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【GDC2011】日本の同人ゲーム海を渡る・・・世界で高い評価を受けた『洞窟物語』

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【GDC2011】日本の同人ゲーム海を渡る・・・世界で高い評価を受けた『洞窟物語』
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今年のGDCの中でも最も異色で、最もスタンダードな講演でした。

GDC最終日となる4日、講演「The Story of Cave Story」の中で天谷大輔氏は、フリーソフト『洞窟物語』を題材に、ゲームデザインの基本的な考え方を明らかにしました。

「洞窟物語」の作者で同人ゲームクリエイターの天谷大輔氏ゲーム内容は2Dのアクションシューティングだmetacriticでも89点をマークしている


『洞窟物語』は2004年にWindows向けの2Dアクションゲームとして個人制作され、同人ゲーム界で高い評価を獲得。2010年に米国のパブリッシャーNicalisでWiiウェアに移植され、『Cave Story』として発売されると、高い評価を獲得しました。DSiウェアでの発売に続いて、ニンテンドー3DSでも発売が決定しています(いずれも国内では未発売)。

海外レビュースコアの指標を示す「metacritic」では89点をマーク。「Wiiウェアが提供する最高のゲームだ(NGame UK)【100点】」「1990年以降、最も優れたタイトルのように感じる(1UP)【100点】」と、辛口で知られる海外ゲームメディアでも、軒並みポジティブな評価を引き出しました。Wiiウェアの成功例『グーの惑星』が94点、大旋風を巻き起こした『LIMBO』が90点と聞けば、その水準がわかるでしょう。

このように本セッションは、個人開発のゲームが海の向こうでブレイクし、GDCで講演するまでに至った、極めて珍しい例です。日本の同人ゲーム開発者による講演は、おそらくこれが初めて。GDCの講演は狭き門で、同時通訳が必要な日本人セッションとなると、さらに数が限られます。海外市場における、インディーズゲームのうねりを象徴する事例だとも言えるでしょう。

『洞窟物語』のアイディアが最初に浮かんだのは1998年。しかし、当時は技術が乏しく挫折。そこからミニゲーム制作などを経て、2000年に着手しました。2002年に完成直前までこぎ着けたものの、友人によるテストプレイの反応が芳しくなく、ゼロから作り直しを決意。2004年にようやく完成したという、6年ごしのプロジェクトです。

16x16ピクセルで数多くのキャラクターを作成必要なツールは自作しながら作り上げていった自作エンジンでファミコン風サウンドを実現


ゲーム画面は320x240ピクセルしかなく、開発当時から「時代遅れのゲーム」でした。PS2の全盛時代でしたが、あえて2Dゲームを選択したのは「3Dゲームの開発技術がなかったから」(天谷氏)。技術の進歩によって、映像やサウンドが向上しただけでなく、開発の敷居が下がった恩恵を受けたといいます。「昔はキャラクターを画面に表示させるだけでも難しかった。技術が進化して、やっと自分一人でも作れるようになった」。

開発ツールは、プログラミングはVisual C++。グラフィックにはIDraw3というフリーソフトを使用。ステージ制作ツール、BGM作成ツール、効果音ツールは自作しました。サウンドも公開面の問題などからMIDIの使用を避け、ファミコン風のサウンドを発するエンジンを新たに書き起こしています。

もともとドット絵が好きだという天谷氏。「昔のゲームが好きな人に楽しんでもらえれば」と作り始めましたが、ゲームをいざ公開してみると、若い世代のファンも多かったことに驚いたそうです。北米でのヒットも、こうした潜在的なニーズを上手くすくい上げた結果だと言えます。

続いてトピックは『洞窟物語』におけるゲームデザインに移りました。天谷氏はゲームの構成材料として▽ビジュアル▽双方向性▽効果音▽BGM▽ストーリー、という5つの要素をあげ、これらを上手く使って、プレイヤーをいかにのめり込ませるかが重要だと指摘。具体的なテクニックについて解説していきました。

ビジュアルは「目立つこと」「わかりやすいこと」が重要。ゲームの特徴は「双方向性」にあり、自キャラが何かアクションをすると、それに対して敵キャラが反応を返すという一連のループは、その中でも最もベーシックな部分に相当する。効果音は費用対効果が高いわりに、同人ゲームでは軽視されがちな部分で、もっと積極的に使うべき。BGMには「情景描写」「状態通知」「すりこみ効果」の3つの機能がある。ストーリーはプレイヤーのモチベーションをかき立てる大きな要素の一つで、ゲームが進行していることを伝える手段としても効果的・・・。

もう、言われていることが、いちいちごもっともで、当たり前の内容。ただしプロの開発者でも、これらをどれだけ実践できているか、疑問に感じられることもあります。聴衆にとっても、改めて感じ入る点があったのではないでしょうか。

グラフィックは機能性を第一に考える個人制作だからこそステレオタイプは避ける
プレイヤーは限られた部分しか見えていない効果音は費用対効果が高いので、もっと使おう


中でも「明日から使えるTIPS」だと感じられたのが、サウンドに関する言説です。天谷氏は「プレイヤーは絵だけでなく、効果音からも『双方向性』を得たがっている」と説明し、もっと効果音の種類を増やすことを勧めました。BGMについても楽曲の完成度ではなく、ゲームデザイン的な視点から語られた点がユニーク。すべてを一人で作り上げた開発者ならではのTIPSだったと言えます。

もっとも、そのためには「非常に高い授業料」を払う必要もありました。その象徴が、完成寸前にまで至りながら、ゼロから作り直した点でしょう。理由について天谷氏は「友人へのテストプレイを通して、プレイヤーのコントロールに問題があると感じた。最初で最後のゲーム作りのつもりで、半ばやけくそになって作り直した」と語りました。中でもステージデザインと武器システムは大きく変更されました。

まずステージデザインでは最初から広大な内容だったのが、徐々に複雑になるように、学習要素を踏まえて修正されました。最初のステージはセーブポイントと回復ポイントを設置するだけ。次のステージでは左右の一本道。その次のステージでは、左右の一本道ながら、上下にも広げて、立体性を持たせる・・・などです。ステージ背景にも数字をふり、進むごとに1つずつ減少。数字がゼロになるとゴール到達といったように、モチベーションを切らさない工夫がなされています。



武器システムについても、当初は敵キャラクターを倒してコインを集め、ショップで買い物をして弾丸を補充したり、装備を強化する仕組みが考えられていました。そのためには武器に残弾を設定する必要があります。ところがボスと戦っている最中に弾切れになったり、いちいちショップに買い直しにいくのが面倒など、ストレスの原因になっていたとのこと。そこで敵を倒すと出現するアイテムを獲得し、武器をレベルアップさせていく仕組みに切り替えました。

ここから生まれた副産物が「敵からダメージを受けると武器がレベルダウンする」という仕様の追加です。これによって主人公が強くなりすぎることなく、緊張感を持って遊べるようになったと説明されました。天谷氏は「奇跡的にうまくいった」とコメントしましたが、これなども1つの工夫で複数の問題解決を達成するという、優れたとんち、否ゲームデザインの好例だといえます。

またプレイヤーコントロールの注意点として、「プレイヤーにコントロールされていることを感じさせないで欲しい」と指摘しました。最近では多くのゲームでチュートリアルが導入されるようになりましたが、天谷氏は自由に遊びたいのに、なにか強制されているように感じられて、好ましく思わないそうです。チュートリアルをゲーム展開とうまく融合させ、自然に誘導させることが重要で、「自分自身、プレイヤーが想定通りにプレイしているのを見ると、とても嬉しい」とコメントしました。

このように天谷氏の講演は、日本のゲーム開発シーンが数十年かけて培ってきた暗黙知をうまく言語化して、再構成したものでした。ポイントは天谷氏が業界内で教わることなく、『洞窟物語』の開発を通して、何度も失敗を重ねながら、一つずつ体得していったという点。ゲーム作りの最大の教科書は、ゲーム作りのプロセス自体にあることが、改めて感じられます。

また講演では語られませんでしたが、『洞窟物語』の成功を語る上で、欠かすことのできないのが米Nicalisのプロデューサーの存在です。その目利き力がなければ、海外ユーザーに知られることはなく、GDCでの講演もあり得ませんでした。機会があれば「日本の同人ゲームを海外にプロデュースする方法」といった講演も聴きたいところです。
《小野憲史》

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