププレーヤーの対戦を動画で公開し、実況音声を追加している人もいます。これはとても参考になります。
昨年、任天堂は「おとなのDS」や「Touch! Generations」をキーワードに、幅広い世代にゲームをアピールしました。しかし、リターンゲーマーの皆さんはお子様とゲーム機の取り合いをするよりも、PCゲームのオンライン対戦に参加しましょう。リターンライダーが最新型のバイクを買って再びツーリングを楽しんでいます。リターンゲーマーも高性能なPCを買い、オンライン対戦を楽しもうじゃありませんか。同世代、あるいは息子のような若い世代に戦友ができる。それは日常とは離れた新しい世界の体験になるはずです。スポーツを楽しむようにゲームを楽しんでください。それがEスポーツです。
なお、前回のShoot It! - #047 Shoot It!版! 2007年のEスポーツ重大ニュースにて、WCG2007の日本代表選手の名前を誤って掲載しておりました。WCG2007の「デッドオアアライブ」の日本代表は活忍犬選手です。たいへん失礼いたしました。餅A氏、活忍犬氏および関係者の方々に心よりお詫び申し上げ、訂正させていただきます。