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『あつまれ どうぶつの森』のヤベーやつ!タランチュラってどういう生き物?【平坂寛の『あつ森』博物誌】

『あつまれ どうぶつの森』に登場する生き物を、生物ライターが解説!第1回は「タランチュラ」です。

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『あつまれ どうぶつの森』のヤベーやつ!タランチュラってどういう生き物?【平坂寛の『あつ森』博物誌】
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※リアルの生物の写真が出てきます。苦手な方はご注意ください!
はじめまして。生物ライターの平坂寛です。日頃から日本中、世界中で珍しい生き物を捕まえて研究し、その体験を本や雑誌に書くことを仕事にしています。

著者近影

とはいえ、外出自粛中の近頃はなかなか外で生き物を探すこともできず「捕まえたい欲」が溜まる一方。そんな折に友人から勧められて『あつまれ どうぶつの森(以下、あつ森)』を始めてみたところ…これがなかなかイイ!自宅にいながら世界の生き物を採集できるとはいい時代になったもんです。

ところで『あつ森」には季節ごと、地形ごとにたくさんの生き物たちが登場します。その中には個性的な行動や性質でやたらとプレイヤーの印象に残るものも少なくありません。

これはゲーム内で手に入る「タランチュラのもけい」

たとえば咬みつかれれば即気絶!しかし買い取ってもらえば超高額!というネガティブ&ポジティブの両方向へ飛び抜けているタランチュラなどはその代表格でしょう。


しかしこのタランチュラ、現実世界でもあんなに「ヤバい生き物」なのでしょうか?今回はその辺を大人気なく検証してみます。

あつ森タランチュラの正体は「メキシカンレッドニータランチュラ」!


ところでまずは、タランチュラという生き物について。タランチュラとは熱帯地方を中心に分布するオオツチグモ科に属するクモ類をまとめてあらわす名前です。『あつ森』に登場するタランチュラは一種類のみですが、現実世界にはなんと数百種ものタランチュラがいると言われています。さらに現在でも頻繁に新種が見つかり続けているのだからタランチュラワールドというのは奥が深い……。

では、あつ森のタランチュラはゲーム用に適当にでっち上げられた架空の非実在タランチュラなのでしょうか?
いやいや!そこはさすがあつ森、さすが任天堂。ちゃんとモデルとなったであろうタランチュラが実在しています。それがこの「メキシカンレッドニータランチュラ」だ!

▲モデルになったと思しきメキシカンレッドニータランチュラ。
数あるタランチュラの中でもトップクラスの人気を誇る。(写真提供:レプタイルストア ガラパゴス

どうです?このオレンジ色のまだら模様にずんぐりした体!まさにあつ森のアレに完全一致じゃないですか。

メキシカンレッドニータランチュラは数あるタランチュラの中でも比較的大型な上、カラーリングが飛び抜けてド派手!しかも性質がおとなしく飼育がカンタンなことから、古くからペットとしてもっとも人気の高いタランチュラなのです。こんなタランチュラ界のスーパースターならば『あつ森』への出演も納得できますね。

実際は臆病で毒も強くない


……ん?性質がおとなしい?ペットとして飼育?夜の無人島でホラー映画ばりに人間を追いかけ回してくるほど獰猛なんじゃないの?咬まれたら一撃で気絶するほどの危険生物なんじゃないの?

実はその辺りに関しては現実のメキシカンレッドニータランチュラとはちょっと異なる、『あつ森』オリジナルの設定かと思われます。まず、現実のタランチュラは基本的にかなり臆病で、まかり間違えてもわざわざ人間を追いかけて襲うなんていう行動はとりません。しかし、積極的に襲いかかってこそこないものの、外敵に遭遇すると威嚇行動はとります。

▲カメラを威嚇する東南アジア産のタランチュラの一種。おお、ゲーム中と同じポーズ!

これがまさにゲーム内で見せてくれる前脚を振り上げる独特の威嚇ポーズそのもの!僕もプレイしていて「おおー!こんな動きまで再現されてるのか!!」と感動しました。まあ感動してたらそのまま咬まれてテントへ強制送還されたわけですが。

もちろん現実のタランチュラも威嚇を無視してしつこくちょっかいをかけ続ければ身を守るために咬みついてくることはあります。しかしタランチュラの毒性はいずれもさほど強くなく、他の一般的なクモたちと大差ありません。なので咬まれて失神!ということは考えにくいのです。

しかし、シンプルに「体が大きい=牙が大きい、毒の量が多い」ということなので咬まれればそれなりには痛いです。ハチに刺されたくらいのダメージは想定しておきましょう。もっとも、素手でつかむとか目の前に指を突きつけるとかしなければ心配はいりませんが。

▲毒うんぬんを抜きにしてもこんな牙を撃ち込まれたら物理的にダメージ負うよね……。

ゲーム未実装の凶悪技「刺激毛」!


でもメキシカンレッドニータランチュラはゲーム内では見せていない奥の手、秘密兵器を隠しています。それはお尻のあたりに生えている「刺激毛(しげきもう)」という毛です。

パッと見た感じはモフモフしていてやわらかそうなのですが、顕微鏡で観察するとミクロサイズのトゲがいっぱい生えているんです。彼らは外敵が迫るとお尻を向け、後ろ脚でパサパサパサッ!とこの毛を器用に抜いて飛ばしてきます。

▲中南米産のタランチュラは膨らんだお尻の辺りにたくさんの毛が生えていて、
これを飛ばして敵を攻撃する。これを食らうとかゆいんだ……。

これが皮膚につくとめちゃくちゃかゆいんです!皮膚ならまだしも、もし目や鼻に入ろうものなら……考えたくもありません。個人的には毒牙よりもよほどこちらの方が恐ろしい!ゲームで実装されてなくてよかった……。

……と、こんな具合にあつ森のタランチュラにはゲームプレイがよりスリリングになるよう適宜にチューニングされている生態や行動が見られます。しかし夜行性である点や威嚇行動、ターゲットに飛びかかる動きなど実物を再現している部分もあり、ちゃんと取材しつつ上手くゲームに落とし込んでいるなぁと思わされます。

リアルでも高価!


あ、最後にもうひとつの特徴であるお値段についてですが、メキシカンレッドニータランチュラの場合ゲーム内に登場するような立派な成虫であればだいたい1万~2万円ほどで取引されます。

うーん、けっこう高い!その辺の再現も忠実なのかも…。

ちなみに、メキシカンレッドニータランチュラはワシントン条約で国際取引が制限されています。『あつ森』みたいに、旅行先の島(海外)で捕まえて自分の島(日本)へ持ち帰る……なんてことはNGなのでお気をつけて!



■著者紹介:平坂寛

Webメディアや書籍、TV等で生き物の魅力を語る生物ライター。生き物を“五感で楽しむ”ことを信条に、国内・国外問わず様々な生物を捕獲・調査している。現在は「公益財団法人 黒潮生物研究所」の客員研究員として深海魚の研究にも取り組んでいる。著書に「食ったらヤバいいきもの(主婦と生活社)」「外来魚のレシピ(地人書館)」など。


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《平坂寛》

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