
「ホロライブの強さは何か?」を語る時に、外せない要素が箱推しと呼ばれるファンの存在です。対義語は「単推し(特定のタレントを集中的に応援すること)」。グループ(箱)に所属するタレントを広く応援するファンのことであり、ホロライブではその箱推し層が安定した人気を下支えしたと言われています。
箱推しは単推しと違い、ひとりのタレントに費やすエネルギーは少ないものの、グループ全体を応援するため、各タレントの人気の格差を緩やかにするなどの効果をもたらします。
そしてその箱推しを増やす要因となったのが、ホロライブ内で流行した箱庭ゲーム(箱ゲー)であり、もっとも親しまれたのが『マインクラフト』(以下『マイクラ』)でした。
2026年7月11日にさくらみこさんが配信した「昔のホロ鯖(ホロライブ専用サーバー)おさんぽするにぇええええええ!!!!」は、まさにその歴史をたどるもの。過去さまざまなタレントたちがユニークなオブジェを建築し、時には大型イベントを実施して、多くのネタと笑いを提供してくれました。
そこにあったのは、大好評を博したイベントの痕跡に、卒業者との思い出、ホロライブの歴史を辿る博物館のような建築物の数々です。
そこで本稿は配信で巡った場所に想いを馳せつつ、『マイクラ』がいかに箱推しを増やしたかを紐解きたいと思います。
◆「日常」が最高のコンテンツ
みこさんがインしたのは、ホロライブのマイクラ企画の中でももっとも思い出が詰まったホロ鯖です。歴代では2つ目のサーバーであり、ベースとなるサーバーにENとIDのサーバーをポータルでつなげ、その後、共用のサーバーをつなげて、国内組・海外組ともにそちらへ引っ越ししました。なお初代は大空スバルさんが管理していたと言われるもので、3つ目が現在使われている「New World」と呼ばれるサーバーです。

ログインしたみこさんがスポーンした地点は「ホロライブ大運動会2021」のメイン会場。2021年の会場は2020年の会場を改修および増築したものですから、場所としては2020年の会場と同じポイントです。
ここでまずみこさんは「懐かしい! 原点にして頂点!!」と声を上げました。
「ホロライブ大運動会」といえば2020年から2023年まで実施された人気企画。この企画がスタートした2020年は、年始に開催した「hololive 1st fes. ノンストップ・ストーリー」が背中を押して急激に認知度が上がった年です。しかし同時に困難にも見舞われて、その行く末にも注目が集まった年でもありました。
そんな中でみこさんは「ホロライブをもっと色々な人に知って欲しい。ホロライブの魅力を伝えたい!!」という想いから、大神ミオさんとの共同企画として「ホロライブ大運動会」を開催。好評を得たことで、翌年は規模を拡大して多くのファンとともに盛り上がりました。
現在のように、カバー社からの全面バックアップやドズル社さんの協力を得ることもなく、2021年あたりまではほぼタレントたちの手作りとなったのが大きな特徴です。
企画発表後、準備に参加できる有志タレントが建築を手伝ったり、みんなで飾り付けを手分けしたりして、連日、ファンは推しの配信を通じて、タレントたちが仲良く絡む姿を見守りました。その、のんびりとした空気からは飾らない魅力が伝わってきましたし、協力しあう姿に目尻が下がったものでした。
そして大会当日は、ラグで競技が中断するアクシデントに見舞われつつも、タレントもファンも「ええよ、ええよ」「ゆっくりやろう」と声をかけあいながら大会を成功へと導くことに。
『マイクラ』配信の良さはまさにその部分です。いつも誰かが作業をしており、突発的な絡みが発生したり、イタズラしあったりして、台本のないコントがどこかで繰り広げられます。ファンはそこで別のタレントの魅力に気づき、タレントもタレント同士で気の合うメンバーと横のつながりができ、ここで生まれた絆が別のコラボや企画へと発展していきました。
みこさんが所属した「不知火建設」は後にマンガ連載やキャンペーングッズへと展開が広がりましたし、ベストコンビとなった兎田ぺこらさんと綺々羅々ヴィヴィさんも『マイクラ』での交流で仲良くなりました。湊あくあさんとぺこらさんが急激に接近したのも、『マイクラ』内でばったり会って意気投合したのがきっかけです。
箱推しはそのような構造の中で増えていきました。
◆ぺこみこvs大空スバルのマイクラ戦争
大運動会の記念碑を見て「うわー、これも作ったよね!」と思い出に浸るみこさん。「とっとこハコ太郎」のワードも飛び出した「鉱石PvP」では不具合で競技を中断したこともあり、「心を苦しんだ思い出がある」と当時の苦い記憶を振り返りつつ、楽しかった思い出もあって目を細めていました。
また「リレーはエモいから毎回やった」「海外メンバーもたくさん出てくれた」「(鳥人間ダーツRも)かなりドラマがあった。かなたん(天音かなたさん)が代表で飛んだり、兎田とかも飛んでトップのとこに立って“うおー!”みたいな感じだったよね」と思い出話が止まりません。

思えば第1回開催では参加者が「楽しかった!」とテンション高めにXに投稿したほど盛り上がり、とくに猫又おかゆさんに至っては「ここが僕の居場所です」と誇らしげにポストするほど印象深いイベントとなりました。決意表明のような温度感は、おかゆさんのみならず参加者全員からも伝わってきましたから、「ホロライブ大運動会」がどれだけ所属タレントとファンを勇気づけたか分かりません。
傍から見てもグループ内の団結力が強まった印象でしたし、多くの参加者が後ろ髪を引かれる思いで振り返り配信をする姿も印象的でした。


続いて不知火建設の事務所を回って学校へ。その道すがらに発見したウーパールーパーの繁殖場を見て、ホロ鯖内で発生した「青いウーパールーパー耐久ブーム」を振り返ります。青いウーパールーパーがレアだったこともあり、タレントたちがこぞって繁殖させたのですが、とくに天音かなたさんについては3200匹の末にようやく獲得できたこともあり、しばらくかなたさんの代名詞になっていました。
今はいないタレントといえば夜空メルさんのことも思い出されます。「メルさん、マジでおもしろかったからな」とメルさんの城(未完成)へ向かったみこさん。メルさんの自宅と言えば、ぺこらさんに「牢獄みたい」といじられてプロレスしたこともありました。そのネタに不知火フレアさんも乗ってファンを楽しませたものです。
そしてこの鯖といえば、ぺこダム、みこチャア、シュバンゲリオンの巨像も外せません。
まずはぺこらさんがぺこダムを建築すると、みこさんが「シャア専用ザク」をイメージしたみこチャアを建設。それらが完成すると、今度は大空スバルさんが近所に建築しはじめたシュバンゲリオンに2人でイタズラをしかけました。
シュバンゲリオンが両手に掴んだぺこダムとみこチャアが「プロレス」の名残。巨像を発見したタレントたちは、口々に「すごーい!!」と目を見張り、シュバンゲリオンが手にしたぺこらさんとみこさんに爆笑したものでした。
それが今や「ガンダムシリーズ×ホロライブ」を実現できるポジションまで人気を獲得したのですから人生わからないものです。「すげーよ。それが今じゃコラボですからね。感慨深い」と、みこさんも実感を込めていました。


◆「夏祭りまたやりたくない?」
大きなイベントといえぱ「ホロ鯖夏祭り」も思い出深い出来事でした。2021年にスタートし、2023年まで続いた本イベントは、もとは「うさ建夏祭り」の名称でスタート。2020年にデビューした獅白ぼたんさんが、2021年7月1日に卒業を控えた桐生ココさんのためにおそらく企画し、兎田建設に協力を求めたことからそのような名称になりました。
「ホロライブ運動会」と同様に各タレントが屋台を建設したり、メイン会場の建築をリレー配信したりするなど準備を整えた後は自由参加のイベント本番です。
仲の良いタレントと「デート」したり、ファンと一緒に見て回るつもりが、いつの間にか他のタレントと合流して遊びまわったり。会場にはちょっとしたゲームもあって、短い時間の中では見きれないほどの大規模なアトラクションとなりました。
そして最後は花火を打ち上げてイベントを終了。その花火でココさんを送り出したのが2021年の第1回夏祭りでした。今でもその時のメッセージが上空に見て取れます。

桃鈴ねねさんと雪花ラミィさんが作った迷路が、なぜか地下の洞窟と繋がってしまい、テスト参加した不知火建設の面々がホラー映画さながらの大惨事に見舞われるなど、奇跡的な展開もあって話題になった本イベント。
そして2021年当時はまだ在籍していた潤羽るしあさんも屋台で協力するなど、3期生が5人で楽しく盛り上がっていた時代でもあり、その建築物のひとつひとつがまさにホロライブの歴史と言えるものでした。
なおみこさんは、いずれの年もオバケ屋敷で参加。当日の人気コンテンツとしてさまざまなタレントたちに悲鳴を上げさせていました。
「夏祭りまたやりたくない?」
そう語りながら、その後もみこさんの魔王城や、角巻わためさんのトレードマークとなった「つのまきジャンケン」、海外メンバーのサーバーなどを見て回ります。

実は現在のホロライブでは先輩たちの『マイクラ』の腕が上がりすぎ、かつての交流ができなくなっています。
以前、ぺこらさんもため息混じりに話していましたが、どんなに新サーバーを立ててゼロから開拓をはじめても、すぐに建築物で埋まり、ライフラインも建設され、やることがなくなってたちまち廃れてしまうそうです。
だからと言って『マイクラ』以外の箱ゲーを探そうと思っても、そう都合よく見つかるはずがありません。
タレントの皆さんもつねに新しい箱ゲーを探しているとのことですが、はたして以前のような賑わいが戻るのはいつの日か?

最後に6年前の掲示板を発見し、「おい、あのころのみこたち聞いてるか」と問いかけたみこさん。「もうな、SwitchはSwitch2が出たぞ。iPhoneももう17だ。みんな落ち着け、Twitterはなくなったぞ。Xだ!」と告げた後、こうつけ加えました。
「ソロライブもやったぞ。続々とソロライブメンバーが増えてるぞ」
さらに声のトーンを落とし、寂しげに告げます。
「ホロメンも、何人か卒業しちゃったぞ……」
6年前は卒業者が出るなどとは思わず、ソロライブができるほど認められるとも思わなかったホロライブ。それが今や考えられないほど環境が激変しました。
みこさんが配信の途中でポロリと呟いた言葉、「ホロ鯖は懐かしいだけじゃなくて、すんげえ特別な場所になったなあ」を改めて感じた今回の配信企画。来年は、ときのそらさんがデビューして10周年。はたしてその時のホロライブはどのような形になっているでしょうか?
ひとまず夏祭りは見てみたいところです。















