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VRとアドベンチャーゲームを掛け合わせた『東京クロノス』が体験させてくれたこと

『東京クロノス』はVRでプレイする必要があるゲームなのか?一通りゲームをプレイしたので、ネタバレ無でどのようなゲームで、どんな体験ができるのかをお伝えします。

ゲームビジネス VR
VRとアドベンチャーゲームを掛け合わせた『東京クロノス』が体験させてくれたこと
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『東京クロノス』はMyDearest株式会社のVRミステリーアドベンチャーゲーム。2018年7月にキャンプファイヤーで開始されたクラウドファンディングは17時間で目標金額に達し、総額800万円以上の支援が行われました。海外でもKICKSTARTERで90,625ドルの支援を集めています。その後完成した本作は2019年3月にSteamで配信がスタート、現在ではOculus Quest、PSVRでもプレイが可能です。東京ゲームショウ2019では新たなプロジェクトも発表され、注目を集めています。

近年VRゲームは増えつつありますが、アドベンチャーというジャンルはまだ数が多くありません。それは制作のハードルの高さもあると思いますが、アドベンチャーゲーム、特に『東京クロノス』のようなストーリーを読ませるゲームをVRでプレイする面白さが具体的に見えてこない。どうしても”体験価値”という点では、アクションやシューティングゲームなどの方が、VRでプレイする面白さが分かりやすいというのが現状です。

待望のVRアドベンチャーゲームということで、『東京クロノス』は対応機種(PSVR)の発売後すぐに購入しました。ただ、ノベルゲームが好きなので漠然と「VRでプレイする必要があるのか?」という疑問はあり、どういう体験ができるのかは不安がありました。そんな不安を抱えながら一通りゲームをプレイ、約2日でクリアする事ができました。今回はあらすじ、トレイラー以上のネタバレは無しで、本作がどのようなゲームでどんな体験ができるのかお伝えします。


◆『東京クロノス』とは


『東京クロノス』は、誰もいない渋谷に閉じ込められた8人の高校生たちによる物語。幼い頃いつも共に行動し仲の良かった8人は、不安な状況の中互いの顔を見て安心しますが、モニターに映る「私は死んだ。犯人は誰?」というメッセージを目にします。誰が死んだのか?誰が犯人なのか?信用したいのに、どこか互いを信用しきれない。そんな中で共同生活を送っていると、思い出せない記憶があることに気づきます。さらに9人目の高校生“ロウ”が現れ、物語は大きく動くことに……。


プロデューサーに『ソードアート・オンライン』プロデューサーの三木一馬氏、監督に『楽園追放 -Expelled from Paradise-』モーション監督の柏倉晴樹氏、シナリオに「謎好き乙女」シリーズや「今夜、君に殺されたとしても」の瀬川コウ氏、キャラクターデザインにLAM氏という豪華スタッフ陣。海外でも配信され、高い評価を受けているゲームです。

◆VRゲームのノベルゲー的表現


『東京クロノス』をやってみた感じとしては、360度見渡せるけど自分の視界がノベルゲーの画面になる、という感覚がありました。VRは酔いやすいことでプレイをためらうゲームもありますが、本作に関してはあまり該当するシーンはないと思います。


そしてストーリーの肝となる「台詞」はフルボイスで、発言するキャラクターから台詞の文章が飛び出てきます。文字の背景にメッセージウィンドウのような枠もないので、視界に写るキャラをそこまで邪魔することもありません。これによって発言しているキャラの方を自然と視認し、自分がその場に立っているように思えました。キャラの動きも大げさなものはそこまでなく、気にならなかったです。というのも、声よりも文章の台詞を優先して読むタイプのプレイヤーなので、その点は逆に良かったと思いました。

プレイ時間は10時間程度でしたが、台詞をフルで聞きじっくりやりこめば20時間ぐらいかかると思います。VRはプレイ中時間の感覚がなくなりやすいので、個人的にはちょうど良いと感じました。しかし、アドベンチャーゲームとしては短いと感じる人もいるかもしれません。実際もっとボリュームのあるゲームもやってみたいとは思うのですが、これに関してはVR機器自体がもっと手軽にプレイできるものにならないと難しそうだと思いました。

◆キャラクターの視界を得るということ


本作の主人公は櫻井響介という16歳の少年。彼は周りが互いを疑いそうになる中で、みんなを信頼したい、なんとか全員で脱出しようと考える善意のある人間です。基本的にVRは彼の視点を追っていくのですが、鏡のある場所では彼(=プレイヤー)の姿を見る事が可能です。プレイヤーが動けばもちろん鏡の向こうの彼の姿も動くので、繰り返し見ることで「自分はこのキャラなんだ」と思えました。


『東京クロノス』はアドベンチャーゲームの中でも選択肢が少ないです。選択肢が少ないということは、主人公が自分の意思で行動することがほとんどということなのですが……。ゲームの主人公は無個性だったり、設定がしっかり作りこまれていたりと様々です。どちらも自己投影しようと思えばできるのですが、このゲームに関しては自己投影という以前に、強制的に自分の視界が主人公と同期されます。なので、彼に感情移入ができないとかなり辛いです。ただ、よく漫画やゲームである「違うんだ、体が勝手に……!」という体験ができるので、それはそれで貴重かもしれません。


こうしたVRならではの体験は面白いのですが、精神的に弱い、感受性が高すぎる人にはおススメできないゲームだとも思いました。冒頭に載せたトレイラー第2弾には、人のような何かが飛び降りるシーンがあります。これがまさにゲームがはじまってすぐのシーンなのですが、事前情報を入れずにプレイしたため、「目の前で人が飛び降りる」という体験に少しショックを受けました。画面を見て受け止めるのとは違う、VRの空間でしか味わえない感覚です。目を閉じたり顔をそらすことはできますが、普通のゲームと比べるとVRは視覚的に逃げ場がないと思いました。

◆『東京クロノス』はVRである必要があったのか?


ゲームについては、惜しい点もありました。これは個人的な感想ではありますが、作中VRとして一番興奮したのがOPだからです。それはアニメで時々見かける「よくわからない背景の前でキャラクターが謎のポーズで通り過ぎていくシーン」。その空間に自分も入り、目の前でキャラクターが流れていくのを見られるのは驚きでした。これだけでもやる価値があると思いましたが、そこが個人の体験としてのピークになったことで、ストーリーの中そこまで驚きがなく、淡々と進んでいってしまった印象があります。VRならではの体験とストーリーをリンクさせていく点は、まだ改良の余地があると感じました。


では、今までの考えを総合して本作はVRである必要があったのか?と問われると、個人的には「ある」と言いたいです。2018年から2019年にかけて高い評価を受けたVRゲームが多く出て盛り上がる中、『東京クロノス』も同様に高い評価を受けたことは意味があると思うからです。

『東京クロノス』は舞台のメインを渋谷に据え、10人弱のキャラクターたちで物語を作り上げました。ステージとキャラクターの数というのは、今後VRアドベンチャーゲームにとって課題になってくる点でしょう。だからこそ、限られた素材で物語を完成させた『東京クロノス』は、ストーリーを読ませるVRゲームの基準となる存在になったと思います。今後『東京クロノス』に続くVRアドベンチャーゲームたちが、本作をより「VRである必要があった」と言わせてくれるものになるのだと思います。

色々書いてきましたが、今『東京クロノス』が遊べたことはとても良い体験で、「もうVRって良くなっていく方向しか見えないな!」と思わせてくれました。ストーリーについてはあえて深く触れませんでしたので、興味があればぜひその世界に入り込んでプレイしてみてください。

《タカロク》
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