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【インタビュー】グラスホッパー須田氏にゲーム作りについて訊きました!(最終回)

独特のゲーム作りで多くのファンを集める、グラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一氏にゲーム作りについて訊いてきました。今回が最終回です。ゲームデベロッパーズカンファレンスでも話されていましたが、ゲーム作りについて少々突っ込んで聞いてみました。『NO MORE HEROES』にも近々動きがありそうで、目が離せません。それでは最終回です。

任天堂 Wii
独特のゲーム作りで多くのファンを集める、グラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一氏にゲーム作りについて訊いてきました。今回が最終回です。ゲームデベロッパーズカンファレンスでも話されていましたが、ゲーム作りについて少々突っ込んで聞いてみました。『NO MORE HEROES』にも近々動きがありそうで、目が離せません。それでは最終回です。



<-GAMEBOX->―――それでは続いてGDCの講演で仰ってたことについて少しお訊きしたいと思います。講演では「Punk’s not Dead」というタイトルを掲げて、グラスホッパーのスローガンである「Let's Punk」「Call&Response」「Crash&Build」をテーマにゲーム作りについて語られていましたよね。講演では「Let's Punk」をメインにお話をされていたと思うので、後の2つについてもお伺いしたいのですが、まず「Call&Response」というのはどういった事なのでしょうか。

須田 これは単純な言い方をすれば瞬発力の事です。ゲームを作っていると、色々な方向から色々なオーダーが来るんです。クライアントさんからはもちろんのこと、プロデューサーから直接のオーダーも来ますし、スタッフからのオーダーも来ます。それに対してどんな返答が出来るかということなんですが、これはアドリブが利かないと厳しかったりするんです。

あと何よりも要求されることは代案力ですね。ゲームの場合、当然ながらスペックの制限がありますし、ハードによって特性もありますので、得意不得意がある中で、でもゲームとしてやりたい表現と、オーダーとしてどうしてもやって欲しい事とのせめぎ合いにおいて、どういう代案を出せるかっていうことが、やはりゲームを作る上で一番重要なことなんです。代案力がないとゲームってものを生み出すことが出来ないんです。それを何となく一言で言ったのが、「Call&Response」なんです。瞬発力、すなわちアイディアの即効性みたいなものですね。

―――いろんな要求に対してその場でどんどん応答していくと。

須田 そうです。何か聞かれて、1日とか1週間後に返答しているようではやっぱり遅いじゃないですか。その場で10分とか、長くても30分とか1時間ぐらいですぐ出せる準備は常にしておかなくてはいけないんです。こういうことが意外とゲームのディレクターにとっては専門的な志向性だったりするんですよ。

―――それではもう1つの「Crash&Build」についてもお訊きします。僕はこの言葉に凄く引っかかって、「Scrap&Build」だといろんなところで言われていると思うんですけど、あえて「Crash」という単語をチョイスするあたりが何か須田さんらしいなと思ったんですよ。

須田 「Crash&Build」というのは、僕が大好きだった、今は亡き橋本真也というプロレスラーの言葉なんです。破壊なくして創造なしということです。

海外のディベロッパーはこういうやり方はしないと思うんですが、ゲームを作るということは、ある程度作っては壊し、また作っては壊しの中で、ものの形をきれいに整えていくということだと思います。ただ、スケジュールも予算もありますのでやり過ぎてはだめですね。だから、その「Crash&Build」っていうものも早い段階でやらなければいけないんです。

早く作って早く壊して…。この言葉は、壊してもいいっていうことをわかりつつもプログラムは作る、というような開発スタイルのことを何となく指しているんですが、それはうちのスタイルだけを指しているんじゃなくて、例えば物事ってそれ自体の出来がいいものでもやっぱりお客さんが満足しなければ駄目なんだっていう精神があるんですね。自分の中でいいアイディアが出たり、企画マンがいいアイディア出したりするんですが、彼らの中ではすごく価値のあるものであったとしても、お客さんからはもとより、お客さんを代弁する立場のプロデューサーのような人達から駄目って言われたら、もうそれは駄目なんです。そこに対してプライドを失わなければならないという意味合いを含めての「Crash&Build」ですね。

―――ちなみに「Let's Punk」ですが、今回の『NO MORE HEROES』ではどういったところがパンクなのでしょうか。

須田 今回ですか、血がたくさん出るところかな。

一同 (笑)

須田 日本版では出ませんから違うと思いますけどね(笑)。

まあ今回は先にも言ったように新しい主人公像みたいなものを作りたくてですね。スタイリッシュでもなくて、超絶的でもなくて、…超絶的な武器は使ってるんですけど、何か自分達とあまり変わらない、アメリカの日常にいそうな普通の兄ちゃんが主人公で、そいつがオタクなんだけども、オタクが紙一重で天才的な殺し屋になっていくっていう、そういう何か逆説的な意味合いのアクションゲームを作りたいなと思ったんです。それで、今回パンク色はそんなに強くないんですけれども、これまでの既成概念にあるゲームエンジンの中でどういう風に新しいキャラクター、新しいストーリーを生んでいくのかというのが、今回のパンク的な意味合いなのかなと思っています。

―――少し話は変わりますが、須田さんのゲームって、今までの他のゲームと比べて評価するってなると、なかなか評価しづらいゲームが多いと思うんです。そういうゲームを作ったとして、やはりリリースする直前の段階でプロデューサーか誰かが評価しないといけないわけですよね。そういうことについてなにか思うところはありますか。

須田 そうですね…、評価できないゲームを意識して作ってるわけではないんですけれども、評価できないゲームなんだろうなっていうことは理解して作っているんですね。なので、評価してもらうことが重要だとも別に思ってないですし、結果とか評価はやっぱりどうしても後から付いてくるものなので、自分の中での確信みたいなものしか信じていないですね。決してそういった評価がどうでもいいわけではないんですが、自分としてはどうでもよかったりします。特にものを作って集中している時は、他所のゲームはどういうことをやってるのかとか、他所のゲームはどんな評価なのかっていうのがさっぱり気にならない方なので。後から評価してもらうことが、どういう結果になるのかっていうことは、作った後での関心事になりますね。

―――例えば『キラー7』では、Aボタンで前に進むっていうような、他ではなかなかない仕様だったと思うんですけど、そういったものを採用して、それがどういう評価に結びつくのかってのは予想しづらいと思うんです。そういう他にはない変わったことを提示するとき、これが世の中で受け入れられるという確信みたいなものはあるんでしょうか。

須田 受け入れられるかどうかでいうと、受け入れられないだろうなという確信の方が実は強いんです。

ただ、あれはゲームをやらない人がアクションゲームを遊ぶ時にスムーズに遊べるシステムというものを目指して採用したエンジンなので、普段ゲームやるゲーマーの人達にとっては、あのソフトの操作って「何だこれ?」ってなると思うんですけど、普段ゲームやらない人達にとっては、実はすごく遊びやすい仕様だったりします。世の中にはどうしてもコントローラーでキャラクターを操作するときに、2つのボタンを使い分けるなんていうことをできない人達がいまして、その人達でもできるゲームデザインというものを考えて、たどり着いた結果があのエンジンだったんです。

そういったことは毎回考えているんですよ。『NO MORE HEROES』でももちろん考えましたし、例えば全世界の人達が遊べる可能性を持ったゲームっていうのは『インベーダー(※スペースインベーダー)』や、『テトリス』のようなすごくシンプルで、情報量の少ないゲームになると思うんですけど、『キラー7』だけに限らず現代のゲームって情報量がすごく多いじゃないですか。そういったゲームをどれだけ多くの人達に遊んでもらえるのかって考えた時に、『キラー7』みたいなシステムを採用すれば将来的にいろんな人達が遊んでくれる可能性があるんだろうなと思うんです。長い間親しまれるといいますか、自分が死んだ後でも自分の作ったゲームを誰かが遊んでくれるっていう可能性があるんじゃないかなと。

―――シンプルな方がより受け止められ易いと。

須田 そうです。なので、どちらかというと未来に対してゲームを作るっていう意識はちょっとあるかもしれません。それは今現在受け入れられているものだけが正しいわけではなくて、もうちょっとゼロからやっぱりゲームってものを考えた方がいいとは思っているんですね。

ゲーム1本1本にそれぞれの理念があって、哲学があって、それは何に対しての哲学なのかっていうことも含めたゲーム設計というものをやっていきたいんですよね。うちのゲームは子供にはもちろん、女性や年配の方でも遊べる、そんな操作形態みたいなところをまず第一に考えていて、だから毎回操作が少し特殊なんです。『シルバー事件』も特殊ですし、『花と太陽と雨と』はそこそこ普通の操作形態なんですけど、『キラー7』ではまたそれを一新させたりとかして、毎回ちょっとしたチャレンジをしているんですけれども、根っこにあるのは誰でも遊べるゲームを作りたいっていう理念ですね。その結果として、たくさんの人が買ってくれて、僕がお金持ちになれるわけです(笑)。

一同 (笑)

―――それでは、今現在もお忙しいと思われるのですが、その忙しさの合間に何か遊んでるゲームってありますでしょうか。

須田 今遊んでるのはPSPの『ウォーリアーズ(※アントールドレジェンド ウォーリアーズ・コード)』ですね。あと『アウターワールド』をやり直してます。それぐらいですかね。今はほとんどデバック作業に忙殺されているのでコンソール機では全然遊べないんですよ。まだXBOX360の『ギアーズオブウォー』もクリアしたいのにできてなくて。トイレ入った時にちょっとゲームをするぐらいなので、自然にPSPのゲームやDSのゲームになるんです。

一同 (笑)

―――では他社のゲームで、何か注目しているタイトルはありますか。

須田 そうですね、Wiiですと『マンハント2』というタイトルが海外で発表されまして、『NO MORE HEROES』と『マンハント』ぐらいしか今のところWiiで過激なゲームってないと思うんですよ。だから一番注目しています。何をしてくるのか気になりますね。

―――では最後に『NO MORE HEROES』を期待している読者の皆さんに一言お願いします。

須田 『NO MORE HEROES』はWiiのタイトルの中でもすごく独特なタイトルになると思います。なかなか出て来ない、Wiiらしくないタイトルです。

やはりWiiらしくないタイトルというのは、すごくいいポジションだと思うんですね。皆さんが想像しているWiiらしいタイトルしかなければ、Wii買った人達にとってはすごく残念なことになると思います。そんな遊びのバリエーションがないハードであってはならないと思ってますし、そのWiiらしさを提供してくれる役割は任天堂さんがしっかりサポートしているわけですから、やはり我々ディベロッパーとしては、パブリッシャーさんと組んでやるからには、任天堂や他所のディベロッパーでは決して作れないようなタイトルを世に出していきたいということがまず第一にありますので、そういったものをWiiで出せるということは結構大きなチャンスだと思ってます。

非常に、いろんな意味で面白いゲームになるんじゃないかなと思っていますので、ぜひ予約してください(笑)。ちなみに初回特典か予約特典かまだはっきり決まってませんが、特典はすごいことになりますので期待してください。

―――それでは、本日はお忙しい中本当にありがとうございました。

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《土本学》
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