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『モンハンライズ』雪鬼獣・ゴシャハギの"なまはげ"要素に注目!その由来や正体とは【特集】

『モンハンライズ』のゴシャハギに注目。「泣ぐ子はいねがー!」「悪い子はいねがー!」とは言わないもののゴシャハギの怖さと強さは誰でも泣きそう。

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カプコンが手がけるハンティングアクションシリーズ最新作『モンスターハンターライズ』。拠点「カムラの里」など和風テイストの今作、新たに登場するモンスターもいくつか"和"のテイストを持っているのが見られます。

今回注目するのは「雪鬼獣 ゴシャハギ」です。角がついた顔に体を覆う毛、怒ることで赤くなり腕に氷の刃を持つその姿は、まるで秋田県の民俗行事である”なまはげ”を思い起こさせます。


本稿では、"なまはげ"の由来とともに「ゴシャハギ」との共通項を紹介していきます。

正体は福を呼ぶ神様!?秋田の風習"なまはげ"とは


大晦日の夜、秋田県の北西部の男鹿半島。仮面を被り、ワラで作られた「ケデ」を身に纏い、包丁や御幣付きの杖、手桶などを持った"なまはげ"が出没します。地域の家をめぐり、子供やその年の初嫁・初婿に対して「泣ぐ子はいねがー」「悪い子はいねがー」「怠け嫁(怠け婿)いねがー」などと叫ぶ”なまはげ”に対し、家人は正装して酒肴や餅などを用意して丁重にもてなします。

恐ろしい見た目に子供が泣く姿など、今では全国的にも有名なこの地方行事。"なまはげ"の正体は決まった時期に現れる「来訪神」であると言われています。"なまはげ"は怠け者を叱るだけでなく、厄払い、豊漁、豊作などをもたらす存在なのです。また、「ケデ」から落ちたワラは無病息災などのご利益がある護符代わりとして家庭内で重宝されています。

[NurPhoto/寄稿者]/[NurPhoto]/ゲッティイメージズ

"なまはげ"の名前は「ナモミ剥ぎ」に由来していると伝えられます。ナモミとは、冬に囲炉裏にばかり当たっていると肌にできる火型(低温やけど)のこと。ナモミを付けるような怠け者を懲らしめるという意味の「ナモミ剥ぎ」が変化して"なまはげ"になったと言われています。

"なまはげ"は、1978年に国の重要無形民俗文化財(「男鹿のナマハゲ」名義)、2018年にはユネスコ無形文化遺産(「来訪神:仮面・仮装の神々」の一部)に指定。また、"なまはげ"のキャラクター化や観光資源として地元の経済にも貢献し、近年問題視されていた後継者不足による規模縮小状態だった行事にも、やや復活の傾向が見られるようです。

[Kiyoshi Ota/特派員]/[Getty Images News]/ゲッティイメージズ

[Satoshi Takahashi/寄稿者]/[LightRocket]/ゲッティイメージズ

なお、"なまはげ"の風習は時代で変化しています。もともとは小正月の行事だったものが改暦などさまざまな理由で大晦日に変更されていたり、"なまはげ"が家で尋ねる内容や身に付ける道具なども地域で異なります。形を多少変えてでも地元で愛され続け、今でも続いている風習なのです。

異邦人?漢の武帝?その起源説はさまざま


“なまはげ”は民間伝承であり、その発祥については正確に伝えられていません。現在まで「漢の武帝説」「異邦人説」「修験者説」のほか、「役人説」「罪人説」「山の神説」などさまざまな起源説が伝えられています。

[NurPhoto/寄稿者]/[NurPhoto]/ゲッティイメージズ

「漢の武帝説」は、その昔男鹿半島へ渡来してきた漢の武帝(劉徹)が、お供につれていた5匹のコウモリを鬼に化けさせていたという話から始まるもの。この伝説は今でも「赤神神社 五社堂」に5匹の鬼を祀る形で残されています。武帝がこの地へやって理由は「不老不死の霊薬」「仙境」を求めていたと言われており、男鹿半島の山にも古くから伝わる道教の流れを汲んでいる説ではないかと言われています。

「異邦人説」は、男鹿半島の歴史に起因しています。「日本書紀」で阿倍比羅夫が蝦夷征討を行った際に、今の秋田県(齶田)の民族長だった"恩荷(おが/おんが。男鹿半島の由来とも言われる)"が降伏、安倍が男鹿半島に漢人の従者を住みこませたという説。また、漂着した外国人(ロシア人ともスペイン人とも)を寺男として働かせており、正月休みに里に降りることを許されていたという伝説もあります。また、漂着して山に隠れていた異邦人が蛮行を働いた/山から降りて民にもてなされたなどの伝承もあるようです。

「修験者説」は、"男鹿三山"と呼ばれる3つの山が古くから修験者・山伏の修行の地として用いられていることから。三山には”なまはげ”ゆかりの神社などの施設が今も多く残されています。修験者たちは山から降りてきて、地域の人々への祈祷や説諭などを行ってきたとされています。また、修行時や祈祷時の凄まじい迫力が"なまはげ"の恐ろしい形相に由来しているともされます。

古い説によると紀元前を発祥とする"なまはげ"ですが、世の記録として登場したのは江戸時代のこと。江戸時代後期の旅人・学者の菅江真澄が「牡鹿乃寒かぜ」で1811年の小正月に体験した”なまはげ"を記録したもので、絵でも記されている歴史的な記録です。菅江真澄が見たなまはげにも「小刀(刃物)・藁ミノ・藁ぐつ」を付け、家々を回り「子供を脅す」「家人から物をもらう(歓待される)」という今でも通じるしきたりが一部成立しています。

その後も柳田國男、折口信夫、吉田三郎、岡本太郎などの学者や芸術家が"なまはげ"の研究や記録を残してきました。菅江真澄の時代から現代までに様相は少しずつ変化しており、今の観光化によるだけでなく「脈々と続けていくための変化」が常に起こっている行事であることがうかがえます。

また、全国に"なまはげ"のような「仮面の来訪神」の行事が存在しています。岩手県のスネカ、石川のアマメハギ、沖縄のパーントゥなどは"なまはげ"と同じくユネスコの無形文化遺産「来訪神:仮面・仮装の神々」に登録されているものです。そのほかにも秋田県だけでも"なごめはぎ"、"やまはげ"、"あまのはぎ"などがあり、それぞれのしきたりで行われています。古来から福を授けてくれる「来訪神」とはとても重要な存在だったようです。

ゴシャハギの"なまはげ"要素は?


さて、ここまで"なまはげ"について説明してきましたが、『モンスターハンターライズ』のゴシャハギとの共通項を見ていきましょう。

まず、ゴシャハギは普段は青色で、怒ると全身が赤くなるという性質を持っています。この赤と青という色は、"なまはげ"の一般的な仮面の色です。現代では他の色もあるのですが、赤面は男、青面は女と明確に決められているのはこの二色のみ。なお、本作ではゴシャハギの性別を分ける要素の説明はありません。

見た目に関して、怒った時に手に装着する氷の刃は"なまはげ"を象徴する「包丁」をイメージさせます。また、激怒時ではない際に左手に氷をまとうことがありますが、これは"なまはげ"の持つ手桶を想起させます。"なまはげ"はかつて、この桶をお神酒(またはどぶろく)をもらうために使用していたようです。ちなみに激怒しているときの両手刃や、ビームに関しては伝承は見つけられませんでしたのでご了承ください



そして重要なのがゴシャハギという名称です。「ゴシャ」とは秋田や東北の一部で使用される方言「ごしゃぐ(怒る)」から由来していると思われます。「ハギ」の部分は"なまはげ"の語源である「ナモミ剥ぎ」からの変化の中で、"なまはぎ"、"なもみょうはぎ"、"ななもはぎ"という「ハギ」を使用していた地域が男鹿半島の歴史に残されています。もちろん「ごしゃぐ+なまはげ=ごしゃはげ」を響きの良さでゴシャハギとしたという可能性もありそうです。

また、ゴシャハギの素材である「しゃっこい氷塊(しゃっこい堅氷塊)」も方言由来です。「しゃっこい」は北海道・東北のほか神奈川などでも一部使われるとされています。由来は「冷やっこい」からの変化のため「しゃっこ」「ひゃっこ」「さっこい」など地域ごとの微妙な差異もあるようです。なお、男鹿半島では主に「しゃっこい」が使用されているようです。



もちろんミノを想像させる体毛、寒冷群島という雪深い出没地域など、細かい部分を上げていくとキリがありません。



ここまで"なまはげ"の由来を紹介してきました。見た目だけでなく名称などを含めて「ゴシャハギ」との共通項が多いように思えます。もっとも『モンスタハンターライズ』では福を呼ぶ来訪神ではなく、油断すると恐ろしい攻撃力でハンターをダウンさせるモンスターなので要注意です。

由来を探ることで、物事には新たな興味が出てくるものです。今作は"和"をテーマとしているだけあり、さまざまなモンスターに日本の妖怪や超越的存在をモチーフを感じさせるものが多数存在しています。ふと思いついたら、調べてみるのも面白いかも知れませんね。

参考文献:「ナマハゲを知る辞典」柊風舎 稲雄次
「ナマハゲの正体は何か」星雲社 大槻憲利
「秋田のことば」無明舎出版 秋田県教育委員会」より


《Mr.Katoh》

酒と雑学をこよなく愛するゲーマー Mr.Katoh

サイドクエストに手を染めて本編がなかなか進まない系。ゲーマー幼少時から親の蔵書の影響でオカルト・都市伝説系に強い興味を持つほか、大学で民俗学を学ぶ。ライター活動以前にはリカーショップ店長経験があり、酒にも詳しい。好きなゲームジャンルはサバイバル、経営シミュレーション、育成シミュレーション、野球ゲームなど。日々のニュース記事だけでなく、ゲームのレビューや趣味や経歴を活かした特集記事なども掲載中。

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