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【CEDEC 2013】本格RPGからインディーゲームまで~多様なプラットフォームPlayStation Mobileの現状と今後

8月21日に開催されたCEDEC2013にて、株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントの多田浩二氏は「PlayStation Mobileの現状と今後の展望~活気づくインディシーン~」と題された講演を行いました。

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8月21日に開催されたCEDEC2013にて、株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントの多田浩二氏は「PlayStation Mobileの現状と今後の展望~活気づくインディシーン~」と題された講演を行いました。

PlayStation Mobile(以下、PSM)は、PS Vitaをはじめ、Android端末でゲームが楽しめるプラットフォームです。昨年、12年10月よりサービスが開始しており、一年を迎えつつあるこのプラットフォームについて、多田氏は概要と現況、そして今後の展望について報告しました。

多田氏はまず、PSMのコンセプトは「多種多様なデバイス上にPlayStationの世界を広げていく」ことにあると説明しました。これまでのPlayStationが専用デバイスを持つプラットフォームであったのに対して、PSMは専用デバイスを持たず、PS VitaやPlayStation Certifiedという認証が得られたAndroid端末でゲームが動作します。

またPSM専用のSDKで開発することで、一つのソースでこれらの様々な端末に向けてゲームがリリースできるのが魅力です。さらに日本、北米、欧州の10カ国以上の地域でのリリースが可能。今後もリリース地域を増やしていき、グローバルにゲームを配信できるプラットフォームを目指すそうです。

PSMでゲームを開発するには、まずPSM Developer Portalと呼ばれるサイトからデベロッパー登録を行います。デベロッパー登録は無料で行え、SDKのダウンロードと開発者フォーラムにアクセスすることができます。さらにパブリッシャーライセンスの登録を行うと、実機での動作検証とゲームのリリースが行えます。

さらに現在はパブリッシャーライセンスも無料で登録可能であるため、事実上、PCさえあれば無料でPSM向けのコンテンツの開発から配信が行えます。PS Vitaなどの実機がなくても、PC上のシミュレーターでゲームを動作させることが可能であるため、とりあえずはSDKをダウンロードして、多くの人に気軽に触ってみてほしいと多田氏は述べています。

開発環境にはPSM Studioと呼ばれる統合開発環境が用意されています。プログラミング言語はC#が採用されており、MonoGameがベースとなる開発環境であるため、Visual Studioなどに慣れた人なら比較的に容易に開発が行えるそうです。UI制作ツールであるUI Composerや各種グラフィックスやサウンドのライブラリからサンプルゲームも用意され、初心者や学生でも開発できる環境を目指しています。

実際にゲームを開発した後、販売するためには、PSM Developer Portalにアップロードを行います。値段、地域、スクリーンショット、説明文などを登録して、レビューを申請した後、無事に審査に通過するとリリースされる仕組みです。

具体的な審査の方針については詳しく触れられませんでしたが、ゲームの中身の言語は地域別に用意する必要はなく、説明文や各地域でのレーティングさえ準備すれば、リリース可能であるそうです。レーティングは開発者側がPEGIやESRBといった各地域のライセンスを取得します。日本国内ではPlayStation独自のレーティングが用意されており、審査の時間も短く、スムーズに配信できるそうです。

コンテンツの販売は卸売方式という他のプラットフォームには見られない独特なものになっています。つまり、開発者がユーザーに直接販売した売上からプラットフォーマーが収益を得るのではなく、SCEが開発者から卸売価格で買い取るという方式です。ユーザーは卸売価格よりも高い販売価格でコンテンツを購入します。

例えば、卸売価格が0.69ドルであった場合、販売価格は0.99ドルとなります。この差額がプラットフォーマーとしてSCEが得る利益となります。このシステムの利点としては、日本のデベロッパーならば、どこの地域で売上を上げても日本円で収益が入る点です。プラットフォーマーとデベロッパーの取り分の比率は、標準的な設定になっていますが、決済などの面において、他のプラットフォームよりも使いやすいものだと言えるでしょう。

実際の購入とダウンロードは、Vitaの場合はPlayStation StoreのPSMというカテゴリー、Android端末の場合はPSMのアプリから行います。Android端末の場合、PSMのアプリをインストールする必要があるため、今後はユーザーへの認知を高める必要があると思われます。その他、VitaやAndroidのブラウザからのPSMのストアに直接リンクを貼るDirect Link機能も用意されています。

次にタイトル数やセールスなどの現況報告に移りました。PSMのタイトル数は、ローンチ時は少なかったですが、現在は150程度まで増えています。個人やインディペンデントな開発者も非常に多く、国内のパブリッシャーライセンスの登録数も非常に増えています。

ファーストパーティータイトルとして、『勇者のくせにこなまいきだ。』や『TOKYO JUNGLE Mobile』といった他のプラットフォームでの人気作をモバイル向けに作りなおしてリリースしています。またスクウェア・エニックスのスマートフォンの人気RPG『ケイオスリングス』もPSMのSDKで作りなおされ、リリースされました。PlayStationのコントローラーであるDUALSHOCK 3にサポートされているため、今後はこういった本格的なRPGのリリースが期待されます。

インディーゲームでは、これまでコンシューマ機には無かったような斬新なタイトルがリリースされています。同人ゲームサークルとして有名な神奈川電子技術研究所が開発した『僕は森世界の神になる』やローグライクゲームの『不思議の国のラビリンス』といったゲームには根強いファンが付いているそうです。海外のインディーゲームも人気であり、iOSで人気を博した音楽ゲーム『Cytus』が『Cytus: Lambda』としてPSM専用タイトルでリリースされ、1200円という高い価格ながらもヒットを飛ばしているそうです。

次に地域別の売上比率や人気タイトルについて説明されました。地域の中ではVitaの普及率の高さから、日本が非常に好調であるそうです。またVitaユーザーは非常にゲームへの関心が高く、スマートフォンなどと異なり、ゲームらしい有料タイトルの人気が高いそうです。

またPSMでは、基本料無料のアイテム課金型のF2Pのゲームはリリースできますが、完全に無料のゲームを禁止しているそうです。その理由は、広告を目的にしたアプリが乱立することで、マーケットが混乱することを防ぐためにあるといいます。あくまでも、コンテンツで利益を上げることを目的としたエコシステムを目指しているそうです。

地域ごとにまとめると、日本の人気作はやはり日本・アジア発のものが多いそうです。ワールドワイドで比較しても日本・アジア発のタイトルが健闘しており、今後もPSMから全世界でのヒット作が産まれることに期待していると、多田氏は述べています。

昨今では、日本でもインディーゲームシーンに注目が集まっています。その中でもPSMは、IGDA日本の同人・インディーゲーム部会による勉強会が行われたり、デジタルハリウッド大学によるゲームジャム「PSM GameJam 2013 Summer」が主催されたり、開発者から高い関心を持たれているプラットフォームです。SCEでは、これからも開発者のコミュニティを活性化させるために積極的にGameJamなどのイベントを企画していくと、多田氏は展望を述べています

今後の展開としては、次のアップデートでPSNのランキング機能に対応する予定です。そして、より本格的なゲームを容易に全世界に配信できるプラットフォームを目指すと述べ、多田氏は講演を終えました。

CEDECの会場には、DUALSHOCK 3に対応した『ケイオスリングス』のデモプレイも展示されており、自由に遊ぶことができます。タブレット端末をゲームコントローラで操作するのは、その大きな画面の効果もあってか、予想以上にコンソールゲームに近い体験を楽しむことができました。
《今井晋》
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