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ヴァイキングが人々を惹き付ける理由―『アサシン クリード ヴァルハラ』オンラインセッションレポート Part3

第3部は近年のヴァイキング人気について語り合います。

ソニー PS5
ヴァイキングが人々を惹き付ける理由―『アサシン クリード ヴァルハラ』オンラインセッションレポート Part3
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第2部では『アサシン クリード ヴァルハラ』で「サガ」や「エッダ」がどう取り入れられたか、ロケーションをどう構築したかについてがテーマでした。第3部は、ヴァイキングが人々を惹き付ける理由、制作プロセスの裏話についてです。


第2部の内容については以下のリンクからどうぞ。


『オリジンズ』や『オデッセイ』と違い、参照できる資料が少なかった―『アサシン クリード ヴァルハラ』オンラインセッションレポート Part2





第3部:エンターテインメントにおけるヴァイキンのトレンドについて


司会:Juria Hardy


登壇者


Julien Laferriere:プロデューサー


Ryan Lavelle:英ウィンチェスター大学教授、アングロサクソン時代のウィンチェスターや、アルフレッド王について世界的に有名な中世初期の歴史に関する専門家


Magnus Bruun:エイヴォル(男)役、Netflix「ラスト・キングダム」にてクヌートも演じる


Cecilie Stenspil:エイヴォル(女)役


Einar Selvik:作曲家


ヴァイキングが人気を博している理由について



Julien Laferriereヴァイキングには超人的なイメージがあります。北国からからやってきた野蛮な戦士、まるでエイリアンのような見たことのない船を駆って時代を支配した、そういうイメージが定着していて、他のゲームでも強力なキャラクターとして登場します。ですから、我々にとってヴァイキングは「超人的」でかっこいい存在なのです。


Ryan Lavelleそういった超人的なステレオタイプが人々を惹き付けていると認めざるを得ませんね。キャラクターがすっかりできあがっていますから。ですが決してそれだけではありません。ノルウェーを飛び出した人々は強い結束力を持って、異なる場所、異なる人々と出会いながら中世の世界を渡り歩きました。「船」と「移住」には冒険心をくすぐられます。ファンタジー、歴史、考古学が混ざり合っていてとても面白いですね。


Juria Hardyこの時代にはたくさんの空白があり、ゲームの制作をする上でそれらを埋めていくのは作り手の特権ですね。


Julien Laferriere『アサシン クリード』に携わっている中では、その空白こそが醍醐味なのです。北欧の口伝、サクソン人の書物に当たり、埋めるのに役立つ興味深い記述がたくさんありました。『アサシン クリード』の制作で好きなものが2つあり、1つは対立する政治で巻き起こる陰謀、もう1つは歴史の空白部分です。この時代には両方とも備わっていて、オリジナルの登場人物と物語を作る余地が十分ありました。


制作の裏話



Magnus Bruun『ヴァルハラ』の2年前からNetflixの「ラストキングダム」に関わっていて、そこから『ヴァルハラ』に移れたのはまさにおあつらえ向きでした。その時代のことは十分理解していましたし、「ラストキングダム」の役作りが『ヴァルハラ』のロングシップに乗り込む手助けになったんです。


Juria HardyEinarはこの作品に携わるに当たってどのような準備をしましたか?


Einar SelvikWARDRUNA(Selvik氏が参加する音楽ユニット)を中心に、この20年ノルウェーの伝統音楽の探究に打ち込んできました。2009年にアルバムをリリースしてまもなく、TV番組「ヴァイキング ~海の覇者たち~」に携わりました。WARDRUNAの演奏もたくさん使用しましたし、伝統音楽の持つ質感をシリーズの核にしたかったのです。さらに、スタッフの一員としてカメラにも写りました。宴や鬨の声、葬式などですね。


『アサシン クリード』で私に求められたものは、私がこれまでやってきたことによく似ています。つまりWARDRUNAの理念である、過去の模倣にとらわれない現代的な音楽です。当時の「本物」を追求する必要はなく、新しく作り上げるのです。


Juria Hardyでは、そちらのスタジオにある楽器について教えていただけますか?


Einar Selvikこのゲームでメインとするアイデアは、ヴァイキング時代の詩歌の声を入れることでした。彼らにとって詩歌はニュースや家系図、あるいは人々の生きた記憶です。ですから、声とそれにふさわしい楽器を使いたかったのです。


これはライアー(ライアーハープ)という当時の一般的な楽器で、イギリスと北欧の両方で使われました。基本的にはハープのように爪弾いて、ギターのようにかき鳴らすこともでき、押さえた弦のミュートをすることでコードを変えられます。ゲームの中でも多く使ったものの1つですね。これらの楽器は語り部や詩歌にも用いられました。もう1つゲームでよく使ったのが骨の笛です。起源は石器時代まで遡ります。


Juria Hardy一応聞きますが、角のものも勿論ありますよね?


Einar Selvik(取り出しながら)これですね。儀式用の兜についているような。


Juria Hardy今では「兜に角なんかつけるな!」って絶対言われますが(笑)


Einar Selvik実際は儀式用のものに時々ついていたそうですが、戦闘用では絶対にないですね。儀式用でもヴァイキング時代よりはもっと古いものです。これは山羊の角笛で、とても古い時代から現在まで用いられる生きた伝統楽器です。ヴァイキング時代の携帯電話のようなものですね。遠く離れた場所との通信が可能でした。さしずめ「i-ホルン」でしょうか(笑)。


放牧で動物を呼び戻すときにも、襲ってくる捕食者を追い払うときにも使います。これらの楽器は気温や湿度の影響をとても受けやすいので、納期が短いレコーディングはとても大変でした。






Juria HardyCecilieはヴァイキングの作品に関わったのは初めてだそうですね。


Cecilie Stenspilそうですね、言わばヴァイキング初心者です。ですが、私の育った家の近所にヴァイキング博物館があって、子供心にいつかヴァイキングになってみたいと思っていましたから、今回その夢が叶ったというわけです。


ゲームの中のエイヴォルはまさに理想のヴァイキングで、人間的な面もあり、故郷を見つけたいとも願っています。皆さんも同じようにエイヴォルをかっこよく思っていただけたらと思います。




Juria HardyMagnusはモーションキャプチャーを初めて体験してみてどうでしたか?


Magnus Bruunかなり勝手が違いました。ちょうど2週間前に「ラストキングダム」のクランクアップだったんですが、ヴァイキングなのに顔をすっかり剃ることから始まりました。細かい顔の表情をキャプチャーするためです。ヴァイキングの役をやるのにヴァイキングでなくなるようで変な気分でした。


他にもフルアーマーに顔のタトゥー、大勢のスタントマンと馬もいたのに、何にも用意されていないんです。空っぽの部屋に天井の固定カメラがあって、ステディカムを持ったカメラマンが走り回っていた。私はドットのついた真っ黒のスーツを着て、カメラのついたヘルメットをかぶって、90年代のエアロビクス教室みたいな場所で撮影をした。正直、こんなもので大丈夫なのかって思いました。


それでも、モーションキャプチャーではどんなことでもできるんです。その辺の箱が城になったり、ただのスクリーンを城のように眺めたり、背後に二人しかいないのに100人の戦士が現れる。CGなら何でもできてしまう。


『アサシン クリード』は全編モーションキャプチャーでしたが、もうちょっと手助けが欲しかったですね。物理的な動きや感触が必要だったんです。私がヴァイキングヒーローになるには斧とベルトが欠かせません。これが映画だったら予算をつけて大きな軍隊や立派な馬を用意してくれるでしょう!




Cecilie Stenspil舞台と映画撮影が合わさったようなもので、とても楽しかったですよ。Magnusが言うように、世界の全てを想像で作らないとならなくて、たくさんのカメラとライトでよく見えないくらい眩しかったんです。「そこに弓があるから拾って」と指示があっても、そこにあるのはただのプラスチックで、弓の重さを自分の想像で感じる必要がありました。最初は戸惑いましたが、自分の想像で何でも作り出せるのはとても気に入りました。


困ったときにはその場にいるディレクターに尋ねたりもして、ネタバレでこれ以上はいえませんが、とにかくとても自由にやらせてもらいました。おかげでキャラクターを深く掘り下げられましたし、声だけでなく動きも作ることができて、初めてのヴァイキングとしてはとても素晴らしい経験になりました。




Ryan Lavelle私にとっても『ヴァルハラ』と「ラストキングダム」とは大きく異なりました。「ラストキングダム」ではフレームの外でブダペストにあるセットを監修していましたが、現代のウィンチェスターを早朝に出発し、午後になると9世紀のウィンチェスターに到着するんです。ウィンチェスターからウィンチェスターへ、と言うのもおかしいですけどね。


『ヴァルハラ』の場合はイングランドの片隅でプログラマーに囲まれながら、ああでもないこうでもないと話し合っていました。主に、いくつかの史跡を巡るツアーガイドを任されまして、アルフレッドのウェセックス王国など、制作の初期段階で歴史のレクチャーを行い、チームのイメージ作りに役立てることができました。


土着信仰や伝統について




Juria Hardy信仰などの面においては、空白を埋めるのにどのようなものを使いましたか?


Julien Laferriereヴァイキングの世界観を熟知している人たちに話を伺いました。北欧の文化はとても複雑で、特に興味深かったのは、例えば「名誉」の考え方が人々によって大きく異なっている点です。それはとても厳しい環境で文化が育てられたためですね。自然の厳しさはゲームの中でも表現しています。


話を聞く機会を多くいただきましたが、その多くが人間に関する内容でした。彼らは歴史をほとんど記録しなかったので、彼らがなぜ別の土地に移ろうとしたのか、その理由を正確に伺うことはできませんが、このゲームでは「肥沃な大地」のためとして文化や信仰の理由付けに使い、他とは違った物語を作ることができました。




Juria Hardy近年人気が高まっているヴァイキングですが、未だに資料を正しく扱えていない場合もあるでしょう。一方でヴァイキングの実史を尊重して扱おうとする動きもあります。これについてどう思いますか?


Magnus Bruun確かにいい加減に扱っているようなものもあります。でも『アサシン クリード』の場合はとてもよかったです。人々がなぜイングランド移住を試みたか、それは決して単なる略奪と殺戮のためでなく、生きていくためだったんです。北欧では作物が育たず、次の世代を育てる場所が必要だった。


Cecilie Stenspil皆が安心できる「家」を求めていたんです。ヴァイキングは交易も盛んに行っていました。Magnusの言うように、エイヴォルはただ単に人を殺していたのではありません。面白いのは他の登場人物との出会いですね。


Magnus Bruun同盟を結ぶ相手やロマンスの相手、時には狂えるバーサーカーにも出くわすでしょう。でもプレイヤーは賢明な冒険者として立ち向かう。自分の一族を守るためにです。




Juria Hardyでは最後に、ヴァイキング人気が高まっている今、『ヴァルハラ』はその頂点に立てると思いますか?


Magnus Bruunもちろんベストに決まってますよ! でもあと数年かけたらもっとすごいものができるのでは、という気がします。


Julien Laferriere巨大で濃密なゲームになりましたが、まだ表面をさらっただけのように思います。素晴らしい「サガ」の物語はもっとたくさんありますし、魅力的な人物がたくさんいるこの時代からもっと着想を得たいですね。





日本でも「ヴィンランド・サガ」が人気を博すなど、従来のステレオタイプを超えたヴァイキングの人気が高まっています。『ヴァルハラ』では先行作品を踏まえ、神話とリアルがミックスする本作ならではのヴァイキング像を構築していきました。


第4部では、資料の少ない北欧とヴァイキングの史実をどのように考証していったかについてが語られます。


オーディンは案外普通のおじさんなのかもしれない―『アサシン クリード ヴァルハラ』オンラインセッションレポート Part4

《Skollfang》
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