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【コラム】『ファイナルファンタジーXV』と「リアル」の変質

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【コラム】『ファイナルファンタジーXV』と「リアル」の変質
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2016年は、「PlayStation VR」や『Pokemon GO』の登場で、ゲームとリアルをとりまく環境が劇的に変化しています。言うまでもなく、PSVRの“VR”は「Virtual Reality / 仮想現実)」であり、『Pokemon GO』はAR(Augmented Reality / 拡張現実)を駆使した作品です。

「リアル」という言葉は非常に使い勝手がよく、これまでも私たちはゲームを形容するときに、この言葉を好んで使ってきました。「これすっげーリアル!」だとか「リアルな世界観」だとか「リアルを犠牲にしてもやってしまう」だとか(余談ですが『Pokemon GO』に夢中になりすぎることを「リアルを犠牲にしてゲームをするなんて……」と揶揄することは可能でしょうか)。

ちなみにここでいう「リアル」は英語の「real」とは少し異なります。VRやARの「リアル」は「現実」ですが、これまでは、必ずしもその意味で使われていたわけではありません。あるときは描き込まれたCGを見て、あるときは作りこまれた設定を知って、あるときは仕事や学業に追われる日常を表す言葉として。「リアル」の多義性は、ゲームの多様性を表現するのに、いつの時代も有用でした。

■リアル=写実的


「リアル」という言葉で最も形容されてきたゲームのひとつに『FF』シリーズがあります。私も、ゲーム中に挿入されるプリレンダCGのカットシーンを観て「リアルだなぁ」とつぶやいていた記憶があります。FFシリーズは、精細なCGをもって「リアル」という形容を導き、それを賛辞にかえていました。

並行して「まるで映画のような」という形容も行われており、“当時は”間違いなくそれは褒め言葉でした。同様のクリシェは今となっては、ゲーム性の低さを示すものとなっているかもしれませんが。ともあれ、ここでは実写への接近を「リアル」と形容しており、現実というよりは「写実的」といえるものでした。


ここから、ゲームの新しい時代が始まった。(VII)
ゲームのキャラが、生きていることを知った。(VIII)
僕たちはもう一度、ファンタジーにつつまれた。(XI)
僕たちは、本気でゲームに恋をした。(X)
僕たちは初めて、仲間とつながった。(XI)
そこには、どこまでも広がる世界があった。(XII)
そこには、現実を超えた世界があった。(XIII)
僕たちは、一緒に世界をつくった。(XIII)

ファイナルファンタジーの使命は、 進化だ。

ファイナルファンタジーを、 超えろ。

「15」が、 来る。
(『FINAL FANTASY XV』特別CM 「15が来る」篇)

■リアル=実在する


「ゲームの新しい時代」を切り開いた『FFVII』には、高精細なグラフィックによる「写実的」というリアルがありました。「キャラが生きている」ことを知った『VIII』と「本気で恋をした」『FFX』にもそれがありました。「生きている」「本気で恋をした」というキーワードからは、リアル=「実在する」という見方もできます。

■リアル=現実


シリーズ初のMMOとなった『ファイナルファンタジーXI』。今でも話題に上る「ひとりじゃねえよ」というCMが印象的ですが、そこでは現実(=リアル)に存在する「仲間」とつながることが特徴となっています。ただし、これはFFというよりはMMOというジャンルの特性であり、変質とするのは難しいかもしれません。


■リアル=ハイパーリアル


わたしは以前、「JRPGの行方」という連載で、FFのことを「ハイパーリアル」と表現しました。「現実を超えた世界があった」という『FFXIII』は、当時、新世代機であったPS3において、長く待望され続けながらなかなか発売に至らなかった作品。「現実を超えた(虚構の)世界」というのは、「虚構でありながら,本物にきわめて近い実在性をもっていること」を表現する最先端のゲーム機での作品、という意味であります。

今年の初頭に行われた『FFXIII』の主人公であるライトニングが、ファッションブランドの「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のキャンペーンモデルとなったことは衝撃的なトピックでした。「私の装いは常に、生き残るための"武装"だったから、見た目を飾るなどを考えたこともなかった。ルイ・ヴィトンは私を新しい"ファンタジー"へ導いてくれた。この体験を、心から楽しみたい」というのは、ライトニング自身の言葉。ライトニングは単なるヴィジュアル・イメージではなく、人格あるキャラクターとしてわたしたちが住む現実の世界でアンバサダーとして起用されたのです。


虚構でありながら実在性を持った存在として(フィクショナルでありながらリアルな(本物のような)存在として)、リアル(現実)でモデルをやる......それは一見すると永瀬麗子(『リッジレーサー』シリーズのイメージキャラクター)のようですが、ファンタジーを出自とするライトニングと、現代を出自とする永瀬麗子では大きく異なります。また、初音ミクのようなバーチャル・アイドルとの違いは、初音ミクがバーチャルであることを維持したまま現実世界で活動するのに対し、ライトニングは現実世界への接近を試みるという点です。

ハイパーリアルを「虚構でありながら,本物にきわめて近い実在性をもっていること」とするなら、『FF13』のハイパーリアルは「ファンタジーでありながら、本物にきわめて近い実在性をもっていること」を目指したもの、という言い方ができるかもしれません。

■リアル=???


「KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV」の劇中に登場する王国の公用車としてNew Audi R8が本作のオリジナルデザインによるカスタマイズで登場します。リアルな世界観でこそ実現したコラボレーション。劇中での存在感をぜひその目でお確かめください。
「KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV」ニュースリリース

『ファイナルファンタジーXV』のメディアミックス展開のひとつである映像作品『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』と、自動車メーカーのAudiのコラボレーション。それを可能にしたのが“リアルな世界観”だと書かれています。『キングスグレイブ』では他にもユニクロやJALの看板を登場させたりもしていますし、『FF15』本編においてもアウトドアグッズで知られるコールマン社とのコラボが行われています。

ここで言うリアルな世界観とは何なのか。まるで実写のような精細なグラフィックで描かれる世界なのか、それとも作りこまれた設定を基にした世界のことなのか。これらのリアルな(実在する)メーカーとのコラボは、何を企図したものなのか。それをうかがう際にヒントとなるものがあります。


先日のE3で、デモプレイを交えたプレゼンが行われました。ここでは「現代的」を「realistic」と翻訳しています。「現代的な(現実的な)世界に、いろいろなファンタジーの要素が入っている」という説明も加えられています。

■リアル=現代的


リアルな世界観とは、現代的な世界観であり、だからこそ、Audi R8という現代的な車とのコラボが実現した。別の角度から見れば、現代的な世界観を強固にするために、実在するメーカーとのコラボを行った。

私は『キングスグレイブ』を最初に見たとき「ローマ法王がTwitterアカウントを開設」というニュースを思い出しました。ある意味でファンタジックな存在と、リアル(現代)の最先端であるSNSが混じりあう妙な違和感みたいなものが、そこにはありました。


『FF15』本編についても、同じことが言えます。イケてるファッションに身を包んだ今風の若者たちとカッコイイ車。その他方にある剣と魔法と巨大な召喚獣。リアルとファンタジーは一見すると対立しているようであり、それが「ホスト風の若者たちが荒野を爆走」するという揶揄にもつながりました。

シリーズを通して「機械と魔法」「SFとファンタジー」といった異なる二つのものを結びつけてきたFF。その最新作が「現代とファンタジー」を結びつける『FF15』です。アウディが出てくるほどのリアルな世界観と、巨大なベヒーモスが出てくるようなファンタジックな世界観。両者は、一方に接近させることがこれまでで最も困難です。

SF、ハイファンタジー、ポストアポカリプスなど、単一の世界観で矛盾なく描かれる“リアルな”海外RPGとは違う『FF15』という日本のRPG。現代とファンタジー、これまで以上に相反する二つの要素を統合して弁証法的に高みを目指す世界観は、オープンワールドの採用とともに、本作の大きな挑戦と言えます。そして、それが成功した暁には、上記の『FF7』と同じキャッチコピーを使うことが許されるほど、大きなエポックメイキングとなるかもしれません。
《Kako》

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