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さわやかな結末にホロリ…『ときメモドラマシリーズ 虹色の青春』は最高の青春ドラマだった

小島秀夫監督率いる「小島組」の作り込みが光る名作!学園モノアドベンチャーゲームの金字塔であると思っています。

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『ときめきメモリアル ドラマシリーズ Vol.1 虹色の青春』(Amazon.co.jpより)
さまざまなゲームに登場するヒロインたちの魅力をあらためて掘り下げていく連載企画「僕たちのゲームヒロイン録」。第25回は『ときめきメモリアル ドラマシリーズ Vol.1 虹色の青春』の虹野沙希を紹介します。

「レギュラーになるまでがんばるって、約束したじゃない!」

ときめきメモリアル』の特定のヒロイン1人にスポットを当てたアドベンチャーゲーム「ときめきメモリアル ドラマシリーズ」は、1997年から1999年にかけて全3作がリリースされました。今回紹介する『虹色の青春』はその第1作目です。

ときメモ』はヒロイン1人1人の個性が際立っていてそれがコミカルさにもつながっていましたが、本シリーズではそれが鳴りを潜め、タイトル通りに青春ドラマのようにさわやかなストーリーが描かれるのが大きな特徴であり、魅力のひとつでした。

主人公はきらめき高校のサッカー部員(初期設定名なし/プレイヤーが任意に決定)。入部以来レギュラーの座を目指して努力を続けてきましたが、彼が2年生に進級した春、希望するフォワードでレギュラーに選ばれたのは入部したばかりの新入生・沢渡透でした。しかも、彼はそれを鼻にかけることはなく2年で補欠の主人公にもきちんと先輩・後輩の間柄を守って接する少年で、これでは一方的な逆恨みすらできません。

こうなったら、とことん努力するしかありません。主人公はレギュラーを目指してより一層の練習に励みます。

部活動時にレギュラーが練習しているときは補欠としてボール拾いに従事し、少しでも空き時間ができると自身の練習にあて、部活終了後はレギュラーが気持ちよく練習できるようボール磨きに精を出し、帰宅後は毎晩近くの神社に出かけ、木々の間にネットを張って夜練をし…もはや24時間サッカー漬けといえるレベルです。

彼がそうして黙々と情熱を燃やす姿に感じ入り、部の新入生マネージャー・秋穂みのりが部活後のボール磨きを手伝ってくれるようになったり、密かに思いを寄せる同学年のマネージャー・虹野沙希が夜練に差し入れを持ってきてくれるようになったりと、さまざまな人に支えられながら彼は一心不乱にサッカーに打ち込みます。モノローグによれば神社での夜練は「神社の人には気づかれているようだが、見逃してもらえている」ようで、なんとも人の温かさが身に沁みます。

前述したように、本作では虹野が原作ゲームほどには「根性、根性」と言わなくなっているのですが、もはや言う必要がないくらい主人公が根性のカタマリです。

「がんばってはいるんだけど…才能、ないのかな」

物語が大きく動き出すのは、主人公が偶然聞いてしまった、沙希みのりの会話でした。努力しているのは分かるが芽が出ない…?自分を見守ってくれていた彼女の本音はそこにあったのか衝撃を受けた主人公は心がポッキリと折れ、毎日の練習にかげりを出してしまいます。

しかし、そんな彼を「レギュラーになるまで、がんばるって約束したじゃない!」と涙ながらに叱咤したのも、沙希でした。どちらが本当の彼女なのか分からず、しかしこの涙が嘘とも思えず…。主人公は彼女に見守られながら、再び努力を続けます。

やがて迎えたサッカー部の対抗試合の日。主人公は、突然の故障で空きができてしまったフォワードに臨時のスタメンとして選出されました。「お前が一番、練習をよく見ていたからな。フォーメーションも理解できてるだろ?」と抜擢の理由を告げるコーチの言葉に、努力を続けていればそれを見てくれている人はいるんだ…とグッときます。

そして運命のキックオフ! 主人公は沢渡と息の合ったコンビネーションを発揮して部に勝利をもたらします。それが認めらえてついにレギュラーの座を勝ち取った彼とサッカー部は躍進を続け、いつしかきらめき高校の「遅咲きのストライカー」の名は全国に響きわたるほどになるのでした。

以前に沙希が「才能がない」と話していたのも主人公のことではなく自分自身の編み物のウデのことだったということが分かり…完全無欠のハッピーエンドです。うぅっ、いい話だった…がんばったなお前…(涙)。


本作は小島秀夫監督が率いていたコナミコンピュータエンタテイメントジャパンが開発を担当しており、『ポリスノーツ』と同じゲームエンジンや、前述したような読後感のよい青春ドラマ、「」野沙希→「」色の青春に見られるような副題にヒロインの名を一文字入れる粋な演出など、全方位にわたって上質な作りが光るアドベンチャーゲームでした。

BGMは、コナミのサウンドチーム・矩形波倶楽部が本作に先駆けてリリースしていた『ときメモ』アレンジアルバム「ときめきメモリアル SOUNDコレクション」シリーズの収録曲が主に使用されています。ギターやサックスを前面に出したフュージョン風のアレンジが本当にさわやかで、どの曲も非常に聴きごたえがあります。

また、筆者の一番の推し曲は神社での夜練で使用される曲「ファンシーショップ」なのですが、この曲が収録されているアレンジアルバム「ときめきメモリアル piano collection」は、作曲家・ピアニストの岩代太郎氏が編曲と演奏を担当しています。こちらもすごい名盤です。

ときめきメモリアル』は恋愛シミュレーションゲームというジャンルを世に広めただけでもエポックメイキングな作品ですが、非常にレベルが高い楽曲群も魅力のひとつだなと思います。

「ときめきメモリアル ドラマシリーズ Vol.1 虹色の青春 オリジナル・ドラマ・サントラ」(Amazon.co.jpより)

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(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
《蚩尤》

汎用性あるザク系ライター(が目標) 蚩尤

1979年生まれのファミコン直撃世代。スマホゲームもインディーズも大型タイトルも遊びますが、自分と組ませてしまって申し訳ないという気持ちやエイミングのドヘタさなどからチーム制のPvPやFPS、バトロワが不得手です。寄る年波…! ゲームの紹介記事に企画記事・ビジネス寄りの記事のほか、アニメなど他業種の記事もやれそうだと判断した案件はなんでも請けています。任天堂『ガールズモード』シリーズの新作待機勢。

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