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スマホ版「ログレス」はこうして作られた。PCゲームしか開発経験のないチームが取り組んだゲームデザインの挑戦

ゲームビジネス 開発

スマホ版「ログレス」はこうして作られた。PCゲームしか開発経験のないチームが取り組んだゲームデザインの挑戦
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CEDEC KANSAIでAimingは、「『剣と魔法のログレス いにしえの女神』の開発チームが語るスマートフォンゲームデザイン」と題して講演を行いました。



講演内容は「それまでPCブラウザゲームを中心に開発していたチームが、はじめてスマホネイティブのゲーム開発に挑戦するうえで突き当たった、ゲームデザイン上の課題とその解決方法」という、非常に旬なもの。ネイティブアプリ開発に移行をすすめるゲーム業界の現状を象徴するような内容となりました。講演を行ったのはプロデューサーの下川晶平氏、ディレクターの福田浩靖氏、プランナーの宮際秀志郎氏の三名です。

『ログレス』はPCブラウザゲームを原作に持つスマホ向けMMORPGです。アバター設定の自由度や広大なフィールド、最大5人まで参加できるバトル、本格チャットアプリにも匹敵するチャットシステムなど、MMORPGの醍醐味が手のひらに凝縮された内容になっています。開発はAiming、販売はマーベラスのタッグで、ビジネスモデルはF2P。PC版はFLASHベースで開発されていますが、スマホ版はcocos-2dxベースとなりました。2013年12月からスタートし、1年間で500万ダウンロードを達成した後も、順調にユーザーが増加しています。

このように今となっては順風満帆といったタイトルに育ちましたが、その誕生は難産でした。元のPCゲーム版開発スタッフがそろっており、開発内容は移植ベース。サーバやアセットもできるだけ共有することが決まっており、あとはスマホ向けに改変すればいいだけでしたが、そこが最大の難関だったのです。ポイントは「開発チームが誰もスマホのソーシャルゲームをガッツリとプレイした経験がなかった」こと。社長の椎葉氏から「新聞を読まない新聞記者はいない、映画を見ない映画監督はいない、なのになぜスマホゲームを遊ばないのか」と激を飛ばされた下川氏らは、まずヒットしているスマホゲームを片っ端からプレイするところからスタートしたといいます。

時代的にはちょうど2年位前の話で、カードバトルや大連携系ゲームが人気を集めていたころ。部署を上げてプレイを進め、最後は業務に支障をきたすほどになったといいます。その結果「ゲームサイクルがすごく単純化されていて、ライトに遊べる」「成長感や達成感がすごく研ぎ澄まされている」という特徴を実感。なにより「すごく楽しい」ということが開発チーム全体で共有できたといいます。

もっとも、その楽しみはスマホという「超手軽で短時間プレイに向く画面の小さな縦型デバイス」ならではのモノだったため、単純にPC版を移植しただけでは実現できないことも、また明らかになりました。そのため開発にあたっては、まず「クエスト→フィールド→バトル→クリアというサイクルを5分で体験させる」という目標が立てられました。



もっとも、最終的に完成したゲームは「バトルだけで最長40分間くらいかかってしまう、MMORPGの醍醐味をガッツリと詰め込んだ、羊の皮を被った狼のような内容」(下平氏)になってしまったといいます。しかし、狩りにハードコアなゲームになったとしても、「ゲームの内容が魅力的で」「楽しさにいたる導線がしっかりと作られていれば」老若男女でプレイしてもらえることがわかったと語りました。そして、そのためにはチーム内で「おもしろさ」に対する意識の共有を行うことが非常に重要だと指摘されました。



実制作で議論になった点の一つに「スタミナ制を導入するべきか」という点がありました。多くのスマホソーシャルではスタミナという概念があり、長時間プレイするためにはスタミナの補充が必要で、主要な課金アイテムにもなっています。一般的にゲームデザインはビジネスモデルによって規定されます。つまりビジネスモデルがF2Pなら、それにあったゲームデザインを考えるべきで、何も考えずにスタミナ制にするべきだ・・・と考えるのは自然な流れでしょう。



そこで本作でも「スタミナが切れたら宿屋で泊まると回復する。この時、課金アイテムを使うと回復時間が短縮できる」というアイディアが生まれましたが、椎葉氏から「ふざけるな」と反対されてボツとなりました。というのも、みんなが集まって狩りに行く時に一人だけスタミナが切れていると、宿屋でいちいち回復させる必要が発生します。これによりテンポが削がれてしまったり、場合によってはみんなでプレイできなくなってしまうからです。下川氏は「シングルプレイには良いが、MMORPGにはマッチしにくい仕様だった。根拠の無いルールは空振りする可能性が高い」と振り返りました。



縦持ちか横持ちかという点も議論になりました。下川氏は「電車のつり革につかまってプレイするためには、縦持ちで片手プレイができなければダメ」と判断しましたが、開発チームはみなPCの横画面での開発になれていたため、「本当におもしろいのか?」と疑心暗鬼になっていたといいます。そこで開発の途中まで縦持ち、横持ちの2バージョンでUIなどのデザインが行われることに。あらゆる作業量が2倍になるという地獄の進行で、開発チームが疲弊してしまいました。特にPCゲーム版のアイテム画面やスキル画面などの、大量の情報をスマホの小さな画面で表示するために、かなり苦心したといいます。この辛く苦しい日々は結局、プロトタイプが完成するまで続くことになりました。





初期導入とチュートリアルの簡略化もポイントでした。無料でプレイできるぶん、ちょっとめんどくさいと、すぐに止められてしまう・・・これはあらゆるF2Pゲームに共通の課題です。そこで「アカウント登録が不要で遊べるパスワード方式」「アバターの初期設定や、キャラクターの命名を最初にさせない」などの思い切った判断が行われました。操作方法もバーチャルパッドを廃して、画面タッチで移動からバトルまですべて済ませられるように変更されました。これによりチュートリアルが簡略化された点はよかったものの、「パスワードをメモっていない」「機種変更でわからなくなった」など、サービス後に問い合わせが殺到することに。「もっと良いやり方があったはずで、今後の糧にしたい」と振り返りました。

MMORPGなのにバトル時の回復が「自分かパーティ全体のみ(パーティの個別メンバーを指定して回復させられない)」という割りきった内容になったのも、できるだけシンプルでライトな操作性を保つためです。一方でPC版に引き続いて、パーティメンバーでなくてもスロットに空きがあれば(最大5人まで共闘可能)誰でもバトルに助太刀できるような仕様が盛り込まれました。「パーティを組む敷居を下げて、協力プレイの楽しさを感じて欲しかった」(下平氏)。MMORPGにつきもののチャットシステムも、「チャットアプリがそのまま入っているようなもの」という、非常に凝った物になりました。PCゲーム版で培ったチャットシステムのノウハウはすべて捨てて、イチからスマホアプリを参考にしつつ作りなおしたといいます。



このように実開発では議論が紛糾し、時に迷走することもありましたが、そうした中でも結束できたのは、早い段階でゲームの基本サイクルや、バトルの面白さが共有できていたから・・・そのように下川氏は語りました。中でもバトルについては新ルールを導入したこともあり、早い段階でペーパープロトタイプを作って、カードゲーム形式でおもしろさを検証する作業が行われました。実作業は膨大なものでしたが、担当した宮際氏は結果として良かったと振り返ります。「エンジニアやアーティストにもプレイしてもらって、おもしろさを実感してもらえたので、追い込みの時にも率先して無茶をやってもらえました」(宮際氏)

下川氏は「ゲームデザインは開発チーム全体の道標」だといいます。こうした設計図ができてはじめて、エンジニアやアーティストといった専門職種による知見が組み込まれ、ゲーム開発が本格的に進んでいくのです。もちろんゲームデザイナーにとっても、ゲームデザインの次はレベルデザインであったり、モンスターやアイテムなどのパラメータ設定というように、さまざまな実作業が待ち構えています。しかし、それでも最初にきちんとした設計図があれば、作業も円滑に進むというわけです。

もっとも、最初からPCゲームとスマホゲームの違いや、開発に関する手間についての知識があれば、失敗を恐れて前に進めなかったかもしれない・・・そんな風に下川氏は語ります。「『RPGだから宿屋が欲しくないですか?』という自分の提案は罵倒されて終わりましたが、結果的に自分の成長につながってよかったと思っています」(下川氏)。それでも勇気を持って新しい遊びを提案していくことが、成功するスマホゲームデザインの一つ・・・このように下川氏は講演を締めくくりました。

《小野憲史》

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