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密着・安田文彦―『仁王2』完成までの軌跡と『Bloodborne』山際眞晃対談

クリエイターの悩み、それぞれが持つ仕事の関係性、『Bloodborne』山際氏との対談──。等身大の姿を映し出そうとするインタビュー現場の様子を、ライターの視点でお届けします。

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「安田には言わないでください」


『仁王2』アートディレクター 金子浩久氏

2019年12月12日……コーエーテクモ市ヶ谷事業所へ向かうと、既に金子浩久による作業風景の撮影が始まっていた。『仁王』からアートディレクターを務める金子の筆致は、絵という方面に疎い私でもすぐに判るほど、驚くべき精密さと技術を備えていた。

緊張した雰囲気に包まれる作業現場では、金子の集中力が背後から眺めているだけでも伝わってくる。画面の中に表示されている人物画が、石膏を滑らかに切り取るようにして立体的な仕上がりとなっていくのだ。

失礼を承知で言えば、私にとってはじめの印象は大柄な体格と絵の精密さのコントラストが噛み合わず、どんな話をする人物なのだろうかと想像できなかった。あまり多くを語らない印象を持っていた私は、この後の個別インタビューで裏切られることとなる。


金子「テクモに入社して『影牢』『モンスターファーム』『アルゴスの戦士』などに携わった後、Team NINJAへ入って『NINJA GAIDEN 2』『DEAD OR ALIVE 5』とやってきました。その後、安田と『仁王』の制作を始めた感じですかね。」

Archipelのアレックスから出される質問にゆっくりと応え始める金子。時折マイクの調整を挟むこととなり、何度か同じ話をする必要に迫られてしまう場面もあったが、金子はカラッと笑い飛ばす。

金子「『仁王』のアートとして影響を受けたのは、映画で言えば『ラストサムライ』とか……黒澤明監督の『用心棒』であるとか……作るにあたっては調べることの方が多かったと思いますが。妖怪については、鳥山石燕といった日本人に馴染み深い作品を参考にしています。ビジュアルもアレンジはしていますが、見てわかるような形で登場するように気を付けていますね。

取り掛かりは私の場合、まずチームにどういったゲームを作りたいかといった話を先にして、それを受けて必要そうなモノは何かを調べたりしますね。といってもググったりするくらいですが(笑)。資料をあつめてそこからどうしようか、とはじまることが多いです」


金子「画面の描画に関する自社の技術が向上し、それらをまとめたライブラリを活用できるようになりました。前作と比較してダークになりきらないといいますか、明るめのステージを作りたいという意図もありましたね。

前作から『仁王2』へ進むにあたって、何をどこまで変えていいのか、変えてはいけないのかは中々判断がつきませんでした。これが『仁王』で、あれが『仁王』じゃない、と簡単に見分けられるものではありませんが、『仁王』らしさということであれば”毒が強すぎない”といった部分にあるんじゃないかと思います」

仕事の話を答えようとする為なのか、終始トーンを落とした調子で応じていた金子だったが、話題が安田のことに及ぶとその緊張感が解けていった。

金子「安田とやりとりしてることは、基本ずっと変わらないですね。こういったアートが必要だと言われたり、何が必要かを相談していく中で描いたものを見せて、安田から反応を貰って、更に磨いて返すといったことを繰り返してますね。答えを見定めていくというか、後半になるほどやりとりは減っていくかもしれません。

互いの成長についてですか? 私自身はそんなに変わってる気はしませんが……安田については『NINJA GAIDEN』の時、けっこう頻繁にキレてたような気がしますね(笑)。以前の安田は”俺がこのゲームを作るんだ”と気合が入っていたのかもしれません。むしろそれを経験したことで、今はプレイヤーにとても近い目線を取れるディレクターになったんじゃないかと思います。こんなこと言うと怒られちゃうんで、安田には言わないでください(笑)」

見えない場で相手を尊重する話に及ぶ瞬間、彼らはふっと顔をほころばせる

アートディレクターと言われてどのような印象を持つだろうか。一般に芸術家とされる人との縁がなければ、それはどこか堅苦しく、こだわりの強い人物像を思い浮かべるかもしれない。しかしながら、金子のインタビューの姿を横から眺めているうちに、そのような偏見はすぐに消え去ってしまった。

金子のアートが最も好きであると答える安田と、安田による遠慮のないストレートな仕事の要求に好意を示す金子と……見えない場で互いの話題を挙げる時、一瞬の表情の中に「心を許し合う関係」が垣間見えていた。

とはいえ、金子は「認めた相手としか話をしない」というような頑固者では決してない。両氏は不思議にも長らく仕事を共にした言わば戦友のような関係性であり、だからこそ生まれる信頼が、そのままチームのやり取りを円滑にさせるパイプラインとして活きているのだ。


《Trasque》
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