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【TGS 2010】今年もまったく新しいゲーム体験が揃った「センス・オブ・ワンダーナイト2010」

ゲームビジネス 開発

【TGS 2010】今年もまったく新しいゲーム体験が揃った「センス・オブ・ワンダーナイト2010」
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「うー・まー・いー・ぞぉぉぉぉっつ!!」

食べた瞬間、あまりの感激に思わず口から光線を出したり、宇宙へ飛んでいったりする。80年代の人気アニメ『ミスター味っ子』に登場する「味皇」こと村田源二郎。いわゆるひとつのセンスオブワンダー体験です。

まったく新しいゲーム体験も、これと同じ感覚をもたらします。自分の世界観が根底からひっくり返ってしまうような衝撃。これれを引き起こすようなゲームのアイディアを発掘するイベントが「センス・オブ・ワンダーナイト」(SOWN)です。今年で3回目を迎え、東京ゲームショウの人気イベントとして、すっかり定着してきました。

会場は例によって満席で立ち見客も。総合司会の新清士氏(左)とGOWさん(右)会場では来場者がピコピコハンマーで盛り上がった。


今年は新たに「スマートフォン部門」が新設され、応募作品の幅が拡大。選考委員には新たに、フリーのインタプリタ言語「Hot Soup Processor(HSP)」開発などで知られ、昨年度は『para rail』で入賞もはたしたツェナワークスのおにたま氏が参加しました。世界13カ国から約60作品の応募が集まり、コンテストの国際性もさらに高まっています。

昨年の「SOWN」作品はいずれもYoutubeにアップロードされ、公式サイトにリンクがまとめられています。今年はなんと、Ustreamで会場から全世界に生中継されるおまけつき。視聴者数は3240名を数えたほどです。聴衆もピコピコハンマーを振り、ソーシャルストリームやtwitter上でもツイートが乱れ飛ぶなど、大盛況のうちに幕を閉じました。


カテゴリー1:新しいインターフェースの実験

■ラブプレス++~俺の嫁にマッサージ~(神奈川工科大学・白井研究室/日本)
http://www.shirai.la/project/lovepress



バランスWiiボードを「嫁」の背中に見立てて、マッサージを行う恋愛シリアスゲームです。適切な箇所をリズミカルにマッサージすると、声優によるボイスで「いやっ、えっちぃ」「おめっ、どこさわってるっっ」など、さまざまな反応が返って来ます。「嫁」のシルエット画像と声による想像力のみで、インタラクティブな「嫁」とスキンシップを楽しみ、「愛とは全身全霊をかけて相手につくすこと」という、真の恋愛感情を学んでいくのです。「嫁」の感情と反応は動的な心理モデルによって制御されており、全身全霊を込めて奉仕すれば、本当に喜んでくれるとのこと。公式サイトではβ版が公開されており、婚姻届(アンケート)を出すことでダウンロードできます。


■Infinite Blank(Evan Balster/アメリカ)
http://infiniteblank.com/



MMOGならぬMMOC(massively multiplayer online canvas)、それが『Infinite Blank』です。プレイヤーはキャンバスツールで自由に絵を描き、アップロードして、キャンバス上のワールドマップを広げていけます。この絵がそのままステージになる点がミソで、プレイヤーは世界中の人が描いたさまざまな世界を、どこまでも探索していくことができるのです。コミュニケーションを題材としたメディアアートという側面もある本作品、TGS会場でも来場者の手でステージが広げられていました。公式サイトで近く公開予定とのことです。選考委員の片山崇氏(ベクター)は、「オンラインゲームの究極の夢は世界中の人が一堂に集まって遊べること。それに近いものが感じられた」と絶賛しました。



■音楽マインスイーパ(ゲーム製作者コミュニティin札幌)
http://www.vector.co.jp/soft/winnt/game/se484826.html



おなじみ『マインスイーパ』とシーケンサーを組みあわせて、新しい音楽パズルゲームに昇華させた作品です。マインスイーパの進行状況にあわせて音楽が自動生成されていきます。音楽はリズムパート(プレイ速度)、伴奏(旗の位置)、クリア後に追加されるメロディ(開いたマスの順番によって一音ずつ決定)で成立しており、ゲームプレイと音楽の一体感が味わえます。なんといっても追加要素が元の『マインスイーパ』を、まったく阻害していない点がポイントです。選考委員のおにたま氏(ツェナワークス)は、「既存ゲームにちょっと手を加えるだけで、面白いゲームが作れるという姿勢に共感する」とコメント。なお本作はベクターでフリーソフトとして配信されています。


カテゴリー2:新しいスタイルのパズルの追求

■Everything can Draw!(Mahdi Bahrami/イラン)
http://marsigames.blogspot.com/2010/08/ecd-has-been-selected-in-sown-2010.html



若干17歳の天才少年、しかもイランからの来日という点で、すでにセンスオブワンダーな作品です。ゲームは物理エンジンを組み込んだパズルゲームで、画面上に問題に相当するラインが表示されています。オブジェクトの各ポイントをクリックすると、重力に従ってアニメーションを開始。出題されたラインと同じ動きをするポイントを探していく・・・という内容です。レベルエディターも存在し、自由にオブジェクトを描いて、問題を作成できます。公式サイトには、これ以外にもさまざまな実験的ゲームが公開されています。ただし「将来の夢は?」という質問に対しては「ゲームディベロッパーにはなりたくない」とコメント。クールな反応に場内も沸いていました。


■Spirits【スマートフォン部門】(Spaces of Play/ドイツ)
http://www.spacesofplay.com/



新設されたスマートフォン部門の応募作品で、iPhone/iPadアプリとして10月にリリースが予定されています。ゲームの目的はステージ上で風などをおこし、Spritsと呼ばれる精霊をゴールまで導くこと。Spritsをタップすると「風を吹かせる」「風を遮る」「木の葉で道を作る」「地面を掘る」という4種類のアクションが選択でき、これによってステージ環境を変えてゴールまで導く仕組みです。手描き風のグラフィックと、オーケストラによる楽曲が懐かしくも幻想的な世界観を醸し出しています。いわゆる『レミングス』に連なるアクションパズルで、総合力はピカイチ。総合司会の新清士氏(IGDA日本)は「非常に完成度が高い点が受賞に結びついた」とコメントしました。


■Record Tripping(Bell Brothers/アメリカ)
http://www.recordtripping.com/



DJのスクラッチ操作をゲームプレイに取り込んだアクションパズルです。マウスをクリックしたり、ホイールを回すことで、画面のアニメーションとサウンドを自由に操れます。このアクションを通して、「樽を回転させて、迷路からボールを取り出す」「金庫のダイアル錠を解除する」「風車を回して風をおこし、羽毛をうまくゴールに導く」などのパズルをクリアしていくのです。バックにはBGMにあわせて小説「ふしぎの国のアリス」の朗読が流れており、マウス操作で読み上げスピードが遅くなったり、スクラッチしたりと、不思議なプレイ体験が味わえます。インストール不要のブラウザゲームで、上記リンクから体験できるので、ぜひ試してみてください。


カテゴリー3:感情や社会的なメッセージの表現

■Ulitsa Dimitrova(Lea Schönfelder und Gerard Delmas/ドイツ)
http://www.ulitsa-dimitrova.com/



ロシア・サンクトペテルブルクに住むホームレスの少年、ピョートルの生活が題材の社会派シリアスゲームです。ゲームはクリック式のアドベンチャーで、画面上のポイントをクリックすると、ピョートルがさまざまなアクションを行います。ゴミ箱から起き出し、ベンツのエンブレムを盗む、娼婦でアル中の母親に店から盗んだウォッカを渡し、タバコ代をせしめるなど、ピョートルの生活は反社会的。重度のヘビースモーカーで、お金はすぐにタバコ代に消えてしまいます。周囲から愛され、気ままに生きているようですが、実はプレイヤーがゲームに飽きて操作をやめると、そのまま路上で眠って凍死するというオチ。チープなグラフィックに加えて、現実社会を批評している点が興味深い作品です。


■Orfeo:a Game in Music(Roberto Dillon/シンガポール)
http://www.indiegames.com/blog/2010/08/freeware_game_pick_orfeo_rober.html



音楽と感情をミックスさせた新タイプの音楽ゲームです。ゲームは音楽の才能で亡き妻を冥界から救った、ギリシャ神話のオルフェオの物語に沿って進みます。ゲームは全4ステージで構成され、プレイヤーは右下の竪琴をマウスで演奏して、右上の「喜怒哀楽」バーをうまく調整しなければなりません。最初のステージでは愛の神アモーレを川岸に導くため、竪琴を鳴らして「喜(happiness)」バーを高めればクリアといった具合です。弦をつま弾く位置で音の大小が変わり、音のテンポで感情が分析され、バーが増減するので、試行錯誤を繰り返して感情を調節しなければなりません。ABA Gamesの長健太氏は「音楽ゲームは正確な演奏が求められるが、本作は自由な点が良い」と評価しました。

■アノソノコノミチャン(芸夢中心(ゲイムセンター)/日本)
http://yattelin.exblog.jp/13473465/



電脳空間にただよう女の子「このみちゃん」を操作し、荒廃した惑星を緑の世界に変えていくことが目的のアクションゲーム。プレイヤーの操作と共に音楽が自動生成され、映像と音楽が一体化した、独特なゲーム体験が楽しめます。プレイヤーが惑星上を移動すると緑が生まれ、木が生えていきますが、邪魔をする敵も出現。世界には昼と夜があり、このみちゃんと敵の強さが逆転するので、夜は敵から逃げ回り、昼に攻撃しながら、森を増やしていく仕組みです。倒した敵は味方になり、他の敵を倒すために戦ってくれます。もともと会社員のプログラマーでしたが、脱サラしてインディゲーム開発に挑戦。テクノ的なゲーム体験と美少女キャラという、日本的な組み合わせが印象的でした。

ずらり並んだ選考委員最後は全員で記念撮影


国内ではゲーム開発者のキャリアパスとして、真っ先に上げられるのが企業への「就職」です。しかし欧米、特にアメリカでは、日本のような「新卒一括採用」がなく、景気の調節弁として簡単にリストラされるため、新人が職を得るのはかなり大変。今年のGDCキャリアパビリオンでも中途採用ばかりで、新卒採用はほとんどありませんでした。そのため学生もインターンやアルバイトに励み、少しでも「実績」を得ようとする傾向にあります。

一方でiPhoneアプリやソーシャルゲームなど、小資本でも一攫千金を狙える環境が整備されてきました。大手企業のリストラ組も次々とベンチャー企業を作って、この波に参入。インディゲームの開発熱が世界中で高まっています。結果としてゲームのレベルが日本と海外で大きく開いており、今年度は9作品のうち日本勢は3作品しか入選しないという事態になりました。

ちなみに「SOWN」の日本までの渡航費用は参加者持ち。それでも世界中から応募があるのは、作品に入選という箔をつけて、パブリッシャーへの売り込み材料などにするため。「SOWN」以外にも世界中でさまざまなインディゲーム向けコンテストが行われており、「コンテスト荒らし」的な作品も少なくありません。ここが趣味的活動をめざす例の多い日本の同人ゲームシーンと大きく異なる点です。

総合司会を務めた新清士氏は「ゲームの表現の幅が広がっていることを実感しており、今年も審査が非常に大変だった。インターネットの普及でゲームとアートの区別が、ますますつきにくくなってきた」とコメント。インディゲームはセンスオブワンダーなゲームを生み出す土壌であり、ゲームの可能性を広げていくために、来年も「SOWN」を実施したいと語っていました。
《小野憲史》

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