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『ファイナルファンタジータクティクス 』は21世紀の混沌を預言していた!? 令和に遊ぶからこそ刺さる「真面目に働いていれば」のナンセンス

『ファイナルファンタジータクティクス 』は、我々に何を教えてくれるのか。

ゲーム PS5
『ファイナルファンタジータクティクス 』は21世紀の混沌を預言していた!? 令和に遊ぶからこそ刺さる「真面目に働いていれば」のナンセンス
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9月30日、タクティカルRPG『ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ』が発売されました。

本作は1997年6月に発売された『ファイナルファンタジータクティクス』のリマスター作品で、最新グラフィックの導入やUI刷新、登場キャラクターのフルボイス等が施されています。一方で、原作と同様の仕様で楽しめる「クラシック」モードも搭載され、当時を知っている人でも十分に楽しめる作品になっています。

しかし、このゲームの最大の魅力は「2020年代を予見していたかのようなシナリオ」ではないでしょうか。

『ファイナルファンタジータクティクス』が発売された1997年当時、日本は不況を迎えつつも気楽に海外旅行をする人は確かに存在しました。それは今考えると「短い戦間期」であり、2つの大国が核ミサイルを向け合う時代が過ぎ去った平和な時間でもありました。

そんな中で登場した『ファイナルファンタジータクティクス』は、我々に何を教えてくれたのでしょうか。

◆「真面目に働いていれば」のナンセンス

『ファイナルファンタジータクティクス』の舞台は、イヴァリースという国。このイヴァリースは、物語の最中に「獅子戦争」という内戦が勃発します。

この獅子戦争の前には、イヴァリースとその周辺諸国による「五十年戦争」が発生しています。五十年戦争で国そのものが疲弊し、そこからの復興がままならない頃合いに再び発生した新しい戦争です。五十年戦争でイヴァリースは寸土も得ることができず、義勇軍に対する恩賞すら捻出できないほど国力が落ちてしまいます。

この義勇軍は戦後、「骸旅団」という盗賊もしくはテロリストになります。主人公のラムザは、骸旅団の討伐に駆り出された士官候補生です。

ラムザは当初、骸旅団に対してこのような言葉を放っています。

「真面目に働いていれば、こんな風に命を失うこともないだろうに――」

この時のラムザは、まったく現状を分かっていませんでした。怠け者やロクデナシが盗賊になったわけではなく、今まで真面目に働いていた人、国家に忠誠を誓っていた人が戦争の理不尽のせいでテロリストになるしかなかったのです。それを上から目線で「真面目に働いていれば」などと言い放つ権利は、誰にもないはずです。

そう、『ファイナルファンタジータクティクス』は戦争を真正面から取り上げると同時に、「貧困」や「貧富の格差」もテーマに絡めています。

◆冷戦終結後の世界

『ファイナルファンタジータクティクス』は、シミュレーションRPGとしては空前の大ヒットを記録した作品です。

しかし、「戦争」と「貧富の格差」を頭の中でしっかり接続しながらこのゲームをプレイしていた人は、実際問題どれだけいたのでしょうか。

1997年当時の日本は、バブル経済の崩壊に起因する不景気が人々の肩に圧し掛かっていました。ですが、その最中にあってテレビでは国際電話サービスや旅行会社の華やかなCMも放映されていました。その背景には、ソビエト連邦の崩壊による冷戦期の終了が多分にあったはずです。

アメリカとソ連、どちらも大量の核兵器を保有している大国が一触即発状態になっていたのが冷戦期です。その片方がなくなり、世界は一丸となって自由主義に突き進んでいくだろう。そのような幻想を共有することができたのが90年代という時代でした。

そう、これは「幻想」だったのです。21世紀に入って早々、アメリカでは同時多発テロ事件が発生します。それまで超大国の駒のように動かされていた世界各地の「骸旅団」が、我々一般市民にも銃を向けるようになりました。海外は、20世紀の頃よりも遥かに「物騒な場所」になってしまったのです。

◆我々はラムザと同じ道を歩んでいる

『ファイナルファンタジータクティクス』をしばらくプレイすると、イヴァーリスには絶大な身分格差も存在することが確認できます。

ここで描かれている格差を「自分事」として捉えられる人の割合で言えば、1997年よりも2025年のほうが圧倒的に多いはずです。逆に言えば、1997年はゲーム序盤のラムザが言ったような「真面目に働いていれば」がまだ説教の定型文として通用した時代だったということ。そこからラムザは、あまりに醜い現実を目の当たりにしてしまいます。

21世紀も20年以上が過ぎた今、『ファイナルファンタジータクティクス』をプレイする意義はまさにここにあるのではないでしょうか。

ゲームとしての『ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ』は、28年分の進化を経たグラフィックやフルボイスに圧倒され、胸を躍らせながら何時間でもプレイすることができます。ですが、それに覆い被さってしまうほどの先進性がシナリオの中に含まれていて、どうしても考察を巡らさせずにはいられません。

もしかしたら我々は、ラムザと同じ道を現在進行形で歩んでいるのではないでしょうか?

「語り継がれている歴史も、見方を変えれば主役が異なってくる」ということも『ファイナルファンタジータクティクス』にはしっかり描かれています(というより、それが物語の根幹部分)。

我々はどこからやって来て、これからどこへ行くのか。そんな疑問に対する答えを、『ファイナルファンタジータクティクス』は既に用意しているのかもしれません。

《澤田 真一》

ゲーム×社会情勢研究家です。 澤田 真一

「ゲームから見る現代」をテーマに記事を執筆します。

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