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“復活”のキーワードで振り返る名作「スーファミソフト」─FC時代に共感してもらえなかったS・RPG、蘇るたびにプレミア化するSF・ADVなど【30周年記念】

30周年を迎えたスーパーファミコン自体も、「ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン」として華麗な復活を果たしました。

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FC版もプレミア、リメイクされてもプレミア・・・手が届かない憧れのSF・ADV──『メタルスレイダーグローリー』



ゲームハードが熟成期を迎えると、たまに驚くほどの力作が登場することもあります。これは、そのハードにおける開発の経験値が溜まったおかげであったり、開発が長引いて末期にずれ込んでしまったりと、事情はタイトルによってそれぞれ違います。

ファミコン時代にも熟成期ならではのタイトルがいくつかありますが、その中でも筆者が特に忘れられないのは、今では珍しくなったSF系ADVの『メタルスレイダーグローリー』です。


謎に包まれた試作機「グローリー」を手に入れた主人公が、機体に残されたメッセージを元に、地球を飛び出して月やコロニーを駆けめぐるSF世界を描く本作。こちらもADVなので、ネタバレを考慮して詳しくは語れませんが、先が気になる展開、巧みに張られた伏線とその回収など、物語そのものに魅力があり、その点だけを見ても完成度が非常に高い1作です。


更に、熟成期ならではのこだわり抜いた演出とグラフィック表現も、本作を語る上で外せない重要な部分と言えます。書籍「メタルスレイダーグローリーファンブック」によると、本作の開発期間は4年2ヶ月。昨今では、これくらいの開発期間を取る作品も多く見られますが、当時の一般的な開発期間は今とは全く異なります。半年や1年で発売を迎えるソフトも多い時代だった中、4年2ヶ月はかなり異例な数字です。


その開発期間は、卓越した“豊かな表現”を生み出します。例えば、キャラクターの口パクもそのひとつ。「ADVで口パクなんて、当たり前では?」と思う方もいるでしょうが、キャラクターボイスがまだ一般的ではない時代では、違和感が少ないため口パクさせない作品も多くありました。おそらく、開発の手間を減らすためでしょう。

しかも『メタルスレイダーグローリー』の場合は、ただ口を動かしているだけでなく、台詞とシンクロさせているのです。もちろん口パクだけでなくまばたきもしますし、台詞によっては表情自体も変化。この演出を全編に渡って行っている、という素晴らしいこだわりぶりです。


ちなみに本作は、Bボタンを押しっぱなしにするとテキスト表示が早くなります。そして、その速度に合わせて口パクや表情も高速で変化。台詞と表情がシンクロしている証拠を、実際のゲームプレイで確認することもできます。

また、ファミコンの性能では一定以上のオブジェクトを並べると、処理しきれずにチラつきが発生しました。そこで並び方をズラし、チラつきを回避しながら豊かな動きを実現。こういった手作業の積み重ねにより、ファミコンの性能を超える表現をいくつも成し遂げたのです。


ストーリーも魅力的で、ファミコンレベルに収まらないグラフィックと演出により、名作ADVの地位を確立した『メタルスレイダーグローリー』。しかし、本作が発売されたのは1991年で、ゲームファンの関心は既にスーパーファミコンへと移っていました。

販売の消化率は好調だったものの、使用基盤が特殊なため、生産も初期ロットのみで終了。再生産が行われなかったため、本作の良さが口コミで少しずつ広がり始めた頃にはもう入手困難で、中古市場のプレミア価格での取り扱いのみという状態になってしまいます。


そんな状況が長く続いた後に、リメイク版となるスーパーファミコンソフト『メタルスレイダーグローリー ディレクターズカット』が登場しました。プレミア価格に躊躇していた方にとっては、救世主のような存在でした。また、ハードの性能が向上したおかげで、グラフィック表現がよりパワーアップ。使用する色数が増え、陰影による表現の深みなども盛り込まれました。

現在も公開されている開発スタッフインタビューを見ると、「結局、全部の絵に手を入れてしまった」と、リメイク版でもこだわりに溢れた開発風景だったことが窺えます。


この他にも追加要素はあり、本作の終盤には実際に戦う戦闘シーンが用意されていますが、ファミコン版ではパートナーが固定されていました。ですがリメイク版は、パートナーの選択が可能になり、展開に広がりが加わります。本筋はそのままですが、新規の追加シーンで既存のファンも心をくすぐられました。

こうして復活を果たした『メタルスレイダーグローリー ディレクターズカット』ですが、実は『ファミコン探偵倶楽部 PARTII うしろに立つ少女』と同じく、ニンテンドウパワーとしてのリリースでした。しかも発売されたのは、リメイク版『うしろに立つ少女』の2年後となる2000年の12月(プリライト版は11月)。同年3月にPS2が登場しており、今回もまたハード熟成期にリリースとなりました。そのためファミコン版と同様に、どうしても注目されにくく、今回もまた“気がつけばプレミア化”という道を辿ります。


生産数が最初から限られていたファミコン版のプレミア化は、ある意味やむを得ない展開でした。ですがリメイク版は、専用カートリッジさえあれば実質的な品切れがない、書き換えサービスとしての提供。なのに、サービス終了後にプレミア化してしまったのは、ファンとしても口惜しい事態です。もっと広く知られていれば、ニンテンドウパワーが現役の頃に手に入れた方も多かったことでしょう。

リリースされるたびにプレミア化を繰り返した『メタルスレイダーグローリー』。面白いからこそ求められ、しかし認知が広まった頃には入手困難という、切ない道のりを2度も歩む作品となりました。


そんな道のりを辿った本作ですが、 2007年にファミコン版がWii向けのバーチャルコンソールソフトとなり、2015年にはWii U向けも登場。更に、リメイク版もWii Uのバーチャルコンソール化を果たしました。原点となったファミコン版の発売から15年以上の時を経て、ようやく「いつでも通常価格で買える『メタルスレイダーグローリー』」が実現したのです。


蛇足ですが、ゲームのみならず、書籍「メタルスレイダーグローリーファンブック」も復活しており、プロジェクトEGGの「書籍復刻プロジェクト」として、書籍「メタルスレイダーグローリーファンブック リマスター」が2013年に出版されました。ゲームだけでなく書籍も復活を果たしたのは、『メタルスレイダーグローリー』人気を示す証拠のひとつに他なりません。



今回は“復活”をテーマに、スーパーファミコンの3作品を振り返ってみました。もちろんこの他にも、スーパーファミコンで復活を遂げた作品はありますし、名作・良作に至っては数え切れません。

30周年を経て、改めてスーファミソフトを振り返ってみるもよし。当時から続くシリーズの最新作に触れてみるもよし。様々なアクセス手段があるこの時代だからこそ、自分好みの楽しみ方で“スーパーファミコンの系譜”に触れてみてはいかがでしょうか。
《臥待 弦》
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