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“熱狂”のファミコン版『ドラクエ3』発売日を、当時の新聞各社はどう報じた?後世まで語り継ぐべき名記事も発掘

1988年の『ドラクエ3』発売を、新聞各社はどのように報じたのか振り返ります。

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“熱狂”のファミコン版『ドラクエ3』発売日を、当時の新聞各社はどう報じた?後世まで語り継ぐべき名記事も発掘
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11月14日、スクエア・エニックスからHD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』(以下ドラクエ3)が遂に発売されました。

コンピューターゲーム史に燦然と輝く『ドラクエ3』を、現代の技術でリメイクした今回の作品。かつて、あれだけやり込んだゲームなのに何だか全く別のものをプレイしていると錯覚してしまうほどの「近代化」を遂げています。

そんな『ドラクエ3』、かつて社会現象を巻き起こしたことがあります。ファミコンソフトが発売された1988年2月10日、都市部の家電量販店には徹夜の行列ができるほどのお客さんが殺到し、何とソフトの強奪事件まで発生したという出来事です。

この記事では、当時の新聞記事を引用しながら「ドラクエ3騒動」を振り返りたいと思います。

◆管理社会との関連性を論じた毎日新聞

1988年2月10日は水曜日。祝日というわけではない、至って普通の平日でした。

そんな平日の最中、家電量販店には『ドラクエ3』目当ての若者が長者の列を形成しました。まずは当日の毎日新聞全国版 東京夕刊の記事『止めてくれるなお母さん ファミコン「ドラクエIII」超人気 発売初日殺到の列』を読んでみましょう。

人気を呼んでいるファミコン用ゲームソフト“ドラクエ”の第三弾が十日発売され、全国各地で異常人気、爆発的な売れ行きを示した。予約制をとっていない量販店では、徹夜組を含めて一万人の長い列が。中でも目立ったのが中、高校生で、あらかじめこの事態を心配し、各教育委員会に異例の指導通知を出していた東京都教育庁では「やはり」と苦い顔をみせるなど、関係者は複雑な反応。全国でファミコンの本体が一千万台を超えているという“遊びの孤立化”の時代、ファミコン・シンドロームという新たな社会現象がすっかり定着してしまったようだ。

(毎日新聞全国版 東京夕刊『止めてくれるなお母さん ファミコン「ドラクエIII」超人気 発売初日殺到の列』1988年2月10日)

記事タイトルの中にある「止めてくれるなお母さん」は、1968年の東京大学の駒場祭に出展されたポスターのキャッチコピー「とめてくれるなおっかさん 背中のいちょうが泣いている 男東大どこへ行く」(橋本治)を明らかに意識した一文。この当時は中学生や高校生が学校を欠席して『ドラクエ3』を買いに行ったため、教育委員会が対応策を講じていました。「生徒が『ドラクエ3』を買う目的で学校を休まないように」という指導をしていたのです。

しかし、教育庁及び教育委員会の行動は生徒のプライベートに干渉するものではないでしょうか。欠席の理由が何であろうと、それは生徒個人の問題。学校や教育委員会が口を出す領分ではないはずです。このあたり、当時の(やや行き過ぎた)管理社会・管理教育が表れています。

上記の毎日新聞の記事が素晴らしいのは、この時代の管理社会とファミコンブームを結びつけて論じている点です。

高山英男・子ども調査研究所所長「子供の遊びの流行は加熱しても、間もなく終わってしまう一過性のものがほとんど。ファミコンブームはこれと違って継続性があり、子供の遊び文化に大きな変化をもたらしたものといえる。ファミコンの遊び方を見ると、子供たちは塾や水泳教室などスケジュール化された生活の中で、そのすき間、すき間でファミコンに熱中している。かつての野球や将棋など仲間が集まらなければできない遊びと違い、ファミコンはまさに今の管理化されたスケジュール社会を象徴する遊びといえる。よくファミコンは教育上まずいといわれるが、ファミコンだけの問題ではありえず、時代全体に目を向ける必要があると思う」

(同上)

この高山氏のコメントを取ってきた記者、そして入稿されてきた記事を通したデスクは給料以上の働きをしたと言えます。コンピューターゲームを敵視したり、嘲笑ったりするのは簡単です。しかし、「それが流行る背景」を冷静に分析して「ファミコンだけの問題ではありえず」とした点は、まさに芯の通ったジャーナリズムではないでしょうか。

◆『ドラクエ』を見下した日経新聞のコラム

一方で、こんな記事を配信している新聞も。

次は1988年2月11日、日本経済新聞朝刊に掲載されたコラム『春秋』です。

過去の歴史上、日本人の体格が大きく変わった事例がたった一度ある。今から二千二百年ほど前のこと、日本に稲作をもたらした弥生時代人の平均身長は男が一六四センチ、女が一五一センチと、それ以前の縄文時代人と比べると四センチも高くなった。

(中略)

文部省が発表した昨年度の学校保健統計調査によると、小、中学生の体格は各学年で男女とも過去最高の数値を記録した。

(中略)

体格が良くなるのにこしたことはない。とはいえ、急激な変化は、いささか不気味だ。もしや、フロンガスが宇宙オゾン層を破壊して生じた遺伝子の突然変異ではないのか、ひそかにエイリアン(異星人)がもぐり込んでいるのではないか、といった妄想にかられたりもする。この若者たちがみんな、男ますらおハマコー氏や双羽黒のように成長したら、手のつけようもなくなる。まあ「ドラゴンクエスト」程度のTVゲームに夢中になっているうちは無事か。

(日本経済新聞 朝刊『春秋』1988年2月11日)

「現代の若者は体格だけ大きくなっている」ということを主張している感じですが、これは現代であればSNSで批判されてしまうかもしれない内容です。

1面下のコラムは論説委員が手掛けるもので、その新聞の「顔」とも言える部分。そうした場で特定の対象を見下してしまうような表現は避けるべきだと思うのですが……。残念ながら、この時代のコンピューターゲームはまだまだ新しく、それ故に奇異なものだったようです。

◆日経産業新聞の名記事

ただし、これは日本経済新聞社全体の見解ではない点にも注意するべき。というのも、『ドラクエ3』発売の1ヶ月前に同社の発行する日経産業新聞(2024年3月29日付で休刊)は、以下のような素晴らしい記事を紙面に掲載しているからです。

弱いと言われるコンピューターソフトウェア市場で、日本が例外的に世界の最先端を走り続けている分野がある。テレビゲームだ。いまや普及台数が一千万を超えた任天堂の「フェミリーコンピュータ」も、子供から大人まで熱狂させるソフトの存在を抜きにしては語れない。

「今度こそスーパーマリオブラザーズを抜いてみせる」。二月に発売する「ドラゴンクエスト3」の開発を終えたソフト会社エニックス(本社東京)常務の千田幸信(37)は自信たっぷりに語る。

(中略)

昭和六十年暮れ、東京・西新宿のエニックス本社に各界の名だたる異能たちが集まった。「Dr.スランプ」で知られる売れっ子漫画家の鳥山明(32)、「学生街の喫茶店」をはじめ様々のヒット曲を生んだ作曲家すぎやまこういち(56)、ゲームソフト専門のシナリオライターとして売り出し中の堀井雄二(34)らの面々だ。

映画は製作者や監督の資質はもちろん俳優、シナリオ作家そして音楽家などが、それぞれの領分で才能と個性を発揮して初めて観客を魅了できる。――ゲームソフトもまったく同じではないか。何がヒットするか予測のつかないところまで……。

(日経産業新聞『技術創造(45)ゲームソフトに異能集結――大企業にない夢求め。』1988年1月20日)

ドラクエシリーズのプロデューサーだった千田幸信氏(現スクウェア・エニックス・ホールディングス取締役)が率いる開発チームの奮闘、そして「ゲームとは傑出した才能の塊が何日も徹夜して編み出す作品」ということを、記者ならではの卓越した文章で綴った名記事です。

とにかく千田さんがかっこいい! クリエイターのあるべき姿が、ここに書かれています。「新聞記事は野菜と同じ生鮮品」と言われてしまうこともよくありますが、後世まで語り継ぐべき会心の記事も確かに存在するのです。

◆優秀なジャーナリストがそこにいた!

1988年2月10日の『ドラクエ3』発売が、社会現象としてセンセーショナルに報道されたのは事実です。

しかしその一方、『ドラクエ3』大ヒットの背景を冷静に分析する記事や、この作品に関わった人々の努力や情熱を素直に描写した記事もあります。電気と内燃機関が20世紀の光景を構築したのと同様、コンピューターゲームが21世紀の光景を形作ると確信していたジャーナリストがいたことを忘れてはいけません。

彼らの確信が正しかったということは、現代の技術でリメイクされたHD-2D版『ドラクエ3』が証明しています。

昨今流行りのオープンワールドRPGではないものの、それに勝るとも劣らない壮大過ぎる世界観の演出にはつい息を呑んでしまいます。今は亡きすぎやまこういち先生の手掛けた楽曲は、まるで自分がコンサートホールにいるかのような迫力です。

映画は製作者や監督の資質はもちろん俳優、シナリオ作家そして音楽家などが、それぞれの領分で才能と個性を発揮して初めて観客を魅了できる。――ゲームソフトもまったく同じではないか。何がヒットするか予測のつかないところまで……。

我々は、この一文を今一度嚙み締めるべきではないでしょうか。

今回ご紹介した記事は、図書館の検索コーナーで簡単にチェックすることができます。気になった方は、最寄りの図書館へ一度足を運んでみてください。


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¥6,532
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
《澤田 真一》

ゲーム×社会情勢研究家です。 澤田 真一

「ゲームから見る現代」をテーマに記事を執筆します。

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