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『妖怪ウォッチ』の北米戦略とは―LEVEL-5 abby Inc.担当者インタビュー

E3の中でも際立ってユニークはイベントをどこが担当したのかと気になって確認すると、レベルファイブが電通との共同出資で、2015年8月に設立したLEVEL-5 abby Incだということが分かりました。そこで、今回は同社Brand Managerの藤極夏美氏を直撃インタビュー。

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■コンセプトはそのままに、分かりやすさを最重要視するローカライズ戦略


――では、ローカライズする際に工夫した点などを教えてください

藤極氏: まず、「妖怪」がテーマだったということで、すごく難しかったです。ただ、目に見えない不思議な存在というものは日本以外にも概念としてありますので、子供たちであればちゃんと理解してくれるだろうという認識にもとに、さらに親近感をもってもらうためにローカライズを強化したんです。ジバニャンについてはそのブランドを守るという意味でも名前をキープしたのですが、それ以外のキャラクターについては、例えば「メラメライオン」を英語名では「Blazion」にするなど、完全にローカライズしています。

――ただ「妖怪」というコンセプトはもともと日本古来の考え方ですよね。ジバニャンも地縛霊ですしそれをどう北米市場に合致するようにしたのでしょうか?

藤極氏: たしかに地縛霊を理解させることは難しいですが、コンセプト自体は残しているのです。例えば、ジバニャンの設定は「死んでしまったネコのYO-KAI」ですし。

――「妖怪」は「YO-KAI」なんですね。Ghostとかに翻訳しなかった背景は?

藤極氏: GhostとかMonsterというのは使わないようにしました。「YO-KAI」は「YO-KAI」という新しいジャンルの存在なんだというのを分かってもらうようにしたのです。一方、アニメの舞台はもともと桜ニュータウンというのですが、Springdaleに変えました。

――なるほど。桜=春というコンセプトをそのままにしながら、名前はいかにもアメリカ郊外という感じですね!テレビアニメを放送した当初の視聴者の反応はいかがだったのでしょうか?

藤極氏: アニメ自体、コミカルなパートをすごくこだわって残すようにしたので、そこのギャグやキャラクターどうしの掛け合いなどを面白い、楽しいと言ってくれる方が多かったです。


――ギャグパートなどは日本の70年代や80年代に流行ったポップカルチャーのパロディが多かったのですが、その辺はどう変えたのでしょうか?

藤極氏: まず、どの年代のパロディかを調べます。また、それぞれの時期には、同じジャンルの番組やパロディ元の作品に近いコンテンツはどの世界にもあります。ですので、そのような作品を選んでパロディ化しています。例えば、アニメ版の劇中には「太陽のほえろ」のパロディーシーンがあるのですが、それは「Hawaii Five O」のパロディ、「Springdale Five-Yo」に変えたりして、コンセプトのキープに努めました。

――以前、ピンクレディーによる「UFO」のパロディが話題になっていましたが……

藤極氏: こちらでそのパロディーをストレートにやるのは無理だったのですが、アニメの動き自体が面白かったので、その動きを活用したオリジナルにしました。あと、一番うまくいったと思ったのはジバニャンがトラックに轢かれても負けないようにトレーニングをするというシーンで、「僕は死にましぇん」というセリフを入れたんですが……。

――テレビドラマ「101回目のプロポーズ」のパロディですね?

藤極氏: 「トレーニング」というコンセプトをキープしながらパロディ化するために映画ロッキーのトレーニングシーンのパロディーシーン“Eye of the Tiger”に置き換えたんです。

――反応はいかがでしたか?

藤極氏: よかったです。古いモノを現代に持ってきて面白くしているというのを分かるひとには分かるし、分からない人にとっても「何か変なこと言ってて面白い」と評価いただいたようです(笑)。作品の評価についても、日本と同じようにジワジワと広がっているイメージがあります。一方、ヨーロッパについてはスペイン、フランスをメインに日本と同じような勢いで拡がっていて社会現象のようになっています。子供たちがYO-KAIダンスを踊ったりとか。ダンスについても振付はそのままに歌詞をしっかりとローカライズしました(笑)。すると、ちゃんと子供たちも歌ってくれるのです。大人も一緒に(笑)。

――これまで、いろいろなキャンペーンをした中でとりわけ効果的だと感じたのはどのようなものでしょう?

藤極氏: まず、Nintendo of Americaにご協力いただいて実施したニューヨークのNintendo World Storeでの特別展示などは効果的がありました。ですが、もっとも効果的だったのは、アニメの映画上映にあわせてすべて同時発売したときです。上映イベントのときは、多くのゲームファンがひとつの場所に集まったので、互いにゲームを持ち寄って対戦したり、ゲーム内の妖怪キャラクターを交換したりできたんです。

――では今後の展望を教えてください。

藤極氏: もともとヨーロッパでの人気は高く、新商品の展開、YO-KAIといった新しいコンセプトも、かなりスムーズに受け入れてくれました。 北米エリアでも、まだまだ続くグッズ展開に合わせ、キッズブランドとしてさらにしっかりとした地位を築けるように様々なチャレンジをしていきたいと思います。

――今回のE3では、『レイトン ミステリージャーニー カトリーエイルと大富豪の陰謀』プロモーション、Layton Cafeが話題になっていますね。

藤極氏: iOSならびにAndroid OS向けの同作品の全世界同時発売日である7月20日が迫ってきているので、E3とあわせて実施しました。ファンの方々に「レイトン」シリーズを再認知いただくと同時に、新作に期待していただけるようにということからの「ブランドリブート」イベントとなります。

――『YO-KAI WATCH』シリーズなどと同様にアニメなども展開するのですか?


藤極氏: 「レイトン」シリーズファンは米国にも多いのです。これまで、Twitterなどをはじめとしたソーシャルメディアでこの場所にたどり着くためのヒントをなんどか伝えていたのですが、今回、来ているひとはそのヒントを解いてたどり着いた人たちも多くいらっしゃいます。みなさんにもっとレイトンの世界を楽しんでいただけるよう、グッズ展開などにも注力していきたいです。

―――では、今後の展開について教えてください。

藤極氏: 米国では、3DS版が今秋発売予定なので、今年の後半期は「レイトン」シリーズを盛り上げていきたいと思います。この他、『YO-KAI WATCH』最新作や新作『SNACK WORLD』の展開も控えています。当方は主にクロスメディアタイトルの展開を担当しているのですが、これからは日本での展開と時差なくすることで日本での盛り上がりを米国へもしっかりと広げていけたらと思っています。これからもレベルファイブの強力なクロスメディアタイトルのゲーム、アニメ、玩具などんどん海外へ展開出来るよう挑戦を続けますので、目を離さずに注目いただければと思います。

――ありがとうございました!
《中村彰憲》
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