様々な開発プロジェクトが進行しているバンダイナムコゲームス。うち2割程度のプロジェクトでスクラムが採用されているそうです。松元氏は開発スタジオ P&Sディビジョン プログラム1部のプロジェクトアドバイザリチームに所属し、全体の進行支援を行うわけですが、各プロジェクトの進行方法や手法自体は上が決定するわけではなく、各プロジェクトがかなり独立性を持って最適な手法が個別に决められるそうです。長い伝統がある企業であること、ナムコとバンダイの合併企業であることも背景にはあるかもしれません。
ですから、スクラムマスターとしてスクラムの導入支援も行う松元氏ですが、上からスクラムを導入していくというわけではありません。むしろ今までのやり方を上手く折り合いを付けながら、いかにスムーズにより良い手法を導入するか、という方法論が今回のセッションでも語られました。
松元氏が言ったのは「始めやすいところから始めよう」ということです。どんなに良い事でも理解がされないまま押し付けても意味がありません。ですから、意欲的な人がいる、理解を示してくれている、知り合いが多い、といったプロジェクトから始めるのが良いのではないかということでした。そして何より大事なのは全員が共通認識を持つ事です。現状がどのようになっていて、何が問題で、将来的にどのように解決されるべきなのか。一度腹を割った話し合いが必要だと言います。仕事のやり方を変えるということは巻き込まれる側の人も出てきてしまいます。更にスクラムは各人の持つ責任や権限を大きく変えます。この影響を受ける側の人にもきちんと話をして理解してもらうというのはとても重要になります(権限を奪われるのは誰でも気分がいいものではありませんよね)。
いざ始めるという段では、どのような順序で始めればスムーズにチームがスクラムを学べるか、いまの段階でどこまで踏み込んで実行ができるかが大事になります。
松元氏はスクラムの最初の段階としてプロジェクトの見える化から始めるのが良いのではと言います。近年ゲーム開発の工程は大きくなり、誰が何をしているかの把握は容易ではなくなりました。プロジェクトの中の職種別に作業の状況の見える化をはじめましょう。スライドではボードと付箋を使った進行管理が示されました。ただしこの場合も職種によって細部の仕様方法は違っています。松元氏は、必ずしも最初の段階で統一的手法にこだわる必要はなく、少しでも前に出る事が重要と話していました。そして、やってみれば気づきがあります。チームの気づきを上手く利用して前に少しずつ進めていきます。
次のステップとなるのは各人が自律的に作業内容を决め、進行していくという形作りです。従来の開発では管理者が各人に指示する形で進行していきました。それを止め、各人が自分のすべき事をチーム全体に開示しながらコミットし、その進捗状況を逐一報告していくという形に改めていきます(典型的なスクラムでは2週間を1つの単位として、作業内容の決定&最後にレビュー、を繰り返していく)。
特に大企業では新しいことを始めるのには時間がかかります。当事者が多ければ多いほど、その調整には困難が伴います。ですから下地作りから始め、始めやすいところから、コツコツと、というのが松元氏の教訓だということです。そして透明性を確保していく。透明性を持っていれば問題点や課題も自然と浮き彫りになり、それが物事を前に進める原動力となります。
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