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『マリオカート8』から見えてくる、営業赤字464億に挑む任天堂の姿勢

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  • 『マリオカート8』から見えてくる、営業赤字464億に挑む任天堂の姿勢
任天堂は、5月7日に3月期決算を公開。営業利益464億円の赤字をはじめとする、減収・営業赤字拡大を明らかとしました。

この結果に至る理由は様々ありますが、Wii Uの普及が想定に達せず、それに伴いWii Uタイトルが軒並み伸び悩む状態にあるのがその一因であることは、否定しにくい状態です。現時点でのWii U世界累計台数は、約17ヶ月を要して617万台。前ハードとなるWiiが、約15ヶ月で2,000万台を達成したことを考えると、物足りない結果なのは明らかでしょう。

普及に加速がつかないWii Uですが、リリースタイトルの出来映えに問題があるのかと問われれば、それは全くのNOです。自社有力タイトルだけでも、『スーパーマリオ 3Dワールド』をはじめとする5本が世界規模でのミリオンセラーを記録しており、プレイしたユーザーからの満足度も概ね高水準を維持しています。本体台数を考えれば、むしろ健闘どころか躍進とも言うべき結果です。

◆任天堂の据え置きハードが抱えている慢性的な問題は、「知られていないこと」


ではなぜ、よいソフトがあってもハードの普及に繋がりにくいのか。これも多々原因のある問題かと思いますが、そのひとつとしてWii Uソフトの良さが「知られていない」「認識されていない」という一面も少なからずあるように感じます。この問題は、実はWii時代も抱えており、2009年にWiiで販売された『朧村正』は4~5万本(廉価版含まず)に対し、2013年にPS Vitaへ登場した同作は、10万本を超えるスマッシュヒットを記録しました。

描写力の向上などはありますが、ソフト単体に関しての基本的なゲーム性に差はありません。価格ではWii版の方が2,000円以上上回っており、その点で購入に歯止めがかかった面もありますが、WiiとPS Vitaの普及台数を比較すると国内だけでも10倍近い開きがあり、ソフトの価格を考慮してもなお、圧倒的な母数でWiiの方が有利に思えます。しかし実際には、PS Vita版に売れ行き面での軍配が上がります。

ユーザー層の向き不向きも無論ありますが、同時にWii版『朧村正』というゲームが、その本質的な魅力なども含めた意味で、当時知られていなかったのだと思います。対してPS Vita版は、立ち上がったばかりの新ハードだけに、必然的にまだ総タイトル数も少なく、自ずと『朧村正』への注目度が上がりました。そしてこのタイトルは、知られさえすれば10万本を売り上げる力があることを、身を持って証明したのです。

『朧村正』はWiiでの例ですが、Wii Uが抱えている問題でもあります。Wii Uタイトル個々の魅力がうまく伝わらず、苦戦しているように感じるのです。『レゴ』シリーズ屈指の好ローカライズを果たした『レゴシティ アンダーカバー』や、「『ピクミン』みたい」という見る側の思い込みが生む誤解で大きく損をしている名作アクション『The Wonderful 101』などが、まさにその落とし穴に入り込んでいます。

◆「遊べば分かる面白さ」だけでは駄目


向き不向きや相性を除けば、任天堂が提案するゲームは魅力的であることが多いのですが、その反面、触れなければ面白さが分かりにくい面もあります。『どうぶつの森』シリーズや『トモダチコレクション』といった大成功を収めたタイトルたちも、説明だけでは今ひとつピンと来ない人も少なくないでしょう。

遊べば分かるその完成度を、遊んでもらう前にどのようにアピールし伝えていくか。これに関してはどのゲーム企業も悩み苦しんでいる点かと思いますが、任天堂は自社のWii Uタイトルの告知に関して、これまでタレントを多く起用する方法論を活用してきました。『スーパーマリオ 3Dワールド』では上戸彩さん、『JUST DANCE Wii U』ではAKB48メンバー、『Wii Party U』・『ドンキーコング トロピカルフリーズ』・『マリオ&ソニック AT ソチオリンピック』では関ジャニ∞と、多くの方が知る有名人がCMや公式サイトに登場しています。

この流れを踏まえると任天堂は、自社のWii Uタイトルの「認知度」を上げる方向性に重きを置いてきたように感じられます。ゲームの中身だけでなく、ゲームそのものを多くの方に認識してもらうべく、有名なタレント陣を用いてきた。しかしその成果は芳しいとは言い難く、ソフト自体の知名度は上がったかもしれませんが、「そのソフトを購入したい人」に対して「魅力を伝える」というポイントがクリアできたとは断言しにくいのが現状です。

◆ターニングポイントを予感させる『マリオカート8』の展開


そんな状況を打破するのが、今月いよいよ待望の発売日を迎える『マリオカート8』です。本作の人気や注目度によるブレイクスルーはもちろんのこと、展開する戦略性においてもこれまでの任天堂とは大きく異なる方向性を打ち出しています。

まずは、前述したTVCMに関して。これまでの「タレント起用による知名度アップ」から大きく舵をとり、先日公開されたTVCM2本はどちらも、ゲーム内容に終始する映像でした。ナレーションも本作の新要素や長所を雄弁に語っており、ゲーム部分にのみスポットライトを当てています。

また『マリオカート8』には、自分のレースのハイライトシーンの映像を投稿してインターネット上で共有するなどの「マリオカートTV」という新機能が搭載されますが、このマリオカートTVを、スマートデバイスやPCでも閲覧できるWebサービスも予定しています。本作を遊んでいないときや外出中でも、『マリオカート8』が持つ楽しさにアクセスできるようになるこの試みも、今までの任天堂タイトルにはなかった、新たな施策と言えます。

加えて、本作の早期購入特典として、Wii Uタイトルを更に楽しめるキャンペーンを展開。国内では「指定Wii Uソフト2本の製品版を1ヶ月遊び放題」に、米国では「指定Wii Uソフト1本を無料ダウンロード」と、その内容に違いこそあれ、どちらも購入意欲を強く刺激するお得なサービスとなっています。

このキャンペーンが魅力的なのは、「無料で遊べる」だけでなく、「高く評価されたタイトルがラインナップに入っている」という点も欠かせません。『マリオカート8』を買うだけで更に1~2本のタイトルが遊べてお得というユーザー側の利点のみならず、このキャンペーンを通して、遊べば面白いWii Uタイトルが眠っていることを、文字通り「遊んでもらう」ことで知ってもらえるという任天堂側の利点もあるのです。

知名度を上げるための告知からゲーム内容の伝達へと切り替え、その手段もCMや広告だけでなくスマホなどを活用。また「遊べば分かる面白さ」を体験してもらえる機会も積極的に設けていく任天堂の攻めの姿勢は、これまでとはその方向性を大きく変化させたと言っても過言ではないでしょう。

この変化が、『マリオカート8』だけで終わるのか。それとも、今後のリリース展開に影響を与えるターニングポイントとなるのか。『マリオカート8』がもたらす今後の成果に注目するとともに、華麗な“ロケットスタート”が披露されることを願うばかりです。

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆


『マリオカート8』は、5月29日発売予定。価格は、パッケージ版・ダウンロード版ともに5,700円(税抜)です。

(C)2014 Nintendo
《臥待 弦(ふしまち ゆずる)》

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