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オランダのゲーム産業のいま(後編)・・・活躍するデベロッパーが続々登場

ゲームビジネス 開発

オランダのゲーム産業のいま(後編)・・・活躍するデベロッパーが続々登場
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オランダゲーム産業ツアーの後編です。2日目はゲームディベロッパーのCodeGlue、シリアスゲーム大手のRanj Serious Games、ユトレヒト芸術大学や、産学組織のDutch Game Gurden(DGG)の取り組みなどについて視察しました。

■Xbox Liveアーケードに進出するCodeGlue

2日目はバスでロッテルダムに移動し、運河沿いの再開発地区の一角にあるCodeGlueに向かいました。レンガ造りの古い建物を改装して入居しており、壁には『パックマン』のモンスターのイラスト。棚にはビンテージゲーム機のコレクションが並び、いかにもゲームディベロッパーという雰囲気です。

CEOのPeter de Jong氏(左)とCTOのMaurice Sibrandi氏(右)オフィスは8:30に開き、17:30には一日の作業が終了する『Rocket Riot』のゲーム画面


同社は2000年にプログラマー2名で起業し、モバイルゲーム開発から徐々にステップアップ。セガ『Monkeyball Minigolf』のモバイル向け受注開発も行っています。昨年はTHQから初のコンソールゲームソフト『Rocket Riot』をXbox Liveアーケードでリリース。物理エンジンを利用した2Dアクションシューティングで、「Dutch Game Award」(オランダ版ゲーム大賞)のベストビジュアルデザイン賞に輝きました。

さっそくプレイしたところ、ジェット噴射でキャラクターを移動させながら、バカスカと8方向に弾を撃ち、ブロックの背景を破壊していく点が爽快でした。画面分割なら4人、オンラインなら8人まで対戦プレイでき、パーティゲーム感覚で盛り上がれそうです。開発環境はXNAで、バージョンアップなどに苦しめられながら、10名で約2年かけて開発されました。日本語の開発者インタビューは、こちらに掲載されています。
http://creators.xna.com/ja-jp/spotlight/rocketriot

興味深いのは同社が先日のGrendel Gamesと同じく、シリアスゲーム開発からスタートした点です。フィリップスなどをクライアントに、6本を制作した経験があります。同社に限らず2000年前後で多くのディベロッパーや教育機関が設立された印象で、理由を尋ねると「ドットコムバブルが弾けて、業界が生き残りを模索した結果ではないか?」という回答が得られました。なるほど、わかりやすい話です。

■シリアスゲームに特化するRanj Serious Games

同じく再開発地区にあるRanj Serious Gamesは、オランダ有数のシリアスゲームベンダーです。同社が開発した『Shark World』は、ドイツ企業のプロジェクトマネージャーとなって、大規模なサメの水族館を上海に建設する、ブラウザベースのアドベンチャーゲーム。NHKが主催する「日本賞」のコンテンツ部門・生涯教育カテゴリーで東京都知事賞に輝いています。実写映像が多く使われており、スケジュール管理なども実際のツールを模したUIで行うなど、従来のシリアスゲームの概念を大きく超えています。

社長のMichael Bas氏(左)と共同設立者のMarcus Vlaar氏(右)日本賞受賞の盾と賞状がかざられていた社内は明るくて広く、寝袋は見あたらない


最大の特徴は、エンタテイメントゲームを開発せず、シリアスゲームに特化していること。教育、医療、企業研修、マーケティングなどの分野で、大手企業をクライアントに、いわゆる「オーダーメード」の受注開発に続けています。開発スタンスは「シリアスとはいえ、ゲームとして楽しめるもの」。開発の中心にゲームルール(ゲームシステム)があり、その外側にストーリーとキャラクター設定があり、最縁部に社会的行為(口コミ、UGCなど)がある、とする考え方は、一般的なゲーム開発と変わりません。

そんな同社の最新作『HOUSEOFF BURUMA,THE GAME』は、オランダの法律事務所HOUSEOFF BURUMAの依頼で制作されました。ゲームは「Shark World」と同じ実写アドベンチャーゲーム形式で、本作ではプレイヤーは弁護士となって、中国企業の依頼でオランダ企業の買収計画を進めていきます。プレイヤーは90分間の持ち時間で、ゲーム内で適切な判断を行い、株主を説得して下交渉を進めつつ、隠された問題点を明らかにしていくのです。ユニークなのは、このゲームがHOUSEOFF BURUMAの新人採用のために開発された点で、同社は2005年から中国企業の投資をサポートする専用チームを設けています。人材を見極めるには、実際に仮想体験をさせて、観察するのが一番ということなのでしょう。

『HOUSEOFF BURUMA,THE GAME』のゲーム画面実際のビジネスを進めるようなリアルな雰囲気でUIがデザインされている


海外プレスからは異口同音に「エンタテイメントゲーム分野に進出しないのか?」という質問がありましたが、同社は今後もシリアスゲーム戦略に特化する意向を示しました。一つのゲームをクライアントごとにカスタマイズすることで、横の展開も見込めるとしています。一方で今後はソーシャルゲームなどの手法を用いて、子どもにネットマナーを教えるゲームなども考えたいとのことでした。現在の社員数は21名で、5年以内に海外スタジオを設置し、ドイツからシンガポール、そしてアジア圏に進出する計画です。

■大学とDutch Game Gurdenの取り組み

視察の最後はユトレヒトに戻り、ユトレヒト芸術大学と、Dutch Game Gurden(DGG)をはじめとしたオランダゲーム産業の支援策に関する説明がありました。

ユトレヒト芸術大学は欧州名門のアート向け高等教育機関で、15年前にゲームデザイン&ディベロップメントコースがスタート。九州大学とも2007年から連携を開始しています。学生作品のレベルも高く、本年度のIGF(Independent Game Festival)で学生部門に選出された『Paper Cakes』は代表例。タブレットのペンタッチ操作でステージを折り紙のように折り重ねて障害物を避け、ゴールをめざす内容です。もともとワコムの依頼で作られた、製品の宣伝目的のシリアスゲームでしたが、エンタテイメントゲームとしての完成度も高く、学生もDSやiPadへの移植に意欲を見せていました。

ワコムの依頼で作られた『Paper Cakes』『ブロブ:カラフルなきぼう』も元は学生作品横スクロールRTS『SWORDS & SOLDiERS』


こうした学生制作のゲームの中で、最も成功した例が『Blob』でしょう。球体を転がしながら街をさまざまな色で染め上げていくアクションゲームで、当初は街の再開発の意義について市民に感心を抱いてもらうためのシリアスゲームでした。IGF2007の学生部門に選出され、THQと契約。Wii向けに『ブロブ:カラフルなきぼう』として日本でも発売されています。この学生チームは現在RONIMO GAMESとして起業し、Wiiウェア向けに横スクロールRTSという異色タイトル『SWORDS & SOLDiERS』を2009年にリリース。スタジオを見学した際は、本作のPS3向け配信タイトルとしての移植作業が進んでいました。

これらの流れを受けて2008年1月にスタートしたのがDGGです。DGGはオランダゲーム産業の促進、中でもベンチャーの起業を促進する目的でスタートし、出資者にはユトレヒト芸術大学とユトレヒト大学の名前が連なっています。ユトレヒト大学は欧州名門の総合大学で、コンピュータサイエンスのコースも抱えており、いわば文系と理系の学生を組みあわせて、ゲームの学生ベンチャーを育成する試みだと言えます。ゲームコースの学生の起業率は約20%で、事務所スペースの貸与やコンサルタントなどの支援が得られます。

DGGでは学生向け起業援助などを展開貸与されるオフィススペースの例8月からより大きなビルに移転


■オランダゲーム産業の現状

最後にオランダ海外投資局(NFIA)などから、オランダのゲーム産業と投資のメリットが簡単に説明されました。オランダは人口が約1600万人、国土が約4万平方キロと、九州より若干上回る程度。欧州最大の港ユーロポートを抱え、金融・流通を中心としたロジスティクス・サービスで発展してきました。2007年度の国民一人当たりGDPは世界第10位で、日本の22位を上回ります。株式会社発祥の地で、法人税も約22.5%と日本の40%と比べて低く押さえられています。

メディア産業の中でも、最も高い伸びを示しているのがゲーム分野で、オランダでは2008年に書籍・DVD・音楽を抜いて最大の市場に成長しました。パッケージゲームに加えて、オンラインのカジュアルゲーム、そしてシリアスゲームが特徴で、教育水準も高く、欧州市場のテストマーケティングの場としても有効とのことです。ゲーム分野で産業保護政策をとる国としては、カナダやシンガポールなどが有名ですが、オランダ政府も外国人雇用者の一部税控除をはじめ、積極的に海外企業誘致に取り組む姿勢を強調しました。

ゲームの市場規模は書籍・音楽・DVDを凌駕オランダへの投資のメリット一例外国人雇用者に対する税控除などもある


個人的には「オランダはシリアスゲームランドだった」という点が驚きでした。いわゆる社会的なゲームアレルギーも、あまり感じられないとのことです。これについて業界紙『Control』共同創業者のMatthijs Dierckx Kuijper氏は「日本はテレビゲームの歴史が長く、市場も大きいため、ゲーム=遊びという概念が社会に定着しているのではないか。オランダは短期間で成長したため、シリアスゲームが自然に定着した」と分析しました。日本とは縁遠く感じられるオランダゲーム産業ですが、彼らから学ぶことは、まだまだたくさんありそうです。
《小野憲史》

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