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今更聞けない百合ヒストリー第2回~独断と偏見による百合概論と歴史について、GWなので本気出して考えてみた~平成前期・革命編

大正から平成の百合を語る企画二回目です。

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今更聞けない百合ヒストリー第2回~独断と偏見による百合概論と歴史について、GWなので本気出して考えてみた~平成前期・革命編
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百合の歴史~平成編のはじまり

インサイドさんから「GWに何か語ってみませんか」と言われ、大正から平成の百合を語る企画二回目です。

1本目の下書きを見た夫から「これ、掲載媒体が違うと思う」と言われましたがまったくその通りです。
インサイド読者の皆様に需要があるのかさっぱり分かりませんがとりあえず続けてみたいと思います。

前回「大正時代~昭和」を主に解説いていきましたが、今回はついに大輪の百合が花開くに至った平成をひも解いていきたいと思います。

お茶の間を突如襲った混乱 セーラームーンにおけるはるみち事変



今日に至って尚、世界的な人気コンテンツである「セーラームーン」シリーズ。(アニメ版は平成スタート)
今更知らない人はいないと思いますが軽く解説しておくと、原作は少女向け漫画雑誌「なかよし」で連載された武内直子氏の漫画作品です。
ストーリーの流れは、ドジでおバカな中学生、月野うさぎがある日突然、言葉をしゃべる不思議な黒猫「ルナ」と出会い、愛と正義のセーラー服美少女戦士「セーラームーン」として戦うことに……
という美少女モノのテンプレート作品です。
この作品には初期から、それまでの女児向け魔法少女作品とは異なる点が多々ありました。
それについて語るとちょっとそれだけで一回分使っちゃうので残念ですが割愛しますが、簡単にまとめると

・少女漫画に見せかけたシリアスダークファンタジー
・ベッドシーンや愛憎など、当時の女児向け少女漫画では大胆と言える表現
・単体の魔法少女ではなく、戦隊として複数で戦う初めての美少女戦士
といえます。

『セーラームーン公式サイト』

特に三つ目の「戦隊として戦う初めての美少女戦士」というのは百合界において重要で、それまで魔法少女ものではヒロインである魔法少女、単体の魅力で成り立つものでしたが、セーラームーンにおいてはその要素に加え、「キャラクター同士の関係性」が物語の魅力の一部として語られるようになったのです。
そしてそれは本編が人気のためシリーズ化したのち、第三期において突如現れた二人の外部太陽系戦士によって、お茶の間に大激震を放つことになるのです。

こちらは、2014年~2016年にかけて放映された「美少女戦士セーラームーンCrystal」のPV。
途中に出てくる緑髪の娘が「セーラーネプチューン/海王みちる」
金髪ショートカットの娘が「セーラーウラヌス/天王はるか」

その二人とは、「セーラーウラヌス/天王はるか」「セーラーネプチューン/海王みちる」。

女の子同士の関係性が見どころの一つであったとはいえ、それは「一人の男性をめぐって揺れる友情」であったり、「友達を助けるために自分の命を投げ打つ行動」であった前2期から突然の方向転換。
本作アニメのディレクターであり後に「少女革命ウテナ」「輪るピングドラム」「ユリ熊嵐」などの名作百合アニメをたたき出すことになる幾原邦彦氏と武内直子氏によってブッ込まれてきた二人のキャラクターが、
それまで「家族で見ることが出来る女児向けアニメ」としての体を保っていたセーラームーンを一気に「大きなお友達」のものへと昇華させました。

とある目的のため男装しているセーラーウラヌス(天王はるか)と、ウラヌスを公私ともに支える貞淑な彼女、セーラーネプチューン(海王はるか)。
高校生という設定ですがフェラーリを運転していたり、ヘリを持っていたり、高級億ションで二人暮らしをしていたりとやりたい放題のはっちゃけ設定。
かわいい学生カップルというより既に10年連れ添った夫婦の風格さえある二人の会話。
過去色々なアニメがありましたが、女児向けコンテンツにおいて明確に制作側が「公式の女性同性愛カップル」を提示してきた、記念すべき作品です。

とはいえ、それまでも女性同士が濃密な関係を築く作品が皆無だったわけではありません。
昭和にさかのぼれば「エースをねらえ!」におけるひろみとお蝶婦人の絆。1対1の濃密なやりとりは既にここで描かれていました。が、あくまであれは「ともに戦う仲間、ただ一人のライバル」としての関係性。
セーラームーンはそこに「群像劇」という少年漫画要素を落とし込んだことで、女児ならずとも男子、いや大きいお友達にまで受け入れられていったのです。

で。

国民的女児アニメとしての評価を前2作でしっかりと固めたそこにきて、突然のはるみち投入。クッソ濃ゆい完全に出来ちゃってる二人を、そのタイミングでぶち込んできたのです。
お茶の間で安心して見られる女児向けアニメとしての立場を揺るがぬものにしたその段階で!

筆者はこの時のお茶の間の激震を「はるみち事変」と名付けました。

多くの保護者が「あれ?この二人、あれ?」「これって子供に見せていいアニメだよね?アレ?」と狐につままれているうちに、お茶の間の子供たちに「はるみち尊い」をインプリンティングすることに成功した、革命的事件である(たぶん違う)です。
淡い憧れとか、行き過ぎた友情とかじゃなくて、この二人はもう完全に「熟年夫婦(ちょっとスキンシップ多め)」そのものの濃密な空気を真正面から視聴者に突き付けてきたのです。

<リメイク版のDVD>(amazonより)

この二人の外部太陽系戦士は、主人公格であるセーラームーンとその仲間たちとは、おおむねの目的を同じとしながらも達成手段について大きな隔たりがあり、度々衝突を繰り返すことになります。
そのため作品中でもどうしても「外部から理解されず二人だけの結束を強めていくさま」を見せつけられることになり、とくに普段は物静かなみちるが時折見せるはるかへの執着……「はるかが居ない世界なんて守る価値がない」とまで言い切る想いの深さとそれ故の閉塞性は素晴らしく「S」でありました。

ともあれ、押しも押されぬ時代を象徴するアニメ、女児が熱狂する変身グッズを多数発売した有名健全作品の皮をかぶって、幾原氏は世間に「同性愛的関係性」「禁忌の愛」と言った隠れテーマを浸透させていくことに成功するのです。

そしてその狙いをいち早く受け取った当時の大きいお友達は、成熟期を迎えていたコミックマーケットにおいて、成人向け、やおい(現在でいうBL)に加えて新たな「百合」というジャンルが成立させます。そうです、ヲタクたちの中に「百合」というのがジャンル名として芽吹いた瞬間です!
しかし初期の「やおい」が「男性同士の関係を楽しむ女性のための創作物」であったように、このころの百合同人誌作品のほとんどは、「女性同士の絡み(18禁)を楽しむ男性のためのジャンル」であり、現在のように性的要素の有無を問わないジャンルに発展してゆくのはもっと先のお話になります。

女の子同士の関係性を見せる作品の大量発生


さて、それまでの女児向けアニメ・マンガのセオリーでは、上記に述べたように「ヒロインは一人」「ヒロイン目線の淡い初恋、成長を見届ける物語」であったものが、
セーラームーン以後、大きく変動しました。

それまで多くの読者が「主人公に自分を投影する」ものであった表現から、少女同士の感情のやりとりや関係性を「傍観者として」外側から見るものへと変化したのです。
それまでも主に少年漫画においては「友情」という名前の元で描写される「仲間との絆」(というBLの素)。
あまりにも当たり前すぎて見落とされていたその要素が、少女向け作品に取り入れられた歴史的なターニングポイントでした。

その変化を裏付けするように、これ以後魔法少女モノは、少女×複数+観測者をテンプレートとして発展していきます。

昭和の魔法少女
・魔法の天使クリィミーマミ
・魔法のプリンセス ミンキーモモ
・美少女仮面ポワトリン

平成の魔法少女
・美少女戦士セーラームーン
・おじゃ魔女ドレミ
・カードキャプターさくら
・プリキュアシリーズ
・魔法少女まどか☆マギカ

明確な変化として「単体の魔法少女(主人公)」から、「集合体」になっていることが分かります。


そしてその濃密な関係性を見るにつけ、「私、クリーミィマミになりたい!」という昭和の女児から、平成の女児は「ぷいきゅあ、がんばえー!」(※自身がプリキュア、ではなく、プリキュアたちを応援する第三者であるという自我の発露)へと、創作作品への関わり方を変化させていくのです。

この「少女×複数+観測者」という図式に関しては、次回もう少し踏み込んで解説をしたいと思います。

さて、セーラームーンにおいて多くの挑戦要素をぶち込んできた、シリーズディレクターであった幾原氏。
はるみち以外にも、「セーラーサターン(土萌ほたる)を取り巻く幼児虐待と思しき表現」や、トランスセクシャルセーラー戦士の登場など、性と社会のタブーに果敢に切り込んで行くのですが、そこはスポンサーがおもちゃ会社の少女向けを運命づけられた作品。

におわせることはできても、表だってそれをテーマと扱うことは許されなませんでした。それが氏の開拓者魂に火をつけたのかは分からないが、その後アニメ監督へと舵を切った彼は1997年、伝説となる作品を発表するのです。

そして世界は革命された~少女革命ウテナ~



『少女革命ウテナ』公式サイト

主人公である少女、天上ウテナが巻き込まれた、生徒会による「決闘」。その決闘は「薔薇の花嫁」と呼ばれる姫宮アンシーを掛けて行われ、勝者には世界を革命する力が与えられるという。
現在の勝者(♂)にひどい扱いを受けてなお、意思を示さず従属するアンシーの姿に、ウテナは決闘への参加を決め、そして……というのが話の本筋。

しかしてその内容はハードコアと言って差し支えなく、ウテナとアンシーの同性愛的表現はもうそのまんまだし、対立する生徒会の面々の何かしらの「愛のトラウマ」を抱えているし、近親相姦、自己愛、同性愛とあらゆるタブーを詰め込んだ、夕方枠放送の全年齢アニメです。信じられるか?これ、深夜枠じゃないんだぜ……。
今では信じがたいけどプライムタイム放送でほぼ4クールですよ。

テレビ東京のアニメ枠が「新世紀エヴァンゲリオン」で火を噴いたその翌年に発表された本作は、その作品性質から当初エヴァと類似性を語られることも多かったのですが、筆者はこれに明確な相違点を感じています。
エヴァは「碇シンジ」という少年……おそらくこれは監督自身の分身でしょうが……の精神をどこまでも深く潜る森田療法的作品であり、通した主題は「少年の内的成長」でした(TVアニメ版)。父親との対決という「男子が乗り越えるべき同性の親」という裏テーマはありつつも、あくまで「家族」という小さな箱の中の戦いでした。
対してウテナは、様々な挑戦的の手法により語られる「ウテナ」「アンシー」「その他の登場女子」たちによる社会をはみ出すことへの禁忌と恐怖を克服する物語……つまり「少女が社会を蹂躙していくための戦い」で、どこまでも視点は外を、「革命するしかない理不尽を強いる社会」に向いているのです。

「少女よ、世界を革命せよ」

ここで再び私たちは、吉屋信子が残した「S」のメッセージ……父権社会への抵抗、自立のための同士としてのS……という真理に行き着くのです。
ただし従来のS的な「閉じた世界」「儚いもの」「つかのまの非日常」に満足するのではなく、世界を自分たちで変えてしまえばいい。
ヒーロー……王子様に守られるお姫様から逸脱し、自らが王子となれというシンプルな解を、監督は難解な表現とサブカル的な言辞の中に込めていたのでしょう。
新しい「S」の解釈として。

ただし、世界を変えるということは「世界に属する自分たちも変化する」という答えも、最終回で用意されているのですが。

平成前期までの百合はつまり



ここまで2回に分けて語ってきた「大正~平成前期の百合表現」に関して、いかがでしたでしょうか?
とはいえ私の狭い知識の中の独断と偏見に満ちた分析であり、異論反論はたくさんあることかと思います。

その上で私が私なりに、ここまでを総括させていただけるとすれば、

宝塚歌劇団、吉屋信子から続いた平成前期の百合は……
「らしくあれ、という社会からの抑圧への少女たちのささやかな抵抗」をベースとした、「同じ苦しみ、同じ生きづらさを抱えた少女の濃密な関係」、前回述べた「ファンタジー:理想的少女集合体」を追及した形だったと言えるでしょう。

そしてウテナによって、その「抑圧する社会」を見事に革命した、アニメ・マンガ等のエンタメ表現における百合は、この後、急速に「現実的百合」へと転換していくことになります。

特別でない、普通の関係性として描かれる百合。

そのお話は、また次回……え。次回!?


……実はこの企画、当初は「前編・後編」の二回だったんですが、書いてる間に「……2回じゃ収まらないわ」ということに気づきまして。
編集部にお願いした結果「3回目も書いていいですよ」ということになりました!

いい加減語りウザい、と思われていると思いますが、どうかもうちょっとだけお付き合いくださいませ、ね?
《永田たま》

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