サイバーコネクトツー(以下、CC2)がアニメ業界に参入する――。本セッションの終盤、CC2の代表取締役・松山洋氏は来場者にそう宣言した。プロジェクト名は『A5』。ASTONISH(驚くべき)、AMBITIOUS(挑戦的、野心的な)、ADVANCED(上級の、進歩的な)、AMAZING(素晴らしい)、ANIMATION(アニメーション)の頭文字をそれぞれ取っているという。同社はこれまでに『ドットハック セカイの向こうに』といった『.hack』シリーズのアニメ作品を手掛けているが、『A5』は完全新作オリジナルになる模様だ。
9月10日、東京・秋葉原UDXで行われたアニメ制作技術に関する総合イベント「あにつく2017」。ここでCC2代表取締役の松山洋氏、アートディレクターの二塚万佳氏による「ゲーム会社だからできる! ゲーム会社なのにできる! 他にはない "サイバーコネクトツー流" 映像制作の醍醐味」と題しトークセッションが行われた。同社のゲームタイトルを題材に、ゲーム会社ならではのアニメーション制作術が明かされた。
大きく語られたのはふたつあり、まずひとつ目はゲーム会社におけるアニメ制作のワークフロー。ゲーム制作は基本、脚本を元にゲームデザイン、アート、プログラム、デバックへと作業が進行していくが、その中で映像はゲームデザイン~アートで行われるという。
今回はシリーズの人気作で、11のアニメーションを例に二塚氏が解説。アニマティクスと合成についてはアニメCG制作会社のオレンジ、それ以外のパートをCC2が担当する流れが紹介された。最終的に完成したものはすべて松山氏がチェックするが、「基本は流れを見ながらつくっています。例えば絵コンテで美しい景色が描かれているのに、セリフまで『何て美しい景色なんだ』と言う必要はないですよね。脚本の段階から注視していますけど、絵コンテになった時にもう一度見るようにしています」と、監督として確認するポイントを語った。
2つめの話題は、そんなワークフローにおいてCC2が行っている独自の仕事術だ。まず会場がどよめいたのは、“脚本デバッグ”という言葉。松山氏は「こんな日本語ないですからね」と笑うが、CC2の場合、脚本家やシナリオライターなど、上がってきた脚本はすべて同社にいるスタッフ200人が回覧して、感想をフィードバックするシステムがあるという。「書いている本人はどうしてもこれが良い!と思ってしまいますが、ユーザーからすれば意味が分からんというケースもある。基本的に社内から指摘されたポイントはすべて監督、脚本家たちと検討しています」と松山氏は語った。
また、イベントフローを作ることもゲーム会社ならではだろう。これはシナリオ分岐などにも関係しているが、主に「人形劇」と「ムービー」の作業分担が大きい。近年、プレイ時間が数十時間にわたるタイトルが多いゲームでは、パッケージするディスクの容量上、すべてのイベントパートをムービー化することはできない。そこで人形劇、つまりゲーム内のリアルタイムデモシーンを入れることでコストと容量の削減を図っていくのだ。
松山氏によれば「以前は程度の低いデモと揶揄されてきましたが、今は人形劇の中にもランクがある」と、デモシーンにも高いクオリティが求められると言う。二塚氏も「今後のタイトルに関しては、ムービーと遜色ないレベルの人形劇を作るというのが僕らの使命」と意気込んだ。
CC2では、アニメ制作の各工程をそれぞれの専門家が行うのではなく、シーンごとに「シネマティック・アニメーター」と呼ばれるスタッフが、絵コンテから仕上げまでを担当している。膨大なゲーム時間、しかもボス前など様々なタイミングで入るムービーやデモのすべてを、一人の演出家がチェックするのは難しい。そのため全体の把握は松山氏が務め、各パートはシネマティック・アニメーターが各自のアイデアをふんだんに盛り込んでいくという。彼らはキャラクターたちが繰り出す必殺技など映像全般に関わっていて、カット編集やローカライズも行っている。
「脚本から参加できる、ゼロから仕上げまで関われるっていうのがCC2の特徴。人によって賛否両論あるだろうけど、演出もやりたい、編集もやりたい、何でもやりたいという人もいると思う。そういう人には全部やれるところだし、そこに楽しみを見つけられる人間がうちには多いと思います」と松山氏。
今回のセッションで語られたワークフローが新作アニメでも採用されているのか現時点では不明だが、「近いうちに報告させてください」(松山氏)と自信をのぞかせていた。ゲームクリエイターならではの新しいアニメーションとして期待が高まりそうだ。
あにつく2017
www.too.com/atsuc/
[アニメ!アニメ!ビズ/animeanime.bizより転載記事]
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