コンプガチャはなぜ駄目か? ソーシャルゲーム今後の争点

コンプガチャはなぜ駄目か? ソーシャルゲーム今後の争点

2012年5月7日(月) 22時28分

各社報道によれば、消費者庁はソーシャルゲームの「コンプリートガチャ」(コンプガチャ)と呼ばれる手法について、景品表示法上の「絵合わせ」に該当するとして近く各社に通知を行う方針を固めたとのこと。

コンプガチャとは、ランダムでカードなどのアイテムが手に入るガチャのシステムを進化させたものと考えられ、ガチャで入手できる複数の組み合わせを完成させると更にレアなアイテムが手に入るというもの。コンプガチャを揃えるには一般的に多額の投資が必要で(分かりやすく説明したコンプガチャシミュレーターも参照)、数十万円を請求されたとして消費者庁への相談も昨年50件寄せられたとのこと。

『アイドルマスター シンデレラガールズ』のコンプガチャ。ガチャで複数のレアカードを全て集めるとよりレアなカードが手に入る。『探検ドリランド』のコンプシート。ガチャで該当のカードを集める毎にシートが埋まっていく。『プロ野球ドリームナイン』のコンプシート。こちらもドリランドと同様


景品表示法とは、不当に顧客を誘引することを禁止したもので、「不当な表示の禁止」と「過大な景品類の提供の禁止」があります。誇大広告や取引に対して抽選などで何十倍もの金額の景品を付けることはこの法律で規制されています。消費者を保護すると共に、過剰な競争を防止する狙いがあります。

特に今回、コンプガチャが該当するとされる絵合わせ(カード合わせ)とは「二以上の種類の文字、絵、符号等を表示した符票のうち、異なる種類の符票の特定の組合せを提示させる方法を用いた懸賞による景品類の提供はしてはならない。」(S52.3.1公取告示3号)とされる部分です。まさにコンプガチャが当てはまります。

4月24日の消費者庁の福島長官の記者会見でも、景品表示法で具体的に問題となる点について「ちょっとまだ結論を出していない段階で、余り予断でお話しするようなことは避けたいと思いますが、ソーシャルゲーム上のガチャなど、それ自体が直接景表法上問題が生じるとか、対象になるということではないと思いますが、カードを組み合わせて、組み合わせによってレアカードが当たるというような仕組みがあります。これは場合によっては、景品に当たるということも考えられますので、それを踏まえた考え方を整理をして、消費者庁の考え方をまず示すということが必要なのではないかと考えています。そういった検討もしているところです。」と述べられています。

一方で福島長官は「ソーシャルゲーム上のガチャなど、それ自体が直接景表法上問題が生じるとか、対象になるということではないと思います」と、ガチャ自体は景品表示法に抵触するものではないとも述べています。

つまり、コンプガチャは禁止されたとしても、ソーシャルゲームのカードゲームを興隆させるに至った、ガチャを通じてのカードの入手と、カードを強化するための合成(によって入手したカードは消滅する)という組み合わせは引き続き有効な手段として残ることになります。

ただし、懸念が解消されたわけではありません。まだ幾つか論点があります。

・ガチャの確率明示
ガチャは毎回カード(アイテム)を引くことができ、一定の確率で希少なカードを手に入れることができるという仕組みです。しかし、その確率がどのようなものかは伏せられています。これに対し、遊技機(パチンコ・パチスロ)では大当たりの確率の下限や一回あたりの出玉の回数が細かく規定されています。また、ソーシャルゲームではユーザー毎や時間毎、あるいはユーザーの状況に応じて確率を操作可能という特徴があります(している/していないではなく)。遊技機の場合には保安通信協会、公安委員会、所轄警察によって試験が行われ、条件に適合しているもののみが提供されます。ガチャでも当たりの確率の明示や操作を行なっていない旨を何かしらの形で担保する必要が出てくる可能性があります。

・風営法との関わり
ソーシャルゲームの射幸性の強さやRMT(リアルマネートレード、ゲーム内アイテムをリアルマネーで取引すること)による換金性から風営法(風俗営業適正化法)の適用範囲ではないかと指摘されるケースもあります。風営法では7号にパチンコ・パチスロ、8号にゲームセンターが定められていて、運営には公安委員会の許可が必要です。風営法の適用となると、宣伝や営業時間、提供できる賞品など厳しい規制が行われることになります。7号や8号は現実の店舗となりますが、風俗関連では出張マッサージやインターネットでのアダルト配信など無店舗型の営業も規制対象となっています。射幸性の強さやRMTによる換金性を放置し続ければこうした風営法の議論が強まることも考えられます。

・レーティング
国内の家庭用ゲームはCEROが全てのゲームを審査し、そのゲームに適した年齢表示を行い、このガイドラインに沿わないゲームは事実上流通が不可能となっています。しかしソーシャルゲームにおいては、こうしたレーティングが行われておらず、年齢に応じた適切なゲームを提供する仕組みが用意されていません。各社は未成年者の課金額を制限する措置を講じていますが、そもそも年齢によっては遊ぶこと自体が相応しくないゲームもあると考えられ、レーティングを整備する必要性があるでしょう。


3月にはソーシャルゲームプラットフォームを提供するNHN Japan、グリー、サイバーエージェント、ドワンゴ、ディー・エヌ・エー、ミクシィの6社で、ソーシャルゲームの利用環境向上のための連絡協議会を立ち上げています。PCオンラインゲーム大手のNHN Japanが入っているように、ソーシャルゲームの問題はそのままオンラインゲームの問題でもあります。4月下旬に開催された第一回会合では、「RMT対策の強化」「青少年ユーザーの適正利用のための環境整備」「ソーシャルゲーム内における分かりやすい表示」などが協議されたとのこと。

週明けになってもグリーやディー・エヌ・エーはコメントを発表していませんが、Klabはプレスリリースの中で、消費者庁からの指導があればコンプガチャのシステムは見直すことを明言しています。特に法的な規制のないまま、3000億円とも言われる巨大な市場に成長したソーシャルゲーム産業。営業利益率が50%にも達する異常な高収益はいずれ是正されざるを得ない状況です。この機会に、KPIだけではなく、社会とも向きあう必要があると考えます。

ソーシャルゲームを見る目は人によって様々です。ある人は「世界に羽ばたける成長産業だ」と言い、ある人は「射幸性で人を惑わす賭博だ」と言い、またある人は「利益が上がっているからいいんだ」と言い、ある人は「同じようなゲームばかりだ」と言い、ある人は「コミュニケーションを基軸にした新しいゲームの形だ」と言う。それぞれに一面の事実があり、お互いに改めるべき行動や認識があります。様々な規制は一面では収益を損ない、自由度を失わせるものです。しかし、これを機にして、この産業がどのように社会と関わりあい、その中でどれだけ人々を楽しませることができるかという原点に戻るきっかけとなることを期待しています。

(Article written by 土本学)
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