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『キノスワールド〜パジャマの騎士』のサービス停止と今後の展開についてGMO Games代表に聞いた

GMO Gamesが『キノスワールド〜パジャマの騎士』がサービスを開始してから3ヵ月。サービス一時停止という突然の発表に驚いた人も多いのではないでしょうか。

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『キノスワールド〜パジャマの騎士』のサービス停止と今後の展開についてGMO Games代表に聞いた
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GMO Gamesが『キノスワールド〜パジャマの騎士』がサービスを開始してから3ヵ月。サービス一時停止という突然の発表に驚いた人も多いのではないでしょうか。

それに前後して、GMO GamesからINSIDE編集部に、『キノスワールド』のサービス一時停止に関してインタビューを行って欲しいとの要請がありました。サービス開始時には華やかな記者会見が行われるものの、サービス停止時にはひっそりとお知らせが届くだけということも珍しくないオンラインゲーム界。サービス停止を迎えて、GMO Gamesは何を語るのか?同社の代表取締役社長であるアンディ・クォン氏と、オンラインゲーム事業本部長の松木 善史氏、オンラインゲーム事業本部マーケティングリーダーの泉 康夫氏にお話を伺いました。

カラフルなグラフィックが特色の本作でしたが一旦サービスを中止することが決定しました


―――インサイド:『キノスワールド』(以下『キノス』)のサービス停止直前の現状に関してお聞かせ願えますか?

アンディ・クォン社長(以下クォン):6月に「プレミアサービス」を、7月にサービスを開始しましたが、不具合が多く、かなり多くのお客様が離脱されたというのは事実です。

―――サービスを一時停止するという決断に至った理由はなんですか?

クォン:我々がいい形でサービスを提供できなかったというところにあります。開発会社さんとも色々な話をしたんですが、開発会社さんと我々のゲームに対する哲学に相違があった。内部的には『キノス』を終わらせるつもりは全くなくて、我々の望む形でサービスを提供したかった。サービスを開始する前のプレスカンファレンスでもお話ししたんですが「ユーザーの方々をテスターにしない」「快適な環境で、日本独自のシナリオでサービスをしたい」と。ですが、韓国版とあまりに仕様を変えてしまったことで、一ヶ月ほど不具合が続いてしまうというのは我々も予測し切れていなかった。

クォン:これは初めてお話するんですが、我々の間でも「これじゃあサービスにならない」という認識がありました。現場レベルでは徹夜の連続でしたし、私も韓国へ飛んで不具合の修正に入りました。経営レベルで『キノス』をどうするかというのは最初の3日目、7月14日の時点で議題になりました。結論としては「活かしていこう」というものになりました。活かしていかないと意味がない。我々はお客様に約束したのですから。きちんとした形でサービスした上で、お客様から「このゲームはいらない」と判断されたのであれば納得いくんですが、現状はそうではない。我々の哲学と技術力で運営したい。『キノス』を楽しんで頂いたお客様、がっかりされたお客様に、いい形でお届けしたい……ということで、権利を買い取るという決断をしました。

「約束を守りたい」とクォン社長
―――権利を買い取るというのは経営的にどのような決断だったんですか?

クォン:経営的には非常な冒険になります。難しくなったゲームを甦らせる……というのは簡単な決定ではない。我々は全員、ゲームが好きでこの仕事に携わっているという部分があります。実際、私自身も一般のユーザーさんと同じ条件で『キノス』をやり込んでいて、レベル50になっています。だから、このゲームの何が良くて何が悪いかというのを良く理解している。7月の時点で「原石であるゲームをちゃんと加工して、いい形にして紹介したい」というお話をさせて頂いたんですが、そこを守りたい気持ちが強いんです。

クォン:ゲームって文化産業じゃないですか。だから、国によって何が受けるかが若干違うところがある。今、日本国内でかなりの数のオンラインゲームがサービスされていますが、ユーザーの方々から「量産型」が多いという批判がある。本家からイラストだけを変えて日本で運営するというのはタイトルにもよるんですけれど、『キノス』に関しては日本の国産タイトルとしてサービスしていきたかった。だから「上手くいかなかったから終了。次に新しいモノを持ってこよう」としたくなかった。お客様との約束を破ることになる。これは私の経営信念としては避けたかった。ですが、開発会社さんにも余力がない。なら「こんな形で続けるのはやめましょう」と。ユーザーの方々には申し訳ないんですが、もう少し待って頂きたい。我々が内部で納得する形に仕上げますと。

―――日本の国産タイトルとして仕上げるということですか?

クォン:そうです。外国人の私がいうのもおかしいんですが、日本の国産オンラインゲームをもっと増やすべきだと思うんです。中国でも最初は海外産のものが8割を占めていましたが、今は5割〜6割になっている。やはり、自国民でないと分からないニュアンスなんかがあるので、国産タイトルが増えてからこそ市場が盛り上がるし、海外産のものも楽しめるようになる。だから、私は絶対に国産タイトルが増えるべきだと思うんです。確かにコンシューマー系のところから新規参入があったけれど、爆発的なヒットとまではならなくてユーザーさんががっかりされているという部分があると思うんです。我々は社長こそ外国人ですが、その下は全員日本人なので、日本なりのオリジナリティを出していきたい。あと『キノス』に関しては、お客様の期待に応えられなくて非常に悔しいという部分もありますね。

―――ゲームの根幹の部分が受け入れられたという手応えはありましたか?

クォン:我々の読みというのは間違えていないとは思いました。色んな大作があるなかから『キノス』を選んで触って頂けたというのは、『キノス』的な方向性が求められていたからだと思います。日本ではシナリオや感動と言ったゲームの本質に近いモノが重視されますが、そこを「じゃあ、コンシューマーゲームをやればいい」とはしたくないんですよ。だから、ヒロインとして韓国版の『LUDIX Online』にはいない「レイチェル」というキャラクターを入れた。ただ、我々が本来やりたかったことを100%とすると、40〜50%くらいしかできなかった。予想できなかった不具合がでて、そこにリソースを取られた。悪循環ですね。また、『キノス』がどうあるべきかという所に関して、開発会社さんと若干の意見の相違がありましたが、我々の思う形というのを貫きたかった。

―――オンラインゲームは運営しながら修正する方法がとられていますが、一度停止するというのは大胆な決定だと思います。今後は日本での制作になるんでしょうか

クォン:開発は韓国のGMO Games Koreaで行いますが、指揮は日本で執ります。

―――どういった部分を作り直すかというのは決まっているでしょうか?

クォン:どこを作り直すかは、現在検討している段階です。GMO Games KoreaとGMO Gamesが一つの組織である利点を活かし、GMO Gamesのスタッフを韓国に常駐させ、口だけの「国産」ではないタイトルとしたいと思います。『コルムオンライン』なども取り扱った経験豊かなスタッフがいますので、日本では何が受けるかは把握しています。

―――例えば、日本ではどんなものが受けるんですか?

クォン:日本ではアニメの影響か、変身要素などが受けますね。逆に韓国では変身要素は今ひとつなんですよ。韓国のゲームの作り方には、昔から交流があった影響か、アメリカ的な部分があって、ちょっとドライな部分があるんです。PvP(プレイヤー同士の戦い)かPvE(プレイヤーとモンスターの戦い)で分けて作るんですが、日本では「何のためのPvPなのか、何のためのPvEなのか」が重要なんじゃないかと思うんです。ただ倒せばいい、経験値を稼げばいい、ではなく「何のために」やるかを提示すべきである……というのが我々の哲学です。

日本のアニメは世界で支持されていますが、例えば「世界を救うために冒険に出る」「さらわれたお姫様を救出する」というようなシンプルなストーリーながら目的はっきりしていて、その中で主人公達が成長していく、何のために戦うかが明らかであるものが多いと思います。日本のお客様は、そうした部分を求めるところがあるんじゃないでしょうか。

―――開発会社さんとはどういった部分に相違があったんでしょうか

クォン:開発会社さんは我々の要求をかなり呑んでくれたんですが、根本的な制作スタイルに違いがありました。何かを提案する時に、新しいシステムの案を挙げてくるんですよ。でも、「このシステムは何のために必要なのか」という所がハッキリしていない。マップやモンスターが増えても、同じようなクエストの繰り返しである。あと、開発会社さんは物事を理論的に見ていましたね。現在のバランスは一つの職業が明らかに優遇されてるんですが、それを指摘してもグラフを出してきて「理論的にはこれで問題ない」とする面があった。

―――ゲームの実勢と開発会社さんの認識に違いがあった

クォン:『キノス』ではパズルを解いて先へ進むというシーンがあるんですよ。そこで特定の職業が非常に有利になっている。開発会社さんは「有利な職業とそうでない職業を作っておけばユーザーさんがパーティを組んでくれる」という認識なんですね。でも、日本のお客様はシャイなので、パーティを自然に組めるようなシステムが必要になるというのが我々の認識なんです。パーティに入れないようにドアを閉めてしまうお客様も沢山おられる。開発会社さんの理論上では「みんなパーティを組んで協力してプレイして欲しい」ということなんですが、実際にはそこまで綺麗なものではない。

―――実際のプレイヤーは綺麗なばかりではないと

クォン:人間の本性の問題なので、非常に難しいところがあります。オンラインゲームの世界と我々の住む現実の世界はそんなに変わらないと考えています。それどころか、顔の分からない出会いなので、現実よりも激しい部分がある。現実では普通の人でもオンラインで意地悪をしてしまったり。オンラインゲームというのは、ある意味「暗い」世界なんですよ。意地悪やPKが存在してしまう。だけど、そこに親切や正義があるからこそ光り輝く。そこがオンラインゲームの本当の価値じゃないかと思うんです。そこをシステムで助けたい。例えばPKしてしまった人にペナルティを課したり。他社さんのオンラインゲームでは、ワールドを独裁するギルドに対して一般プレイヤーが立ち上がり、倒されても倒されても立ち向かった末に、独裁を止めさせたという例がありました。そうした中で、プレイヤー同士の関係も深まるし、正義というものへの考え方も変わってくる。『キノス』は年齢層が若干低めですので、若い人たちが傷つくようなことがないようにしたい。そのためのシステムを、現在考えているところです。

―――オンラインゲームの「暗さ」に関してメーカーさんが言われることは珍しいと思うのですが、今後の『キノス』では、そこも含めた取り組みが成されていくということですか?

クォン:陰があって、「暗い」からこそ、光も輝きを増すんですよ。オンラインゲームでは、顔が見えないからこそ悪いことをする人もいるし、逆に顔が見えないからこそマナーを守ろうという人もいる。メーカーの役割というのは、後者のお客様をシステム的に支援することだと思うんです。我々の世界の法律のようにね。

―――一旦『キノス』を停止すると言うことで、今後のスケジュールをお教え願えますか?

クォン:再開の時期として、我々が視野に入れているのは来年の夏です。丁度9月くらいに正式サービスに入れればいいと考えています。今回の不具合に関しても、様々な反応がありました。中には「嘘をついた社長を殴りたい」というものもありましたが、それが正直な所だと思うんですよ。我々が約束を守れなかったんですが、今、この場を借りて改めて約束をしたい。

―――一年間というのは結構な長期間になりますね

クォン:不具合が再発した場合にどうするかという人選などに力を入れます。皆さんに楽しんで頂けるような、新しい形のゲームをお見せしたいと思います。「横スクロールである」というところは現行の『キノス』と同じですが、それ以外の部分に関してどうなるかは現時点では何もお約束できません。7月に発表させて頂いた「平尾リョウさんのイラストを忠実に再現する」というお約束は、ちゃんと覚えております。

未公開イラストを紹介。一年後の再開をお楽しみに・・・


―――『コルムオンライン』(以下『コルム』)が4周年を迎えましたね

クォン:あっという間の4年でしたね。お客様に『コルム』を凄く愛して頂いているのに、その愛に応え切れていないという悔いもあります。去年も3周年記念イベントを行ったんですが、今年も盛大なものを用意しています。

―――4年間サービスが続いた秘訣のようなものはありますか?

クォン:何が秘訣であるというよりは、ファンの方の愛ですね。『コルム』は年齢層の幅が広くて、70歳という方もおられる。4年前からサービスしているということもあって、オンラインゲームの第一世代であるという誇りを持っておられますね。そこは我々も同じですので、誇りを持って歩んで行けたらと思います。

―――今後の『コルム』のサービスにおいて、どのような取り組みをされていきますか?

クォン:快適な環境と、不具合を直すということですね。一つの不具合も見逃さない。あと、お客様の誰もが望んでいるところを、見え見えでもいいから追加していく。第一世代であるというお客様の誇りを傷つけないこと。第一世代のゲームとして誇りを持って運営していきたいですね。

泉:新規の方が入りやすいようなキャンペーンと、一度休んでしまわれた方向けのキャンペーンを予定しています。新規の方は早くレベルを上げて追いつきたいと思われるので、そのための特別なアイテムを配布します。レベル30まで上げると、次のプレゼントを用意しています。オンラインゲームの醍醐味はコミュニケーションですので、ギルドに加入して頂くと、ビッグな贈り物として武器をプレゼントします。

―――休んでいる方にはどんなキャンペーンがありますか?

泉:ゲーム内の状況も変化していますので、それに対応できるようにステータスやスキルをリセットして再度振りなおしができるようにします。

―――どれくらい前のキャラクターまで残っていますか?

泉:正式サービスが始まる前に最初に作られた5年前のキャラクターも残っていますので、手続きをして頂ければ復活することができます。

松木:『キノス』にしても『コルム』にしても、来て頂いたお客様にすぐに遊んで頂ける環境を作ると言うことが使命だと考えています。『キノス』ではお約束した40%しか実現できなかったのを、残る60%をプラスしていきたい。『コルム』ではMMORPGで初心者が当たる壁を越えるお手伝いをさせて頂きたい。一度休まれた方は、休まれた時と同じ状況で再開するというお手伝いをしていきたいと考えています。

―――最後に一言お願いできますか?

クォン:我々のスローガンは「多くのお客様に感動と笑顔を」というものです。感動と笑顔の結果として利益を生み出す。利益が先ではない。ゲームで最も大事なのは、そのゲームを止めて時間が経った後「あの時は楽しかった」と言えることだと思うんです。日本では誰もが知っているあのロールプレイングゲームや横スクロールのアクションゲームにしろ、いいゲームは全てそうじゃないですか。「あの時は楽しかった」と言える。いつか『キノス』『コルム』のサービスが終わった後もそう感じて頂きたいですね。

―――本日はありがとうございました

クォン社長から繰り返し語られたのは「現状の『キノス』では納得のいくサービスができていない」ということでした。『キノス』を終了して別のゲームを持ってくるなり、このまま正式サービスに入って利益を出すなりしなかったのは、納得がいくサービスではないからだし、原石としての『キノス』の魅力を引き出していないからだと。今回GMO Gamesが選択したのは困難な選択肢であるだけに、来年9月の再開を楽しみに待ちたいところではないでしょうか。

左より、アンディ・クォン社長、オンラインゲーム事業本部長の松木善史氏、マーケティングリーダーの泉康夫氏
《水口真》
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