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「VRに関してはやりきりました」ー『グランツーリスモ7』山内一典氏が語るPS VR2対応での苦労した点やVR酔いへの対抗策[インタビュー]

誰もが驚いた『グランツーリスモ7』のVR化。その苦労を生みの親に聞いてみました。

ゲーム PS5
「VRに関してはやりきりました」ー『グランツーリスモ7』山内一典氏が語るPS VR2対応での苦労した点やVR酔いへの対抗策[インタビュー]
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2023年2月21日、この日の無料アップデートにて『グランツーリスモ7』(以下、GT7)はPlayStation VR2(以下、PS VR2)に完全対応しました。2プレイヤー対戦を除き全てのコンテンツでVRを体験できるとあって、ある人は大迫力のレースを体感したり、また別の人は今までしっかり見られなかった車の内装を間近で見る楽しさを感じたりと、全世界の車好きが待ち望んでいた体験を肌で感じていることでしょう。

本記事では『グランツーリスモ』シリーズの生みの親であり、ポリフォニー・デジタル代表取締役プレジデントを務める山内一典氏に『GT7』のVR化についてのインタビューをお届けします。苦労した点は勿論のこと、VR酔いに対しての対抗策など非常に興味深いエピソードが明かされました。


『GT7』のVRはやりきった

――PS VR2へ『GT7』を対応するにあたって一番苦労した点はなんでしょうか。

山内一典氏(以下、山内)そもそもPS VR2への対応は『GT7』の開発段階から考えていました。グランツーリスモ SPORT』でPlayStation VRに対応した時は、それぞれの開発タイミングが同時ではなかったので限定的な対応に留まっていましたが、『GT7』はPS VR2のネイティブなタイトルとして開発していました。『GT7』はPS5版が4K60fpsで描画されますが、PS VR2に対応するために必然的にそうなりました。

――高いフレームレートをVRで実現するのは大変でしたか。

山内:大変でした。フレームレートを出すには2つ要素があり、1つはクオリティを落とさずにいかに軽いデータを作るかという点で、これは主にアーティスト側の仕事になります。もう1つはいかに高速にレンダリングするかという点で、こちらはエンジニア側の仕事です。それらをとことん最適化しないとVRは動きません。

――『GT7』の開発段階からPS VR2に対応することが決まっていたからこそ、高いハードルも超えられたのですね。

山内:『GT7』を開発している時からPS VR2の性能はわかっていましたので、それに合わせて開発できたというのは凄く大きいですね。後から対応させるのではなく、当初からVR化を前提として開発するということは、結果的に大きな差があったと思います。

――VRの開発において映像面はかなり重要だと思いますが、音の面に関してはVRの開発時に何か変えた点などはありますでしょうか。

山内:VR用に音の面に関して特別なことはしていません。元から『GT7』は音に関して拘っていました。例えばコースの空間上に様々な音源を配置したり、レイトレーシングの手法を使って音の反射なども計算していました。あるいは車内から聞こえるエンジン音の共振だったり共鳴だったりの計算を真面目にやっていたので、結果的にVRとヘッドセットの組み合わせでその空間の中で首を自由に振ることができるようになり、今まで開発していた3Dのオーディオが素直に体験可能になったと思っています。

――『GT7』のVRはPS5とPS VR2の機能をフル活用していると思いますが、実際はもっとこうしたかったなど実現しようとはしたができなかった点などはありますか。

山内ありません。VRに関してはやりきりました。そもそもVRには50年程度の歴史がありますが、いつかVRできちんとしたレースゲームを作るのが夢だったんです。ただ、現実的に家庭用のゲームとして遊べるようになるにはかなりの時間がかかりました。そのタイミングでほぼリアルタイムのVRレースゲームを作れたというのはある種の達成感を誇っていいのかなと思っています。

――『GT7』をVR化する上で一番やりたかったことは何でしょうか。

山内:『グランツーリスモ』シリーズは今までも車のクオリティに関してオーバースペックな程に作り込んでいます。しかし通常のゲームプレイですと細かなディテールまでは見えません。それらをいつかきちんとした形で見せたいと思っていたので、VRショールームでエクステリアを舐め回すように見れたり、インテリアの中に入ってじっくり眺められるというのはやりたかった要素の中においてプライオリティが高かったです。

もちろん、シートに座ってインテリア越しに外を見ながらドライブするというのもVRの歴史50年、レースゲームの歴史40年という中でも1つの究極の目標というものでもありました。それが実現できたというのは1つの達成と言えるのではないでしょうか。

――VR化した今だからこそ今の技術で再現してみたい、もしくは見てみたいコースはありますか。

山内:VRでのコースの楽しみ方は2つあると思っています。『GT7』は架空のコースと現実に存在するコースが存在しますが、架空のコースは新しい世界そのものを体験する面白さがあります。現実の世界にあるコースは実際にそのコースを走ったことがある人はその楽しさが激増すると思います。それは「あの時起きたことと全く同じだ」という現象が起きるからだと思います。例えばちょっと曇っている天候の筑波サーキットをゲームで走ってみると、現実世界の少し曇った時の走行会を走っているような気分になります。今後も『GT7』は架空のコースも現実のコースも収録されていくと思いますので、その都度VRで追加されたコースを走るということは楽しみの1つになっていくでしょう。

VR酔いしないために中央値の視点を設定

――VRということでいわゆるVR酔いが発生すると思いますが、なぜVR酔いが発生するのかそのメカニズムや、ゲーム側でVR酔いに配慮した点などはありますか。

山内:私の理解では、人間の脳は0.2秒から0.4秒くらい先のことを常に予想しながら動いています。現実世界では実際に起きてから行動に移すとなるとどうしても支障が出ることが多いです。私達が違和感無く生活できるのは、人間の脳が予め先のことを考え未来を予測しているからです。意識する前に脳が指令を出しているからこそ、実際にステアリングを切ったりする時もほぼリアルタイムで動かしている感覚を受けられます。しかし未来予測と現実とのずれが発生してしまうと、そこに酔いが発生します。脳が予測していることをどれだけゲーム内で描画するのか、フィードバックするかが重要になってくるので気を遣いました。レースゲームは基本前にしか進まないのでVR酔いしづらい特徴があります。上下左右に激しく動かすものは非常に酔いやすいからです。これが人間の意思で動かす分には何も問題ありません。それは脳が未来予測しているからです。ですがぱっと視点が切り替わってしまうと0.5秒で酔ってしまいます。

そのため、いかにそういった動きを抑えるかがVRを開発する上で重要な点です。そういう意味でもレースゲームは周りがインテリアに囲まれ、ある種の基準が見えやすく外側には景色があり、車は回転したりせず基本まっすぐ進みプレイヤーの意思で左右に曲がったりするので、人間の脳の予測のずれが少ないという点でVRに非常に合っています。

ただ、レースゲームにおけるVRも完璧というわけではなく、例えば角度がきついコーナーがあったとして頭の位置はコーナーの角度に合わせれば平らなコースを走っているように見えます。しかし頭をまっすぐに立てていればコースは曲がって見えます。これは各プレイヤーの好みや行動でそれぞれ違います。またブレーキした時の反動でどれだけ頭が動くのかというのもプロのレースドライバーと一般的なドライバーでは違いますし、さらに一般的なドライバーとゲームでしか車を走らせない人もまた違います。そのため、中央値の視点を設定しどんなプレイヤーが遊んでも酔いづらい形には作ったつもりではあります。

――プレイヤー側でVR酔いをしない方法やコツはありますか。

山内:それは凄く単純で、真面目にドライブするということです。真面目にドライブしていれば視線は必ず車が向かう消失点に向かいます。消失点の絵は安定しているので酔いづらいです。ようは遠くを見ろということでもあります。VRでプレイしているとついつい色んなところを見ようとしますが、実際車を運転している時はそんなことはしないと思います。時速200km/hで走りながら内装は見ないですよね(笑)。まずはきちんと運転に集中して、あそこでブレーキングだ、次はあそこがエイペックスだとしっかり運転する先を見ていれば酔いづらいと思います。

なぜVRリプレイモードは車の上部やボンネット視点がないのか?
《げーまー哲》
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