人生にゲームをプラスするメディア

『シニガミ姫と異書館ノ怪物』で実感した「絵本シリーズ」の進化! 痛みを伴う優しい物語を“新たな立場”と“関係性”で描く【プレイレポ】

日本一ソフトウェアの“絵本シリーズ”最新作『シニガミ姫と異書館ノ怪物』は、シリーズならではの切なさと優しい世界観を継承しつつ、これまでとは異なる主人公像や物語構造を描いた意欲作でした。過去作と比較しながら、本作ならではの魅力を掘り下げます。

ゲーム プレイレポート
『シニガミ姫と異書館ノ怪物』で実感した「絵本シリーズ」の進化! 痛みを伴う優しい物語を“新たな立場”と“関係性”で描く【プレイレポ】
  • 『シニガミ姫と異書館ノ怪物』で実感した「絵本シリーズ」の進化! 痛みを伴う優しい物語を“新たな立場”と“関係性”で描く【プレイレポ】
  • 『シニガミ姫と異書館ノ怪物』で実感した「絵本シリーズ」の進化! 痛みを伴う優しい物語を“新たな立場”と“関係性”で描く【プレイレポ】
  • 『シニガミ姫と異書館ノ怪物』で実感した「絵本シリーズ」の進化! 痛みを伴う優しい物語を“新たな立場”と“関係性”で描く【プレイレポ】
  • 『シニガミ姫と異書館ノ怪物』で実感した「絵本シリーズ」の進化! 痛みを伴う優しい物語を“新たな立場”と“関係性”で描く【プレイレポ】
  • 『シニガミ姫と異書館ノ怪物』で実感した「絵本シリーズ」の進化! 痛みを伴う優しい物語を“新たな立場”と“関係性”で描く【プレイレポ】
  • 『シニガミ姫と異書館ノ怪物』で実感した「絵本シリーズ」の進化! 痛みを伴う優しい物語を“新たな立場”と“関係性”で描く【プレイレポ】
  • 『シニガミ姫と異書館ノ怪物』で実感した「絵本シリーズ」の進化! 痛みを伴う優しい物語を“新たな立場”と“関係性”で描く【プレイレポ】
  • 『シニガミ姫と異書館ノ怪物』で実感した「絵本シリーズ」の進化! 痛みを伴う優しい物語を“新たな立場”と“関係性”で描く【プレイレポ】

日本一ソフトウェアといえば、『魔界戦記ディスガイア』シリーズを思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、同社の代表作はそれだけではありません。

2026年4月30日に発売された『シニガミ姫と異書館ノ怪物』は、こちらも同社が展開している“絵本シリーズ”に名を連ねる最新作です。これまで本シリーズでは、『嘘つき姫と盲目王子』、『わるい王様とりっぱな勇者』の2作品が発売されました。

童話を思わせる優しいビジュアルと、読み聞かせのように紡がれる物語。その魅力は「絵本シリーズ」という名称にふさわしく、独特の世界観で多くのファンを魅了します。

かくいう筆者もそのひとりで、『嘘つき姫と盲目王子』と『わるい王様とりっぱな勇者』の両作をクリアし、心地よい読後感を堪能しました。そうした好印象を抱いていたことから、『シニガミ姫と異書館ノ怪物』にも当然期待を募らせます。

そうした期待に対し、『シニガミ姫と異書館ノ怪物』はどのように応えてくれたのか。結論を先に言えば、シリーズ作品として非常に興味深いタイトルだったと感じました。本稿では、その理由について、本シリーズの過去作と照らし合わせる形で掘り下げていきます。

なお、ネタバレを避けるため、『シニガミ姫と異書館ノ怪物』の物語については序盤の内容に留めています。また、『嘘つき姫と盲目王子』と『わるい王様とりっぱな勇者』についても核心部分には触れませんが、作品概要に関する言及がある点はご了承ください。

■「絵本シリーズ」の主人公として、新たな切り口となった「モノ」

『シニガミ姫と異書館ノ怪物』を含む“絵本シリーズ”は、可愛らしい見た目とは裏腹に、悲しみや痛みを伴う物語を描いてきました。

例えば『嘘つき姫と盲目王子』では、「人食いの化け物」と「人間の王子」という異種族の関係が物語の中心になりました。そこには純粋な思いと献身、そして大きな嘘が横たわっており、その嘘はいずれ避けられない形で明らかになります。

また、『わるい王様とりっぱな勇者』では、竜に育てられた少女「ゆう」が立派な勇者になる夢を叶えるために冒険へ旅立ちます。しかし、彼女を育てた竜はかつて少女の父である勇者と戦った魔王でした。ゆうが勇者になる以上、竜との対立は避けられません。

こうした物語を紡いできた“絵本シリーズ”の最新作となった『シニガミ姫と異書館ノ怪物』は、過去作とは違う切り口で物語を描きます。

本作の世界では、生き物を絵本に変えたあと、怪物へと変貌させてしまう恐ろしい流行り病「シニガミ病」が蔓延しています。主人公の少女「モノ」の姉もこの病にかかり、収容施設「異書館」へ送られてしまい、さらには国が異書館を見捨てたという噂まで流れます。

姉を救いたいとの思いからモノは異書館へ向かい、そこで伝説の怪物「メェル」と出会います。そして、互いの目的のために契約を結び、ともに施設の探索を始めました。

本作でまず興味深いと感じたのは、主人公の立ち位置です。『嘘つき姫と盲目王子』では、王子が失明する原因を作ったのは主人公の化け物でした。その目を治すため、自分の正体を偽った化け物が、王子を連れて魔女の家へと向かいます。

そして『わるい王様とりっぱな勇者』では、成長の痛みと向き合う当事者は、他ならぬ主人公のゆう自身です。つまり過去2作品は、主人公自身が物語の中心におり、当事者として責任や立場と向き合う構造になっていました。

しかし本作では、物語の視点こそモノに置かれているものの、「シニガミ病」という事態の当事者という意味では、姉や患者たちこそが中心といえます。強いて過去作に当てはめるなら、モノは『わるい王様とりっぱな勇者』における竜に近い立場、といえるかもしれません。

モノは、事態の中心人物ではなく、渦中にいる人物を助けて支えようとする側の人間です。主人公をあえてその位置に置いた『シニガミ姫と異書館ノ怪物』は、“絵本シリーズ”の新たな切り口を模索し、それに挑戦したタイトルだと感じました。

■少女たちの人生に寄り添う“救う側”の物語

モノが当事者から一歩離れた位置にいることは、本作の物語構造そのものと深く結びついています。

姉を助けるために訪れた異書館は、すでに怪物たちの巣窟と化していました。姉がどこにいるのか、そしてすでに本や怪物へ変わってしまったのか、なにひとつ分かりません。そのためモノは、異書館に収められた数々の「本」の世界へ入り込み、姉の手掛かりを探します。

しかし、それらの本は単なる記録ではなく、いずれもシニガミ病にかかった少女たちそのものです。本の世界へ足を踏み入れることは、彼女たちの人生に触れることを意味しています。

シニガミ病にかかり、本になってしまった少女たちが歩んできた人生は、どれも平坦なものではありません。悲しみや苦しみを抱えながら生きてきた彼女たちの軌跡を、プレイヤーはモノの視点を通して知ることになります。

そして心優しいモノは、苦しむ人を見過ごせません。少女たちの事情を知り、その苦しみに向き合い、怪物=「シニガミ姫」となった彼女たちを救おうとします。

少女と出会い、その人生を知り、救うために手を伸ばす。その後、再び姉を探して別の本の世界に入る。こうした流れを本の数だけ繰り返していくのが、『シニガミ姫と異書館ノ怪物』におけるゲーム進行の構造です。

モノは、少女たちに対しても「救う側」の存在となります。当事者はシニガミ姫となった少女たちであり、モノはその人生を見届け、寄り添う役割を担っているともいえるでしょう。

事態の中心から一歩離れた場所にいるモノは、“絵本シリーズ”の主人公としてはかなり珍しい立場にいます。一見すると客観的でもありますが、それが物足りなさにつながることはありません。

むしろ当事者ではないからこそ、“自ら進んで他者へ手を伸ばす”というモノの行為に重みが生まれ、「他人」から「寄り添う相手」となる関係性の変化が尊く感じられます。一歩離れた場所にいても、モノはまぎれもなく『シニガミ姫と異書館ノ怪物』の主人公に相応しい人物です。



《臥待 弦》

楽する為に努力する雑食系ライター 臥待 弦

世間のブームとズレた時間差でファミコンにハマり、主だった家庭用ゲーム機を遊び続けてきたフリーライター。ゲームブックやTRPGなどの沼にもどっぷり浸かった。ゲームのシナリオや漫画原作などの文字書き仕事を経て、今はゲーム記事の執筆に邁進中。「隠れた名作を、隠れていない名作に」が、ゲームライターとしての目標。隙あらば、あまり知られていない作品にスポットを当てたがる。仕事は幅広く募集中。

+ 続きを読む

編集部おすすめの記事

特集

ゲーム アクセスランキング

  1. スイッチ2版『ゼルダの伝説 時のオカリナ』で一新されたビジュアルは「最高」? それとも「思っていたのと違う」? ご意見大募集【アンケート】

    スイッチ2版『ゼルダの伝説 時のオカリナ』で一新されたビジュアルは「最高」? それとも「思っていたのと違う」? ご意見大募集【アンケート】

  2. 『妖怪ウォッチ2 覇道』スイッチ2向けに発売決定!さまざまな要素をパワーアップしたリメイク作【Nintendo Direct 2026.9.9】

    『妖怪ウォッチ2 覇道』スイッチ2向けに発売決定!さまざまな要素をパワーアップしたリメイク作【Nintendo Direct 2026.9.9】

  3. スイッチ2版『ゼルダの伝説 時のオカリナ』に、なぜこれほど期待が集まるのか!? 逆風もあった名作が待望の再誕

    スイッチ2版『ゼルダの伝説 時のオカリナ』に、なぜこれほど期待が集まるのか!? 逆風もあった名作が待望の再誕

  4. “ダッシュ”が出来る『ゼルダの伝説 時のオカリナ』リメイク、任天堂海外公式Xが「どうしても転がりたいなら…」とローリング移動ネタを投稿

  5. 『ロマサガ3』フルリメイクが発表! 『ロマンシング サガ3 デスティニーユナイテッド』2027年2月16日発売!【Nintendo Direct 2026.9.9】

  6. 『遊戯王OCG』原作モチーフの新カード10枚が一挙公開!「香水戦術」や新たな「エネミーコントローラー」も

  7. 『ドラクエモンスターズ4』ダイレクト終了後より一部のデータが引き継げる体験版を配信開始!フィールド上のスカウトや共闘バトルも紹介【Nintendo Direct 2026.9.9】

  8. スイッチ2版『モンハンワイルズ』12月4日発売!これまでのアップデートを全て収録、大型DLC「アセンダンス」にも対応 【Nintendo Direct 2026.9.9】

  9. 元祖“不思議のダンジョン”『トルネコの大冒険 不思議のダンジョン ちょっとステキなリマスター』発表&早速リリース予定!【Nintendo Direct 2026.9.9】

  10. 大ヒットかくれんぼゲーム『めっちゃカメレオン』がスイッチ2で配信開始! 【Nintendo Direct 2026.9.9】

アクセスランキングをもっと見る